絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二〇一話#

???

 

 

新たな世界軸へと、双夜達は降り立った。

神崎が多少、前回の世界軸に不満の声を漏らしてはいるが……概ね、暴れ足りなかったので不完全燃焼という名のストレスがあるのだろうと双夜は結論付ける。

それも、戦闘になれば大体解消される様なモノなので、双夜は無視をして己のやるべき事を優先した。

そこは、海鳴市の外れ。双夜が、まずやる事はフレールくんを呼び出し、情報収集の為に世界に拡散させる事である。

パッと見たフレールくんは、幼児である双夜には抱え切れない大きさの黄緑色でデフォルメされた蜥蜴のぬいぐるみだった。

そのぬいぐるみは、一匹から八匹。八匹から三十ニ匹。

三十二匹から百二十八匹へと、弾けた花火の様に爆発的に分裂していく。そのまま、親指の先程の大きさになると空気に融ける様に消えて行った。

 

「さて、情報が収集されている間に今後の動きを決めたいと思うんだが……何したい?」

 

「何って……原作人物と恋人関係になりたいですかね?」

 

「まだ、言ってるし……諦めろよ……」

 

「諦め切れませんて(笑)」

 

「……諦めて、翼と付き合っちまえよ……」

 

「嫌ですよ!」

 

「翼の事、嫌いなのか?」

 

「あー…………そういう訳じゃ。たはは……はっ!?」

 

唐突に感じた殺気。神崎が、慌てて殺気を感じる方向に身体と視線を向けるが……それでは、防御も回避も間に合わない。

 

「レヴァンティン!」

 

《Explosion!!》

 

「神崎っ!!」

 

双夜が、神崎の背中を押す様に蹴り飛ばす。

おかげで、辛うじてその攻撃を回避する事が出来た。

だが、簡易情報収集が終わるまでの短い時間内に、シグナムという原作人物が突然割り込んで来たのは否めない。

しかも、デバイスを振りかざしカートリッジまで使ってほぼ一瞬で双夜達の間合いに入り込んで来たシグナムはまだまだ殺る気満々だ。

 

「ーーーって、シグナム!?」

 

「違う!殺せ、神崎ぃ!!」

 

【真実の瞳】で、シグナムの姿を確認した双夜が一瞬怪訝な表情をする。だが、決断は早かった。ソレを偽物だと看破した双夜は、問答無用で神崎に指示を出す。

 

「っ!?ーーーくっ!!」

 

一瞬、迷いが生じた神崎だったが……双夜の【真実の瞳】を思い出し、迷いを捨て切れはしなかったものの一撃でシグナムの胸を貫いた。

 

「ーーーああ、我が主よ……すまない……………………」

 

心臓がある部分を貫かれ、シグナムはゆっくりと地面に崩れ落ちる。そして、スゥ……と消滅して行った。

 

「……………………」

 

「神崎?……ああ。済まない……」

 

神崎の様子を視て、双夜は『そう言えば……』と思い出す。

自身がせっついて、神崎にシグナムを攻略させたのを思い出していた。なのに、そのシグナムを神崎自身の手で殺させたのは流石に不味かったと反省する。

 

「いえ。ですが、何故……無力化では無かったのですか?」

 

「うん?んー、そう言えば無力化でも良かったんだよな?だけど、【真実の瞳】で見た感じそれじゃダメだと思っちゃったんだよ。放置してはダメだって……何でだろ?」

 

「…………そう言えば、暖かいですね……」

 

「うん?ああ、暖かだな……と、桜が咲いてるぞ?」

 

「……………………フッ。BoAか!?……いや、GoDか!?」

 

「ぼ?……ご?」

 

神崎が、頭を抱えて呻いているのを見て双夜は首を傾げる。きっと、そっち方面の知識で何かしらを引っ張っているのだろうと思われたが真意はわからない。だが、ソレを知っている神崎が頭を抱える程の事が起きているのは双夜にもわかった。

 

「あれ?そう言えば、【闇の書事件】って冬場に起きた事件だよね?今は…………春?」

 

「ええ、多分ですが……一応、あるにはある事件ですね」

 

「BoAとか、GoDとか言ったヤツ?」

 

