絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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そして、またです(笑)。


ニニ八話#

双夜

 

 

SAOモドキ世界、第10階層・大富豪邸前。

鉄の報告を受けて、俺は再度この地にやって来た。

報告では、何度か鉄達がチャレンジしたらしいけど……誰も、この大富豪クエストをクリア出来た者はいない。その最たる理由が、ドロップするレアアイテムが原因らしい。

どうも、そのレアアイテムに目が眩み魔が差して『一つくらい……』とくすねるとNPCの好感度を下げてしまうという仕組みになっているとのこと。それを何度か繰り返している内に、大富豪邸に入れなく(クエストが受けられない)なってしまう。でも、他の仲間とパーティーを組んでなら入れたのでクエストに行ってみたら……たった一回の窃盗で、門前払いされる様になったそうな。

 

「つまり、レアアイテムをくすね続けたんだな?」

 

「だって、超良い武器だったんだもん!!」

 

「だもんって……キモい」

 

「ウグッ……でも、でも……ラグーラビット食べてみたかったんだよぉ!!」

 

「食べたじゃん……」

 

「お腹一杯っ!!」

 

「あー……はいはい」

 

涙ながらに語る馬鹿は放置して、俺はその大富豪クエストに対して考察を続ける。報告された情報は、以下の通り。

 

①NPCの好感度を上げなければならない。

 

②ドロップするアイテムは、レアであろうとNPCに渡さなければならない。多分、採集(採掘・伐採・収穫)したモノも含まれると考えられる。使用等もアウト(窃盗)?

 

③レアアイテムだからと、窃盗し続けるとクエストとごろか大富豪邸にすら入れて貰えなくなる。最終的には、門前払い。回数は不明。誰も覚えていなかった。

 

④仲間となら、クエストを受けられるがチャンスは一度きり。

 

そして、鉄とクライン&エギルは二度とこのクエストに参加出来ないという事だった。他の奴等は、まだ参加が可能らしい。

 

「で、僕にこのクエストをクリアして欲しい……と?」

 

「双夜さんなら、出来ますよね!?」

 

鉄の必死な形相で、俺の【真実の瞳】を当てにしている事がアリアリと伝わって来る。そりゃ、俺の【瞳】を使えばこういうクエストのクリアは簡単になるだろう。

しかし、何となく面倒に思えて仕方がないのだが……そう、辟易としているとエギルやクライン達が『まあまあ』と宥めに加わって来た。

 

「クエストは、一人一日三回まで。NPCの好感度が、どんな風に上がるのかは確認出来ていません」

 

「まあ、気分転換したかったから良いけどねぇ……」

 

そう言いつつ、俺は自分のストレージに入っていたアイテムの数々を翼や鉄に全部渡してしまう。その結果、『ふおぉおぉぉ!?(鉄)』とか『ふぁあぁぁ!?』という叫びが聞こえたが聞かなかった事にした。

 

「ちょ、す、スーパーレアアイテム(武器)が……」

 

「ちょ、ラグーラビットが三匹……」

 

「暇だったんだ……そして、気分転換……後は、わかるな?」

 

「「わかりたくない……」」

 

「で、神崎も参加するのか?」

 

「あー、や、俺は欲まみれなので遠慮しておきます……」

 

「そうか……じゃ、行ってくる……」

 

そう告げて、俺は大富豪邸内へと進んで行った。

その先で、その大富豪邸の主人にあった訳だけど、その際の会話は割愛させていただく。何故なら、その会話に付いては事前に鉄や翼から聞いていたからだ。

まあ、それでも聞きたいと言うのであれば仕方がない。

 

「私は、この地を治めているゴーヨクという者だ。私は、珍しいモノや美しいモノが大好きでなぁ……君には、そういったモノをより多く集めて来て欲しい。ああ、一つくらいならくすねても構わんが……素行が目に余る様であれば、容赦なく切り捨てるので御了承願いたい」

 

「…………了承した」

 

というか、あのアホゥ共はこれで良くくすね続けようと思ったモノだな。この、『一つくらいなら』って()()()()()()()からではなく()()()()()()()()()()()()()()(全体)から一回って意味だろう?

