絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一九六話

???

 

 

12月24日早朝。

海鳴市、AM09時15分。

私立聖祥大付属小学校付近。

 

 

お出掛け途中の、高町なのは(9)が襲撃される。

小規模な封鎖結界ーー僅か、100メートル四方の小規模結界。針に糸を通すかの様なピンポイントでの展開に術者の技量が恐ろしい程にわかるレベルーーで囲まれたと思った瞬間、唐突に間合いに入って来た背の低い巨乳の女の子がハンマーを振り上げて襲ってきた。

それを何とか、障壁で防いだ高町なのはは一度間合いを開けようとするが、更なる踏み込みと攻撃のラッシュによってセットアップも出来ないまま撃沈する。

 

「っ……ああぁぁ……!!」

 

そして、【闇の書(偽)】が出現し蒐集が開始されると高町なのはが呻く様な悲鳴を上げた。

 

「くっ……な、なんで…………」

 

ついて出たのは、疑問の声。

きっと、【闇の書】が【夜天の書】に戻り全てがハッピーエンドになった事で【闇の書事件】が起きるはずかないと言いたいのだと思われる。だがしかし、相対する者は口を開く事なく蒐集を終了し去って行く。

 

「ま、って……!」

 

「……………………」

 

呼び止められて、立ち止まる相対者。

蒐集が終わった以上、高町なのはに戦う力は残されていないが故の余裕だった。少し、興が乗って見下ろせば弱々しくも強い意思を秘めた瞳が彼女を見詰めていた。

 

「……そう、にゃ……くんは、ど、こに、いる、の!?」

 

「ーーーーー」

 

彼女は、予想していた事と異なる質問に驚いた様子で目を見開き……少しだけ、笑みを浮かべ……だが、何も告げる事なく去って行った。

 

「あ……ま、て…………」

 

転移する彼女に、手を伸ばす高町なのは。

そのまま、意識が遠退きパタリと力なく手を落とした彼女は眠る様に気を失った。

 

「……道端に放置は駄目だよ。全く、僕がいるからって手を抜き過ぎだ……と、やはり。なにょはママはなにょはママだね。ここにあるのは、未改造のレイジングハートか……」

 

フラリと、物影から現れたのは如月双夜。

大人モードの彼は、封時結界が消えてしまう前に高町なのはを抱きかかえ危険のない場所へと移動する。そっと地面に、高町なのはを横たえると駅前方面に視線を向けて大きな溜め息を吐き出す。

 

「はぁ…………アルカ、居る?」

 

「はい。ここに……」

 

人通りが少なく、出歩いている人影もない道端で思案していると、レイジングハートが救難信号を発する気配を感じ取る。双夜が、それを感じ取れた理由はその行為が魔力によるモノだったからだろう。

 

「……彼方さんの動向は?」

 

「食い付いてます……それと、暗躍しておられます」

 

安心した様子の主を見て、『アルカ』と呼ばれた使い魔は現在進行形で進んでいる《彼方》の動向を双夜に伝えた。

 

「はあ……様子見か。もう、終わった話なのにね?信じられない気持ちはわかるけど、ちょっと愚行が過ぎるかな?」

 

「それと、我々の転生者狩りを【闇の書事件】と同一視しているモヨウです……」

 

「……まあ、そっちはワザとそうなる様に仕向けてるから仕方がないとは言え……食い付いちゃったか……」

 

どこか、そうなっては欲しくなかった的なニュアンスを多分に含んだ言い方をする双夜。

頭をガシガシ、掻きむしりながら大きな溜め息を吐く。

 

「はい」

 

「わかった。引き続き監視を頼む……と、お姉ちゃんの方……親バカが気が付いちゃったみたいだぞ?」

 

双夜の視線が、駅前に展開された結界の方に向く。

晴れ渡った空から、紫の雷が駅前で展開されていた封時結界に落ちた。二度・三度と、紫の魔力光を纏った雷が落ちる。

きっと、フェイト・テスタロッサを襲撃した者が展開した結界を破壊しようとしているのだろうけど……【闇の書(偽)】に、蓄積された魔力を使用しているので早々壊れる事はない。蓄積された魔力は、膨大な量を誇っている。

