絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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祝・200話(笑)!!←殆ど、オマケ(笑)。

とりあえず、前回の最後。
魔法少女の世界に戻るまでのお話。


【リリなの】の転生者案はあるのに……
【SAOモドキ】の転生者案がない件。
しかし、募集するべきか……せざるべきか……。
(´ε`;)ゞ


二〇〇話

Re:

 

 

「…………ソ、ウニャくん?」

 

「にゃ?あ、すじゅかママ♪」

 

SAOモドキ世界に戻って、アルンに立ち寄ると中央の道筋ですじゅかママとバッタリ会った。すじゅかママは、もうすっかりSAOモドキ世界の住人の様だったんだけど……どこか、仄暗い雰囲気を纏っていて()みたいなモノが滲み出ている。何て言うか、妖艶とかそういうのじゃなくて女郎蜘蛛とか堕ち神化した蛇神的な暗さと言えば良いのだろうか?そんな、暗い雰囲気を纏っていた。

 

「…………師匠、なんかすずかさんおかしくないッスか?」

 

「ああ、うん。なんだろう……微黒ママ化してるのかな?」

 

「いや、なんか……そんな雰囲気じゃないみたいッスよ?」

 

「えっと……すじゅかママ、大丈夫?」

 

「ソウニャくんは、こっちにどれくらい居るのかな?」

 

おや?とは、思ったんだけれど問われた以上答えるのが俺の心情だ。

 

「え?えっと……しばらくしたら、またあちらの世界に戻るけど……すじゅかママ、本当に大丈夫?」

 

「そう……そんなに長くは居られないんだね……」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

この時、俺と神崎はかなり微妙な表情になっていたハズなんだけど……それを、気にしていないかなりおかしなすじゅかママがいた。こう、切羽詰まってる訳じゃないのに余裕がないと言えば良いのか……兎に角、何かが違っている様なそんな雰囲気を纏っていたんだ。

とりあえず、立ち話も何なので鉄達がギルド本部として購入したというアインクラッドの10階層にある街へとやって来た。もちろん、ここまでへは転移法陣を使って移動している。ただ、俺達が知らない内に世界樹上の妖精王城・空中庭園に設置されている本来の移動手段である転移法陣とは別にーー買い出しに不便だからと、別途設置されたモノーー設置されていたモノで……だ。

さて、パッと見た感じでは転移法陣は五つ。

まるで、それ等全てが中央の転移法陣を起動させる為の魔法陣である様に描かれていたが……起動しているのは中央の元からあったヤツと、中央から城側に設置してあった端のヤツだけだ。その隣には、カモフラージュ様の円陣があって大きな氷の塊が鎮座している。他の三つも似た様な状態だから何も知らない者が見れば【封印】されていると思うだろう。良い感じに上手く隠されていた。

 

「あれなら、転移法陣だとは思われないよな……」

 

「何の変鉄もない模様が、転移法陣だなんて思いませんよ。つーか、パッと見た感じに騙されました……」

 

神崎が、辟易とした表情で疲れたと言わんばかりに両腕の力を抜ききってダランと揺らす。

すじゅかママに案内された先には、こじんまりとはしていたけれどそこそこ立派な建物があった。

中に入ると、落ち着いた感じの大部屋とそこから小部屋へと繋がる扉が幾つかあるだけの建物だ。ゲーム時代は、ギルド所属のプレイヤーしか入れなかったらしいけど、今は鍵を持っている者が一緒なら誰でも出入りが可能らしい。

そして、その大部屋から続く扉の一つは台所や共有トイレや風呂に繋がる扉で……後は、個人用の小部屋に繋がる扉となっていた。

 

「調度良い拠点になりそうですね……」

 

「部屋も残っているみたいだし、増改築も可能みたいだしね……良いんじゃない?」

 

秘密基地程、快適では無いけれど拠点としては申し分ない。そうして、色々見て回っていると神崎が外回りも見てくると言い出して出て行ってしまった。

 

「そ、ソウニャくん!」

 

「ん?なに、すじゅかママ♪」

 

「あ、あのね……その…………」

 

「???」

 

何故か、モジモジとし始めるすじゅかママ。

どこか、違和感の様なモノを感じるが……それが『何か』と問われると答え様がないモノなので黙っていたんだけど、いよいよ意味不明だったソレが形を得てくる。

 

「えっと……何?」

 

「…………ソウニャくん、私と付き合ってくれないかな?」

 

「ーーーーーは?」

 

《神崎!神崎ィ!!神崎くーん!!!すじゅかママが、俺と付き合いたいとか言い出したんだけど!!!???》

 

《ふぁ!?》

 

一瞬、何を言われているのか全く訳がわからなかったけれど、頭の回転が戻ってくると急速に不安が込み上げて来たので神崎も巻き込んでみました。

 

じ ゃ な く て 、 ど う し て こ う な っ た !?

