絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二二二話

双夜

 

 

「ははは。人間の欲望は、果てしないなぁ……」

 

ある意味、それは仕方がない事ではあるが……転生の際に、欲望を肥大化させる処置を受けたかの様だった。

実際には、そんな処置を受けた様子はなく……その人物の純粋な欲望だった訳だけど。受肉しているとは言え、己の()()は薄く人間の10分の1すらない。

それに、己の欲望の大半は()()に向けられたモノだ。本来、俺の()にいるハズの()()に……今尚、昔に居なくなってしまった彼の者に俺の欲望は全て向けられていた。

 

「僕の生まれた世界でも、過去にそういうのがあったと伝わっているけど……いやはや、人間ってのは欲深い……」

 

目の前に浮かぶ、ウィンドに表示されているのは世界各国で見付かった転生者の犯した犯罪の履歴。それは、己が生まれた世界の歴史を巻き戻して見ている様だった。

これが、一般に知られたならば大騒ぎになるのだが……まだ、魔法が実在する事に誰も気が付いていない様子。きっと、転生者達が己の有利さをひた隠しにしている為だと思われる。魔法バレしたら、困るのは転生者のみであるが故。

 

「これ、世界のシステム的に魔法が使えない様にしてしまった方が後腐れ無いんじゃ無いかなぁ?一人一人、対応するよりそっちの方が楽な気がして来たよ……」

 

なんとなく、それが最も簡単で安全な方法に思えて来た。

それに加え、この世界もあの世界と同様にゴミ捨て場な感じがする。何て言うか……探せば探す程、転生者がゴロゴロと見付かる辺りが似ている気がするのだ。

 

「もう、既に1000人近いですからね……」

 

日本の海鳴市を中心に、数多くの転生者を保護して来た訳だけど……ここまで増えると、いっそうの事全部を無かった事にしてしまいたくなる。

 

「まだ、886人だよ!?」

 

その大半が、9歳から14歳の女の子。

まだまだ、隠れ潜む転生者は多そうだけど。

それにしても、良くもまあこれ程の転生者を転生させたモノだ。ある意味、尊敬してしまう。

とは言え、全員が同一の【神】によって転生させられた訳じゃないみたいだけど。世界の管理にも、複数の神々が関わっている気がしていた。それによって、俺にわかる事は……それだけの神々が、関わっている世界となると、ここへと転生させられた転生者達は【不適合者】と判断された者達なのだろう。一部の者達を見るに、一度は別の世界へ転生させられたみたいだけど……その世界を管理している【神】の趣味に合わなかった転生者なのかも知れない。

そして、その【神】が他の【神】に紹介するもその【神】にも合わなかった可能性がある。結果、散々たらい回しにされたあげく『不適合者認定』されて統合世界という名の牢獄に入れられたんだと思われた。

即ち、この【INNOCENT】の世界も【SAOモドキ世界】と同じ不適合転生者の吹き溜まりという訳だ。

踏み台にしても、オリ主にしても【神】の趣味に合うという事は、その神様(神々)に気に入られるという事と同義。

当然、その者専用に創られた世界で好き勝手に生きていられる訳だけど……気に入られなかった者の末路は最悪だ。

 

「Master……日本だけで、それだけいるんですから諦めましょうよ?多分、一万人以上はいると思われますし……」

 

「ちょ!?止めて、そんな憶測聞きたくないから!」

 

傍らで、保護した600人程の更生を手伝っていた神崎が頭を抱える様に耳を塞いでしゃがみ込んでしまった。

既に、こいつ一人で更生を手伝うのは不可能な状況になってしまっているので、他にも数人の使い魔を貸し出しているが……それの許容限界も間近である。そんな神崎の様子に、彼の指導を受けていた転生者達が苦笑いして視線を逸らす。色々と、心当たりがあるが故に神崎の苦労が身に染みてわかるのだと思われる。

内面さえ考慮しなければ、使い魔は百万居るけれど……流石にバトルジャンキーで脳筋な奴等を宛がう訳にはいかないので大変だった。まあ、バトルジャンキーなんて百万の使い魔中十五万程しかいないけど。