 

「まだ、終わりませんか?」

 

「大方、楽しんでいるんだろう……全く……」

 

ぶっちゃけ、SLBであったとしても破壊は不可能だ。

 

なので、彼方の担当はユックリ楽しみつつ戦闘を継続している。流石は、使い魔屈指の戦闘狂。

しかも、高町なのはが襲撃されて苦戦している事を告げて上で冷静さを失わせる等の行為も見られた。

 

「さっさと済ませてしまえ。……撤収する」

 

双夜は、通信でそう伝えると一度だけ高町なのはに振り返り目を細めた後で妖精魔法にてスゥッと消えた。

駅前の結界には、更にゴン太の雷が突き刺さり破壊活動に容赦が無くなりつつあるが、ほぼ無傷のまま時空管理局の介入も始まる。プレシア・テスタロッサの大規模魔法で、それに気が付いたのだと思われた。

だが、破壊される様子はない。

既に、高町なのはは堕ちて……フェイト・テスタロッサも時間の問題。結界の外にいる、プレシア・テスタロッサは巨大な魔力を持っているが予定されていないので論外。

時空管理局の武装隊は、別の理由で放置されている。

転生者でないのもあるが、一番の理由は後片付け要員が居なくなるのは双夜達にも困る問題だった。

 

 

 

…………………………………

 

 

 

……少し前に戻る……

 

 

 

…………………………………

 

 

 

クリスマスプレゼントを持って、『翠屋』に向かう途中だったフェイト・テスタロッサ。そこを、ポニーテールで()がまな板の剣士に襲撃されて即セットアップするも刀を一閃、バルディッシュを破壊されて地面に叩き付けられる。

 

「くっ…………」

 

「ほぉ……あの白い魔導師の様には行かんか……」

 

「…………白い……なのは?なのはに、何を……まさか!?」

 

呟かれる言葉に、心当たりを刺激されたフェイト・テスタロッサは一瞬で頭に血が昇り、冷静さを失って攻撃的になってしまう。ただし、その攻撃は勢いがあるだけの直線的なモノ。相対する者に取っては、単調な読みやすいじゃれあいみたいなモノでしかなかった。

 

「襲撃されているのが、自分だけだと思ったか?」

 

「っ……!貴様っ!!」

 

笑みを浮かべる()がまな板の相対者に、魔力光を纏っただけのフェイト・テスタロッサは全力で突っ込んで行く。

それを見越していたのか、()がまな板の相対者は軽く避けると回し蹴りでフェイト・テスタロッサとの間合いを開ける。

そして、自ら踏み込む事で流れを自分のモノとし、小さな黒い魔導師を手玉に取って戦いを有利に進めていく。

対するフェイト・テスタロッサは、分の悪い流れを感じつつも何とか形勢逆転を計ろうとしていたが終始押し込められて巧く動けないでいた。

なので、ほぼ無理矢理魔力をゼロ距離で爆発させて間合いを離し仕切り直しの形に持ち込む。

 

「チッ。中々、無茶をしてくれる……と、彼方はもう終わった様だな……クックックッ……」

 

「っ!?なのは!!」

 

そう言われて、フェイト・テスタロッサは思わず視線を相対者から外してしまう。

 

「ほら!余所見をしている場合ではないぞ!?」

 

「はっ!?……くっ!!」

 

仕切り直しの為に、自身へのダメージを無視して作った間を自らのミスで失ってしまう。間合いを潰され、突っ込んで来た相対者の刀をバルディッシュの矛先で受け止めるが、無茶をして来た代償かその一撃でバルディッシュの矛が砕けフェイト・テスタロッサは今度こそ撃沈した。

 

「…………わかりました。魔導書をこちらへ……」

 

手元に、【闇の書(偽)】を呼び出した()がまな板の剣士は蒐集を開始する。フェイト・テスタロッサのリンカーコアが抜き出され、そこから彼女の魔力が【闇の書(偽)】へと流れる様に抜き出されて行く。