 

未だ混乱する頭を押さえつつ、顔を真っ赤にしてモジモジするすじゅかママを見上げる。

てか、こんな幼児に告白する母親ってどうよ?

 

《ダメだ。全然、冷静になれない……》

 

《えっと、戻りましょうか?》

 

《……ある意味、修羅場だぞ?突撃する勇気はあるか!?》

 

《あー……ないッスね……》

 

神崎と、どうでも良い事を言い合いながら何とか落ち着こうとするのだけれど……目の前にいる人が、それを許してくれそうにない。ぶっちゃけ、告白後に服を脱ぎ出したのでこっちの余裕はブッ飛んだ。

 

「にゃ!?ちょ、なんで服を脱ぎ出すんだ!?」

 

「え?ソウニャくんは、大人なんだよね?」

 

「まあ、そうだけど……いやいや、僕には女性の裸恐怖症っていうトラウマがあるんだけど!?そのまま、裸になられたら僕の精神は幼児後退化するんだよ!?」

 

「あ……そうだった。残念……」

 

「何が!?」

 

《神崎、助けて……すじゅかママが、御乱心だぁ!!》

 

《一応、アンチクリミナルコードが無いんで扉越しでもきこえてますが……師匠、何か別人みたいッスよ!?》

 

《てか、微黒化してない!?…………って、ん?……別人?》

 

神崎の進言により、フと思い付いた事があったので普段は下げ捲っている【真実の瞳】に割り振る力を最大へ変更する。そして、目を細めジー……とすじゅかママの中心を見詰めた。基本的に、人間の魂はその人物の中央にある。

なので、【真実の瞳】の感度を最大にすると……まあ、余計なモノも見えるんだけど、その人の本質とも言える魂が見える様になる訳だ。それで、わかった事は……このすじゅかママは、()()()()()()()()()という事だ。

 

《すじゅかママが、すじゅかママ()()()()()()()()!?》

 

《へ?……………………え!?じゃあ、そのすずかさんは……》

 

《この肉体の()()()()()()……『すずか』という、絶望の淵に堕ちた『すずかさん』らしい……》

 

「なんだってぇーーー!!??」

 

「きゃ!?」

 

ドバン!と、扉を開けて突撃してきた神崎が驚くすずかを無視して俺に詰め寄って来る。コイツ、タイミング見計らっていやがったな!?てか、言葉にしてないからすずかさんは超顔を紅くして恥ずかしがっているみたいだけど。

 

「じゃあ、師匠の親たる()()()さんは何処に……」

 

「そりゃあ…………この()()()さん以上の絶望に堕ちた『すずか』に憑依したって事なんじゃ……?」

 

結論。なんじゃそりゃ!?みたいな現実に、俺達は頭を抱えてしゃがみ込むハメになった。すじゅかママを確保して、安心仕切っていた所にこの仕打ち。

ある意味、俺に取っての地獄である。

てか、アレか!?【魂】ソノモノを確保しないと、永遠にイタチゴッコをする事になるのか!?『すずか』が、前任者以上の絶望を得る毎に『すじゅかママ』はその絶望した『すずか』に憑依転生し続けると!?

 

「最悪だ!!」

 

「ああ……もう、これは……『転生者ェ……』って言うしかないのか……確かに、最悪だ!!」

 

《とりあえず、鉄拉致って来て……》

 

《当て馬ならぬ、生け贄にされる訳か……》

 

大きな溜め息を吐き出して、神崎は階層攻略に明け暮れている鉄を拉致りに出て行った。それを見送って、残された俺はこのすずかを説得する為に冷静になった頭をフル回転させる。

 

「とりあえず、先のお願いは却下で。言っとくけど、僕はこの世界に常駐出来る訳でもないし……任務を終えれば、泡となって消える運命なんだよ?そんなのと付き合ってどうなるの?」

 

「…………でも、ソウニャくんにはその責任があるよね?」

 

仄暗い表情で、すがる様な視線を向けて来るすずか。

それを視て、すずかがとある勘違いを前提にしている事に気が付いた。きっと、『すずか』は未だ自分が吸血鬼だとでも思い込んでいるのだろう。だから、人を避けて孤独である事を選んだ訳だ。そして、その孤独から来る寂しさを俺にぶつけて晴らそうとしている。