何故なら、その後に()()()()()()()って言ってる訳だから一回一回のクエストではなく、『大富豪が出すクエスト』事態から一回の意味だろう。

そういう意味だろうとして、俺は呆れつつも大富豪の言葉を受け取った。そして、クエストを受けた俺は大富豪邸の裏口から問題のクエストに出掛けて行く。つまり、大富豪邸の後ろに問題となっているレアアイテム取り放題ダンジョンがあった訳だ。

 

「成る程、だからアイツ等は大富豪邸に入りたがっていたのか……はぁ、本当に馬鹿だろう……」

 

大きな溜め息を吐きつつ、俺は大富豪クエストをクリアする為にモンスターを狩りつつダンジョンの奥深くへと歩みを進めた。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

時間制だったらしく、ある一定時間が経つとダンジョンからモンスターの姿や気配が消える。つまり、これで終了って事なのだろうと俺は理解した。その後、終わったとばかりに真っ直ぐ大富豪邸に戻った俺は執事に回収したアイテムを全部渡して次のクエストを受ける。後は、それを二回繰り返して最後に大富豪邸の主人に会って挨拶をしてから大富豪邸を出た。その際、俺が【真実の瞳】を通して視れたのは大富豪邸主人(+1)という良くわからない数字だけ。

はて……あの数字は、いったいなんだったのだろう。

何はともあれ、大富豪邸から外に出ると鉄達が待ってくれていた。

 

「どうだった!?」

 

「お前等の馬鹿さ加減に呆れた」

 

「ゴフッ……」

 

鉄が、俺の言葉に撃沈する。

微妙に非難されたけれど、本当にその程度の感想しか無いんだから仕方がない。まあ、何でそういう考えになるのかを説明する為に一度第22階層の『森の家』に戻る事とする。

兎に角、この世界に戻って来て大富豪邸へ直行だったので一息付きたいと言うのが俺の本音だった。

 

「兎に角だ、お前等は自己都合の良い様に大富豪の話を聞き過ぎだ。あれじゃぁ、騙して下さいと言っている様なモンじゃなか……」

 

「えっと……」

 

「大富豪は、『一つくらいなら、くすねても構わんが……素行が目に余る様であれば、容赦なく切り捨てるので御了承願いたい』と言っていたんだよ?それを、何で一回のクエストに一回くすねるなんて発想になるんだよ?」

 

「えっと……」

 

「あの一回は、大富豪から受けられるクエスト全体を差しているモノで一クエストにつき一回じゃねぇよ……」

 

「ウグッ……」

 

「あれは、欲深い者を省く為の罠だったんだ」

 

「つまり……『大富豪から受けられるクエスト』という括りの一回で、クエスト毎に……じゃ無かったと?」

 

「グハァ……ヤられたぁ…………ガクッ」orz

 

クラインが、その場に崩れ落ちるのを横目に俺はスタスタと進んで行く。それをエギルが、似た様な顔で寄り添うが俺的に言わせて貰うと奴等は馬鹿としか言い様がない。

あのクエストは、つまるところ冒険者達を大富豪的篩に掛けていたのだ。信用に値する冒険者を探す為に、あのクエストで得られたアイテム全てを渡してくる者を探していると考えて間違いない。それを都合の良い耳を持つ、欲深い馬鹿共はクエスト毎にレアアイテムを屈巣ね……ある程度で、『素行の悪い者』として省かれるという事だった。

そして、彼等が探す『真面目な冒険者』は『大富豪が出すクエストで得られたモノをくすねたりはしない』という条件で更なる特別クエストが受けられるのだろう。執事の話を聞いていたら、そういう風な事を言っていたので間違いないと思われる。ただ、確信はない。そういうニュアンスを、彼の執事は匂わせていただけだからだ。