 

「……くっ……ぁあああぁぁぁ……」

 

呻く様な悲鳴を上げて、フェイト・テスタロッサは苦しそうに胸を掻きむしる。だが、その程度の事で蒐集を止められるはずもなくリンカーコアは萎縮して魔法すら満足に使えなくなってしまった。

これで、高町なのはとフェイト・テスタロッサはどう足掻いても最終決戦に参加出来なくなる。

残るは、八神はやてとその守護騎士達だけだ。

だが、そちらへは彼女等とは別の襲撃者が向かう手筈となっているので、しばし傍観に徹する事となるだろう。

 

「状況、終了。撤収します……」

 

そう呟いて、()がまな板でポニーテールの剣士は転移魔法を発動させて離脱して行った。その次の瞬間には、消えかけた結界を蹴り破る勢いで雪崩れ込んで来たプレシア・テスタロッサと、時空管理局の武装隊がフェイト・テスタロッサを保護して離脱する。

その後、巡航L級8番艦。次元空間航行艦船アースラの医務室で、ブチギレのプレシア・テスタロッサがこの事件への参戦を表明するが……未だ、事件にすらなっていない事柄なので直ぐには動けないと宣うクロノ・ハラウオンに八つ当たりをするだけとなる。クロノ・ハラウオンは、冷静に本局へと問い合わせをして、現在誰がこの件に関わっているのか等を調べたのち対策本部を立ち上げて……と悠長な事をする訳だが、全ての準備が終わる頃には何もかもが後の祭りとなっていて対策本部は事後処理をするだけのモノ扱いとなるのだった。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

「お父様、準備……整いました」

 

「ああ……漸く、この時が来たか……」

 

その場に集った者達を見回し、重い腰を上げたギル・グレアムは集まってくれた同志達に厚い御礼と作戦の成功を願って言葉を紡ぐ。それを、静かに……されど、奇妙な熱を持って聞く集いし者達。それぞれの想いを胸に、その場にいる皆が今か今かと静かに確かな熱を持って立ち上がった。

 

「これが、この悲しみの連鎖に終止符を打てると信じて……」

 

カード型のデバイス・デュランダルを手にして、ギル・グレアムが憂いある表情で呟き重い腰を上げた。

そして、それぞれが己の持ち場へと散っていく。

 

 

 

……………………。

 

 

 

その様子を、コッソリ見詰めていた使い魔(フレールくん)がリアルタイムで双夜の元へ情報を伝えている。

遠く離れた次元の狭間で、100万の使い魔達に囲まれて双夜は呟く。

 

「……妄執も、ここまで来ると害悪だな……」

 

「ですね……というか、ちょっと灰汁強すぎませんか?」

 

「そりゃそうだろうさ。Masterが、関わって来た平行世界の灰汁を一纏めにしてあるんだから……」

 

「は?」

 

今一、意味がわからず神崎大悟は疑問の声を上げる。

 

「それ程までに、人の負の感情というのは厄介なモノなのだよ。ならば、今後関わって行く事になるであろう者達の感情を一纏めにして排除した方が良いだろう?」

 

「いや、何だよ!?その、爆破処理してしまえ!な発想は!?つーか、関わった平行世界全ての負の感情って!?それって、【闇の書】絡みなんだろう!?」

 

言葉の意味を理解した翔悟が、慌てて双夜が発言した事の真意を問い直す。大悟に至っては、呆然と口を開けたまま固まっていた。

 

「そうだ。これまで、僕はそれを放置して来たからこの辺でそれを解除してやろうかと思ってな……最も強い負の感情を持つ者のそれを、抜いてこの世界軸に纏めてみた」

 

それは、【如月双夜】だからこそ出来る無茶であった。

数多の平行世界の自分とリンクし、融合したからこその能力とも言えるソレを使用して人々の感情を一纏めにしたと言っているのだ。しかも、『負の感情』に絞っての使用だと言うから、それがどれ程の無茶なのかは予想すら出来ない。