 

「……それって、すずかさんの帰る場所を消しちゃった責任を言ってるのかな?ふふふ……そんなの、ある訳ないじゃん」

 

「なっ!?」

 

何故か、すずかは驚愕したかの様な表情で俺を睨み付けて来た。もしかして、俺が責任を放棄したとでも思っているのだろうか?ああ、今の『すずか』ならありそうな話だ。

 

「そもそも、すずかさんへの責任って失われた世界と生活の保証。それから、個人が損失したモノを何とかする……だよね?だけど、世界と生活……個人の損失はここに連れて来た事で果たしているんだよ?」

 

「…………え?」

 

俺の言った意味が伝わらなかったのか、すずかは首を傾げた上で疑問の声を上げた。だけど、その責任は既に果たされている。失われた世界は、この世界で補っているし……失われた絆や人材(友人)は『すずか』が思い違いで避けているだけだ。ぶっちゃけ、ここに『すずか』を拒絶する馬鹿はいないのだから自由に羽ばたけば良い。

 

「だって、世界は言うに及ばす……個人が、損失したモノって絆と人材だ。基本的に絆ってのは、人と人が出会って縁を結んで行くモノであって僕が保証出来るモノじゃない。それは、すずかさんが築き上げて行くモノだ。だから、僕に出来るのは、人材を紹介するだけだよ……」

 

「…………でも、それは……」

 

「吸血鬼である心配?もう、発情期もないのにいつまで吸血鬼でいるつもりなのさ?君はもう、その運命から解放されているんだよ?」

 

「…………あ……」

 

わかり切っていた事だったけれど、やっぱりすずかは大きな勘違いをしていたみたいだった。と言うか、何時すじゅかママと入れ替わったのかはわからないが、一番大事な記憶がスッポ抜けているらしい。いや、入れ替わったばかりだから混乱しているのかもしれない。

だけど、既に『すずか』は自由になっているのだから自分の好きな様に行動すれば良いだけの話だ。

 

「なら、やるべき事は簡単だ……()()であれ、月村すずか。君を束縛するモノは最早何もない。今までは、月村の運命から逃れられなかっただろうが……世界が違えば、そのルールは当然異なってくる。あの世界では、吸血鬼だったかも知れないけれど……この世界では、ただの人間だ。血を必要とせず、発情期も来ないただの人間だ。自由であれ……君の未来は、無限である!」

 

「……………………うん……ありがとう、ソウニャくん……」

 

やれやれ、月村家の呪縛は思っていた以上に『すずか』の心をがんじがらめにしているらしい。

だけど、世界が違えば適応される【理】も大きく違って来るのだからもう少し冷静であって欲しかった。

 

「とりあえず、友人候補を神崎に迎えに行かせたから、ちょっと待ってて……直ぐには無理だけど、30分以内には連れて来てくれると思うから……」

 

「……………………ねぇ、ソウニャくん」

 

「ん?」

 

「私の恋人になってくれないかな?」

 

「は?」

 

「プラトニックな関係でも良いから、私の恋人になって欲しい……」

 

「ーーーーー」

 

何 で 、 そ う な る !?

 

それが出来ないから、説得したというのに……どういう思考ルーチンでその結論に至った!?

すずかが、何を言っているのか俺には全く意味がわからない。そう言えば、第一世界のアリシアも俺が『好き』だとか言っていたけど……どうしたら、そんな思考に陥るのかが俺にはわからなかった。

俺は、自分がいかに残酷無慈悲で冷酷な魔王かという事をちゃんと理解している。『静』の様に、先にも後にも行けずに()()()()()()の状態に陥って助けを求めている訳でも無いのに……俺みたいな存在に、救いを求めて手を伸ばすなんて正気の沙汰ではない。

詰まる所、目の前にいる()()()は正気では無いという事になる。その原因が、何なのかはわからないけれど俺みたいな存在に救いを求めるなんて、余程切羽詰まっているんだろうと思われた。当て馬……って訳じゃないけど、神崎が鉄達を連れて来てくれるのを今か今かと待っている。出来るだけ早く、迅速に行動して欲しいが……そんなムチャを言える様な状況でもない。

 

「えっと……とりあえず、落ち着こう?」

 

「私は、落ち着いているよ?」

 

「いやいや、超御乱心してますって!!五歳児捕まえて、恋人になってなんて普通の乙女は言わないよ!?」

 

「え?でも……ソウニャくんって、常識の範囲外の存在なんだよね?」

 

「活動する時は、ちゃんとその世界の常識に合わせてるよ!?何、その人外は化け物だから人間の法律に従わなくて良いみたいな発言は!?」

 

そりゃ、ちょっとハメを外したりはするけど……ちゃんと、常識内で済むようにしているよ!?

