絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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ニ一九話

神崎

 

 

「これで、大方済んだと思うんだけど……」

 

そう言って、キョロキョロしているのは我等が師匠な訳だけど……俺達は未だに、異世界に飛ばされる事なくINNOCENTの世界に居座っていた。

 

「つーか、原因廃除したら次の世界に召喚されるんですよね?なんで、弾き出されないんでしょう?」

 

「やり残しが……あるのかな?バスタービットのデータがそのままだから?削除しなくても良いってグランツ博士は言ってくれたんだけど。そりゃ、《真・Sonic Move》との併用は禁止されたけど……」

 

普通に、RH-05を最大まで鍛え上げたらサブビットが四機追加され、バスタービットを含めると十二機となった。

それに師匠は、《真・Sonic Move》を付与してAll Rangeのファンネルよろしく敵兵力を蹂躙しまくったのである。

ええ、それはもうガーディアンだろうがジェイル・スカリエッティ一味だろうが関係ない殲滅戦だったとも。

そりゃ、ゲーム開始直後はバスタービットにエネルギーを注入しなきゃならないらしいから速攻での殲滅は出来ない。精々、プロテクション(R)を展開して浮遊させて……たまに、突撃させて相手をビビらせたり(笑)、プロテクション展開したまま体当たりさせたりしていたけれど。

バスタービット・チャージの間は、時間稼ぎもしくは突撃して格闘戦で蹂躙。

初期の頃は、バスタービットと《真・Sonic Move》で初見者を蹂躙・殲滅して……バスタービット蹂躙を警戒して、様子見する敵を格闘戦で蹂躙・殲滅をしていた師匠。

その戦法が、周知される頃には師匠の戦闘スタイルが固定されていると思われて……それしかないと踏んだヴィータが、その固定概念の餌食にあっていた。

突撃してきた師匠に冷静に対処しようとして、格闘戦(鈍器戦)を仕掛けたらバスタービットのAll Range攻撃で蹂躙されて……ゼロ距離からのディバインバスターで沈められてしまう。ここでまさかの、師匠個人による砲撃魔法使用。

ヴィータも、まさか手の平からディバインバスターが撃てるとは思っていなかったらしく……完全に意表を突かれて撃沈した。それ以外にも、バスタービットから圧縮された刃ーー紅色のレイピアの様な刃が突き出たり(劇場版A'sラストバトルで使用された《Acceleration-Charge-Strike》……通称エクセリオンバスターA.C.Sみたいな)、突撃型の攻撃方法が取られるーーでプロテクションを抜いてゼロ距離砲撃とか……無茶苦茶な蹂躙劇をやらかしまくった訳だ。

結果、師匠は原作ヒロイン達すら敬遠する存在と化してしまった。GMモード?ははは(笑)、蹂躙されるまでの時間が長くなるだけの話だよ?まさかの、サンドバック状態だったよ!?そして、まさか『ベルカの騎士』ーー同一存在とは言え、名乗っているだけの中二病ーーが手も足も魔法も出せずに蹂躙されるという悪夢が展開されるなんて誰が予想したか!?出禁にはならなかったけれど(正々堂々と戦っているから)、師匠と対戦する強者は今の所……クイントさんとメガーヌさんコンビくらいのモノだ。

 

「……………………ってか、なんかおかしくないか?」

 

そう言って、師匠が眺めつつ指差している街並みに視線を向けるが……俺の目には、師匠の言う様な『おかしい』理由や原因は見当たらなかった。もしかすると、師匠の【真実の瞳】が何かを視せているのかも知れない。

だから、俺の目には普通の街並みにしか見えなかった。

 

「何か、おかしい所でもありました?」

 

「フム……神崎が、そう言うなら別段おかしくもないのか……?僕的には、違和感というか……なんか、違う様な気がしたんだけど……?」

 

そう言って、師匠はしばらく沈黙し結論を出した。

もしかすると、転生者がまだ隠れている可能性を視野に入れてもう一度フレールくんを使いローラー作戦で探してみる事となる。その後、師匠は自分が犯したらしい歪みを修正する為と世界の調整へと赴いて行った。

なんでも、魔法や摩可不思議を原作ヒロイン達に知って貰う為に無茶をしたらしい。その為、世界の調整をーーって、俺達が別世界に飛ばされないのってそのせいなのでは?