なのに、本人はあっけらかんとしているのだから頭が痛い話である。すると……人知れず、神崎大悟が胃がある部分を押さえた。表情も、微妙な感じだ。

 

「それ、無茶が過ぎるでしょう!?」

 

「手っ取り早いじゃん。一纏めにして、此度の戦闘で発散して貰おうと考えているだけだよ?発散して、勘違いでした!となれば【夜天の書】に負の感情が向く事は無くなるだろう。それは、この世界軸だけでは無くなる。ま、【闇の書】と同一だとされている世界軸では緩和されるだけだろうけど……」

 

確かに、手っ取り早いのは間違いない。

しかし、放置していたからと別の平行世界でそれらを処理しようとするのは《神殺し》の中でも如月双夜くらいなモノであろう。

それ程、双夜のやろうとしている事は異常な事だった。

しかも、その結末は他人任せという状態。

ある意味、最大級の責任逃れである。

まあ、当事者ではないけれど。

 

「後は、時間と八神はやてさん達の行為等が彼等の心を何とかしてくれるでしょうから」

 

「そうそう。Masterがフォローした世界なら、辛く当たる馬鹿共はいないはずです」

 

「いずれにしろ、【闇の書】が撒き散らした【闇】は広大で巨大だ。近しい者を失っているなら尚の事……そして、そういう者達は騎士や局員になっている事が多い。なら、ここ等でガス抜きをしておかないと……ね?」

 

「それが、負の感情の集束ですか!?八神はやてが、思い余って殺されたりしたらどうするんですか!?」

 

神崎大悟の心配は、世界の【理】云々よりも八神はやての身柄へと変化している。感情を纏めた影響で、八神はやてが殺されたりしないか心配で心配で居ても立ってもいられないらしい。

 

「そしたら、【闇の書】が転生して悲劇が続くだけの話だよ。流石にそれは、彼等も望んではいないだろう?」

 

「おぉぅ……ちゃんと、考えられているし…………大丈夫、何ですよね?はやてや守護騎士達が居なくなるなんて事は無いんですよね!?」

 

「守護騎士達は、死んでも再召喚が可能だろう?」

 

「ちょ!?……ああ……まあ、それはそうなんですけど……」

 

キッパリと切り捨てられた神崎大悟は、その場にヘナヘナと座り込んで頭を抱えた。双夜の言う事は理解出来るのだが、感情方面で見逃せない事柄が多分に含まれるソレが神崎大悟の感情を大きく揺さぶっている様だ。

 

「結局、実力がないと抜け出せないって事じゃないですか!?シグナムとザフィーラしか、生き残れない気がする……」

 

「大丈夫だよ。今回は、リインフォースもいるから……それに、ヤバくなったら介入すれば良いだけの話しだろう?」

 

「どんな風に介入する気ですか!?八神はやてを、痛め付ける側としての介入はダメですからね!?」

 

心配性な神崎大悟が、大慌てで双夜に言い募る。

それを面倒そうな目で見詰めながら、苦笑いであしらう双夜だった。でも、計画の詳細を教えていない神崎大悟の心配事もわかるので余り文句は言わない。

 

「にゃははは。そんな、介入があるか!?そんな愚行よりも、もっとマシな方法で介入するよ!」

 

「例えば?」

 

「…………その場にいる全員をショタ化する!」

 

「うはっ!大混乱間違いないッスね(笑)!!」

 

ブハッ!!と吹き出した翔悟が、爆笑しながらその妄想で転がり回る。大悟も、転がり回る翔悟を横目にそうなった場合の管理局側を頭に思い浮かべて苦笑いした。

 

「負の感情、関係なくなりましたね……」

 

「当たり前だろう?態々、負の感情を刺激してどうする!?まあ、それを刺激するにしたってやり方はあるが……」

 

「「あるんだ……」」

 

「簡単な話し、負の感情が向かう対象を変えてやれば良いんだよ。まあ、正気に戻った時の揺り戻しはキツいけど対象を代える方法は多々ある」

 