後、世の事も考えてますとも。

そりゃ、手段と方法は選ばないけれど。

 

「そう、なの?」

 

「それ程、長い期間……同じ世界に居られる訳じゃないからね。まあ、任務が終わらなければ長期になるけど……そこまで、僕達の能力は低くはないよ……」

 

態と延ばす事はあっても、必要最低限の事はやっているつもりだ。下手をすると、【世界】そのモノの意思に弾かれる事はあるけれど。そうならなければ、長居する事は出来なくもない。

 

「じゃあ、ずっとここにいてくれないかな?」

 

「無理だと思うよ?一つの世界軸に留まれるのは、長くても二、三年が限度だから……それ以上は、失敗と見なされて終わるだけだ。このSAOモドキ世界は、協力者を集って事に当たっている。別の世界へも、行ってるからこそ延長出来る訳で……そうでなければ、強制的に排除されているよ?だって、僕達には永住権なんて与えられていないモノ……」

 

そもそも、俺達は【世界という枠組み】から外された存在だ。理由は、()()()()()に近付き過ぎたから。

今の存在であるなら、それ程問題視される事もなかったんだが……あの頃はまだ、【人間】だったからな。

そんなモノに近付き過ぎたが故に、俺達は世界から見放され外れた存在となってしまった。

 

「…………そ、んな……」

 

「あくまで、僕は世界と言う名の舞台を調整するだけの存在だよ?それ以上の権限なんて持たない。望んだ事もない。それが、僕達。世界の理から外れた……もしくは、外された者達の集い。Ruin person……《理外の破滅者》だ」

 

とは言え、そう呼んでいるのは俺とセイビヤくらいなモノだ。

 

「……………………」

 

「ーーーーー」

 

だからと言って、【理】外の生物ーー【外】に存在する生物。天上界や魔地界等に生息する外見ヤバめの怪物ーー捕まえてバーベキュウを始めたり、ゲテモノ食い競争なる大会を開催するのは間違っていると思われる。(現実逃避 始)

そりゃ、見た目がアレだから度胸試しには持って来いだが元より理外の生物は食用じゃねぇから!あの大会の後、どれだけの患者が出ると思ってんだかわかっているのだろうか!?その度に、メディカルセンターに駆り出される使い魔達の事も考えて欲しい。あんな事を繰り返すから、一部の理外の生物が絶滅の危機に晒されるんだ。

 

「…………っ、そんな事ーーーーー」

 

ドバン!!

 

「連れて帰って来たぜ!!」

 

「きゃ!?」

 

「おう。早かったな、神崎」

 

思考の果てに飛んでいた俺は、神崎の扉を開け放つ音で現実に引き戻され、神崎と引き摺られてボロボロになった鉄に視線を向けた。鉄は、白目を剥いていてグッタリと気を失っている様だ。余程、怖い目にあったと見える。

 

「…………翼は?」

 

「翼も、必要でした?」

 

「うん?ああ……」

 

「じゃ、お姫さま抱っこで連れて来ます!!」

 

何故か、おかしなテンションでノリノリな神崎は鉄をほっぽいといて、ヒャッホーっとまた走り去って行った。

てか、お姫さま抱っこなんてしたら……燻っている、翼の心にまた炎を灯す事になりかねないぞ?漸く、神崎と離れて落ち着いて来たというのに……あの馬鹿は。

 

「…………なんかの毒に引っ掛かった?」

 

「うぅっ……」

 

「いずれにしろ、馬鹿はまた翼に怯える様になるんだろうなぁ……はあ、もう助けんからな?」

 

「あ……え?」

 

去って行った馬鹿の後、鉄が目を覚まして周囲を確認後先ず、すずかを見てから俺の方へと視線を向けた。

 

「あ、へ?双夜、さん?」

 

「よ、一ヶ月ぶり。てか、大丈夫か?」

 

「あー、まあ……さっきまで、死にそうでしたけど……」

 

気持ちは、わからないでもないが……だが、尻餅程度では死にはしないと思うぞ?