そして、頭の()()()()使い魔は半数に及ぶ。

まともな使い魔でも、カウンセリングが出来て人を導ける人材はそれほど多くはない。そっちを専攻している者が、圧倒的に不足している。俺自身、人間の精神面の知識は乏しいし……そもそも、人間不信のキライがある俺ではそこまで他人に接せれはしない。神崎や、他数名の奴が救われたのは本当に偶然の産物だった。もしくは、俺の神格である()()が勝手に仕事した結果だ。

 

「もう一度、因果経由で世界のシステムにアクセスしてくるわ……それで、この世界の意思の是非を問おう」

 

「そんな方法で、是非を問うんですか!?」

 

「もし、嫌なら弾かれるか……接触があるだろうからな。OKだったら、何もされない。それが、世界の意思だ」

 

ぶっちゃけ、()()()()()()()って言うのは言葉や直通の意思とかではない。

必要で()()()()()強制召喚。

必要で()()()()()()強制排除の事を指す。

つまるところ、俺は強制召喚でこの世界へとやって来た訳だ。そりゃ、こっち方面の依頼を受けたのは間違いない。

だがしかし、特定の【物語の世界】への干渉依頼までは受けていないのだ。俺が、【魔法少女リリカルなのは】の世界に召喚されたのはイレギュラーな話で……故に海を漂っていた所を恭にぃに釣り上げられたって訳だった。

 

「段々、面倒になって来た……」

 

「正に、転生者ェ……って、感じですもんねぇ……」

 

「もう、何もかも放棄して引き籠りたい気分だよなぁ……」

 

「どこに引き籠る気ですか!?」

 

「もちろん、土の中に仮死状態で?」

 

「どこの土竜だよ!?つーか、仮死状態って……」

 

ーーとその時、監視下にあった転生者?と思われる人物が、漸く尻尾を出したという報告が上がって来る。見れば、報告ウィンドに持ち主のいない家に忍び込んでいく馬鹿者の後ろ姿が写っていた。

 

「あ……空き巣に走りやがった!?」

 

「空き巣!?転生者か!?」

 

『『『『……ハッ!《アバカム》の魔法か!?』』』』

 

「ドラクエ系、多いよな(特典持ち)……そして、歴代の魔法には地味でマイナーなのが多すぎる……」

 

「つーか、アレ……ある意味、犯罪魔法を製作してんじゃね?そこそこ、使える魔法があるぞ!?」

 

「生活魔法ったって、基本が犯罪系だもんなぁ……」

 

「そもそも、『鍵のかかった扉を開ける』って生活魔法じゃねぇし……」

 

「後、犯罪に使える魔法ってなんだ?」

 

「……《モシャス》じゃね?」

 

「他人に成り済まし、殺人を行えば完全犯罪じゃん!?」

 

「おぉ……現代技術を逆手に取る訳か!!」

 

「それなら、幻影や幻覚でもイケるんじゃあ……」

 

『『おぉおぉぉぉ!!貴方が、神か……』』

 

「それ、女性に変身して裸になる奴いるんじゃね?」

 

『『『『ああ。それは、あるあるだよな!!』』』』

 

「でも、俺等も『女』だからなぁ……」

 

「それでも、興奮はする!!」

 

『『『『え!?』』』』

 

「え!?」

 

「「うるさいよ!?」」

 

コイツ等の頭は、基本的に犯罪者思考なんだろうか!?

