絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二三ニ話

Re:

 

 

「調整前だから良いけど、調整後だったら殺してたよ?」

 

にこやかにそう答える師匠と、冷や汗を流し後ずさる【鮮血の】さんを『森の家』へと迎え入れる。見ている分には問題ないが、あんな師匠を目の前にして対峙しろとか言われたら多分逃げるだろう。つーか、既にこの場から逃げ出したくなっていたりする。師匠から、漏れ出る殺気?が恐ろしくって同じ場所には居たくなかった。

 

「…………ん?【鮮血の】、お前だけじゃ無かったのか?」

 

「あ……やっぱ、わかる?」

 

「わかる?って、そりゃ……あんな歪みが見えたら普通にわかると思うぞ?で、誰を連れて来たんだ?」

 

「あー……一応、言っておくぞ?ボクが、声を掛けた訳じゃ無いからな!?向こうから、言ってきたから連れて来ただけだからな!?」

 

「前置きは良い。入t……アスナ、入れて良いか?」

 

「ふぇ!?う、うん、良いけど……」

 

唐突に話を振られたアスナは、驚いた様子で師匠KOを出す。その行動に、疑問を覚えたけれど入って来た人物を見て納得してしまった。ああ、言質を取ったのか……と。

言うなれば、キリト対策?というか……アスナ以上の存在を、彼女の彼氏に見せる事に対しての言質というか何と言うか……まあ、そういう許可を師匠は得た訳だ。

何しろ、入って来たのは銀髪をなびかせ洗礼された動きの人外級・美少女。上から下まで、純白のドレスを身に纏い優雅な動きでこちらへと近付いて来る。

翼も、かなりの美少女だと思っていたけれど……その白いドレスの美少女の前では、ただの『少女』でしかない。

アスナ達も、美少女の集団だが翼は更に一線を超えた美しさを持っている。ただ、それでもあのレベルには届きそうになかった。アレは、そういう言葉で現して良いモノじゃない。それでも敢えて、翼とどちらが優っているかと言うのであれば……俺は、『同等』と答えるだろう。

何故なら、ある一部が翼よりもかなり劣っているので、総合的に評価を述べるのであれば『同等』と言わざるを得ない。そんな、レベルの光景が目の前で展開されているのだ。ある意味、至福の瞬間だなぁ……と考えてフと気になって隣に視線を向けれた。すると、予想通り驚愕の表情をして固まっているエギルと……予想以上に顔の造形を崩れさせ、鼻の下を伸び切らせた変態顔のクラインがヨダレを垂らしだらしない顔を晒している。

エギルは、まあ良いとして……クラインは、完全にアウト。

これ、通報したら確実に捕まるレベルの顔だ。

つか、何処に通報したら良いんだろう?くっ……こんな事になるのなら『森の家』に戻ってくるんじゃなかった。

そんな、どうでも良い事を考えている間にも師匠と【鮮血の】さん達の会談は続く。俺達を完全に無視して(笑)。

 

「ウォーティア・トレントレットか……なんで、こんな大物連れて来るかなぁ……もしかして、この間の御礼参りにでも来たのか?」

 

大物?え?この美少女って、大物なの?

師匠の発言に、疑問を覚える事が多々あったがそれは解消される事なく話は続けられる。ちょ、誰か解説して貰えませんかね?つーか、こういう時こそ師範達の出番じゃないですかー。ほらほら、可愛い愛弟子が困ってますよー?

 

「違う違う!今回は、本当にウォーティにお願いされて連れて来ただけなんだよ!!だから、御礼参りとかじゃ無いからね!?」

 

「ええ、その通りですわ。私、『魔界』である方とお会いしまして……その方を【内】に、連れ出してあげる為に【監視役】を買って出ましたの……」

 

「…………成る程。【監視役】有りなら、確かに【内】へ出られたな。お前、禍焔凍真を連れて来たのか!?」

 

「ええ。交渉役も承りましたので外に待たせていますわ」

 

「交渉役?まさかとは思うが、アイツを俺に預けるつもりかい?」

 

「いいえ。貴方と、話をする機会を与えてあげて欲しいんですの。でなければ、貴方はずっとあの方に会わないでしょう?その為の『交渉』ですわ」

 