そう、師匠に聞いてみれば違うという返答が返ってきた。

なんでも、平行世界を隔てた境界線のあちらからでもその調整は可能らしい。転生者が持たらす歪みとは違い、師匠が引き起こした歪みは【外】からでも調整が可能という事だった。だけど、前にどんな歪みでもその世界からでしかアクセス出来ないと聞いた様な気がするのだが……勘違いだろうか?

 

「勘違いではないぞ?兄様」

 

「間違いなく、この世界からしかアクセス出来ませんよ?兄様♪」

 

「なら、なんで師匠はあんな事を?」

 

「正確には、【理外】ですね。その歪みは、基本的に物理だからですわ(笑)」

 

「世界を構成している【理】ではなく、物理的に空間が歪んでいたり、ひび割れをしていたりするからだな」

 

「ですので、そういう歪みであれば【外】からでも修正は可能なのですよ?」

 

「成る程。わからん……あ、嘘です!理解は出来てます!!あ、ちょ、いやああぁぁぁぁ……ギャフッ!!」

 

ちょっとした冗談だったのに、ラヴォルフ師範は容赦なく恐ろしいまでの笑顔で拳骨を俺の頭に振り下ろします。

しかも、魔力強化した拳を魔力で纏って加速術式込みで振り下ろすから凄まじく痛い。『涙目』、なんてレベルじゃない。むしろ、頭が陥没していないか心配なくらいだ。

つーか、全力の加速術式だとマッハ10は余裕と師匠が言ってたので、薄く展開していたとしても初速の段階でマッハだからかなりの一撃だった。何とか、障壁を間に合わせたけれど……その一撃で、障壁は砕けた上に貫通。威力が落ちているとは言え、それなりの威力を保った拳骨が頭に落ちた訳だ。ぶっちゃけ、洒落にもならない。

だけど、【リリなの】のスタン設定を纏っている魔力の方に組み込んでいたらしく、俺のダメージはたん瘤一つとなっていた。普通なら、死んでいても不思議じゃないんだけど……非殺傷設定、マジスゲー。

 

「ちょっとした冗談じゃないですか!?」

 

「もう一発、お見舞いしましょうか?」

 

「鬼!悪魔!人でなしぃ~!!あ……ちょ、ごめんなさい。殴らないで下さい……」

 

アカン。『ちゃかし』を入れたのは俺なので、何を言ってもキレた師範には通じなかった。振り上げられた拳が、次の瞬間には目の前にあって……気が付いたのは、二時間程経ってから。

そして、俺は心に誓う。

次からは、茶化さないぞ!

 

「次があれば良いな?」

 

テオルグ師範改め、オルタがニヤニヤしながらそう告げてくる。生きていたんだから、次があるのは言うまでも無いのだけれど……その『次』を、やるかどうかは不明である。

死ぬとわかっていて、俺は地雷元に飛び込む馬鹿では無いからだ。なので、忘れた頃にヤりますとだけ言っておく。

俺の場合、『絶対』に『それ』を『やらない』という保障は言えないから。

きっと、忘れた頃にまたやらかすだろう。

 

「二度とやらないとは、おっしゃられないんですね?」

 

「……まあ、な。俺も、やらない事に越した事はないんだが……俺の性格からして、それを二度とやらないとは言えないんだ……」

 

わかるだろう?『お約束』とは、そういうモノなんだから仕方がない。そう!馬鹿ではないけど、『お約束』とは、やらなければならない事なので仕方がないんだよ!!

 

「そう、ですか……なら、やはり肉体に刻むしかないんですね?残念です。兄様」

 

リリィが、真っ黒な笑みを浮かべた。

 

「ひぃ……ヒィ(ノД`)ノ!!」

 

恐ろしくはあるが、俺の本音としては『二度と』と断言出来そうになかったので残念には思ったけれど……後悔はない。ただ、殺伐とした空気が俺と師範達の間に張り詰めているくらいだ。

 

閑話休題。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

あの後、転生者達と合流した俺は何ゲームかやってラウンジでカフェを飲みつつ、スキルカードの山を眺めている。

あの後も、何度かガチャって良いカードをGETしているが全体的に接近戦用のスキルが多い。

目指すは、リアルラカン!