「はい。これは、アニメではなくゲームの方の話なんですけど……まあ、ユーリが出てくる話と言った方が早いですね……しかし、ーーが混在するのかねぇ?」

 

神崎はそう言って、何故かヤり切った後の表情をしている。意味はわからないが、先程の落ち込んだ様な感じではないので、双夜は適当に返答しつつ空を見上げた。

 

「んん?……なあ、神崎……変な魔力流と魔力溜まりが視えるんだけど……アレ、何?」

 

「あー…………師匠には、視えるんですね?ソレ等は、きっと【闇の書】が復活する為に守護騎士プログラム(?)で記憶の中の人物を再現しようとしているんだと思います」

 

「ふーん。記憶の中の人物を……ねぇ。【魔導兵器】や【風紀委員】が再現されて、襲い掛かって来たら世界が終わるね?…………まあ、僕でも終わるけど……」

 

「グフッ……………………」

 

双夜の発言に、神崎は血ヘドを吐きながら膝を折り両手を地面に付くプロセスを辿って『orz』へとシフトする。

もし、双夜が言う様な奴等が構築されたらUーD戦の前に世界が終わるだろう。それこそ、アルカンシェルを使っても倒し切れるかわからない存在である。原作人物や転生者達が、束になって掛かって行っても蹂躙されるだけにしかなるまい。とは言え、彼等を構築出来る程の魔力は存在しないだろうけれど。それよりも、記憶の中にいる【()()】を再現される方が状況的には最悪だ。

何故なら、【双夜】が再現されるとしたら……【魔王化】した双夜に焦点が向けられる可能性が大きいからである。

【組織】ですら、手をこまねいたというのにそんなレベルの【魔王】が出現したら神崎達だけでは心許ないと言えよう。双夜だけで、そこが地上でなければ問題なかったのだろうけど、残念な事にそこは惑星内で人がたくさん住んでいる有人世界だ。そんな場所で、遠慮なく双夜が暴れればどうなるかなんて想像しなくてもわかる。これが、【鮮血の小悪魔】であるならば三連ガトリングガンを両手で二丁装備でミサイルランチャーやビットを使う程度で済むのだけれど。双夜の場合だと、世界が滅びる可能性が大なのでちょっと再現されるのは問題だった。

 

「何はともあれ、僕は正確に人の容姿を記憶している訳じゃないから問題はないと思うよ?」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。【真実の瞳】が、使えなかった頃は普通に盲目だったからねぇ……」

 

「はあ……………………は!?」

 

「ん?…………あれ……言ってなかった?僕の目、機能してないよ?幼い頃の監禁時に、潰されちゃって使い物にならなくなったんだよ。まあ、()()()()()()んで困ったのは文字や風景を書(描)く時くらいかな?」

 

「……………………師匠、目、見えないんですか!?」

 

「見えないよ?だけど、魔力は視えるし……魂も視えるから、気にはならないんだけどねぇ……」

 

普通の人よりも、見えない物が良く視えるから問題ないとのたまる双夜に神崎は複雑な視線を向ける。そして、双夜の見ていない所でコッソリ双夜の産みの親に対する怒りを爆発させるのであった。

 

「だから、僕の頭には自分の容姿含めて記憶はされてないんだよ。能力値とかは、記憶されてるんだろうけど……それだけだね……」

 

「な、成る程……それは、安心ですね……」

 

実際、双夜の記憶の中にあるのは【魂の波長】と呼ばれる個人データと使い魔の視覚を通して見た【静・クリスティーナ=D=アスフォード】くらいなモノである。

因みに、どうでも良い事だけど。

双夜が、【静・クリスティーナ=D=アスフォード】の容姿を見たのは【真実の瞳】を得る前。生まれ育った世界で、双夜の師である『ルイフォード』が生きていた頃に、必死こいて組み上げた【盗撮術式】で盗み見たのが最初。

盗撮術式ならば、直接脳に映像が流し込まれるので双夜は重宝していた。まあ、現在はそこから派生した【視覚術式】が通常手段となってはいるが……ちょっと前までは、完全に犯罪レベルの術式だったのは言い逃れも出来ない。

なので、これ等の思いでは双夜の中で『良い思い出』としつつも封印された記憶である。

 