というか、最後の奴は既に百合に走っていやがったのか。

神崎には、そいつの再教育を命じておく。

 

「兎に角、僕は空き巣をやらかした馬鹿を捕まえて来るから。連れて来たら、対応よろしくね?」

 

『『『『「はーい!」』』』』

 

大変素直でよろしいが、全員で唱和されると何かを企んでいる様に見えるので止めた方が良いよ?とは思ったけれど、口にする事なく俺は馬鹿をやらかした奴の元へ跳んだ。

そして、封時結界を展開して空き巣に入った家から馬鹿が出て来るのを待った。

しばらくすると、『()()()家だったなぁ……』とブツクサ呟く馬鹿が出て来る。多分、その『()()()家』だった理由は俺が展開した『封時結界』が主な原因だと思われるが今はまだ話し掛けないでおく。

何はともあれ、監視を続けつつ《ディバインバスター》をスタンバイ。Bビットも、数機用意してコッソリ後を追尾する。気が付くなら、その場でノックアウトして拉致るんだけど……まるで、気が付いた様子もなく馬鹿は次々と空き巣を行い、舌打ちをしながら出て来たかと思えば次の獲物へと移動していく。全く、なんて奴だ!!

それと、残念ながら俺が《封時結界》を展開しているので何度空き巣に入ったとしても利益を得られないって訳だ。

 

「……………………」

 

それにしても、こいつ等転生者は何故犯罪なんぞに走っているのだろうか?ちょっと、絶望したにしてもその行動がおかし過ぎる。『自暴自棄』と言えば、わからなくもないのだが……人生のやり直しをしているんだぞ?

まだ、やり直しが効く年齢なんだぞ?

何をどう考えたら、そんな行動に繋がるというのだろう?

 

「チッ。ここもかよ……今日は、付いてないなぁ……」

 

「男で無かった事が、その行動の理由か?」

 

「ーーーっ!?《ギラ》!!」

 

「《ヒート》!」

 

転生者は、咄嗟にこちらに向けて魔法を放って来た。

なので、似た様な魔法で応戦。転生者が、放った魔法は俺が使った魔法とぶつかり合い周囲に熱波を撒き散らしながら消失した。

 

「あちっ!あちち……」

 

「君の絶望は、性別が違った事なのかい?」

 

「ああ!?何の話だよ!?つーか、お前誰だ!?」

 

「君が、空き巣をやらかしていたんで《封時結界》で邪魔させて貰った。僕は、《神殺し》の如月双夜だよ」

 

「《神殺し》……だ、と!?クソッ!《イオナズン》!」

 

自己紹介をしたとたん、再度攻撃魔法を放ってくる転生者。もしかしなくても、また神々にろくでもない情報を吹き込まれているらしい。もう、こうなるとどちらかが倒れるまで転生者は止まらないのでこちらも容赦なくSLBでブチのめす為の準備に取り掛かる。

 

「そうか、そうか、そうか……君は、僕と魔法戦を望むんだね?じゃあ、バスター・ビット展開。ディバインバスター、夢の乱撃開始!!」

 

爆発の魔法を、瞬動術で回避してBビットを展開。

そして、いつも通りの質量戦を展開して見せた。

 

「うぇ!?ちょ、んなチートありかよ!?」

 

「フハハハ!誰に喧嘩を売ったのか、身体に教えてあげる♪ タップリ、理解してください。ああ、もちろんトドメはスターライトブレイカーですよ?」

 

「嘘だろう!?クソッ、《メラゾーマ》!《マヒャド》……クソッ、全然追い付けねぇ!?」

 

転生者が放つ魔法を、圧倒的魔法量で粉砕しつつ相手を狙い打つのも忘れない。結果、段々転生者の手数が減って今は逃げ回るのに忙しそうである。

 

「くらえっ!《マホトーン》!」

 

振り返り、転生者はとある魔法を放つ。

そして、転生者はしてやったりの笑みを浮かべるが……俺には、今一その魔法の有用性がわからなかった。

 

「?」

 

「はあぁぁ!?」

 

光の輪の様なモノが、周囲に集まって来て俺に絡み付こうとしたのだが……しかし、キュパッ!という音と共に消失した。それを見た転生者が、大きく口を開けて疑問の声を上げる。俺も意味がわからなかったけれど、目の前の敵をブチのめす事の方が優先なのでそのままリンチを続行した。

 

「ディバイン……」

 

「クソッタレェ!《マホカンタ》!!」

 

「バスター!!!」

 

