絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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これこそが、真のフリーダムだ!!


一八六話

双夜

 

 

我輩は、《ヌコ(猫)》である。

名前は、ソウニャ。変身魔法で、《ヌコ化》した人間である。まあ、人間とはちょっと違うけれどーー便宜上、そういう事にしておいて……しかも、エセ猫なので《ヌコ》と称するーーサンサンと照り付ける暖かな光をその身で受けてお散歩を楽しんでいた。という訳で、色々と問題はあったけれど何もかも投げ捨てて一日ヌコ化計画はスタート。

ぶっちゃけ、ストライキ(働きたくない)である。

我輩は、今日一日ノンビリと過ごす予定だ。

 

テクテクテク。

 

場所は、下……ALO世界樹の麓の《アルン》。

穏やかな町並みを横目に、塀の上をのんびりと歩く。

振り返れば、配付所の屋根が見えた。きっと、スタートしたのが配付所の裏庭からだったからだろう。

目撃者(変身時の)はいないはずなので、彼等の口から翼達に告げ口される事はない……多分。にゃんこ化しているから、魔力感知には引っ掛からないし懸念材料のフレールくんは数が少なくて現状捜索範囲が絞られる。

故に、こんな近場でマッタリと過ごす事が出来るのだ。

 

カサカサ。

 

ピクン!と音に反応して、耳が音のする方に向く。

音が気になって、反射的に振り返るとそこには微風に転がる丸まった紙(トラップ)が転がっていた。

 

「にゃーーー♡!」

 

瞬間、我輩は《猫》の本能に従って転がる丸まった紙(トラップ)に飛び掛かって行く。前足で、バシバシ叩いて転がして気が済むまで紙ボールと戯れる。

 

ペシペシ。

 

コロコロ。

 

ペシペシ。

 

シャーー。

 

ハム……ペイ。

 

「フゥー……なかなか、手強い相手だったぜ……」

 

十分に楽しんだ我輩は、額の汗を前足で拭いボロボロでバラバラになった紙ボール(トラップ)を後にした。

 

ポテポテ。

 

テクテク。

 

にゃんこの姿なので、スキップは出来ないけど気分的に歩く速度とテンポを変えて尻尾フリフリ。塀から屋根へ、屋根から塀へ、自由に好きな所を闊歩していく。

 

サワサワ。

 

ヌクヌク。

 

本日は、とても良い天気に恵まれている。

風もキツくないし、お日様もポカポカ暖かい。

 

「……………………」

 

ちょっと、散歩を始めたばかりだけど……これだけの陽気と優しい微風に吹かれると、日向ぼっことしゃれこみたくなる。という訳で、お休みなさい。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

「はっ!?」

 

目が覚める。キョロキョロと周囲を見回し、空を見上げれば日はまだ高かった。おや?とは思ったけど、二時間程の仮眠程度になったんだろうと気にしない事にして、我輩はまた散歩の続きを始める。

 

テクテク。

 

ルンルン。

 

尻尾をユラユラさせながら、ヒョイヒョイと塀から地面に降り立って復活広間を横目に道の端をこそこそ素早く移動。ここで、広間を横断したり道の真ん中を歩くのはNG。

にゃんこは、道の端をコッソリ素早く移動するのが常識だ。目立つ広間の移動を完了して、今度は目の前に現れた階段を登っていく。

本当は、良い感じの隙間があれば良かったんだけど……無いモノねだりは諦めて、人目に付かない様に誰にも気が付かれない様に気配遮断と隠密スキルでカクレンボ。

階段を登り切ると、大きな門がある場所までやって来た。

今の我輩には、関係がないので無視して町の外の方へ。

だけど、完全には外に出たりしない。

下手に外に出て、モンスターと出会い走り回ったーー倒せない訳じゃないーーりしたら《野生化》しちゃったりする可能性を肥大化させる恐れがあるからだ。肉食動物じゃないーー猫は、肉食です(笑)ーーけど、生肉なんて食べたら理性が飛んで行きそうで怖い。なので、町を出ない様にしながら境界線の上をフラフラ散歩する。

 

「にゅ!?」

 