「兎も角、原因を排除してしまえば問題ないんだからスバッと解決してサクッと次の世界軸に行くぞ!!」

 

「あ、了解ッス!」

 

強制的に話を纏めた双夜に、双夜の産みの親に永遠と恨み言を呟いていた神崎が感情を切り替えて警察官の様にビシッと敬礼し返答した。その上で、神崎はBoAとGoDの情報を頭の中で整理して双夜に『ある程度は放置して良い』事を伝える。双夜は、疑問に思いつつも神崎の言葉を飲み込み……でも、やっぱり気になったのか放置して良い理由を聞く。

 

「簡単な話、敵が報酬を得る段階で奪ってしまえば良いんです。その上で、原作人物達にそれらを渡してしまえばラストバトルのみでのんびりマッタリ出来るって訳です!」

 

「えっと……じゃあ、全部戦わなくても良いんだ?」

 

「ええ。この事件は、ユーリが出て来る話なんですが……実際、暴走しているユーリを止める手立てはディアーチェしか持ってはいません。なので、ユーリが暴走を始めるまで待っていれば良いんですよ」

 

「ふーん。で、ユーリ?が暴走を始めたら割り込んで時間を稼ぎ解決の糸口を得たディアーチェにユーリ?を止めて貰えと?」

 

「はい。それなら、原作人物達と絡まなくても行けます」

 

「お?原作人物に関わらなくてもイケるんだ?」

 

「はい。まあ、上手く立ち回れればですけど……」

 

「じゃあ、上手く立ち回りつつ転生者狩りでもするか?」

 

「…………あー、そうッスね……キリエやアミタも確保しなきゃならんだろうし……じゃ、それで行きましょう!」

 

ボソボソと呟く神崎を横目に、双夜は使い魔から送られてくる情報にそれらしいモノがないか確認作業を始める。

しばらくして、それらしいモノを見付けたので周辺地図を展開し移動を開始した。

しかし、移動を開始したのは良いんだけど……その直ぐ後に、【闇の書】の欠片であるヴィータが出現。そのまま、襲われて半ば強制的に戦闘へともつれ込む事になった。

 

「ラケーテンハンマー!!!」

 

《Jawohl!》

 

「残念だけど、容赦する気はないんだ……」

 

言って、双夜は襲い掛かって来たヴィータの首をアッサリ剣を横凪ぎに振ってチョンパしてしまった。それを遠い目をして眺める神崎が、『モッタイナイ』と呟くが無視である。というか、【闇の欠片】が『モッタイナイ』とはどういう意味なのか今一判断に困る発言であった。

その後も、原作人物達と転生者が集う場所へ行くまでに何度か【闇の欠片】の襲撃を受ける。ほぼ、完全に双夜が一方的に瞬殺(首チョンパ)して終わった。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

「……………………なんだ?アレ…………」

 

「え?…………原作人物と……転生者じゃないですかね?」

 

現場に辿り着くと、双夜は立ち止まり首を傾げて呟いた。

その呟きに、神崎も視線を双夜の目線の先に向ける。

そこには、原作人物の他に魔導師風のシルエットが数人分見えた。良く見れば、原作人物+転生者側と相対する一人の人物……という様な構図が見て取れる。

それを見上げて、双夜が首を傾げていた。

 

「…………仲間割れですかね?」

 

「……………………」

 

「…………師匠?」

 

「【真実の瞳】で読み取れない……………………《旧・神族》の尖兵か!?」

 

「え!?どういうーーーって、居ない!?」

 

神崎が聞き返えそうとした時には、双夜が既に何もない空間から剣を取り出して突撃を仕掛けた後だった。

剣撃が、海鳴市の空に響き渡る。不意を打たれたにも関わらず、双夜の強襲はUNKNOWNの剣で防がれた。

 

「!?」

 

「………………神威……」

 

足の裏に小さな障壁を展開して、己が行く先にも展開する。予備として、左右対象にも展開してから神速の最大極意を使う。ほぼ、一瞬でUNKNOWNの背後に回った双夜だったけれど……UNKNOWNは、視線を双夜に向ける事なくその剣を受け止める。