「……………………」

 

今一良くわからないが、彼女はどうやら俺と同じ様に《神殺し》となった転生者をここに連れて来たらしい。

しかし、師匠の表情を見るにその転生者を連れて来られた事を余りよろしく思っていなさそうだった。

 

「人工的に産み出された《堕ち神》程度に負ける奴だぞ?雑魚はいらん。連れて帰れ。それに、【組織】に残してある使い魔からの報告からしてもやる気の無さを感じる。故に軟禁させたのだ。そっちで預かれ……」

 

「取り付く島もなしか……」

 

「それなりに、気にはしていますのね……」

 

「それで?お前等だけじゃねぇよなぁ?まだ、外に反応があるんだが……他は、誰だ?」

 

「里希と初が来てる」

 

「…………一体、何処の拠点にカチコミするつもりだ!?てか、下手すりゃ《古き堕ち神》ですら屠れるレベルの戦力だぞ!?」

 

「あー……まあ、過剰戦力である事は否定しない」

 

「【始まりの魔法使い】の娘である、ウォーティア・トレントレットに『創造主の半身』里希。【鮮血の小悪魔】と【鮮血の女装?巫女】。守護者に僕……《旧・神族》一個小隊を相手に無双出来る戦力だぞ!?何考えてんの?」

 

ちょ!?《旧・神族》の一個小隊を相手に無双!?嘘だろう!?どう見ても、そんな事出来る戦力には見えないんですけど!?つーか、【始まりの魔法使い】の娘ぇ!?

え?この美少女が、あの【始まりの魔法使い】の娘なんですか!?ウッソォ……全然似てないッスよ!?

てか、母親誰だ!?っていうかあの人、女性と付き合った経験無いって言ってたじゃないッスか!?何で、()が居んの!?おかしいだろう!?

とんでも話の連続に、俺の中は大混乱の渦へと引きずり込まれて行く。というか、俺は振り返り先程から何も言わず固まっている師範達にすがり付き説明を求めた。

 

「せ、説明を求めます!師範、お願いですから説明を……」

 

「あ、ごめんなさい。兄様」

 

「唐突な事に、ちょっとフリーズしていた。許せ、兄様」

 

焦点が、何処かに飛んで行っていた師範達は俺にすがり付かれたからか、すぐに正気を取り戻して説明を始める。

ああ……良かった。師範達でも、この状況に付いて行けずに混乱していたとわかって俺はホッとする。そういう事なら、全然構わないのでとりあえず説明の方をお願いします。

 

「ウォーティア・トレントレット様は、【始まりの魔法使い】の娘でかなりの超戦力となります」

 

「しかも、超広範囲に対して氷結魔法や専用武器『セレスティア』による閃撃等様々な戦方を取られるので強い」

 

再起動した、師範達の説明に聞き入りつつ彼女の説明を受ける。氷結魔法は良いとしても、『閃撃』が何の事かがわからなかったが『大物』である事は理解した。

 

「『閃撃』って?」

 

「……兄様が昔、良く光の剣で広範囲を焼いておられたではありませんか?あれと、似た様なモノです」

 

「あ。後、あの方は怒らせない様にして下さいまし。怒ると、周囲全てが凍りますから……ええ、絶対零度の広範囲魔法が炸裂いたします故……」

 

何故か、リリィの口調がラヴォルフ師範口調に戻ってしまっていたが……きっと、巻き添えになった事があるんだろうと無理矢理納得した。つーか、リリィがムッチャ震えてるんですけど。そんなに恐いのか、あの美少女って……。

まあ、その隣にいるオルタも脅えているので相当な大物存在だという事は理解出来た。普通にしているのは、師匠だけなのであの人に取っては然程脅威ではないのだろう。

 

「で?他の奴等は、なんで入って来ないんだ?」

 

「それは、後ろを見ればわかるんじゃないかしら?」

 

そう言われて、キリト達に視線を向けると……何故か、一部の者を除いて脅えた様子が伺えた。因みに、一部の者っていうのはシリカやリズベットに鉄とキリト。

その他の者達は、恐怖?か何かに脅えている様子だった。

 