 

「それよりも、クエストを三回クリアして大富豪の好感度がプラス1しか上がらなかったのが気になる」

 

「一日三回やって、好感度がプラス1!?」

 

「って事は、一日三回で好感度がプラス1だとするなら……クエスト毎にマイナス1減るとして……ひの、ふのーー三十s、4日?えっと、あれ?もっと、短かった様な?」

 

「減り方が違うんじゃないか?」

 

「まあ、それは追々やって行くとして……」

 

「とりあえず、今後だね。鉄達は、これからも階層攻略に明け暮れてね?僕は、大富豪の方をやるから。キリト達は……お任せで。大富豪のクエストをやるのも良し……階層攻略に明け暮れるのも良し、だ!」

 

色々考える事はあるけれど、今は今後の方針を決める事が先決だろう。《神殺し》の方針は、レベル二千万のドラゴンを探しだして倒す事だから変わりなく、キリト達の方針は……はて?

 

「俺達の方針は、この世界を楽しむだ!!」

 

「元の世界に、帰れないんじゃぁ……ねえ?」

 

「だな。この世界で、生活していくしかねぇよ……」

 

「フム。じゃあ、聞くけど……ステータス&スキルシステムって必要?それを確認する……」

 

左手の指をヒョイッと上から下へ振り、ステータス画面を展開してそれを右手の指で指し示す。

 

「これらとか……」

 

「ふぁ!?え、何で……?何で、双夜さんにはステータス画面が出るんですか!?」

 

「フム。君達は、もう出ないのか?」

 

「ああ。俺達では、ステータス画面を開く事はもう出来ないよ。だから、それが出来る双夜に驚いている……」

 

「……ちょっと、指先に魔力を纏わせただけなんだがなぁ……それを支えるシステムが消失した事で、それなりのアクションをしなければ展開出来なくなってるんだろうな……」

 

「指先に魔力を纏わせた?」

 

そう言って、鉄が指先に魔力を灯すとヒョイッと上から下へと指を振る。すると、展開出来ないと言っていた鉄の目の前にステータス画面が表示された。

 

「なんだ。出来るじゃn「ふおぉおぉぉ!?出来た!出来ましたよ!!」

 

鉄は、俺の言葉を遮る様に表示されたステータス画面を大興奮な様子で指し示し喜んでいる。ちょっと、ウザいくらいに興奮するので脇腹に手刀を一刺しして黙らせた。

 

「とりあえず、出来なくなりつつある事は基本的に魔力で補ってやると出来るハズだからやってみると良い。それでも出来ないのなら、異なる条件での発動だと思うので色々試したら良いんじゃないか?」

 

「へぇ……それも、面白そうだな。どうだ?エギル……ちょっと、調べてみないか?」

 

「ん?ああ……確かに、面白そうだ」

 

クラインとエギルは、ステータス画面に纏わる条件を調べる事を宣言し、キリト達は攻略と楽しむ事を選択した。

翼とリーファは、一度シルフ領に戻ると言い……神崎は、アルンにいる『すずか』に会いに行くと言う。

 

「浮気か?」

 

「浮気じゃねえよ!?普通に、無事かどうか確認する為に行くんだよ!?つーか、師匠は会わないつもりですか?」

 

「って言われても……」

 

あの『すずか』は、『すじゅかママ』ではないからなぁ……会ったところで、何がある訳でも無いし会う必要性を感じない。なので、大体の事は翼に任せっ切りになっていた。

 

「『すずか』に関しては、翼達にお任せで。何か問題があったら関わる予定ではあるよ?」

 

「魂が代わったら、中々にドライですね……師匠は……」

 

「ぶっちゃけ、『知らない人』だからなぁ……僕には、関わらない生活をして欲しいんだよね。理由は、簡潔でこれ以上僕に関わって不幸にならない様にする為だけど……それじゃあ、神崎は納得しないんだよね?」