『近付いてブチのめす!』という、最強の奥義を使って並み居る敵を千切っては投げ千切っては投げする格闘家を目指す。なんて、昔なら言えたけど……今は、技術が身に付いて来たので、もっと幅広い戦術を組める様になった。

大地に能力(力)を借りる、我皇流系統の技術。

基本的な技歩や型で、何十通りかの戦闘スタイルや大技の秘技。奥義までには至らなくても、秘技や小手先の技くらいは使えるのでそこそこ自信はある。とは言え、それは普通の人間()()()()()()十分だと言うだけの事で……俺は《神殺し》。《神殺し》としては、今の状態は不十分の雑魚でしかなかった。そりゃ、小説・漫画・アニメ知識のアドバイザーとしては問題ないだろうけど。

しかし、俺としては《神殺し》になったからには……一度は、【神】と対峙してみたいと思っている。

因みに、アルバイトをやっている【管理者】ではなく、古から存在するという本物の【神】と殺り合ってみたい。

師匠達からは、生半可な能力では対抗出来ないとまで言われているけれど……【男の子】としては、そういう燃えるシュチエーションって一度は体験してみたいじゃん。

 

「まず間違いなく、プチってされますよね。兄様なら……」

 

「プチどころか、グチャッと一撃で殺られてしまうのではないか?《神殺し》の不死は、不完全だぞ?兄様」

 

「萎えるから、言うなよ……」

 

と言うか、こちらの精神をガリガリ削る様な事を言わないで欲しい。だって、そんなの言われなくたって理解しているから……わかってはいるけど、残酷過ぎです。

 

「しかしだな……【神】との戦いは、命で命を洗う戦いなんだぞ!?」

 

「『血で血を洗う』であって、命で命を洗う事は出来ないだろう!?何、間違えているんだ?」

 

「……例えであって、『ことわざ』ではありません。単なる比喩です。【堕ち神】との戦いは、命がダース単位で消失して行くモノなのです!!」

 

「はあ。さいでっか……」

 

「今日は、やけに突っ掛かって来るな?兄様」

 

「べ、別に好きで突っ掛かってんじゃないんだからね!」

 

「「すみません。キモいです……」」

 

「さーせん。今のは、自分でも『ないわー』って思いました。うん、俺のキャラでツンデレは無いわー……」

 

「そうですね。ギャグキャラでは、限界もありましょう」

 

「いや、ギャグキャラって訳でも……」

 

「ギャグキャラは、間に合っている。セイビアとか飛龍とか……ロック・ウォーとか……」

 

そんな、どうでも良い事をリリィ達と駄弁っている。

何故なら、転生者達が新たなスキルを求めてガチャのスペースへ行ってしまったからだ。俺の手持ちからして、近・中距離外のスキルカードがあっても使えない。適正云々とか関係ないけど、ここまで来たら近距離を極めたいって思いの方が強かった。それに、そんな長期間この世界に留まる訳じゃないのにこれ以上ガチャったりなんかしたら……ソシャゲー時代よろしく、ガチャ依存症に戻りかねない。

気兼ねなく、お金を消費出来るって状況もあって歯止めが効かない。どこかで、止めて置かないと師匠や師範達にお仕置きと称して切り捨てられる未来が見えた。

目に見える結末に、愕然としていると師匠が何か落ち込んだ……もしくは、呆れた様子?の師匠がラウンジスペースに入って来る。そして、俺の目の前の席に座ったかと思うとテーブルの上に身を投げ出した。

 

「どうしたんッスか!」

 

「……………………」

 

「もしかして、調整に失敗したんですか!?」

 

「んにゃ。そっちは、完了した。でも、もっと別の問題が浮上してきたよ……」

 

「別の問題?」

 

「多分、神様特典の影響だと思うんだけど……」

 

「…………それは、未だ見付かっていない転生者がいるって事ですか?」

 

「まあ、そうなんだけど……」

 

「師匠にしては、歯切れが悪いッスね?」

 

「……………………………………………………下手すると、この世界は滅びるかもしれないーーー」

 

「ふぁ!?」

 

唐突な告白に、俺の理解が追い付かない。

何が、どうして!?どういう理屈を捏ねたら、世界終了宣告になるんッスか!?信じられないモノを見る様な気持ちで見ていると、師匠は困った様な笑みを浮かべてその理由をポツポツと語り出した。

 

「今回の神様特典には、命を脅かす系統の裏特典があったのは知っているだろう?実際に、死者が出ていた訳だ」

 

「はい。ですが、それは師匠がブレイクしたから大丈夫なのでは?」

 

「ああ。アレに関しては問題ない。だが、今回見付かった奴は人類全体に対する特殊特典だ……」

 

「特殊特典?」

 

「そう。特殊特典とは、個人的な願望や願いではなく特定の種族や存在に対して影響を与える特典だな。今回のは、【出産率の改竄】だった。比率は、女児が9割。男児が、1割だな……」

 