「…………成る程。見事に、戦士系が警戒モードになっているな。キリトが、警戒していないのは性格か?」

 

「ピナさんは、獣ですから本能的にウォーティさんが化け物だという事を理解しているのでしょうね……」

 

「あら?ジェイドも言うようになったわね?」

 

「今は、『守護者』と呼ばれています。皆さんは、ウォーティの様な呼び方は控えて下さい」

 

そんな、注意を受けたけれど……俺達は、『へぇ……『守護者』さんって、『ジェイド』っていう名前だったんだぁ……』と言おうとした。だが、いつの間にか声を奪われていて口パクしか出来ず、守護者さん達が見ているある一点に視線が集中する。そこにいたのは、師匠だった。

 

「【魔の破壊神・ジェイド】。それが、コイツの呼び名だが……口にするなよ?コイツは、腐っても【破壊神】と呼ばれる神々の一角だ。その名を口にするって事は、破滅を呼び込む事と同じ事になるからな?」

 

師匠が、唐突に沈黙系?の魔法を使ったらしい。

そんな、強制的に音を奪った上での説明会をしなければならない程ですか!?と思うけれど、説明を聞かされてとても良く理解出来た。つまり、アレですよね?『言霊』とか呼ばれる、力を持った言葉。()()()()()()発言するとか言っているから、それをやるとヤバイ事になるっていうのは理解した。しかし、キリト達側には納得が行かなくて不貞腐れている人もいるみたいだけど。

 

「納得行かないか?フム。流石に、実例を見せる訳にも……コイツの名は、魔力を込めて発言するとなぁ……」

 

「止めてください。そんな実践は、必要有りません」

 

「まあ、そんな事をしたらこの辺り一帯が人の住めない場所になりかねんし……」

 

え?この辺り一帯が、人の住めない場所になるの!?

え?名前を告げただけで!?つーか、鉄達の護衛がとんでもない存在だったんですけど!?【破壊神】って、一体どんな名前を持っているって言うんですか!?

 

「別に、名前呼びが悪い訳じゃないのよ?ただ、この子達は創造主に直接創造された存在だから厄介なだけで……」

 

「それさえなければ、普通でも良かったんだが…………というか、正確にコイツの名前を発言出来るのか?確か、それなりの能力を持ってないと『ジェイド』とは呼べないんじゃ……よし。神崎ほれ、守護者の名を呼んでみろ」

 

「…………えっと、魔力を込めなければ良いんですよね?じゃあ、ヘヴюト……!?」

 

「ああ、やっぱり……」

 

「やっぱりじゃねぇよ!?どうなってんの、これ!?」

 

「うん。とりあえず、以降も『守護者』で通してね?」

 

「……あのさ、俺も試してみても良いか?」

 

「良いよ?」

 

「じゃ、お言葉に甘えて……ロ£へ∀……」

 

キリトが率先して守護者を呼んだが……やはり、まともな言葉として聞こえなかった。それを見ていた師匠は、コクコク頷いて視線をあらぬ方向へ……あ、説明無しッスか!?

 

「神々の生みの親……【聖母神】よりも、遥か上。【創造主】権限辺りで、守護者様の名を呼ぶ事を封じられているのでしょう」

 

「あ、了解です」

 

「にしても、キリトは鈍感なのか?あの人達を前に、平然としていられるのか……わからん」

 

『あー……』

 

アスナという彼女が居るから、うやむやになっているけどキリトも相当な鈍感さんですよね。まあ、戦闘狂で戦闘馬鹿でもあるから今一鈍感ッポクない様に見えるけど。

 

「鈍感だ。アスナにゾッコン故、周囲の気持ちにも反応せんがな。現状なら、ハーレムでもやれるんじゃないか?」

 

「なんで、師匠が答えるんですか!?」

 

「当人に答えさせても、おかしな返ししかしそうにないだろう?実際、告白大会後に先に脱いだのアスナだろ?で、鈍感なキリトがキョトンとしているのをブチのめしたのもアスナだったハズだが……」

 

「なんで、知ってんだよ!?まだ、教えた事ないぞ?」

 

