絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一八八話

翼刀

 

 

俺は……いや、俺達は現在アインクラッド攻略に行き詰まっていた。第27階層のボス戦が、どうしてもクリア出来ないのである。理由は不明。何故かはわからないけど、どう足掻いても27階層のボスが倒せないのであった。

 

「つーか……なんで、27階層のボスのHPが減らないんだよおおおぉぉぉ!!!!!」

 

どれだけ攻撃しても、ボスのHPバーが一ミリたりとも変動しないってどういう事!?

え?何……あのボスを倒すには、何らかのギミックを探し出してクリアしないとダメって事なのか!?

それとも、まさかとは思うが……ここまで、順調過ぎる程順調だったから少し休めと神様が言っているとか!?

 

「それは、ないな!」

 

なんたって、《神殺し》が味方にいるんだ神様ごときに邪魔出来るハズがない。つか、そんな事したら直接干渉したとして断罪対象化が待っているだけだ。

リターン無しのデメリットに誰が出資するんだよ!?

もうここは諦めて、双夜さんか転生者達に聞いた方が早いかもしれない。まあ、双夜さんには普通に質問して転生者には尋問という名の拷問でもすればOK。

 

「ふふふ……このストレスは、転生者達で晴らすべきだろう……クックックッ……」

 

イライラを通り越して、半分キレ始めているとわかっているけど……こう何度も敗走していると、マジギレしそうになってしまう。そう、敗走だ。決して、死に戻りではないので……一々、扉を破壊して外に出て扉を直すという面倒な行程が挟まれる敗走だった。

悔しく思いつつも、俺達は何かしらの見落としがあるのではと考え、隠しクエスト等を探して奔走する。幾日も幾日も、聞き込みして新たに見付けたクエストをクリアし続けた。だが、幾らクエストをクリアしてもボスのHPが減る事はなく、虚しい敗走を繰り返すのみ。

良い加減、我慢の限界が訪れかけていた。

 

「クソッ……あの二頭モンスター、どうやって倒せば……」

 

ブツブツと、ボス戦の事を思い出して愚痴を吐く。

しかし、それにしたってHPバーが一ミリたりとも減らないってどんな死にゲーだよ!?そりゃ、ゲームでは倒せない敵っていうのもアリだろうけど……イベント等で、敗走等を表現するのに敵を倒せなくしてある場合もあるけど。

 

「流石に、ボス戦でそんなイベントなんて起こるはずもないしなぁ…………ん?イベント?」

 

フと、俺はある事を思い出していた。

それは、まだ転生する前……このSAO世界をアニメとして観賞していた頃の話。確か、あの二頭ボスモンスターを倒したのは……と考えてその結論に行着く。

 

「まさか……【スリーピングナイツ】が必要なのか!?」

 

いや、だがしかし……この世界のアスナは、『紺野 木綿季(ユウキ)』なんて人物と会ってすらいないアスナだったはずだ。

なのに、この世界であの出会いと別れをやらせるのか!?

 

「いやいや、無理でしょ!?だって、ここにいるって事は病気云々はもう関係ない話じゃん!あ、もしかしてソードスキル《マザーズ・ロザリオ》でないと駄目とか!?」

 

様々な憶測が、頭を過って行くも答えの出ない疑問はストレスになるだけだ。なので、『ユウキ』との出会いの場所を目指して移動を開始した。

別に、藁にもすがる思いだった訳じゃないよ?

ただの確認だから。そう、一応行ってみて駄目だったら別の方法を試すだけだから!!例えば、双夜さん全力全開の一撃をボスに叩き込んで貰うとか……さ。

 

「駄目だ!アインクラッドが、崩壊するイメージしか湧かない!!うん。双夜さんは、最終手段として置いとくとして……次の手段は、翼さんにハメ技で無双して貰うとか?」

 

完全に、他人任せな案しか出て来なかったけれど……俺が弱いんだから仕方がない。仕方がないじゃないか、比較対象があんな化け物しか居ないんだから!!