 

「……いっ……っててて……こ、腰が……」

 

「どんだけ、打ち付けたんだ?」

 

「あー……階層を跨ぐ階段ですから、限りなくたくさん、でしょうね…………うっかり、階段を尻で降りる事になりましたよ。貴重な体験でしたー」

 

鉄は、そう言って笑っていたがコイツ相当怒っていやがるな?まあ、ほぼ完全に戦場から拉致られて来たのだろうけど、神崎の手荒さには辟易する。

 

「そっか、お姫さま抱っこの方がよかったか……」

 

「ちょ!?俺は、ホモじゃありません!!」

 

「誰も、そんな事は言ってない。何、君……ホモなの?」

 

「くっ…………フツーに、女性が好きですよ!!」

 

「じゃあ、そこにいる月村すずかさんを紹介しよう……」

 

鉄が、女性好きを宣言するので元・すじゅかママを紹介してみました。すると、俺の言った意味が伝わらなかったらしく困惑した様子の鉄が首を傾げながらキョトンとしている。

 

「は?……いやいやいや、中身が変わっちゃった原作人物はちょっと。それなら、SAOの原作主要外人物(モブキャラ)に走りますって……」

 

大きなすれ違いの為、キョトンとしていた顔を振りたくって鉄が拒絶するのでその勘違いを正す事にする。

 

「ところがどっこい。ここにいる『すずか』は、『すじゅかママ』では()()()()()しまっている。どうやら、ここにいる『すずか』が感じた以上の絶望を得た『すずか』が現れたらしく……『すずか』から『すじゅかママ』が()()()、普通の『すずか』に戻ってしまったみたいなんだ……」

 

「……え?ちょ、ちょっと待って下さい。えっと……『すずか』から、『未来のすずか』が抜けて本来の『すずか』に戻った!?」

 

そう、説明しているのに何を変換したかったのか良くわからないが、鉄は自分の言葉に並べ替えてそれを理解しようとする。理解してたのか、サーっと血の気を引かせてゆっくり油をさし忘れたブリキ人形みたく不規則な動きですずかを見上げた。今の変換に、受けを狙う意味はないぞ?

しかも、何も変換されてはいなかったからな?

 

「ああ。だから、お前の大好きな原作人物だぞ!?」

 

「えぇ……。何なんですか、その……玩具チョコみたいな話は……玩具を抜いたら、チョコ(だけ)になりました!とでも言うつもりですか!?」

 

「人化して、吸血衝動も発情期も来ない有料物件だぞ?」

 

「俺的には、吸血や発情期があっても全然問題ないですけどね。むしろ、萌えます!」

 

「変態がいた。やっぱ、お前……ホモなんじゃね?」

 

「なんで、吸血や発情期云々でホモって事になるんですか!?つーか、変態じゃねぇよ!!」

 

「ぶっちゃけ、変態だろう?女性の……しかも、発情期なんてモンに燃えるだなんて……交配方面で、完全な変態じゃないか。と言うより、女性に発情期がないと落とせないとか……踏み台転生者的発言は、コミュ障の証だぞ?」

 

「ぐふっ…………」

 

バッサリ斬り捨ててやったら、それなりの精神ダメージになったらしく、馬鹿は撃沈して血ヘドを吐きながら『orz』の状態へと沈んでいく。

 

「あ。ごめんね?すずか……この話題は、トラウマだったっけ?でも……もう、君とは関係の無い話なんだから思い出……いや、黒歴史として心の奥底に封印しちゃってね?」

 

「……ふふふ。黒歴史、になるんだね……」

 

「実際に起こらない事は、『中二病』扱いになるらしいよ?詰まる所、すずかが自分を吸血鬼扱いする度に『中二病』と揶揄される様になる訳だ(笑)」

 

「…………私の半生が、『中二病』扱い……」

 

何故か、微妙にショックを受けているすずかがいて……『orz』状態で悶絶する馬鹿がいるという不思議な状況が出来上がってしまった。そんな、混乱極まる状況へ突っ込んで来るのは、翼をお姫さま抱っこしたもう一人の馬鹿である。

抱っこされている翼は、顔を真っ赤にして沈黙。

余計、おかしな状況をおかしな空間へとシフトさせる。

 

「とりあえず、みんな落ち着こうか?」

 

 

 

……………………。

 

 

 

という訳で、一旦落ち着く為に大広間にあった円卓に座りみんなでお茶を啜る。ふぅと一息付いた俺達は、状況報告をしつつ現状の問題を議題とした。

 

「というか、すずか?なんで、こんなチビッ子を恋人にしようと思った訳?」

 

「翼ちゃんだって、神崎くんが好きなんでしょう?」

 

「…………なんか、居心地が悪いんですけど……」

 

「頑張れ(笑)」

 

「当事者なのに、他人事なのか……」

 

それぞれの感想が飛び交う中、すずかと翼の良くわからない攻防が開始される。その隣で、居たたまれない神崎とマイペースな俺。そして、部外者の位置に座る鉄がいる状態だ。混乱極まる状況の中、女性が一番元気なのは性別的な性質のセイか?