呪文?と共に、青銀の極光が転生者を襲う。

しかし、転生者が展開した魔法障壁に阻まれて……ほんの少しの拮抗後に、カートリッジを一本ロードしたらパキュッ!と割れて転生者は青銀の極光に呑まれて行った。俺のディバインバスターが通過した後に残るは、爆発で発生した灰煙とクレーターの中心で気絶している転生者のみ。

 

「……………………バインド」

 

既に、気絶しているが撒き散らした魔力がモッタイナイのでバインドで片足を拘束して俺は一旦離れて行く。

その上で、スタンバイしていたSLBに気合いを入れて集束を開始。膨れ上がっていく、()()を見ながら頭を過るのは『鬼畜』の言葉。でも、モッタイナイんだから仕方がないよね……と、反転術式が組み込まれたバインドで拘束された馬鹿を見て俺は喜色に顔を歪ませた。

 

「行っくよー?スターライト……」

 

「ハレ?俺は、どうし…………嘘だろう!?」

 

気絶していた転生者が、何かの切っ掛けでふと目を覚ます。一瞬、虚ろな視線で周囲を見回して……空を見上げて絶望する。その視線の先には、巨大な魔力溜まり。

呆然と呟かれるのは、その光景を疑う言葉。

 

「ブレイカー!!!!」

 

「鬼かあああぁぁぁ!!!!!」

 

再現された、()()()の極光に転生者の響きと姿が呑まれ、爆音で消されて行く転生者を見送った。最後、転生者が何か叫んでいたけど……俺の知った事ではないので無視する。ピンクの魔力溜まりが、解き放たれ転生者に迫って行く際にその中間辺りで爆発が起きたけれど、何がしたかったのか今一わからなかった。

もしかして、反撃したつもりなのだろうか?

 

「……………………」

 

結局、転生者はSLBに呑まれ魔力ダメージでノックアウトされた。それを少し見下ろして、神様特典をブレイクすると俺は馬鹿の足を掴み転移魔法で神崎の元へ跳んだ。

 

 

 

……………………。

 

 

 

そして、戻ってきた俺は転生者を神崎に丸投げする。

 

「はい。今度の転生者」

 

「うわぁい。面倒事が、また転がり込んで来たぜ!」

 

「ところで……神崎なら、わかるかな?」

 

「何がッスか?」

 

その際に、神崎に空き巣転生者の話を聞く。

主は、彼女が使った魔法についてだけど。

幾つか、わからない事があったからだ。

それでわかった事は……。

 

「多分、ドラクエ系の魔法でしょう」

 

「ドラクエ?」

 

「正式名称は、ドラゴンクエスト。RPGと呼ばれるゲームですね。そこで、使われていたのがその魔法です」

 

そう、神崎は切り出した。

その上で、俺の話を聞いて疑問に思った事を聞いていく。

 

「多分、弾かれたのはFateの魔力抵抗じゃないかなぁ?」

 

「魔力抵抗?」

 

「ええ、それで弾かれたと見た方が良いかと……」

 

『多分』と、最初に憶測の言葉がついたけれど……この世界にも、神崎の姿の元ネタにまつわる転生者がいるのだと神崎は予測する。その為に、俺の持つ魔法抵抗が空き巣転生者の魔法を弾いたのだと言った。

それに関しては、俺の方が詳しい。

【概念の混在】、それがこの世界でも起こっているのだと思われる。転生者に使用されている、それぞれの特典に内包されているそもそもの概念のみが抽出されて、この世界の根底に混ざってしまうという現象だ。その結果、思わぬ現象が起こる事があるのだが……今回のそれも、そういう類いのモノなのだろう。

そう言って、哀れそうに気絶している転生者に視線を向ける神崎。それは、同情というよりどうしてこんな化け物に喧嘩を売ったのだろうかという疑問だった。

 

「その次のは、『マホカンタ』ですよね?本来なら、魔法を跳ね返す魔法なんですが……永続するディバインバスターを跳ね返す事が出来なかったのでは?」

 