「ふぉおぉっ!つまり、それを願った馬鹿はハーレム狙いって訳ですね!?考えたなぁ……出産率を変動させて、ハーレムが出来やすい環境を整えたのか!?」

 

「……………………」

 

その特典効果を聞いて、その結論を導き出した俺は余りにも画期的な方法(特典)につい我を忘れて称賛してしまった。その様子を、絶対零度の眼差しで師匠が見詰めていたのでサアァァァ……と血の気が引いて冷静に戻る。

 

「サーセン。ちょっと、興奮してしまいました」

 

「うん。冷静になった処で、もう数段引き落としてあげるね?さて、【出産率の改竄】だけど……一つ、質問がある。お前さ、確率変動で女児を9割にしたとして自分が男に生まれる確率……どれくらいあると思う?」

 

「…………………………」

 

言われて、その可能性に気が付いた。

確かに、出産率を変動させた上で目当ての性別(男)になる確率なんて御都合主義、どこにあるというのだろうか?

更に、出産率の改竄を願った場合の裏特典も含めたら……ほぼ、ゼロ%だという答えに行き着く。

どう考えたって、それの裏特典は『女に生まれる』とかそういうモノのハズだ。これまでの裏特典傾向を考えると、基本的に願われた願望の正反対のモノが多い。

 

「言うまでもないが……性別を固定していなければ、確実にゼロ%だろうな。当然、他の特典もハーレムに関するモノだろうから……例えば、【ハーレム体質】なんかを補助として着けていたらどうなると思う?」

 

【ハーレム体質】の裏特典は、確か恋愛対象の【ヤンデレ化】だったハズだ。ついでに言うなれば、女児と化した転生者が【ハーレム体質】を願っているとすれば【逆ハーレム】が形勢されている事だろう。

皮が女で、中身が男。【ハーレム】が出来たとすると、当然【逆ハーレム】……大量の男が、その女児の周りに集まっている事になる。しかも、裏特典でその男子達は【ヤンデレ化】している訳から…………。

 

「なんて、恐ろしい状況に……」

 

「ふむ。どうやら、結論に至ったみたいだな?」

 

「師匠、その特典保持者は特定されているんですか?」

 

「いや。多分、引き籠っているみたいだ。フレールくんでは、個人が所有するプライベートルームへの侵入は出来ないから、引き籠られるとわからないんだよね……」

 

所有者が、許可を出していれば入れると師匠は言うが……それなら、これまでも引き籠っている転生者がいたならばーーって、そう言えば師匠……あの手この手を使って引き摺り出していた様な……。うん。見落としとかなさそうだ。

 

「だから、もしかすると……既に、バッドエンドに至っている転生者が居ない事もないと思われる……」

 

「バッドエンド?」

 

「修正しても、直ぐ元に戻るから……原因が、生きているのは間違いない。だとすると……中身が男。皮は女。【ハーレム】で、寄って来る男は皆【病んデレ】。上手く立ち回って、刺されなかった……とするなら?」

 

「…………どうなるんですか?」

 

師匠の言いたい事が、今一わからないので聞き返すと邪悪な笑顔が返って来た。うぅ……嫌な予感がする。

 

「性転換転生者として、中身が男だとするなら百合ハーレムエンドが最上のハッピーエンドだろう?じゃあ、男に言い寄られてハーレム化した場合がバッドエンドだ」

 

「はあ……まあ、そうでしょうね……」

 

「しかしだ。【ハーレム体質】を願っていたならば、寄って来るのは異性のみとなる。その上、【病んデレ】だ」

 

「あー、嫌な話ですね……」

 

百合ハーレムエンドを目指しているのに、周囲に寄って来るのはイケメン男子のみとか……どんな拷問だよ!?

 

「そうそう(笑)。自業自得だけど、拷問だよね!じゃあ、そんなバッドエンドを迎えたとして何故見付からないんだと思う?例え、引き籠っていたとしてもカーテンの隙間からチラッとも見掛けないなんて事があると思う?」

 

「…………んん!?」

 

カーテンの隙間?ああ、許可が無ければフレールくん達はプライベートルームへの侵入は不可能だったっけ。だとすると、カーテンの隙間からチラッと見掛けられればそれでOKなのか。【真実の瞳】が付与されていれば、少しでも見えればソイツが転生者かどうかなんて一発で見抜ける。

しかし、それらの条件を持ってしても転生者は見付からない。でも、影響があるので生きているっていうのはわかっているから、何としてでも見付け出さなければならない。

 

「何が言いたいんッスか?」

 

「拉致、監禁、凌j……ずっと、一緒だよ?」

 

今、言っちゃダメな言葉を言い掛けませんでした!?