転生者?ああ、うん……それも良いんだけど、やっぱり男なら上を目指すべきだと思うんだよ。だけど、流石にあの人達と比べると神様特典霞むよね!

『チート?何それ美味しいの?』状態だから、どれだけ頑張っても手が届かなくて大変困っております。

つーか、俺は今どこら辺の強さ何でしょうね?

全然、イメージ出来ないんですけど!?

当然、双夜さんは頂点として次に守護者さん。

その次が、使い魔さん達(人形のみで)100万体。

次が、翼さんか神崎さんで……俺はその次辺りだったら良いなぁ……(諦め)。と、この時はそんな風に考えていたんだけれど……後で、ユーリがいる事を思い出し、その次の次になるから俺は更にもっと下という結論に行着く事になって頭を抱えるハメに。ヤバイ、上のイメージが幅広過ぎる。

イメージを形にすると……双夜さん>>>守護者さん>>>使い魔>>>(超えられない壁)>>>翼さん&神崎さん>>>>>ユーリ>>>>>俺?

 

「アカン。立ち直れそうにない……」

 

俺が、雑魚過ぎる件。

この下に、転生者という有象無象が来るっていうんだから《神様特典》がどれだけショボいのかが良くわかる。

あの程度のモノ手に入れて、『わーい♪ 俺TUEEEEE!!』なんて良く言えたモノだ。『チート、チート』と良く言われるけど、転生者にしろ転移者にしろ全然雑魚である。

 

「こんな現実、知りたくなかった……(泣)」

 

現実も、何も知らなかったあの頃に戻りたい。

 

 

 

……………………。

 

 

 

やって参りました、アインクラッド第24階層。

ユウキが、例の辻デュエルをやっていた階層ですね!!

フィールドの外れにある、とある巨木の下で彼女は辻デュエルの為に仁王立ちしているハズなんだけど。

 

「誰も居ませんでした、まる。つーか、ですよねぇー……」

 

ぶっちゃけ、ログアウト出来ないとわかれば別の場所へ飛んで行くのは当たり前。しかも、俺達が無双攻略して解放してから大分経っているのも理由の一つだろう。

俺は、巨木の根に腰を下ろして冴えない頭で今後の予定を考える。ぶっちゃけ、どこにいるともわからない少女一人を探してウロウロしなければならないとか……難易度ルナティック過ぎるというモノ。更にその後、待ち受けているのは何も知らないアスナにユウキの事を説明して協力を扇いでボス戦に参加して貰わないとイケない。

 

「あー……クソッ!訳を話せば、アスナ達なら手伝ってくれるとは思うけど……」

 

ボス戦なら、問題なく協力して貰えるとは言え……『ユウキ』が必要となると難易度は更に高くなる。これが、人数的な問題なら適当にその辺の奴等でパーティーを作るんだけど……それは、既に失敗していた。つまり、あのフロアの攻略に必要なのは人数ではないのである。

 

「アスナを知っているの!?」

 

「…………あー、そう言えば15時からだったっけなぁ……」

 

そう、問われた瞬間……俺は遠い目になった。

ある意味、途方に暮れたと言っても良いだろう。

つーか、厄介な事になってしまったと思わずにはいられなかった。

 

「ねぇ、ねぇ!お兄さん、アスナの事知ってるの?」

 

ついでに、とっても嫌な可能性が浮上してきましたよ。っと……つーか、嫌だなぁ。この声の持ち主に、心当たりがある上になんでその名前が出て来るのか是非とも小一時間掛けて聞いてみたい。まあ、当人からしてみたら時間掛ける意味はないから瞬殺されそうだけれど。

 

「……そういうお嬢ちゃんは、アスナの事を知ってるんだ?」

 

一応、巨木の周りを一周してからにしておけば良かった。

そしたら、こんな不意打ち的な出会いを引き起こす事はなかっただろう。自分の落ち度故に、何も言えなくなってしまった。(現実逃避中)