火花が散った。

彼等の、剣撃の激しさがそれだけで伺える。

だが、両者共剣を納める気はないらしく、再度剣撃が結ばれ……力任せに弾かれた次の瞬間、ドン!とUNKNOWNが剣だったモノから銃弾を発射した。

ほんの一瞬で、UNKNOWNの剣が銃へと変化したのである。だが、銃弾が発射された先に双夜はいない。

何故なら、UNKNOWNが剣先を双夜に向けた瞬間に、相手の死角に回った双夜がその首目掛けて剣を振っていたからだ。しかし、UNKNOWNはその剣すらも避ける。

そして、避けると同時に向けられた銃口だったが相手の懐に潜り込む事で、そのアドバンテージを封殺した双夜が剣を薙ぐ。それは、剣で防がれた。

至近距離での射撃が、不利だと認識したUNKNOWNは銃を剣に戻して近距離戦を受ける。それでも、相手の隙を見て銃に変化させて穿つUNKNOWN。

だが、その攻撃も剣の一振りで切り払い更に踏み込みのスピードを上げて向かっていく双夜によって封殺される。

瞬き程度の武器変化時間が、UNKNOWNの隙となり双夜の回避行動への足掛かりとなっていた。それ以外の攻撃は、剣で受け止められ切り払われる。ハッキリ言って、武器そのモノがUNKNOWNの弱点となっていた。

UNKNOWNが、武器をハンドガンに切り替えて至近距離での射撃戦闘を可能とし、弾幕を展開して距離を稼ぐ。

 

「チッ……!!」

 

マガジンの切り替えは無い。

それだけで、双夜はUNKNOWNが物質創造か空間制御系の能力保持者だと見抜く。前者なら、無限に銃弾の補充が可能だし、後者であるならばマガジンの中を弾薬庫に組み込んでしまえば無制限に銃弾の補充が可能だ。そういう手合いは、【組織】で経験しているが故に理解している。

ならば、弾切れ等という隙は存在しない。

仕方がないので、展開された弾幕から身を引いた。

だからと言って、手を小招くなんて事はしない。

あちらが、鉛の弾幕を展開するならば双夜は魔力弾の弾幕を展開するだけだ。

ハンドガンは、いつの間にか小振りのマシンガン(カラパイヤ)になっていて距離を稼がれると三連式のガトリングガン(F・GSHOT)へと変化していた。

 

「っ!?」

 

「!?」

 

そこへ、転生者?とおぼしき者が何かを叫びながら割り込んで来て……双方の攻撃に当たり、堕ちて行った。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「バカ?」

 

「何か、言っていたが……」

 

「まあ、良い。仕切り直しだ……」

 

「つか、お前……何?《旧・神族》の尖兵で無い事はわかったけれど……僕の目で、読み切れない存在とか意味不明なんだけど……」

 

「フッ……俺か?俺は、【龍】って呼ばれている者だ!」

 

「名前じゃねぇよ。どんな“存在”かを聞いているんだ……」

 

「…………成る程。ならば、お前は何なんだ?」

 

「世界という舞台を調整する裏方の存在だ!即ち、モブ以下宣言!!」

 

「ほぉ……俺は、有無であり有無で無く神であって神でも無く人であり人でも無く中途半端な存在であり中途半端な存在では無く抑止力であり抑止力でもなく自分であり自分でも無く俺であり俺でも無k「もう、良い!話す気がないなら、黙れ❤」(´・ω・`; )ェ……」

 

バッサリ、不確かな事を告げる馬鹿を黙らせて双夜は『龍』と名乗った青年をジックリと目を細めて見詰める。

しかし、【真実の瞳】からは終わりの無い情報が大量に吐き出されているのが視えるだけで、ハッキリとした確定情報は得られなかった。それにより、昔……【組織】で聞いた、特殊存在がいる事を思い出す。

 

「【エンドレス・エラー】って事だろう?初めて視るけど、【組織】で教えられていた通りだな……まあ、僕にとって君が何であろうがどうでも良い事だ。だが、世界を歪める存在である以上……排除するまで!《Access‼》」

 

ーーSystem起動、魔術回路接続……

 

ーーSystem変更。通常モード ➡ 戦闘モード、移行

 

ーー出力、順時UP。25%より。上限、75%……

 

ーー太陽波、魔力変換。太陽炉、起動……

 

ーーAll limit……Clear. Release!!