 

「何はともあれ、僕はすずかと付き合う気はないぞ?」

 

「あー、俺も翼と付き合うつもりはない……」

 

「おぉ!?これ、フッたって事になるんですか!?」

 

「そもそも、僕は対象外だろう?」

 

「「まあ……見た目、子供だしなぁ……」」

 

「あら?恋愛に、年齢なんて関係ないのよ?」

 

「……そうね。年の差カップルなんて、珍しくもないでしょう?」

 

「「「結託して来た!?」」」

 

男性人が庇い合いを始めると、何故か女性陣も結託するという理不尽。てか、この話はさっさと終わらせたいんですけど。

段々、面倒になって来た。

 

「ハッキリ言うけど、僕には恋人いるんだけど?」

 

「「「「えぇ!?」」」」

 

「師匠、恋人いたんですか!?……あれ?そう言えば、聞いた様な気が…………」

 

「俺、知らないッスよ!?」

 

「……………………」

 

「そうね。聞いた様な記憶があるわ……」

 

「なんで、お断り致します。なので、鉄とかどうよ?」

 

「お調子者は、ちょっと……」

 

「グフッ……」

 

「ふぉ!?鉄、傷は浅いぞ!!」

 

「……もう、俺は、ダメだ……」

 

「く、鉄ぇ!!!!」

 

ガクッと、意識を失うフリをする鉄を抱き上げて小芝居を打つ神崎。何がしたいんのかわからないので放置。

それでも、続けられる小芝居。あれか!?こちらに、関わりたくないっていう意思表示か!?

 

「放っておきなさい。関わりたくないのなら、関わらせなくて良いわ。そうね、私が神崎を好きなのは認めて上げる。だって、神崎ってば私にベタ惚れですもの……」

 

「誰が、ベタ惚れか!?」

 

翼の言に、超反応する神崎。

関わりたくないっていうのなら、関わりたくなる様に誘導するつもりなのだろう。だが、それはちょっと悪手だ。

 

「神崎くん……関わりたくないんじゃないの?」

 

「嘘八百を並べられるのなら参加するわ!!」

 

「嘘八百?じゃ、どうして私を助けてくれたの?」

 

「…………第一世界の事を言ってるのか?」

 

「それ以外でもよ。何度も、助けてくれたじゃないの……」

 

「助けたけど……あれだ。思わず、身体が動いただけだ……」

 

「神崎の場合は、性質的なモノだと思うけど?放って置けなかった……というのが、理由だと思うんだけどなぁ……」

 

「…………放って置いてくれたら良かったのよ……」

 

そうすれば、神崎を好きに成らずに済んだと翼は考えるのだろう。だが、二人の関係に俺が口を出せるはずもなく……どう、終結させるかの話になるのだが……難題だな。

 

「……………………」

 

「何か、複雑なんですね……」

 

「この二人は……な。それに、神崎は超鈍感だから……」

 

「はあ!?まさか、師匠は俺が翼の事を好きだとでも言うつもりですか!?」

 

「そうだとは、言ってない。だが、人間は自分の心を一番理解していないのは知っている」

 

「それは…………」

 

「言えんだろう?『理解している』とは。だが、他者から見るとそうではないとだけ言っておこう……」

 

「【真実の瞳】ですか?」

 

「基本、そんなモンは使わん。ただの、表面上の話だ。てか、この話題は早々に斬り捨てたい。恋人に知られたら……」

 

「知られたら?」

 

「腐っちまう……」

 

「……拗ねられるんですか?」

 

「そのままだ。腐食系の魔法が連発されるんだよ!!」

 

「「物理的か!?」」

 

「腐食の魔女……って事ですか?」

 

「うん?あー……いや、アイツは暗黒系の魔導師だ。その中でも、相手を腐らせる魔法を好んで使うんだよ……」

 

「本当の意味で、腐女子!?」

 

「おい、止めろ!ネタにするんじゃねぇよ!!」

 

閑話休題。

 

 

結局、決着は付かなかった。

最終的に、居たたまれなくなった神崎が鉄を拉致って逃亡。俺の方は、完全に話し合いで諦めて貰ってから神崎が念話で指定した場所へと向かう事に。

ええ、ちゃんと諦めて貰いましたよ?