 

「ムッ!お嬢ちゃんじゃないよ!僕には、『ユウキ』って名前がちゃんとあるんだから!!」

 

「…………えっと、『ユウキ』はアスナという人物を知っているのかな?あー……でも、同名なだけの可能性もあるから他の知り合いも言ってみて欲しい……かな?」

 

無駄な抵抗とわかっているけど、しないという選択肢はなかった。てか、人違いであって欲しい。

 

「あー、そうだね。じゃあ、アスナにはキリトっていう恋人さんがいるんだよ!!」

 

「~~~~~ぐっ!そ、そっかぁ……俺の知る『アスナ』にも同じ名前の恋人がいたなぁ…………」

 

はい。難易度が、更に上昇しました(笑)。

 

「わー!じゃあ、お兄さんはアスナの知り合いなんだね!」

 

「もう駄目だぁ……難易度が、難易度がぁ……何もかも、双夜さんに丸投げしたい……」

 

「ちょ、お兄さん。どうしたの!?」

 

もうこれ、どうしろと!?

頭を抱え込んで落ち込む俺に驚いたユウキが心配そうに声を掛けて来る。だって、現実に状況がこんな……なんだ。

もう、本当にどうしろと言うのだろうか!?

葛藤を一瞬で済ませ、諦めて向き合う事にする。そして、振り返れば……アニメで見たまんまのインプなユウキがそこに立っていた。

 

「とりあえず、初めまして鉄翼刀だ……」

 

「僕は、ユウキだよ。えっと、お兄さんは本名なのかな?」

 

「ああ。フルネームだぞ?鉄でも、翼刀でも良いぞ?」

 

更なる問題が発生。

 

 

 

こ ん ち く し ょ う !!

 

 

 

なんで、こんなに難易度が高いんだよ!?

なんで、ここにいるのが双夜さんじゃないんだ!?

ユウキは、名前を聞いてそれがフルネームである事に疑問を持った。という事は、ここがまだALOと呼ばれるゲーム世界だと思っているという事だ。いや、それは仕方がないのかも知れない。知れないんだけれど……納得が行かない。

マジで、双夜さんを連れて来て説明させたくなる。

 

「そうなんだ……ま、アスナも僕も本名だし良いのかな?」

 

しかも、自己完結しやがった。

止めて!難易度上げないで!!

難易度が、上がる毎に『来るんじゃなかった!!』という感情がフツフツと沸き上がる。

逃げたい。全力で、逃げ出したい!!

しかし、現実がそれを許してくれそうになかった。

もう、どうにでもなれの精神でブッ込んで行くしかない。

俺は、開き直る事にした。

 

「紺野ユウキくんだよね?」

 

「ふぇ!?お兄さん、なんで僕の名前知ってるの!?」

 

「あー……でも、アスナは君の事知らないんだよなぁ……」

 

「え!?」

 

「えっと……君は、死んだんだよね?」

 

「え…………どうして……」

 

「あー、ごめんね?俺も、色々混乱してて話が纏まって無いんだけど……君が、HIVで息を引き取った事は知ってるから……でもって、この世界はゲームじゃないんだ……多分、ALOの延長上の話だと思ってるかもだけど……一応、現実世界なんだよ?」

 

「……………………」

 

「思う事はあるだろうけど……俺の話を最後まで聞いてくれるかな?多分、とても信じられない様な話が出て来るだろうけど……疑問や質問は、最後にして欲しい」

 

「…………わかった……」

 

という感じで、俺はユウキを説得してこの世界の成り立ちから知っている範囲の事を全部この小さな女の子に話して聞かせた。

 

 

 

……………………。

 

 

 

『SAO』と呼ばれる小説の事から、アニメに至るまでの話を一通り説明して俺は彼女の疑問や質問を待つ。

だけど、彼女は信じたくなかったのか光を失った目で呆然と話を聞いて押し黙ってしまう。

 