 

意識を、通常から戦闘用へと切り替える。

転生者の横やりで、うやむやになりつつあった雰囲気をブチ壊し、仕切り直しとばかりに双方は剣や銃をしまう。

五歳児から、十二歳へと変化した双夜は拳を握らずに腕をダランと下げた状態で無言のまま龍を睨み付けた。

龍は、拳を握り締め胸の前で構えを取る。心なしか、龍の身体……いや、肉体に刻まれた龍の模様が脈動しているように見えた。その上、ボンヤリと光っている様にも見える。

 

「ーーーーーシッ!」

 

「……………………」

 

対称的な二人は、何の前触れもなく肉薄し……龍は、ボクシング的な拳でストレート。双夜は、腕を薙ぐ様に払う。

ストレートと払いが当たると、龍はアクロバティックな動きで双夜の頭上を飛び越えつつ体を半捻りして回し蹴り。

双夜は、虚を付かれてはいたけれど右斜め下後方にバックステップして相手の蹴りをやり過ごし、背後に展開していたシューターを打ち出して相手を牽制する様に至近距離での直射魔法を使用。これには、龍も双夜を飛び越えた事で気が付いたが対応仕切れず、左側に展開した障壁を()()()腕の力のみで引き寄せる様にその場から離脱する。だが、双夜はその行動すら読んでいたかの様にシューターを打ち出した後、回り込んで回避後の無防備な背中を襲う。どうあっても、障壁を掴んでの無茶な回避では視線の向かう先が双夜から外れてしまう。この場合は、多少ダメージを負ってでも双夜から視線を外すべきではない。

どれだけ、その後の対応に自信があったのだとしても慢心は油断を招く。こういった、神速戦闘の回避行動ではリスクを背負った方が勝てる勝率は高い。まあ、双方の技量が高いのでワザとの可能性も否定できないけれど。

そして、この場合は後者の方だった。

双夜の拳が空振り……次の瞬間には、背後に生命体の気配。

空間を遮断して、防御した後振り向き様に砲撃魔法を叩き込んだ。だが、それは目眩ましで当たったらラッキー程度の牽制。『動体視力』での()()は、不可能と判断したらしく双夜は【真実の瞳】に相手の生命反応を示す様に命じていた。

視界の端に、赤い矢印の様なモノがチラチラ映る。

しかも、双夜の動きに合わせてグルングルンと回っていた。これは、相手が、動き回っている証拠で……異常な程に速い動きである事が伺える。

人間の動きではありえない。いや、そもそも人間の肉体では出し得ないレベルの動きである。肉体の限界を遥かに超えた、“人外の存在”でなければありえない動きだ。

だが……【内側】の世界にいる以上、その能力はその世界の限界に準じる。つまり、()()()()()()()()()というルールがあるのだ。即ち、何れだけ身体能力を向上させたとしても、そこにはその世界の法則に従わなければならないし、強制的にその枠組みに嵌め込まれるというルールが存在する。そのルールは、例え《旧・神族》ですらも無視できない絶対的なルールだ。

だが、この場に一人だけ例外が居た。当然、双夜である。

《ルール・ブレイカー》という、とても希少兼特殊能力を持つ者であるが故に、如何なる敵ですら彼には敵わない……はずだった。

激しい戦闘の最中、その《ルール・ブレイカー》を使って【世界の理】から抜け出した双夜が更に加速する。

しかし、何故か『龍』と名乗った者を振り切れない。

 

「フム……【エンドレス・エラー】とは、良く言ったモノだ。まさか、身体能力の数字すら変更が可能とは……しかも、限界はない。……ついでにいうなれば、それに代償や対価は必要ない……という事か。バグまみれだな」

 

戦い、その中から相手の情報を引き出して行く。

多少の被弾は、仕方がない。だが、それだけでは終わらないのが彼等……《神殺し》である。

 

「【死】は……ある、な……」

 

と、双夜は言っているが……実際には、彼の者の肉体に線や点が走っている訳ではない。彼の者を、【世界】に繋ぎ止める力の収束点が見えているだけだ。

 