魔法の特性をちゃんと理解していない……もしくは、魔法戦のないこの世界で、その効果を確かめ切れて無かった結果が今回の敗北なのだろうと予測出来たのでこの話は終了した。終了にしたかったのに、何故かその後の説明まで続ける神崎。

 

「ゲームの概念が生きているとすれば……師匠との距離が足りなかったのでは?SLBの射程、その中間辺りで爆発が起きたんですよね?つー事は、ドラクエの魔法って短距離でしか使えないんだと思います」

 

「もう良いって……それを考察する必要は無いだろう?」

 

「ありますよ?今後も、ドラクエの魔法が特典として使われない……なんて、言えますか?言えないですよね?なら、考察は必要ですよ?」

 

「…………神崎が、真面目くんに……出来れば、恋愛にも真面目になってくれないかなぁ?」

 

「それはそれ。これはこれです」

 

「じゃあ、君の見解を聞こうか?」

 

続きを促し、俺は神崎が語るドラクエの魔法についての考察をその後も聞き続けた。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

それでわかった事は、ドラクエの魔法は短距離での使用と特殊な状況での使用以外では使えない魔法だという事がわかる。

 

「つまり、そのトベルーラを使って近付かないと効果が無いんだな?この世界……というか、魔法少女の世界ではなにょはママが使う様な遠々距離の魔法には届かないと?」

 

「師匠の話を聞く限り、そうなんでしょうね。その距離を算出したい所ですが……【リリなの】では、あまり使えない魔法なのでは無いだろうかと……」

 

「フムフム。なら、放たれる魔法を片っ端からディバインバスターで相殺してやる戦法ではどうよ?」

 

「あー…………考察、必要なかったですかね?」

 

「いやいや、中々どうして面白かったよ?でも、質量戦になる僕的には余り必要のない事だったよね?」

 

「質量……まあ、物理っちゃぁ物理ですが……サーセン……」

 

「構わないよ。中々に面白い話だったからね……魔法特性ねぇ。圧倒的な質量にモノを言わせる戦いには、必要のない事だったけれど……新鮮な気分には成れたから良いよ」

 

そう告げて、今度こそこの話を終りにした。

 

「じゃあ、後よろしくね?ああ、転生者の魔力は封印したから魔法は使えないよ?特典も、破壊したし……」

 

「なっ!?ふざけんな!俺の魔法を返せ!!」

 

いつの間にか、目覚めていた転生者が怒りの叫びを上げるが俺の知った事ではないのでサッサとその場から離れる。

その足で、秘密基地へと跳んで因果の門を開いた。

 

「じゃ、この世界の根底から魔法というシステムを排除しちゃいましょうかねぇ?」

 

魔法というシステムそのものだけを排除するなら、それ程手間を掛けずに調整も必要ないので簡単に終らせる事が出来る。まあ、特殊能力系が残ってしまうが……そちらは、一部を除いて同じ処理をしてしまえば問題はないだろう。

 

「流石に、超能力や霊能力は残すとしても都合の良い魔法系は禁止した方が良いよね?となると……確か、『特例』にそんな世界のシステム構築があったハズ……」

 

そう記憶していたので、俺はその『特例の世界』のシステム構築図を参考にこの世界のシステムをチョコチョコ弄る。

それで出来る事は、追加されたシステムの排除と必要なシステムの再構築に関わる情報の閲覧程度だ。やり過ぎると、ブレイブデュエルにも影響を及ぼしかねないので微調整が必要となってしまった。だけど、魔法に関する問題は排除出来るので今後の転生者捜索は、もっと簡単なモノとなるだろう。

何故なら、魔法系転生者はこのシステム改革で捜さなくても良くなるからだ。今後、捜さなければならないのは特殊能力を持つ転生者のみとなる。

そりゃ、問題を起こす馬鹿は絶えなくは無いだろうけど……今後、魔法と思われる被害は無くなるのだから多少の混乱は省く事が出来るハズだ。それに、混乱するのは転生者のみなので気にする必要もない。

 

「最初から、こうしとけば良かった……」

 