「あー……えっと、ごめんな?俺じゃあ、ちゃんと説明してやれなくて……もっと、詳しい事を知ってる奴がいるからそこに行って聞いてみるか?」

 

「あ……ぅうん。大丈夫だよ……大丈夫、大丈夫……」

 

「って訳で、この世界にいるアスナは時空系列の関係で君を知らない時間軸のアスナなんだ。出会う前だから、君が知っていても困惑されるだけだと思う。そして、君はその体で生きて行く事になる。病気は……無くなったんだから、第二の人生だと思って楽しんでみたらどうかな?」

 

「……………………」

 

ぐっ……やっぱり、俺では彼女の苦しみや問題をわかってはやれないみたいだった。それに、巧く言葉を紡げないっていうハンデもあってついに落ち込ませてしまう。

 

「あ、そう言えば……【スリーピングナイツ】の仲間はどうしたんだ?彼等も、こっちに召喚されているんじゃ……」

 

「ああ、うん……いるにはいるんだけど……」

 

「???」

 

まだ、ショックが大きいのかたどたどしい言葉で視線を反らしてしまうユウキ。まさかとは思うが、この世界に【スリーピングナイツ】の仲間達は来ていないとかいうのでは無いだろうか?しかし、ユウキは『いる』と明言してるしどういう事なんだろう?

 

「……あ!まさか……この世界の完全な住人化してるのか!?話し掛けても、ユウキを知らないみたいな反応を!?」

 

そう、問い質すとユウキはビクッと怯えた様な表情をした。瞬間、俺は一度に沸点が振り切れるのと冷や水を被ったかの様な激情を得る。ユウキを独りにする意味と、それをする為の手段に感情が抑えきれなかった。

 

「~~~~~っ!」

 

あんの恋愛脳のクズ共がぁっ!!

『ユウキ』という、一人の少女を得たいが為に彼女の心の支えであった存在達を奪って苦しみで穴を開けやがった訳だ。ユウキの仲間を、この世界の住人にしてユウキとの絆を断ち切り、心にポッカリ開いた己で埋めるつもりだったのだろう。それが、わかってしまう自分もアレだが……そんな事を思い付く、悪質転生者が許せなかった。

それでなくても、あんなに苦しい思いをして頑張り続けた彼女を、貶める様な行為を平然とやらかす転生者がとっても憎い。

 

「よし、アスナに会いに行こう!彼女も、アニメや小説の事は知っているから、ちょこっと説明すれば受け入れてくれるはずだ。現実世界の話は省くとして、冒険仲間で押し通そう。神崎さんがいない今なら、それで押し通せるはずだ!!」

 

「え?ええ!?で、でも、迷惑なんじゃ……」

 

「大丈夫、大丈夫!ついこの間、キリトが憑依転生者に肉体を乗っ取られそうになったくらいで現在は治療中だ。キリトの看病で、暇しているだろうから話し相手になってやれば良いんだよ!!」

 

「ひょうい?肉体を、乗っ取る?」

 

「良いから、行くぞ!!」

 

アスナ達の【愛の巣《森の家》】にさえ行けば、秘密基地の端末から双夜さんにも連絡が取れるだろうし、後の事は全部双夜さんに丸投げしてしまえばOKだ。

という訳で、思い立ったが吉日とユウキを連れてアインクラッド第22階層アスナ達の【愛の巣《森の家》】へと向かうのだった。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

「…………前提が、違う!その言い方だと、『ユウキは、物語を盛り上げる為に死んだんだよ』って言っている様なモノじゃないか!?そもそも、創作系物語っていうのはだな……元から存在する世界が、作者の意識に混線したモノか……誰かの思い付きで、生じた五分前世界かは鶏と同じ扱いだって言っただろう!?」

 

「何故、そこで鶏が出て来るんだ!?つーか、聞いてねぇよ!!」

 