呆れた様子でハモる二人に、双夜は心配事が無くなったのを見て取って視線を大量に展開してあったウィンドへと戻した。そこには、リンディ・ハラウオンが率いる表の管理局とギル・グレアム率いる裏の管理局……それから、不確定要素のプレシア・テスタロッサ達と……高町なのは達、負傷者側が写し出されている。

高町なのはは、フェイト・テスタロッサと共に時空管理局のメディカルセンターに収容されていた。今は、クロノ・ハラウオンとユーノ・スクライアによってお見舞いされている様子がウィンドに表示されている。その様子を見て、ホッとした様子の双夜が目を細めて眺めていた。

 

「それで、師匠。次は、何をするんですか?」

 

「ん?ああ、彼方さんが動き出すまでのんびり待つよ?今が、AM10時だから……動き出すのは、PM17時前後じゃないかな?」

 

「…………結構、時間が開きますね?」

 

「そりゃ、クロノん達に管理局へ報告して貰ってその話しがギル・グレアムの耳に入る時間は欲しかったからね……」

 

「そっちか!?」

 

「本当なら、彼方さんはもっと早く動き出すハズだったのをワザと当日に事を起こして強制的にズラしたんだから。その情報を得る為の時間(彼方が)くらいは、用意してあげないと……だね!」

 

「それに、どんな意味があるんですか?」

 

「本当は、26日くらいまでは延ばしたかったんだけど……無理そうなんで、ちょっとした工作を……ね。これで、気が付かないのなら裁判になった時に付け入る事が出来るんだよ」

 

「おっと……先の先まで考えてたのか……」

 

「ショタが、恐い……」

 

「要は、アリバイは完璧だぜ?AM09時15分には、八神家のリビングに守護騎士全員の姿を確認!それは、リーゼ達も確認しているから間違いない……なのに、高町なのはとフェイト・テスタロッサが襲撃される……と(笑)」

 

「鬼だ……ここに、鬼がいるっ!!」

 

「これ、記録もバッチリなんだろうな……ギル・グレアムが、とっても哀れになってきたよ……」

 

「クックックッ……はてさて、ギル・グレアムは気が付くかな?それとも、些事として強行に走るかな?」

 

邪悪に笑う、小さな少年の声が響く。

感情に囚われ、愚かな行為へとひた走る者達を眺めて肩を震わせる首謀者に神崎達は畏怖と敬意を持って時間が過ぎるのを待った。

息を潜めて、消息を消す彼等に気が付く者はいない。

こうして、運命の歯車は確実に終わりへと向かっていた。

誰も知らない、この世界だけの終わりへと……。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

そして、始まる。

PM17時05分。

情報を得たが、些事として切り捨てたギル・グレアム以外の者達が【闇の書】とその主を襲撃する為に八神家に突撃する。数人がかりの封時結界を展開し、戦闘要員であるSランクの魔導師が十数人。それぞれのデバイス片手に、クリスマスムードでマッタリとしていた八神家の団欒をブチ壊し【闇の書】の主とされる八神はやてに手を伸ばす。

それを、セットアップし終えたシグナムがレヴァンティンで防ぐ。そして、八神はやてを庇う様に前に出て局員を弾き飛ばす。

 

「何者だ!?」

 

「テメェら、管理局の奴等だな!?」

 

続いて、声を上げたのはヴィータだ。ハンマーを振り回し、局員が八神はやてに近付けない様に牽制を掛ける。

 

「我が主に、手を伸ばしていたな……?」

 

刃を突き付け、情報を得る為に問う。

 

しかし、敵は答えるつもりがないのか鋭く睨み付けて来るだけで答える様子はない。全て、沈黙だけが返ってくる。

 

「……………………」

 

「答える気もないか……」

 

答える様子のない彼等に、痺れを切らしたのかシグナムがレヴァンティンを少し動かし、攻撃体勢に入ろうとした瞬間……漸く、睨み合っていたウチの一人が声を上げた。

 

「我等、【闇の書】に怨みを持つ者……」

 

「我等が、悲しみと怒りを思いしれ!!」

 