「【真実の瞳】で、当人達を前に【過去視】した」

 

「そんな事にも使えんのか!?」

 

面白かったぞ?と、宣う師匠に俺は諦めにも似た感情の揺らぎを得た。それと同時に、師匠がぶっちゃけた瞬間……とある場所から悲鳴の様な騒音が上がる。

見れば、アスナが頭を抱えて悲鳴を上げた様子だった。

 

「恋人になったその日に、流れで服を脱ぎ始めるアスナ。「や、止めて!」男らしいなぁ!「ワァーーー!!」にも関わらず、何してんの?「や、止めt……」って顔でアスナを眺めているキリト。ブチギレたアスナに一撃で昏倒させられるキリト。その後、落ち着いたアスナはキリトを引き摺りベットルームへ。そして、二人は結ばれた!!」

 

話を続ける師匠は、事もあろうにアスナに再度沈黙の魔法を使って最後まで言い切りやがった。というか、『その後~』以下の話はアニメでも語られてないぞ!?これが、リアルと物語の違いって奴なのか!?

 

「つーか、師匠、師匠!なんで、そんなに詳しく説明を始めるんですか!?アスナが、羞恥心で頭から湯気を上げてるじゃないですか…………」

 

「興が乗ったので、弄ってみた」←鬼

 

「つーか、守護者さんの名前に関しての説明を続けてください。それと、今後をどうするのかとか……」

 

「どうするも何も、今まで通りだよ。呼んだところで、正しく聞こえないんだから。保留だよ、保留」

 

正しく言葉に成らないんだから、今まで通り『守護者』で通せと師匠は言い切った。そして、説明は面倒なのでそういうモノなんだと納得しろと圧力を掛けて来る始末。

 

「そう言えば、ユーリ達はどうしているんですか?」

 

微妙にドヤ顔で話をしていた師匠に、鉄がユーリ達の所在を問う。この話の流れで、こうバッサリ打った斬るのはコイツくらいなモノだろう。

 

「……………………」

 

良し、『勇者(笑)』の称号を送ろう。

 

「…………安全面で、ちょっと出せなかったから放置状態にしているが……フラストレーションが、溜まり過ぎているだろうから恐くて出せないかな?」

 

「「「「おい!」」」」

 

「わ、忘れてはいない。ちょっと、《時渡り》が乱立して……シャボン玉男の時は、話が混乱しない様に控えさせていただけで……その後は、魔獣騒ぎになったから出すタイミングが……」

 

まあ、確かに……あの男の前にユーリを出したら、《神殺し》との会話をそっちのけでナンパに走り兼ねない。

しかも、ライバル認定されて逃げられる恐れもあった。

だがしかし、【組織】に戻った安全な時くらい出してあげても良かったハズだ。そうすれば、フラストレーションなんて溜まり捲ったりはしなかったと思われる。

 

「じゃあ、今出しても問題ないって事ですよね?」

 

「何だ?鉄。美少女成分が、足りないのか?」

 

「まあ、そんなところですかね?」

 

「これだけ、超絶な美女が揃っているというのに……流石、ロリコンな奴等だなぁ……」

 

「「断じて違う!!」」

 

「何が違うんだ?ユーリの見た目なんて、どう見ても小学低学年じゃないか……この、ロリコン共め!」

 

「それはそれ、これはこれ、です!」

 

「そもそも、アニメのキャラに年齢は関係ないだろう!?」

 

「その通り!萌えるか萌えないかだけの話だ!!」

 

「ふぅ……そんな事言ってるから、女性達から冷たい視線を向けられるってわからないか?ほら、見てみろ。アスナ達から注がれる、絶対零度の眼差しを……」

 

「「…………ひぃ!?」」

 

その場にいる女性陣全員から、絶対零度の眼差しが俺と鉄に向けられていた。こう、そんな眼差しで見られると背筋をゾワゾワとした寒気が這い上がって来る。

 

「あ、え、えっと……」

 

「「「「「「「「変態!!」」」」」」」」

 

「ゴフッ……」

 