恋愛に関する遺恨は、残さない主義なので。その内、第一世界のアリシアの事もちゃんとする予定である。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

そして、俺達は【魔法少女】の世界にやって来た。

 

「SAOモドキ世界に渡ると見せ掛けて……まだ、【リリなの】の世界だったりする(笑)」

 

「いやいや!今、全力でトンボ返りして来ましたやん!」

 

「だって、()()()が怖かったんだもん……」

 

まさか、放置のし過ぎでヤンデレ化してるなんて思いもしなかった。と言うか、どういう思考ルーチンを辿れば俺を()()()()()として好きになるのかが全くわからない。

 

「神崎なら、恋愛マスターなんだからわかるだろう?」

 

「全くわかりません。つーか、すずかさんの思考ルーチンは解読不明です……」

 

「チッ……役に立たない補佐だなぁ……」

 

「止めてください。それは、効きます……」

 

何はともあれ、あの後がどうなったのかが気になったので使い魔を使って情報を収集する。と言っても、常駐していた使い魔がいるので、そいつが記録している画像データをこちらの腕輪(PC)に送って貰って確認の為に中身を検分する。

 

「なにょはママの絶叫は、まだまだ続いていたんだね……」

 

俺が、この世界の【外】に出る前も絶叫していたハズなんだが……今度は、みんなの記憶から俺が消えた事に対して絶叫しているモヨウ。周囲の困惑する様子が、なにょはママの絶叫を更に強化している様にも思えた。

 

「そう言えば、【外】に出たのですから……誰の記憶にも残っていないのですよね?なら、なのはさんの元に戻っても良いのでは?」

 

「えー、嫌だよ?幼児に手を上げる様なクズがいる管理局なんて行きたくない。てか、あちらに僕達の情報が伝わっていないからこそ、動くんじゃないか!!」

 

そう言って、にこやかに使い魔達へ指示を出す。

 

「何する気ですか!?」

 

「もちろん。管理局がスポンサーの、違法研究所を使い魔達全員で一斉に攻撃するに決まっているだろう?ああ……もちろん、使えそうなデータは全部消去だ!」

 

一度でも、喧嘩を売られたのだからそれに関係する者達の元に戻ってやる必要はない。そんな事をしたら、クズ局員……スゥベルト中佐を喜ばせるだけじゃないか。

記憶がないとは言え、出会ってしまえば戻るんだから地下に潜ったままの方が便利だ。それに、記憶にはなくても自分が関わっている事くらいは理解出来るだろう。

まあ、保険は掛けておくけど。

 

「何はともあれ、その為には管理局が関わっていると思われる違法研究施設を探さないと……だね♪」

 

「一斉襲撃という事は、我々で事に当たると?」

 

「うん。フレールくんを使えば、タイミングを合わせる事は可能だろう?管理局には、それを持って宣戦布告とするんだよ。自分達が関わる、研究施設を襲撃されれば嫌でも理解出来るだろう?」

 

「うわぁ……鬼畜ぅ♪」

 

「ついでに、こちらの意図や規模も伝わるだろうから冷や汗ダラダラもんだろうな♪」

 

一度に、全ての研究施設が襲われればこちらの規模が伝わるのも時間の問題だ。いや、それを知る事が出来るのは最高評議会の脳ミソとそれに関わっていたクズ局員くらいだけだな。なら、メッセージがちゃんと伝わる様に『時空管理局・監査室所属スゥベルト中佐参上!!』とでも落書きしておこうか?

翌日には、間違いなく消されているだろうけど(笑)。

 

「っ!?し、師匠っ!!」

 

「あ?……っ、何ぃ!?」

 

背後から聞こえた、神崎の何かに気が付いた様な悲鳴に驚いて振り返るが……俺の意識と記憶があったのはそこまでだった。

 

 

 

……………………。

 

 

 

「師匠、これは……一体……」

 

「……………………」

 

何も存在しない、漆黒の空間で神崎が問い掛けて来る。

だが、俺は何も答えず……ただ、暗闇を睨み付けるだけだった。

 

「師匠?」

 

「強制排除された……」

 

まさかの、『お前等、もう必要ないから出てけ!』とか……色々、ヤってくれる。そもそも、この世界軸に来た時だって強制だったっていうのに……()()が過ぎるというモノだ。

()()というのは、本当に自己中である。

 

「チッ……使い魔の回収後、撤退するぞ?」

 

こうして、俺達は世界から弾き出されたのだった。

 

 

 

 

 




回想回でした。わかり辛いかと思ったのですが……そのまんま、載っけ。そして、戻って来たと思ったら弾かれた……と。
続ける予定だったんだけど……今回は、必要とされる存在を強制召喚して、不必要となった存在を理不尽に強制排除するっていう円環にのっとった法則を書いてみました。
強制で来たのなら、帰る時も強制で!!って感じですかね?