「ちゃう!この子は、【闇の書】なんかやあらへん!!」

 

「黙れっ!!犯罪者めっ!!」

 

リインフォースの苦痛に喘ぐ様な顔を見て、反射的に反論した八神はやてだったが……『犯罪者』と怒鳴られ思わず萎縮してしまう。

 

「貴様等が、蒐集行為をしている事は明白!!」

 

「今尚、多くの被害者が出ているのだ。ならば、その元凶を排除するのは当然ではないかっ!!」

 

「何だと!?」

 

しかし、返って来たのは謂れのない事ばかり。

一瞬、あの白い魔導師が管理局に寝返った等とも考えるが、主の悲痛な声で我に帰りそんなハズはないと考え直す。

 

「……っ、シグナム!?」

 

「何の事だ!?我等には、何の事だか……っ!?」

 

申し開きの声を上げ様としたシグナムだったが、横合いから八神はやてを狙い踏み込んできた局員によって邪魔される。しかも、自身では守れない軌道の凶刃だった。

 

「っ……!?主っ!!」

 

「させぬっ!!」

 

されど、その凶刃はザフィーラによって防がれる。

 

「くっ……己ぇ……」

 

「シグナム、一旦引くぞ!!」

 

「させるかぁ!!」

 

ヴィータの提案に、瞬時にその提案に乗って一度体勢を整え様と判断したシグナムは、その為の時間を稼ぐ為に動き出す。今は、本の少しの時間と情報が欲しかった。

振りかざされる刃と、凶刃を防ぐ刃。

己の大切な者を守らんと、それぞれがそれぞれの全力を尽くそうとする。それは、リインフォースも同じだった。

 

「我が主っ!!くっ……《ユニゾン・イン》!!」

 

八神はやてを抱き締めて、更なる守りを固める為にユニゾンを果す。何とか、ユニゾン可能レベルのシンクロ率を維持していた故に、その場凌ぎ程度ならば問題なく……しかし、長時間のユニゾンは出来ないと判断した彼女達はその場からの離脱に全てを掛けていた。

なのに、発動した転移魔法は家の中から外へ移動するだけの短距離程度しか跳べない程度。

すぐに、局員に見付かって再戦と相成った。

 

「クソッ!準備は万端ってか!?」

 

「逃げられへんの!?」

 

「その様だ……仕方がない。正面から切り開くぞ!!」

 

「おう!」

 

「ああ!」

 

「えぇ!」

 

そこからは、完全な強行軍だった。

しかし、戦況は芳しくなく数の暴力で圧され……一対一ならば、負けなしのベルカの騎士も窮地に詰められて行く。

謂われない、冤罪で迷いが生まれたのも一因かもしれないが守護騎士達は防戦一辺倒となり追い詰められてしまう。

そして、均衡が崩れたのはリインフォースと《ユニゾン》していた八神はやてが分離した瞬間だった。

慌てて、フォローするも一度崩れてしまった戦況を覆す事は出来ず……彼女等の主、八神はやてが敵の手に落ちてしまう。それと同時に、シグナム達も抑えられてその場で拘束されてしまった。

 

「クソが!手間を掛けさせやがって!!」

 

局員の一人が、八神はやての髪を掴み、リハビリで漸く杖有りで歩ける様になったばかりの幼い少女に蹴りを入れる。シグナム達が、喉が裂けんばかりに声を張り上げるが周囲にいる者達は何も言わずに見下ろすだけだった。

 

「…………で……」

 

「あん?」

 

「何で!?こんな事、するん!?」

 

「何で、だと?お前等が、犯罪者だからだろうが!!」

 

「違うっ!……私ら、何もしてへん!!」

 

「ああ!?」

 

それが、少女をいたぶっていた局員の癪に触ったらしく……その局員は、掴んでいた手を離し一歩身を引いて利き脚を振り上げた。

 

「「「「「主」」」」」」

 

『サセナイッ!!』

 