俺は何とか耐えたが、鉄は耐えられなかったらしく血ヘドを吐いて倒れてしまった。いやはや、見目麗しい乙女達から絶対零度の眼差しを向けられた上に『変態』等と罵られたらこうも心に突き刺さるモノがあろうとは……グフッ。

 

「い、言い訳をさせてk……」

 

『言い訳をさせて下さい』と言い切る前に、背後で何かが倒れる音がした。振り返ってみると、金髪……あー、仁王立ちしたユーリ?の後ろ姿が確認できる。

つーか、紫天の書は?あ、師匠の隣に落ちていた。

それだけは、ちょこっとユーリの左後ろ側から覗き見たので間違いない。きっと、無理矢理【紫天の書】から出て来たのだろう。しかし、前に回り込んで現状のユーリを見たいとは思わなかった。だって、怖いじゃないか!!

そして、赤黒い《魄翼》が平然とした師匠の首をギリッギリッと締め上げている。師匠は、首を《魄翼》で掴まれた状態で空中にブラ~ンとブラ下がっていた。

ぶっちゃけ、ギルティ。

 

「うぉーい?…………大丈夫?」

 

「……………………」

 

あ、コレあかんヤツや。

下手に声を掛けると、トバッチリを受ける可能性がある。

なので、一歩下がって様子見する事にした。申し訳ありません師匠。このユーリに俺は、声を掛ける勇気はありません。あ、ユーリが《魄翼》を左右に振り回して更に前後の動きを加えて声は聞こえないけど尋問しているみたいに。

そんなユーリの横には、妖精サイズのツヴァイの姿があった。こっちは、腰に手を当て怒ってる様子。だが、良く見てみるとその姿がおぼろ気になっている様な?感じがした。

つーか、今……姿が揺らめいた気が……?

 

「ユーリ、ツヴァイを引っ込めろ。この世界は、調整が完全ではない故……ツヴァイは、存在を儚くしている」

 

「なら、完全に調整すれば良いじゃないですか!」

 

「それは……まだ、出来ない。この世界の方向性を決めてからではないと、完全には調整不可能だ」

 

「ツヴァイちゃんだけ、いつも本の中にお留守番なんですよ!?そんなの、可哀想じゃないですか!!」

 

「仕方がないんだ。ユーリと違って、ツヴァイは僕等の技術で魔改造されている訳ではないからな……その存在を、異世界で固定するのは難しい。彼女は、【魔法少女リリカルなのは】の世界の住人だ」

 

「すずかさんが居ます!!」

 

「彼女は、人間であって魔導書の管理システムではない。世界の影響は、微々たるモノだ。だからこそ、異世界召喚等によって人間は異世界に行っても存在を確立させる事が出来る。だが、ツヴァイは特定の世界でしか存在出来ない。だって、ツヴァイは特殊な存在だから……今までは、僕の介入がなくても問題が無かった。それは、この世界が安定していたから。でも今は、様々な物語の神様特典を持った転生者が入り込んで来て好き勝手するがあまり、その安定性に陰りが生まれている。それに、神々がこの世界から手を引こうとしているらしい。それ故、調整が間に合わず他世界の特殊存在を存命させる事が難しくなりつつある……」

 

ちょ!?それ、初耳ですよ!?てか、この世界から神々が手を引こうとしているんですか!?だから、ゲーム時代のシステムがドンドン失われているんですか!?

 

「双夜が居ます!!」

 

「確かに、僕がいる。世界の調整が出来る僕が……でも、この世界を存続させて良いモノか悩み処でもあるんだ。何故なら、キリト達原作の登場人物達は……インスタント・ソウルの可能性が高い。即ち、真新しい魂にオリジナルの記憶や経験を複製して、この世界に誕生させた可能性が……ね?でなければ、行方不明になった彼等を探してその世界を管理している神々が五月蝿いハズなんだ。だけど、【組織】に戻ってもその報告はなく……平穏無事に世界は回っているという話を聞いた。ならば、このまま世界が消滅するのを待てば良い。【外】に排出される恐れもないから、他の世界に迷惑を掛ける可能性もないからなぁ……」

 

「ちょ、師匠、それは……」

 