ユウキを連れて、《森の家》に辿り着くと……キリトが目覚めていて、何故かボードに魔力の説明をたくさん書き込んで魔法の授業をしている双夜さんがいた。

調度良かったので、ユウキの事を説明して保護して貰えないかを打診したんだけど……その結果、何故か俺は異なる事で説教される結果となる。

 

「あん?だって、鶏は卵が先か親が先かわからない生物じゃないか。それと同じで、世界が先なのか……誰かの妄想が先なのか基本わからない様になっているだろう?なら、先にその前提を説明してからでないと、その人物の人生を貶める事に成りかねないだろう!?」

 

「あ……サーセn」

 

「僕に謝っても仕方がないだろう!?」

 

そう言って、双夜さんはユウキを指し示し、謝るのはユウキ以外に居ないと無言の圧力を掛けてきた。でも、その言い分は正しいので俺は指し示されるがままにユウキへと向き直り『ごめんなさい』と頭を下げて謝罪するのだった。

別に、土下座した訳じゃないけど……ユウキは、双夜さんの事細かな説明に納得した様子で俺を許してくれる。

クソォ……俺の説明とどう違うんだよ!?

あ、ごめんなさい。全然、違いますね!認めますから、殺気を込めた視線を向けないでください。

多分、内容まではわからないけど《真実の瞳》で俺が悪態を吐いていると気が付いた双夜さんが、背筋に氷を突き入れるかの様な殺気の睨みを向けて来た。

 

「ああ、後……アインクラッドの攻略は、鉄に任せたから頑張れよ。そのついでに、彼女達も面倒見てやれ!」

 

「え!?ちょ、マジで言ってんの!?」

 

「おお、マジだ。こっちも、色々忙しいからな……」

 

何故か、双夜さんは俺に冷たい視線を向けて手伝ってくれない事を断言してきた。アインクラッド攻略は、俺と翼の二人で行えと双夜さんは言う。まあ、それは良いとしてもユウキの事に関しては手伝ってくれても良いんじゃないかな?ほら、【スリーピングナイツ】の面々だけでも解放して貰えませんかね?

 

「あ、待って!」

 

「なに?」

 

キリト達の元に戻ろうとした、双夜さんをユウキが引き留める。その様子から、ユウキが何かを言おうとしている事がわかった。しかし、中々それを口にしようとしない。

 

「えっと。あ、あのね!【ひょうい】って何?体を乗っ取るとか、聞いた、んだ、けど……」

 

双夜さんの表情を見てか、ユウキが段々声を萎めて無言となった。俺は、双夜さんが振り返る前に視線を反らして押し黙る以外の方法は取れない。

 

「………………く~ろ~が~ねぇ~?」

 

地獄の底から聞こえて来る様な低い声が、青筋を浮かべた双夜さんの口から聞こえて来る。俺は、口を閉じ手足は((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルと面白いレベルで震えていた。

 

「ひぃ!?」

 

「なんで、ワザワザ恐怖を煽る真似するかな?」

 

「うっ……さ、サーセンでした!!」

 

土下座する勢いで、頭を下げてみた。

てか、それ以外に出来る事がなかったのもある。

つーか、俺ってばミスばっかりしているよなぁ。

 

「全く。【憑依】ってのは、幽霊が人に取り憑く様な状態を言うんだ。で、取り憑かれた人は自分の意志とは関係なく動く訳だが……それを、転生者が《神様特典》で行った訳だ。それが、《憑依転生》だ。キリトくんは、その《憑依転生》を受けて精神を磨耗してしまった」

 

「ーーーだ、大丈夫なの!?」

 

「現在は、治療中で……憑依されない為の耐性を付ける訓練をしている。大丈夫と言えば、大丈夫だが……」

 

頭をガシガシ掻きながら、双夜さんはチラリとキリトを見てから『彼、次第だ』と告げた。

 

「キリト次第?」

 