悲鳴の様な声を上げる守護騎士達。それと、リインフォースが持っていた【夜天の書】から唐突に出現した……上半身が幼い少女で、下半身が大蛇の《なはとヴぁーる》が飛び出してきた。利き脚を振り上げていた局員は、なはとヴぁーるの体当たりにて吹き飛ばされる。

だがしかし、生まれて半年程度しか経っていなかった《なはとヴぁーる》に戦闘能力はなく……あっという間に制圧されてしまうのだった。

 

「チッ……油断しちまってたぜ……」

 

「大丈夫か?」

 

「ええ。問題有りません。まさか、こんな隠し玉があったとはな。だが、これでおしまいだ」

 

そう言って、八神はやてをいたぶっていた局員は今度はなはとヴぁーるに対象が移ったらしく彼女を他の局員に預け、なはとヴぁーるをイジメ始めた。

 

「止めてぇ!なはとちゃんを、イジメんといてっ!!」

 

「うるせぇ!!今更、言い逃れしても証拠が上がってんだよ!?もういい。グレアム提督、もうさっさと殺ちまいやしょうぜ!!」

 

「……っレ、アム…………?」

 

その名を聞いた八神はやてが、後から現れた初老の局員を見上げ呟く様に口にした。

 

「初めまして、だね。八神はやてくん……」

 

現れたギル・グレアムは、冷たい瞳で八神はやてを見下ろしデュランダルをセットアップさせて魔力を注入を始める。その両サイドには、リーゼ姉妹が立つ。

 

「なん、で?……何で、グレアムおじさんが……」

 

「全ては、この時の為に……だよ。その為に、君の両親の友人だと偽って君の保護者を名乗り出た……」

 

「…………私等は、どうなるん?」

 

「……強力な氷結魔法で、氷付けにして封印させて貰う」

 

「……コールドスリーピングみたいなもん?」

 

「そうだ……」

 

「ま、二度と目覚める事はないだろうけどな!!」

 

「そんな……。なんで?……なんで、こんな……私等、何もしてへんのに……」

 

「チッ……何もしてないだと!?お前等は、存在事態が【悪】でしかないんだよ!!だから、封印して永遠に管理局が管理し続けてやるんだ!!」

 

地面に叩き付けられて、八神はやては沈黙した。

 

「さて……ムッ!?」

 

デュランダルのチャージが完了し、いざ氷結魔法を使おうとした瞬間……その場にいた全員に、ピンク色の魔力光を放つ決して破壊出来ないバインドが設置された。

次の瞬間、彼等の目の前に一冊の魔導書が転移して来る。

そして、魔導書のページが開くと共に、その場にいた全員のリンカーコアが無理矢理引き摺り出され蒐集が開始された。訳がわからないまま、一人また一人と魔力を奪われて倒れていく。

 

「くっ……貴様ぁ……悪足掻きを……っ!!」

 

幼い少女をいたぶっていた局員が、倒れている八神はやてを睨み付け喚き始める。しかし、それも長くは続かなかった。何故なら、フードを深目に被ったローブ姿の如何にも魔導師な格好をした怪しい男が現れたからである。

 

「クックックッ……」

 

「何、者だ!?」

 

辛うじて、気を失っていなかったギル・グレアムが新に現れた一団に名を問う。すると、ローブ姿の怪しい男がバサァとローブをはためかせ、『ふははは!』と笑い出した。

 

「問われたのなら答えるのが世の情け。我は、この【闇の書】の主にして……最強の名を継ぐ者だ!!」

 

「【闇の書】の主!?」

 

「馬鹿なっ!?【闇の書】の主は、ここに……」

 

幼女をいたぶっていた局員が、八神はやてを指し示すがグッタリと宙吊りになっている彼女を見て驚愕で目を見開いた。そして、八神はやての胸からリンカーコアが無理矢理に引き摺り出されると、有り得ないと言った風に首をゆるゆると横に振りそれを否定する。しかし、八神はやてのリンカーコアが蒐集され始めると状況が一変した。

 

「嘘だ!コイツが……コイツが、【闇の書】の主じゃ無かったのか!?おい、グレアム提督。どうなっているんだ!?」

 