俺は慌てて、師匠に声を掛けた。だって、それは……つまり、キリト達を……強いては、この世界にいる全ての生けとし生きる者を見捨てると言うことだ。それは、流石に師匠でも許容出来るモノではない。断固として、反対する。

 

「わかっている。だからと言って、仲良くなった者達を見捨てる気はないよ。だが、世界の方向性は大事だよ?ここにいる者達だけで、それを決めるとなると中々骨が折れそうだ。まず、公平ではないという事と……世界の裏側を知る者が主人公チームだという事なんだが……」

 

「…………それ、何時ものキリトくんじゃないですか……」

 

「?」

 

「え?」

 

「えっと……何時も、キリトは世界の裏側を知っている……というか、知る事になるんですよ。ソードアートオンラインというゲームでもそうでしたけれど……キリトってば、ユイちゃんを皮切りにSAOの秘密を紐解いたりとか……ALOでは、裏で人体実験をしている馬鹿を暴いたりとか……」

 

「…………また、奇運な人材だな……まあ、良いだろう。ウォーティ。里希と初も居るんだよな?バックアップに使い魔を使うとして僕と守護者がいるから……うん。何とか成りそうだ。手伝ってくれるよな?」

 

「…………どうせ、断っても手伝う事を条件にするんでしょう?良いわ。それで、貴方達がちゃんと話し合えると言うのであれば、ここに来た理由を達成できるもの……」

 

「律儀だねぇ……OK、それで行こう!」

 

 

 

……………………。

 

 

 

という訳で、師匠はツヴァイを回収すると【鮮血の】さんと凍真と名乗った後輩を置いて、ウォーティと名乗った美少女と共に『森の家』から出て行った。

残されたのは、キリト達SAOメンバーとすずか……そして、俺と鉄とユーリと翼だけである。中々、濃いメンバーだ。

 

「世界の裏側とか……また、とんでもない場所に来ちゃったわよねぇ……」

 

「ホントですよ。ゲームが、リアルになったと聞かされたら、今度は世界を存続させるとか……もう、頭痛い話ですよね……」

 

「でもよ、俺達がインスタントなんとかってヤツかも知れないんだろう?その辺り、全然自覚とかないんだけど……」

 

「あんた達は、《インスタント・ソウル》が何か知っているんだよな?」

 

やっぱり、キリトでもその辺りの情報が欲しいらしい。

と言われても、本当の事を教えて良いモノか少し迷ってしまう。ここで、話さないという選択肢もあるが……それは、後の不信要素に成りかねないので、とても困る選択肢だった。

成る程、師匠はこういう選択を迫られていた訳ね?

 

「あー、どうしたモノか……」

 

「えっと……話せない様な事なんですか?」

 

「そういう訳じゃないけど……リスクとか、色々考えるとかなり面倒な話になるんで困ってるって言ったところだ。まあ、言葉通りなんで説明は簡単なんだけど……インスタントラーメンみたいなモノで、簡単に創れる人造の《魂》と言えばわかりやすいか?まあ、《インスタント・ソウル》ってのはそういうモノなんだが……」

 

そう、説明したけれど微妙にわかっていないらしく、みんなキョトンとした顔でこちらを見ていた。

ああ、うん。まあ、そういう反応になるよな。

 

「あー、相手は神様だから……何でもありっちゃあ、何でもありなんだよ。用意するのは、真新しい《魂》と……対象となる者の記憶や人格や経験値。それを、コピーして真新しい《魂》に張り付ければ……それぞれの人の、《魂》を複製した事になるらしいんだ。そうやって造られた《魂》を、適当に用意した肉体に移し変えれば『キリト』という人物を別の世界で量産出来ると考えて貰えば良い」

 

「キリトくんを、量産……」

 

何故か、アスナがポツリとそう言って顔を真っ青にさせた。さて、アスナは一体複製されたキリトで何を考えたのやら?ま、まあ、深くはツッコミたくも無いのでスルーして、俺はその場にいた一人一人の顔を順に見ていった。

 

「それってよぉ……つまり、俺は本物じゃねぇって事か?」

 

「まあ、有り体に言えばそうだが……だが、何を持って本物とか偽物とか言うつもりだ?ってか、俺やここにいる翼も《インスタント・ソウル》なんだぞ?」

 