 

でも、そう言いたくなる様な条件が揃い過ぎているのもまた事実だ。表に出て来られない理由があるのか、そうならない為に引き籠っているのか全くわからないんだから。

 

「転生者が、原作ヒロイン達と同じ9歳であるならばそれ程気にしなくても良いんだけれど……相手が子供でない可能性がある以上、放って置く訳にも行かないだろう?」

 

成る程。確かに、相手も同年代だとしたら拉致・監禁云々のフラグはへし折れる。つか、お子様が拉致・監禁なんてすれば、親にバレて即解放ですもんね。

 

「って、それじゃあバッドエンドで拉致・監禁されてる転生者がいるって事ですか!?」

 

「うん。でなければ、おかしいだろう?デートも何もなしで、一ヶ月以上音沙汰もなしっていうのは異常だ。間違いなく、何処かに監禁されているんだろう……」

 

もしくは、引き籠りなんだけど……それだと、使い魔の情報網に引っ掛かるらしい。つまり、情報が得られないって事は引き籠り等ではなく拉致・監禁の疑いが高いとのこと。

 

「マジッスか……」

 

「ウム。何はともあれ、監禁されている転生者を見つけ出して特殊特典をブレイクしない事には百年もしない内に人類は滅びの危機に直面するだろう……」

 

「マジか……」

 

つまり、師匠が感じた違和感ってのは男性が少なく女性が多いって事だった訳だ。確かに、今周囲を見渡しても男性よりも女性の方が多い様にも思える。ただ、原作でもブレイブデュエルのプレイヤーは女性の方が多かったハズだからグランツ研究所の外に出て確認した方が良いだろう。

 

「で、どうするんですか?」

 

今後の方針を聞く為に、視線を戻すと師匠は何故かウィンドを開いて難しい顔をしていた。

 

「どうかしましたか?」

 

「転生者を発見したそうだ……」

 

「ふぁ!?監禁されていたと思われていた転生者ですか?」

 

「いや、それとは別件だ……ただ、見付かった奴が問題だらけの転生者だったってだけの話だ……」

 

「はあ……」

 

転生者は、基本的に問題だらけの存在ではなかったか?

なので、どんな問題かは知らないが今更の気がしてならない。故に、師匠の困惑がこの時は理解不能だった。

 

「リアル魔導師で、遠隔操作が得意なのか……ゴーレム操作技術を使って…………」

 

「はあ……リアル魔導師ですか……」

 

「ああ、リアル魔導師なんだが……相手をゴーレム操作の応用で操って、強制セクハラさせて金を巻き上げていやがる」

 

「ふぁ!?」

 

何!?その、魔法詐偽師は!?

ゴーレム操作の応用で、相手の男性を操作し強制的にセクハラさせて『きゃー!痴漢!!』と訴える。周囲の協力を得て、大捕物で相手を捕縛。セクハラ(痴漢)の事実がある故に、相手は犯罪者の烙印と大金を巻き上げられる訳だ。

 

「何ですか、その完全犯罪……」

 

無実なのに、無実ではない上に相手を蹴落とす様な所業に言葉を失い掛ける。その転生者、鬼過ぎるだろう!?

 

「僕の世界では、良くあった話だったけれど……魔法がある事を知らないこの世界からすれば、防ぎ様のない技術になるんだろうね?」

 

「師匠の世界?って、生まれた世界でですか?」

 

「うん。特に、魔法使いが現れた初期の頃が一番多かったらしいよ?比較的に若い女性達が、荒稼ぎしてた……後は、認識をズラす系統魔法や『魅了詐偽』。強制発情強姦とか、良く聞くタイプの犯罪と言えばその辺がスタンダードかな?」

 

「うわぁ……嫌だなぁ……師匠の世界の話って、聞くだけでも地獄ッスよ?何が嫌かっていうと、犯罪が行われるのが当たり前みたいに聞こえるのが嫌です……」

 

「僕的には、犯罪者がコソコソしてるこういう世界が不思議に思えるよ。……さて、そろそろ僕は行くよ?海鳴市を一望出来る丘の上から、【真実の瞳】で監禁されているであろう場所を特定しなきゃ……」

 

「そんな事、出来るんですか?」

 

「何事も、ヤり用があるんだよ。例えば、悲しみに暮れている者の感情を視るとか……絶望している者を視せよ……とかね?」

 