責任追求を逃れる為か、己の責任を他人に押し付ける様に責任転換を始める局員。だが、その程度の事で目の前で起きている現実が変わるはずもなく、その場にいた局員全員が己のした事の現実を見るハメとなってた。

 

「クックックッ……貴様等は、勘違いで罪無き幼女を襲っていたのか?正義を振りかざし、ヒーロー気取りで【闇の書】の同系魔導書を【闇の書】だと言って?」

 

「やめろ……」

 

そして、その現実を突き付ける様に【闇の書(偽)】の主は仰々しく語る。まるで、何処かの神官に成ったかの様な……傲慢な態度で、局員達の落ち度と責任を追求していた。

 

「これは、傑作だ!まさか、勘違いで関係のない幼女を襲っているとは……まあ、私としては高ランクの魔導師が一ヶ所に集まってくれていた事に感謝をしたい所なんだが……」

 

「くっ……」

 

ついでに、彼等の迂闊さも押し付けて【闇の書(偽)】のページ全てが埋まっていく様子を見せ付けていた。

そして、最後のページが埋り切った所で男は大いに盛り上がる。

 

 

「くははははは!!これで……完成だぁ!!!!」

 

 

 

 




もっと、詳細に書けば……長編となったのだろうけど……上中下の三構成の長編とか、終わらない気がする。

はてさて、双夜が工作に工作しまくった【闇の書事件】という名の【転生者狩り】がいよいよ大詰めです!関係のない魔導師達が、勘違いと暴走した正義を振りかざし……ハッピーエンドで終わったハズの八神家を襲撃しました!局員の一人が、割りとヤクザっぽくなってしまいましたがあれは管理局の責任を更に重くする為の措置です(笑)。転生者では、ありません。そして、現れた【闇の書の主】は使い魔の一体です。《ユニゾン》は、基本出来ないので瞬間変身が出来る使い魔が選ばれてます。
魔力光(偽)で目眩まし。瞬間変身。《ユニゾン》後?みたいな出演をする予定(笑)。鬼畜ですよね!!
無実の罪で、暴行された少女に管理局はどんな保証をするのでしょうね?ストーリーを考えるより、そっちの方が気になって中々筆が進みません。

…………嘘です。
ごめんなさい。
申し訳ありません。m(_ _)m
ムーンライトノベルにハマってて全く書いてませんでした。
その前は、ノクターンでネタ探ししてたんだよ。
因みに私は、どちらでもイケます。ああ、読めるッて意味ね。ヤる側ではありませんが、なんでも読みます。決まったジャンルがないので、小説を買い出すと山積みになります。お金も、無いので本屋で立ち尽くす時もありますが。
「買えない……。お金が足りない……」
まあ、買う前に積み上げられた小説の山を読めって言いたいでしょうけど……駄目なんだよ。買いたくなるんだよ。漫画や気に入ったアニメのDVDも色々欲しいのに……基本、車が貯金を食い尽くします。

 畜 生 ! !

この恨みは、小説に書き殴ります。
それでは次回、【闇の書】暴走!!をお送りします。

クックックッ……通常の【闇の書】、約??倍の魔力を秘めた暴走侵食体とvs管理局の戦いをヤる予定です(笑)。

文字に、強調点を打てる様になりました(笑)。
( ̄^ ̄)。今までは、使いたくてもやり方がわからなかったので手をこまねいていましたが……やり方がわかったので、ちょくちょく使って行く予定です(笑)。
遅ぇよって話なんだけどね(笑)。
うっかり、二の足を踏み続けてしまったんだよ(笑)。
使ったら、エラーが起きて全部消えちゃったりしないよね?的な恐怖があったので……実際、PCのエラーで全データがロストしてしまった経験があります。あれは……泣いた。余りのショックに、何も出来なくなるレベルで。あれ以来、データのバックアップは二種以上取るようになったよ(笑)。

()がまな板】……を超、強調していますが他意はありません。(笑)(笑)。

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m(_ _)m
 
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いつも読んでくれる方々に感謝を……。

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