「それと、あの可変的な動き……面倒な相手だな。とは言え、あまりやり過ぎると調整がウザくなるから、出来る事ならさっさと終わらせたい。が……」

 

双夜の願いは、叶いそうにない。

まあ、やり方はあるにはあるけれど。

 

ーー魅了、レジスト……

 

「フム……あの、龍の模様か?精神ブロックは、通常通り機能しt……っ!?」

 

瞬間、唐突に迫って来た鉄板にギョッ!?となる双夜。

それと、同時に感じたのは重力力場の()()

視線を巡らせば、原作人物達の近くに見慣れない黒髪のメイドが双夜に向けて手を付き出していた。

その掌から、重力異常を感知出来る。つまり、あの鉄板は彼処にいるメイドが操っているとみて間違いない。

双夜は、厄介だと考えて龍よりかは対処しやすそうなので放置する事にする。目の前のコレよりかは、歪みも少なそうなので意識から切り離した。

 

「…………仕方がない。諦めるか……《Access‼》」

 

ーーSystem online……

 

ーー【Connection】between the main body……

 

ーー……Completion.

 

ーーLimit Break! All!

 

ーー【System Connect】Ri start!!

 

瞬間、身体の中に直接太陽が突っ込まれた様な()を双夜は感じた。ついでに、己が“存在”が肥大化して行く様な感覚も得てしまう。だが、それはただの錯覚であり双夜自身に大きな変化はない。

だがしかし、ここに来て初めて双夜は『龍』と名乗った存在を振り払う事に成功していた。それだけではない。

今まで、先の読みあいをしていたはずなのに双夜の攻撃が当たる様になり始めたのである。

むしろ、一方的なモノになり始めていた。

だが、相手も負けっぱなしではない。なんとか、双夜から戦いの流れを奪い取ろうとするのだが……上手く行かない。

故に、その表情は驚愕に色取られていた。

ほぼ、苦肉の策で苦虫を噛み潰した様な顔をする『龍』は振り抜いた拳をそのままに()()()()()()()()

双夜の攻撃を避けると共に、その()()()()()()()()()銃口を双夜の目の前に突き付けて、発射される銃弾を無理矢理に当て様とした。

 

「っ!?」

 

ーー全機能、一時停止。

 

ーー敵対存在の行動束縛。

 

「!?」

 

だがその瞬間、何者かの手によって双夜の目に突き付けられていた銃弾が消失。二人は、身動きすら出来ない状態となってしまった。

 

「……なんだ、これは?何が起きた!?」

 

少し、龍が身動ぎしたが指先一つ動かせないのでは喧嘩処の話ではない。ガチガチに固められたまま、双夜とガンを睨み合っていた。

 

「…………チッ。…………この勝負、あんたの勝ちで良い。僕は、基本的に勝敗には拘らないからな……」

 

「何!?どういう意味だ……」

 

「そのままだよ。動けないんだろ?僕も動けない。って事は、世界がそれをさせない為に干渉しているんだろうさ……」

 

そう、双夜は宣ったが事実は違う。

世界ではなく、本体に【接続】した事によって《中の人》の能力が増し外部への干渉が可能になった事によるモノだ。

 

「…………世界が?」

 

「だから、先の戦いはあんたに勝ちを譲ってあげる。これが、世界の意思だというのなら僕達は戦ってはイケないんだろう……はぁ。仲直りをしよう。いきなり襲って悪かった。あんたを、仇敵だと勘違いしてしまったんだ。許せ……」

 

「…………仇敵?」

 

「他者の命を玩具扱いするクズの事さ……」

 

「…………そうか。その謝罪、受け取ろう……」

 

「で、話は変わるが……申し訳ないが、この世界からさっさと出てけ!」

 

取りようによっては、喧嘩を売っている様にしか見えないが……これは、この世界に必要な処置である。世界を調整するにしたって、一番大きな歪みが存在し続けていれば調整処の話ではない。

 

「……………………」

 

「僕も、用事が終わったらさっさと出て行くさ。その前に、ちょっと無茶をしたんで世界の調整をしてからになるだろうけどな……」

 

「……そう言えば、世界を調整する裏方だとか言ってたな……成る程、つまりそう言うことか……良いだろう」

 