 

「あー……まあ……」

 

「じゃあ、聞くけど……『すずか』が、この世界に来る事になった理由は?」

 

「……………………」

 

この世界に『すずか』が来た理由は、俺が『すじゅかママ』が秘密基地に迷い込んでいる事に気が付かず、その世界を消滅させた事による弊害だ。それが、彼女一番の不幸だろう。それさえなければ、『すずか』がここにいるなんて事はなかったハズなのだ。

 

「そう、僕にさえ関わらなければ……彼女は、不幸にならなかった。僕にさえ関わらなければ……ね?」

 

なので、俺は彼女に関わる気はない。

何時だって、俺という存在は誰かの不幸になるのだから……昔であれば、己の不幸を嘆いていたけれど今は誰にこの不幸を擦り付け様かと辺りを見回す。ぶっちゃけ、隣にネギと鍋を背負った鴨がいるけど……手間を掛けて助けた者を貶める程腐ってもないので堕ちた転生者を探す。

 

「チッ。近くには、居ない様だ……」

 

そうこうしている内に、俺達はキリト達の愛の巣である第二十二階層の森の家にたどり着いていた。という訳で、その家の裏手に回って設置されていた秘密基地へと降りていく。ここに、秘密基地が設置されている事は事前に翼から聞いていたので問題なし。広間に入った所で、ビヨンとフカフカソファーにダイブした。そこそこの弾力と共に、俺全体を優しく包み込んでくれるソファー。

中々、気持ちいいではないですか。

そして、俺はソファーにダイブしたまま目を閉じた。

 

「……………………」

 

スヤーZzz。

 

 

 

……………………。

 

 

 

ぶっちゃけ、気が付いた時には夜が明けていた。

どうやら、そこそこ疲れていたらしい。目を閉じただけで、朝まで眠りこけるとか笑えないジョークだ。

 

「……新しい朝が来た。希望の朝だ♪」

 

適当な歌を歌いながら、俺は広間から繋がる部屋へと入りシャワーを借りて汗を流す。肉体は、幼児のままでは動き辛いので12歳の姿でぬるま湯を頭から被っている。

まあ、冷水でも全然問題ないんだけど……前に水風呂で鴉の行水をしていたら、その後に入ったアリちゃがガチギレで怒り出してお湯に浸かる習慣が付いた。

もちろん、その水風呂をやらかした時期は冬では無い。

冬ではないけど、そのままにした俺もイケなかった。

でも、幼児心的に遠慮した結果であってアリちゃを驚かせたかった訳でもない。まあ、結果的に超驚かせるハメになったんだけど。断じて、悪戯とかでは無い事を宣誓。

それで、『心臓、止まるかと思ったわよ!!』と物凄い剣幕で怒るから『漬かったのか?』と聞いたら爪先だけという事だったので問題ないじゃないかと思った事を覚えている。

しかし、アリちゃに取って幼い子供が水風呂で自分がお湯に漬かるのはプライドが許せなかったらしく、散々お説教をされてしまった。それでも、幼い俺は抵抗して……最終的に『温い湯に浸からないなら一緒に入るわよ!?』と脅されてぬるま湯に浸かる様になった訳だ。

 

「最終手段が脅しとか……アリちゃェ……」

 

せめて、もう少し頑張って欲しかった。

バスタオルで、身体を拭いて着替えた俺は大富豪クエストを受ける為に第十階層へと降りていく。だが、大富豪クエストは午後からしか受けられない事がその後に判明した。

即座に秘密基地へと戻った俺は、広間で寛いでいた鉄達に文句を告げる。鉄達の反応は様々だ。

 

「ちょっと、そういう情報は教えといてよね!?」

 

「あー……サーセン……」

 