いやー、本当にこの世界軸は長くなりましたねー(笑)。
そして、なにょはママは絶叫し続ける……と。嘱託魔導師となって、撃沈なしのまま14歳でカートリッジシステムをRHに搭載。無敗のエースオブエースとして歴史に残る。
因みに、最後まで『なにょはママ』の意識だったモヨウ。

まあ、この人を絶望させようと思ったら生半可な事じゃあムリそうだからねぇ……それこそ、目の前で大事な人が引き裂かれたりでもしない限りは無理そう。
そして、『高町なのは』の生涯を経てまた転生……と。
転生被害者化してますね(笑)。ただ、自分にしか転生出来ないみたいですけど……。

おまけ……転生者をほぼ全員、処理しちゃったらそりゃ弾かれるって(笑)。美醜逆転で、海鳴市に集まって来たのがほぼ世界の歪みの元になっていた転生者達だ。その転生者のリンカーコアを【闇の書(偽)】で、蒐集して何もならない訳がない。萎縮しちゃったり、リンカーコアへのダメージでセットアップ出来なくなったりと色々。【世界】からの干渉有り。
結果、歪みの元を取り払った事に(笑)。
そして、この世界軸ではGODも起こせませんでした。
《ルール・ブレイカー》で、消したら当たり前じゃん!!
完全に双夜と作者の『うっかり』です☆(笑)。

翔悟のその後。
当初は、【闇の書】の首謀者として罪を擦り付けられるもギル・グレアムの暴露によって救われる。その後、正式に時空管理局へ入隊。で、【闇の書事件】を一人で解決に導いたとして、【空戦魔導師二等空尉】が贈られるも辞退。
一般の空戦魔導師からのスタートする。
数々の功績を上げるが、17歳の時に本局から地上管理局へ移動。以降は、持ち前の面倒見の良さで陸士訓練校の教官として名を馳せる。瞬動術と鎧通しを広めた功労者でもある。
それによって、救われた魔導師は数多い。
犯罪者の検挙率も、原作の25%増し。
レジアスの裏側離脱を手助けする形となる。
【JS事件】の時は、混乱に乗じて暗躍。管理局に潜入しえいた戦闘機人・ドゥーエを暗殺して、レジアスとゼストを(ゼストは宝具で)救う。その後も、何事もなかったかの様に教官職を全うする。

ついで(笑)。
レジアスは、首都防衛隊代表/防衛長官を辞任。裏に関わっていた者として出頭し、最高評議会を含め己の関わった犯罪を暴露する。
ゼストは、メガーヌと共にルーテシアの三人で、第34無人世界の「マークラン」第1区画で暮らしている。そして、皆から『何時、結婚するの?』とからかわれる日々を過ごす。
ジェイル・スカリエッティは、右京右折はあったものの【JS事件】を起こす事に成功する。まあ、戦力ダウンはあったけれど概ね原作に近いレベルを維持。逮捕後は、『暗いの恐い!』等と暗闇に酷く怯える(ナンバーズ含む)ので明るい留置所にて監修。微妙に哀れ(笑)。死亡は、ドゥーエのみ(笑)。
ウーノ・トーレ・クアットロ・テッセも、明るい留置所を望む。暗い場所だと発狂するらしい。

後、『すじゅか』が『すずか』になってしまった話題かな?
そろそろ、完全に浮いて来たので強制転生させました。
アルンに永住させる予定は無かったんですが……すずかの性格上、攻略に参加するとも思えなかったのでアルンに放置。
その結果、もう一つのストーリーも進める事に。
こっちは、【リリなの】関連のオリジナルストーリーの方ね(笑)。あと、Vivid編前に【INNOCENT】が入るのかな?
カードゲームのお話なのに、人々が見守る中……リアルで、【ディバインバスター】とか殺ってみたいですよね!!
絶対、神崎が悲鳴を上げる!!
「らめぇええぇぇぇ!!」←(笑)。
GOD終わったら、Vivid編?に突入出来たら良いなぁ……。
過去編は、もうあまりやりたくない。まあ、物語上必要とするならやるけど……大人ではない原作人物との絡みはキツいです。なので、sts以降の話を書きたいので御了承の程を。
vivid編は、stsからのVividに行きたかったのですが……最後の最後で、介入させるのもアレなので。もしかしたら、『聖王のゆりかご』戦に介入するかもですが……何はともあれ、この次の次はVivid編へ行けたら良いなぁ(予定)。
そして、ユーリとイチャイチャさせるんだ!!

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