両者の戦意が喪失した所で、二人は自由の身となった。

少し離れて、双夜は神崎と……龍は、黒髪のメイドと合流する。多少の遺恨は残っているだろうが、現状この世界で双夜と龍が戦う事は避けた方が良いだろう。

 

「師匠が、負けた……」

 

「神崎、うるさい……良いんだよ、勝負なんて時の運なんだから。それよりも、アッチの方が面倒そうなんだけど……」

 

そう言って、原作人物達と何かを話している龍に視線を向けて双夜は『関わりたくないなぁ……』という感想を漏らす。ぶっちゃけ、龍以上に原作人物達と転生者が面倒臭かった。いっそうの事、この場から立ち去りたい気持ちで一杯である。すると、龍達がやって来て声を掛けてきた。

 

「じゃあ、俺達は別の世界へ行く事にするよ……」

 

「別に構わないけど……世界の歪みになって、僕達を呼び寄せる様な真似はしない様にしてよね?また、干渉はされたくもないよ?」

 

「…………ああ、気を付けるさ……」

 

「それでなくても、君が原因に成りやすいんだから能力は抑え気味でよろしくね?」

 

「…………善処しよう」

 

「あ、しないパターンだ……」

 

「神崎、うるさい。じゃ、二度と会わない事を願っているよ。干渉するにしても程々に……」

 

そう言って、両者陣営は別れた。

龍達は、世界の壁を抜けて……双夜は、不振顔の原作人物達の元へと歩み寄って行く。全く、こんなはずじゃあ無かったというのに……良くわからない存在が、紛れ込んでいた為に双夜の計画は大きく狂わされてしまったのだった。

 

 

 

 

 




まーけーたー!!そ、双夜がま、ま、ま、ま、負けちゃったよおおおおぉぉぉぉぉーーーーー!?……と。

本体と【接続】した事により、『中の人』がヒョッコリ干渉して来ちゃった(笑)。事実上、完全な干渉事例。でも、それを誰にも知られたくなかった双夜は嘘を付いてまでそれを偽った。基本的に双夜は、『中の人』の事を気嫌いしてます。
まあ、『中の人』っていうのが『あの人』の転生体だから仕方がない。

つーか、この物語では双夜は負け無しとか言われてたけど……こういう事もあるんだよ。【エンドレス・エラー】については、《終りがない異常》って意味。
双・神『まんまじゃん……』
で、【真実の瞳】でも読み切れない存在を指す言葉なんだよ。読み取れる情報が大量過ぎて良くわからない存在。
双・神『だから、そのまんまだって!!』
まあ、希に読み取っちゃう奴も居るんだけどね。
【鮮血の(IQ300以上)】とか……【魔導兵器(経験)】とか……。
まあ、アイツ等は永く生きているし、経験や知識も豊富だからわかるんだけどさ。
因みに、今回出てきた【エンドレス・エラー】こと『龍』は……とある作者さんから提供されたキャラクターだ。
SAOモドキ世界を使わせて欲しいんだって(笑)。
俗に、『コラボ』と言うらしい。詳しい話は、また後日。

さて、今回双夜達は未来組……ヴィヴィオやハルにゃんの代わりに突っ込まれたのです。おねぇちゃんやピンク頭の妹は出て来ません。その代わりが、双夜達だからねぇ(笑)。
前回は、それもあって強制終了させた訳だ。双夜とヴィヴィオの関係どうするの!?とか、ハルにゃんとはどういう扱いにするの!?とか色々あったので……(震)。トーマとかの問題もあったので……だって、治しそうじゃん!?双夜の行動力を考えると、普通にトーマを完治させそうじゃん!!どうしろと!?なので、未来組は排除された訳だ。変則の物語だけど、楽しんでくださいね?多分、ユーリ&双夜vsU-Dはやるので……U-D逃げてぇ!マジで、逃げてぇ!!になるかと。つーか、この後の展開が一番読みにくいんじゃないかなぁ?あんだけの戦闘を見せられて、へし折れる自信の転生者と……何としてでも、味方に付けたい管理局の思惑とか大変だ(笑)。ああ、GOD終わったら出てくよ?調整してからになるけどね。

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