「キリトくんには現在、【憑依転生】を阻害する方法を学んで貰っている。それさえ、上手く行けば今後それが起きる事は無くなるよ……」

 

「そっかぁ……それって、僕も学ぶ事は出来る?」

 

一瞬、俺はユウキの言っている意味がわからなかった。

だって、ユウキがそれを学ぶ意味なんてないからだ。キリトは《主人公》だから【憑依転生】される可能性が高いけどユウキはヒロイン枠だから憑依される可能性は皆無に近い。だから、『何故?』という気持ちが大きかった。

 

「……そら見ろ、鉄……お前のせいで、面倒事が増えたじゃないか……」

 

「へ?なんで、俺!?」

 

「それだけ、【憑依転生】が驚異になってんだよ!」

 

「え?でも……ユウキに憑依しようなんてする転生はいないだろう!?可能性は、皆無じゃないか!?」

 

「はあ……だから、それは『君達』が知っているだけの事柄で原作人物達には関係のない話なんだよ。ユウキが、ヒロインの一人で有象無象の男共に劣j……性的対象扱いされているなんて……『転生者』しか、知らない事だろう?」

 

「でも、僕は……」

 

「HIVだって言うんだろう?だが、現在の君の肉体は……【妖精インプ】だ。現実世界の『紺野ユウキ』ではない。十分、恋愛対象になるよ。そして、その肉体の寿命は大分先だろう?まあ、学びたいというなら教えるが……」

 

「あ……そっかぁ……僕は、もう……」

 

ユウキは段々、その説明で自分が置かれている状況を正しく認識し始めた様だった。それよりも、俺はそんなにもユウキを不安にさせていたという事実の方が驚きだ。

気軽な話だったのに、まさかユウキがそんなに深刻に捉えていたなんて考えもしなかった。

双夜さんが言う通り、俺達に取っては常識でも何も知らない者からすれば驚異以外の何物でもないらしい。

 

「何、やってんだろう……俺……」

 

それなのに、そんな事など全く考えもせず俺は口にしていた。まるで、それが当たり前の様に……完全に、ヲタク知識を常識の様に思ってしまっている自分が恐ろしい。

常識的発言処か、ヲタク知識を常識だと思ってる時点で万人には通じない。

 

「万人に通じない時点で、常識じゃねぇじゃん……馬鹿だねぇ……俺って……」

 

そりゃ、双夜さんが転生者を捕まえる度に『馬鹿、馬鹿』言うハズである。俺自身、その事に漸く気が付いた。

毎度、双夜さんがそういう度に『そんな事はないだろう』と自分に言い聞かせていたけれど……本当だった訳だ。

これは、何が常識でそうでないのか……それをちゃんと考えるべきなんだろうな。もう、誰も傷付けない為にも。

 

 

 

 

 




漸く、ユウキ(死亡後)が出て来ました。アスナ(出会う前)との顔合わせは……大変そうですね!!面白そう……というか、アスナをGETしたいが為にユウキと出会う前のアスナ(弱気)を呼び出した転生者達。覚悟を決める前のブレブレな彼女なら簡単に攻略出来ると踏んだらしい。
ユウキは、死亡後がお好みだったもよう。恋愛脳な転生者が、全て悪いのだよ。ユウキに会う前のアスナ(弱気)ならと考えたみたいだけど……アインクラッド攻略を断念したが為に放置する事に(笑)。GLも視野に入れてたのかなぁ?

そして、転生者だけどSAOモドキ世界正規の転生者でない鉄翼刀によって攻略が再開されてアッサリ出会う事に(笑)。
でも、原作の様には行かないだろうけどアスナ(弱気)がユウキから得られるモノは変わらないと思うよ(笑)。彼女の生き方とアスナの思いが重なる時、世界の扉が開くのだよ!!
銀河美少年みたく!!(冗談です。開けるかもですが……基本、銀河美少年は冗談なんです)

エイプリルフール……嘘ではなかったのだよ(笑)。

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