一日三回までで、午後からしか受けられないとか、どんな条件付けでこのクエストを追加したのか……色々と面倒事が重なっていて鬱陶しく感じる。しかも、一日三回受けて1ポイントしかNPCの好感度が上がらないとなると、マイナスに転じさせたら幾ら引かれるのか予想できない。

鉄達からの情報では、1ポイント引きではない可能性があるとのこと。しかも、一律でもないらしい。だが、それは鉄達が集めた情報から俺が予測した話であって確認した訳じゃない。なので、次のクエストではワザとマイナスを発生させる予定だ。もしくは、【真実の瞳】を乱用して確認しても良いかもしれない。

 

「なんで、そんなに適当な感じなんだ?」

 

「ふぁ!?絡まれてる?俺、絡まれてる!?」

 

「適当な感じでいうから……」

 

「師匠、鉄は不貞腐れているだけですよ。自分はもう、あのクエストを受けられないから……って」

 

「八つ当たりか?」

 

「拗ねてるだけッスよ。自分達は、失敗したから……」

 

「そして、神崎さんは予備扱い?」

 

「戦力が、低下するみたいだったから残ったのに……」

 

「何れにしろ、昼になったら大富豪邸に行くからな?」

 

八つ当たりを続ける鉄に、神崎が絡まれているが放置して次の任務(クエスト)に備える。備えるのだが、やはり頭を過るのはこのクエストの厄介さだった。

一日三回やって、たった1ポイントしか上がらない好感度。きっと、このクエストの厄介な部分はその部分に尽きるだろう。何故なら、その好感度が何処まで上がるのかさえわからないからだ。最終ポイント数が、『100』かも知れないし『1000』かも知れないという状況が俺を苛んでくれる。下手をすれば、『10000』だってあり得る。

 

「終着点は、設定されているのか?」

 

クエストへのチャレンジは、始まったばかりだが……そこはかとない不安が、この身をジワリジワリと焼き焦がしてくれる。全ての検証を、全部自分一人でやらなければならないという現状が俺の重圧になっているからだ。複数いれば、それぞれで分担出来るというのに……鉄達が先走ったから、俺に全ての問題がのし掛かって来ていた。

 

「終着点?」

 

「あのNPCの好感度は、一体幾らまで上げなければならないんだ?百か?千か?一万か?」

 

「えっと……上げられるだけ、上げれば良いんじゃないですかね?目標は、最大ポイントです!!」

 

「お前なぁ……そんな、先の見えなくなる事良く言えるな?お前等の話からして、好感度の上がり方も下がり方もわからないんだぞ?」

 

「フッ……何もかもわかっていたら、冒険とは言えないじゃないですかぁ。全てが未知だからこそ、その未知に向かって俺達は走り続けるんでしょう?」

 

「……………………チッ。正論だけにムカツク。というか、それは何のパクりなんだ?お前の台詞ではあるまい?」

 

『フッフッフッ……』と笑い、口を開く様子のない鉄。

もしかすると、『ミステリアスな俺、カッコイイ!』とか思っているのやも知れない。ぶっちゃけ、ニヤニヤしている顔が気持ち悪いのでカッコ良さは微塵もない。

 

「鉄、あんた……キモチワルイわよ?」

 

「ゴハッ……」

 

翼からの指摘に、鉄は血ヘドを吐く(揶揄)とグッタリソファーに身を預けた。俺はその様子を見て、『ザマァ』と嘲笑って溜飲を下げる。

 

「そう言えば、転生者達からの情報だけど……大富豪クエストは、クエスト中に得られるアイテムが肝らしいわよ?」

 

「好感度?報酬?」

 

「さあ?そこまでは、言われなかったわ……」

 

「肝心な事が、何もわからないんだが……」

 

「ワザとボカされているんでしょうね……」

 

「…………拷問、逝っとく?」

 

「「「止めてあげて!」」」

 