ああ、成る程。

それならば、【真実の瞳】で視えるだろう。つーか、そういう使い方もあるんだな……【真実の瞳】って。

正に、目から鱗であった。

 

「じゃ、行って来るよ。解放出来たら、再度調整に潜るんで。後、解放した転生者はお前等に任せるから!」

 

「了解です」

 

そう言って、師匠はフラリと出て行った。

 

 

 

 

 




「つーか、原因廃除したら次の世界に召喚されるんですよね?なんで、弾き出されないんでしょう?」と冒頭の神崎くんの台詞ですが……今直ぐにでも、この世界から出て行きたいという思いが溢れる台詞ですよね。そこまで、ハルにゃんに追い詰められているのか……(笑)。

という訳で、続・華杏クオリティーです(犯罪)。
続けないって言ってたのに……続けちゃいました(笑)。
『最悪の物語』で、散々やらかしたというのに……ここでも、同じ事を繰り返すのか!?と言われそうだけど、アレよりかはソフトに書いてるから大丈夫なんだよ!!
はてさて、華杏ワールドでは良くあるある話ですが……ゴーレム操作による痴漢(セクハラ?)騒動です。代案としては、サイコキネシスなんてのもありますね(笑)。まあ、一番多いのは『魅了(チャーム)』による事件ですが……難易度の低い物語を目指しているので、ゴーレム操作による痴漢話となりました。
いやー、リアルに魔法がなくて良かったーと思える話ですよね!地味で、マイナーな魔法程犯罪に向いている魔法は無いです(笑)。操作系が危険!!この系統の魔法は、全ての男性が口々に『無くて良かったー』と言うであろう魔法です。
あったら、人生が詰んじゃいますもんね!
前科を得た上、社会的にも死にます(笑)。
会社はクビになるし、家族には冷たい目で見られるし、後ろ指は指されるし……踏んだり蹴ったりな事件です!!
因みに、この詐偽転生者ですが……皮は女性、中身は男性の性転換転生者です(笑)。なので、ヤケクソ状態で暴走しているおバカさんでもあります。『男で無ければ、ヒロインを嫁に出来ない……』と嘆いている残念少女ですね!なら、百合ハーレムを目指せば良いだけなのに…本当、お馬鹿ですよね(笑)。

『最悪の物語』で、一番面倒だった事件は……無意識の『認識のズレ』が面倒だったと記憶してます。コレ、被害者の女の子が能力者だったんだけど……それが、判明するまで周囲に出る影響が洒落にならなかったんです。確か、被害者の被害妄想が本当の話になって自身を傷付ける……ただの自傷行為だったんですよねぇ。
あらすじ的には、第一次魔法大戦後で治安がまだ回復してない状況で……それ故に、強姦共に襲われた少女が助からないまま事が済み強姦共が逃げ終えた後で、たまたま近くを通り掛かった通行人達に暴行(身体強化?)を加えるというモノ。
(その行動(暴行)も、妄想の具現化から成り立ったモノ)
その暴行を加えられた通行人達っていうのが、その物語の主人公だった『大和發春(撥春?)』の友人って話だった。その流れで、依頼される訳ですが……『大和發春』は、大和兄弟の末っ子で……双夜を東京タワーの上から投げ捨てた人と言えばわかると思います。彼は、末っ子らしく魔力が少ないタイプの魔導師です。初期で、良くてBランク程度。未来では、AAランクでした。そんな彼が、長男の命を受けて難易度の高い怪異に挑むというストーリー。ぶっちゃけ、力及ばず死者がガッツリ出るお話です。
『認識のズレ』は、本人達(犯罪者)が気が付かないレベルから始まって、最終的に少女が妄想する被害へと至ります。
なので、最初はナンパをしていた……程度の青年達が、時間が経つと共に暴力的になって少女を襲ったり、暴行を加えたりして……最終的に、少女を認識出来なくなったら周囲の人々を襲い始めるっていうモノ。なんで、そうなるかというと……少女が自分だけ襲われるのは不公平的な事を考え始めるからなんですよ(笑)。いやいや、自分で青年達に襲わせといて周囲まで巻き込むのはおかしいんだけど……彼女は、そういう少女だったんで。そして、操られる傀儡と化した青年+α達は次々と周囲の人々を襲い殺して……まるで、ゾンビの様に。
後は、わかるよね?
バイオハザード(元ネタ)よろしく、被害が拡大していく……と。……傀儡系ハザードwww

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いつも読んでくれる方々に感謝を……。

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