「え!?そ、そうなんだ……」

 

「ま、胸張って言える様な事じゃねぇが……だから、何だ?って感じだな。ぶっちゃけ、それによって俺が俺以外になる訳でも無いからなぁ……あんま、変わらない。だから、気にしても仕様がない事柄だな。そんな事を考える暇があるなら、オリジナル以上の存在に成れば良いだけの話だろう?ハッキリ言って、劣化コピーと言われても本物以上になる方法が無い訳じゃないんだ。実際の俺は、引き籠りでニートでパソコンの前に座ってネトゲーをやってアニメ見てヲタクみたくダラダラしているだけの存在らしいし……」

 

それが、今ではバトルジャンキーな《神殺し》っていうんだから出世したモノである。

ぶっちゃけ、オリジナルの遥か右斜め上な存在だ。

 

「元の世界に戻っても、《オリジナル》と呼ばれる自分がいるだろう。しかし、コピーだからって卑屈になる必要は無いんだぜ?ぶっちゃけ、あっちの事はオリジナルに押し付けて置いて自分は自由気ままに遊んで暮らすぜ!でも良い訳だからな……要は、気の持ちようだ」

 

「はあ……」

 

余り、良い感じの返事では無かったがコレばっかりは自分で答えを出すしかない。なので、気負う必要はないんだという事を伝えて丸投げする事にした。

まあ、コレばっかりはねえ?

 

「後は、自分の中で整理して折り合いを付ける事しか出来ないよ。あー、ところで凍真はどっちだ?」

 

「《オリジナル》ッポイです」

 

「翼も最初は、《オリジナル》だったんだよな。今は、《インスタント・ソウル》で《オリジナル》探しをしているんだが……まだ、見付かりもしてないんだ」

 

「そう、なの?」

 

「ええ。でも、だから何?って感じなのよね……」

 

「師匠は、悪用される可能性があるって言ってたけれど……《オリジナル》の魂で出来る悪用ってなんだ?」

 

そんな話を師匠から聞いたけれど、俺は悪用方法が全く思い付かなかった。だけど、その悪用方法は意外な人から教えて貰う事となる。それは、【鮮血の】さんだった。

何故、科学に携わる者がファンタジーな話をするのやら。

 

「そりゃ、《オリジナル》の魂があるのなら翼という人物を大量生産して《蠱毒》に似た様な事が出来るからじゃね?共食いさせて、最後に残った者を《呪い》で堕として《堕ち神》を半永久的に覆製量産出来るようにしてしまえば最高の悪用方法になるだろうね……」

 

「翼は、堕ちたりなんかしません!」

 

「わかっているよ、それは……ね。しかし、《オリジナル》があちらの手にある故にコピーである翼はこの世界に置いておくしかない。その体を利用されない為にも、隠れ潜む事をオススメするよ……」

 

危険性を解いた上で、【鮮血の】さんはキリト達は問題ない事を保証してくれた。《インスタント・ソウル》が、危険なのは《オリジナル》を確保されている場合であって、キリト達みたいに異世界で生きている場合は、《インスタント・ソウル》に危険が迫ることはないとのこと。

 

 

 

 

 




はい。ヤバイのが集まってしまいました(笑)。
本当は、予定の無かったウォーティ。撥春【小悪魔】と初【巫女】と里希【半身】と守護者【破壊神】と双夜【魔王】は元から、このクエスト編の攻略メンバーです(笑)。元々、超高性能AI(原作人物達一万人)とのSAO物語を再現VRゲームとして想定していたお話です。
ただ、オレンジプレイヤーシステムがネックになっててある意味御都合主義世界でしか使えないネタだったので放置されていたネタでもあります。
それが、SAOモドキ世界なんてモノを搭載したこのお話でなら使えるので載っけてみました(笑)。(o’∀`)♪

そして、禍焔凍真くん合流です。
でも、話もして貰えない状況ですね(笑)。
その内、フェードアウトするんじゃね?
とりあえず、頑張れ凍真!負けるな凍真!
その内、放置プレイが気持ち良く感じ始めるから(笑)。

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれる方々に感謝を……。

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