とは言え、転生者からの情報はとても貴重だ。

知っているのなら、全部吐かせて最短で事は済ませてしまいたい。何れ、また【リリなの】の世界に召喚されるのだから、それまでにこの問題は終わらせて起きたかった。

 

「はあ……そろそろか。じゃ、僕は行くよ?」

 

「はい。お疲れ様です!」

 

俺は、神崎に見送られて今度こそはと大富豪邸に向かう。

途中、町で購入した【魔物寄せの香(追加)】の効果を確認してストレージにしまう。面倒なので、大富豪クエストで行くダンジョンの最奥で使用して楽する予定だ。まあ、モンスターから得られるアイテムだけが報酬の対象ではないかもだけど、ヤるなら徹底的にがモットーなのでザックリ丼勘定でやってみる事にした訳だ。ぶっちゃけ、最短で終わらせれるなら終わらせてしまえば良い。だが、通常の出現率では間に合わないので……この追加された、アイテム【魔物寄せの香】を使い溢れた魔物を全滅させてしまえば良い訳だ。その結果、スタンピードが起きて日が暮れるまで魔物退治をし続ける事になるのだが……俺はまだ、それを知らない。やらかした後で、放置されていた日数を思い出して頭を抱える事になる。日数=魔物の数なので、大富豪クエストが如何に放置されていたかが伺えるだろう。

だが、この時の俺は最短で終わらせる事しか考えていなかった故に、そうなってから頭を抱えて後悔するのだった。

そんな未来が、待ち受けるとも知らない俺は嬉々とした様子で大富豪邸に入って行く。そして、クエストを受けて意気揚々とダンジョンの奥地へと進んで行くのだった。

 

 

 

本日の成果。

 

一日三回までの所、クエスト回数一回のみ。

退治した魔物数、50000近く。

回収出来たアイテム、約半数。

残りはその場に放置。

 

とても、モッタイナイ話だった。残りの半数も、持ち帰れていたのなら結果は変わっていたかもしれない。

大富豪NPCの好感度は、1ポイントも上がらなかった。

どうやら、モンスターが落とすアイテムがお好みって訳じゃないらしい。ただし、報酬の方は過去最大とのこと。

後で、翼に渡せば喜ばれると思われ。未だ、スイルベーンの復興は続いているらしいから。なので、この資金……ざっと、三百万ユルドは翼に託す事にした。

 

「精神的に疲れた……」

 

自業自得である事や、なんであんなモノを使ってしまったのかという後悔の念でジリジリと削られた精神が疲労している。どうも、最短に拘り過ぎてしまっていたらしい。

 

「うん。遠回りが、一番の近道って言うし……急がず、焦らずで頑張ろう!!」

 

 

 

 

 




前途多難。はてさて、始まりましたよ?クエスト編!!
作者が、煮詰めに煮詰めまくったお話です。モンスタードロップじゃあ、大富豪の好感度は上がらないという結果と共に割りと難易度高めで送らせて貰います。今のところ、大富豪の好感度を上げるお話である事は理解して貰えたと思いますが……その条件がまた面倒臭いという鬼話。
これが、ゲーム(SAO)だった頃ならほぼ間違いなく難易度:極のクリア出来ないクエストになっていたでしょう。リアルになったからこそ、出来るクエストだったりします。
ゲームだと、盗みを働いた所でオレンジプレイヤー。
下手をすると、監獄エリアに転送されて……何も出来なくなったんじゃね?なので、SAOモドキ世界でないと出来ない難易度高目のクエストとなっています。目の前にドロップした、スーパーレアアイテム。正に、馬の目の前に吊るされた人参みたいな扱いですよね(笑)。手にしようモノなら犯罪者。
その上、大富豪の好感度が駄々下がり。
ガチで、やる気がなくなるわ……。
さて、焦点となるのは大富豪の好感度。それを上げる為に、対応するクエストを攻略して、その先にある報酬をGETしよう!!という旨のモノ。今のところ、クリアした人物はいない。

次回、双夜、苦戦する。

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