そうすれば、毒舌ストーカー転生者や空き巣転生者とのやり取りは省けたのだ。サッサと決断しておけば良かったと、後悔するがやらかしちゃったモノは仕方がないだろう。

今後は、世界への影響が少なければINNOCENT系の世界は魔法使用不可の調整を加えるべきだろう。必要とあれば、神様特典のみを封じるシステム構築も考えねばならないが……その辺りの苦労は、《神殺し》全員が背負うモノなので俺は提案のみを提出するだけに留める。

システム構築の為に、呼び出される可能性はあるけれど言い出しっぺなので出頭はするつもりだ。とは言え、その提案が通るかどうかは俺の知る所ではないので気にしない。

その辺りは、それを決める方々に丸投げして俺は目の前の問題を解決する為に行動するだけである。

 

「ーーーという訳で、この世界から魔法というシステムを排除してみました!!さあ、魔法が使える奴はいるかな?」

 

『『『ちょ!?あんた、なんばしよっとか!?』』』

 

「ムフフ……だって、必要無いだろう?この世界で、魔法なんて使えても評価なんて貰えるモノでもないし……それに、その魔法の使い方にしても非難される事はあっても誉められる事は無いだろうからな……それとも、反論はあるかい?」

 

『『『くっ……ねぇよ!!』』』

 

『『『はぁ!?あるに決まってるだろう!?』』』

 

一部の者を除き、大半の転生者からクレームが出る。

その一部の者達というのが、未だに生前の生死が不明の者達だった。取りあえず、前者の納得組は生前の生存が判明している奴等で、己がインスタント・ソウルである事を知っている転生者達。後者は、生死が不明なのを良い事に不満をブチ撒けている馬鹿共だ。まあ、十中八九インスタント・ソウルなんだけどーー【真実の瞳】で確認済みーー、確証と証拠を得てから説得する予定の者達だった。

そして、ホンの一握りの者達が……本来ならば、輪廻の円環を経て自然転生する魂だった者達。その未来を捻曲げられて、物語の世界へと飛ばされたオリジナル魂を持つ者達だ。まあ、オリ魂を持つ者達は特典の差し替えをして神崎の教えを素直に受けている組である。

文句を言うのは、未確定組のアホゥ共だけだった。

 

「はーい!それじゃあ、未確定組の一部の生死が確認取れたので発表したいと思いまーす!!」

 

途端に、未確定組の馬鹿共が胸の前で手を組み天に祈りを捧げる格好を始める。これは、『自分がインスタント・ソウルではありません様に……』という祈りであって神への祈りではない。なので、無視でOK。静かになった馬鹿共を横目に、俺は嬉々としてインスタント・ソウルである事が確定した者を読み上げていく。それで起きるのは、インスタント・ソウルであった事が判明した者と未だフリーである者との阿鼻叫喚地獄である。名前を呼ばれた者は、絶望により嘆きの声を上げて……名前を呼ばれなかった者は、喜びのあまり雄叫びを上げる状況だ。

そして、またもや絶望の淵へと叩き込まれた馬鹿共と未だにフリーのままで文句を垂れる馬鹿共に別れていく。

インスタント・ソウルだった者は、己の資料を貰ってそれを読みふけり、再度嘆きの声を上げる。その資料には、生前の自分がどの様に生きたのかも書かれているので、その絶望っプリは様々であった。中には、下克上を果たした引き籠りもいるので、その反応は本当に様々である。

 

「うおおぉぉぉ!?引き籠りの俺が、政治家ぁ!?」

 

「引き籠りが、政治家ぁ!?マジか!?下克上じゃん!」

 

「なんだ!?マジで、何があった!?」

 

「ちょ、ちょ、ちょ!?政治家って、引き籠りでも成れるモノなのか!?」

 

生前に成功を治めた者に群がる転生者達。流石に、引き籠りからの政治家転職は驚きの話だったらしい。

まあ、それはこちらも驚きの結果だった訳だけど。

また、ある者は……。

 

「あ、俺……自営業のオーナーになってた(笑)」

 

「こっちは、普通だな。でも、引き籠り卒業オメー!」

 

「祝い!脱引き籠り!!脱ニート!オメー!!」

 

「ありがとう♪」

 

と、祝福してくれる仲間に感謝を述べるのは脱ニート・引き籠り達。引きニートもこの組に入るので、脱出成功者には祝福が送られていた。

そして、またある者は……。

 

「グハァ……引き籠りのまま、人生終た……」

 

「乙ー(笑)」

 

「引き終身乙ー(笑)」

 

正に、阿鼻叫喚地獄である。

何故なら、成功者は祝福され……引き籠り・ニートのまま、人生が終わった者は笑い者にされてしまう。なので、黙っている者もいるけど……それを調べた使い魔が、ポロっと溢す(わざと)ので隠蔽は出来ていなかった。

 

「この天国と地獄はヤバイッスね……」

 

「でも、事実だからなぁ……それに、この合間だけはクレーマーが大人しいから楽で良い」

 

「そりゃ、明日は我が身ですからね……黙って、祈りを捧げていたいっショ(笑)。もしかしたら、引きニートのままで……もしかしたら、成功を納めているかも知れない。っていうのは、自分の性格や性質からはわからないですからね」

 

「実際に死んでた者は、神様が関わっていなかった事だけを嘆き……死んだ事に関しては言及しない……と」

 

「言及した所で、意味がない事はわかっているからだろうな。それに、誰かを助けて死んだ奴もいるから、自分の行動だと納得出来る部分もあるんだろう……」

 

「そこら辺は、本当に阿鼻叫喚ですね……じゃ、再教育に行って参ります!」

 

「うん。よろしく……さて、僕の方も新たな馬鹿を捜しに行きますかねぇ……」

 

言って、神崎は馬鹿共の再教育を。

そして、俺は馬鹿の捜索に向かうのだった。

 

 

 

 

 




漸く、物語の終わりが見えて来た感じですかね?
最初は、どんな風に纏め様かと悩みましたが……何とかなりそな気配です。次々と問題が浮上する話ではありますが、取り敢えずの落とし所に満足はないと思われます。出来るなら、転生者に取っての最悪を望まれている方々が多いと思いますが……そこら辺は、双夜のさじ加減にお任せです。
まあ、後になってもっと良いお仕置き方法を思い付きorzとなる事が多い双夜に取って、先に思い付くのはソフトなお仕置きなのです。たまに、残酷なのもありますが気にしない方向で。

そして、犯罪魔法一覧。

アバカム……鍵を開ける。
トード……蛙に変身。
ミニマム……小人に変身。
ゴーレム操作……人形を動かす。
サイコキネシス……物体を操作する。
千里眼……遠くを見透す。もしくは、透視する。
アポーツ……手元に、指定した物体を引き寄せる。
スリープ……眠らせる。
ポイズン……毒にする。(毒の種類を選べたら……)
パラライズ……麻痺にする。
ヒール……回復魔法。(ホイミくらいの)
ウォーター……水を出す。(夏場とか……窒息とか……)
ウィンドウ……風を起こす。(下から吹き上げると……ねぇ)
ステルス……透明化。
ライトニング……静電気(強)を起こす。
ファイア……火を起こす。
キアリー……毒(色々)を消す。
付与魔術……物体に魔術の効果を付ける。
バインド……相手を拘束する。
アイテムボックス……荷物を入れる無限倉庫。
テレポート……瞬間移動する。デジョンでも可。
他……etc……。

ファイアを何に!?と思った方々へ……放火。
キアリーは、薬物の効果をだね……消す。
ライトニングは、悪戯に使われてた。ビックリさせる。
ヒール(ホイミ)は、詐欺に使えるのだよ(笑)。
そして、ありました淫魔術。《ラメェエェェ!!》(呪文)とかwww これを受けた対象は、絶頂に至るらしい。
正確には、《ラメエ》というんだけど……どう見ても、『らめぇえぇぇぇ!!』にしか見えなかった件(笑)。

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