ヒラヒラ落ちてくる葉っぱを眺め、視線を前に戻すと前方で何かが隠れる影が見えた。ピタッと立ち止まり、しばらく様子見しているとまたその影が顔を出す。

こちらに気が付いた様子は無く、時折隠れては頭を出すという行動を取っていた。我輩は、頭を低くしてジリジリと間合いを詰めて行く。自身のポテンシャルで、飛び掛かれる位置まで間合いを詰めると身体を小さくバネを押し留める様に縮込ませる。目を細め、静かに時を待った。

そして、次に頭を出した瞬間ピョン!と獲物に飛び掛かる。少し、力が入り過ぎたのか獲物を飛び越えてしまったけれど、着地後直ぐに反転すれば問題はないと判断する。

だがしかし、その判断は間違いだった。

着地するハズの地面が、その先に無かったのである。

ええ、それはもうスコーンと言わんばかりに外壁は90度折れ曲がって延びていた。即ち、我輩は空中に飛び出した形だ。振り向けば、外壁の側面に生えた猫じゃらしが風に揺られてユラユラと上下している。

 

「にゃ!?は、謀られたああぁぁぁーーー!!!」

 

 

 

……………………。

 

 

 

結局、我輩はアルンの外に出てしまったのだった。まる。

 

「まる。じゃねぇよ……」

 

見上げる外壁は、天高くそびえ立ちちょっとやそっとの事で登れそうにない。これは、諦めてアルンの正門へ向かうのが賢そうだ。普通のにゃんこなら、ここで無茶な足掻きをするか……途方に暮れるんだろうけど。

そうしている内に、背後からモンスターの気配が近付いて来るのに気が付いた。面倒な事に、敵は複数いるらしい。

きっと、妖精達に散々イジメ抜かれた野生動物だろう。

見た目弱者なにゃんこを見付けて、日頃の怨み辛みを晴らす為に蹂躙してやろうと涎タラして現れたのだと思われる。ふぅと、疲れた気分で振り返るとと……見た目からして、アホ面した狼型のモンスターが邪悪な喜の感情剥き出しに現れる所だった。更にドッと、疲れがのし掛かって来る。

何はともあれ、ジャキッと爪を出してこちらも臨戦体勢。

 

「図体大きいからって、余裕ぶっこいてんじゃにゃいよ」

 

何となく、クズ転生者に似通った気質を感じてボソッと本音が漏れてしまう。下手に無視したり、適当にあしらうと遺恨が残りそうだし……仕方がない。殺してしまおう。

別に、二足歩行じゃなければ瞬動術は使えない訳じゃない。グッと身体を低くして、左前足と右後ろ足で魔力を爆発させて一気に間合いを詰める。そして、予め用意していた右前足の爪でバッサリアホ面の狼をスレ違い様にバッサリ切り捨てた。

 

「フッ……我が爪に、切れぬモノはない……」

 

トットトンとステップを踏んで、方向転換しまた瞬動術を使い次の獲物へ。それを繰り返し、我輩は狼の群れを全滅させる。すると、次の団体が現れてしまった。

 

「おや?また、お馬鹿さん達の出現ですか?フフフ……そんにゃに我輩に蹂躙されたいにょかにゃ?」

 

気分的には、アルンに戻りたい感じだったんだけど……こんなに『モテる』のなら、ちょっと『遊んでからにしても良いかな?』と思ってしまう。深みにさえハマらなければ、《野生化》する事もないはずなのでホンのちょっとだけ遊んでから戻る事にした。

 

「フフフ……じゃあ、ちょっと遊んでくれる?」

 

言って、我輩はモンスターの群れに飛び込んで行った。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

我輩は、《猫》である。

名前は、まだにゃい。

どこで生れたか、とんと見当が付かにゃい。

ただ、毎日目の前に現れる敵を屠って生活している。

お腹が空く事も、睡眠を取る必要もないので向かう敵は駆逐していた。ペロリと、爪に付着した血を舐め取る。

放置しておけば、いつの間にか消えてしまっているけれど気になるので舌で舐めて綺麗にした。

それに、近場に水溜まり等はないし……綺麗好きとしては、汚れをそのままになんて出来ない。ついでに、顔を洗って毛繕いもしてサッパリ綺麗になりました♪。

今日も気ままに、あっちへフラフラ……こっちへフラフラ。

敵と戦って、血濡れになって己の臭いという痕跡も辿れぬまま進めるだけ進んでいく。まあ、行き止まりなんてモノは存在しないけれど。

崖っぷちだろうが、何だろうが関係なく我が爪で、サクサク切り捨て、よじ登り、新たな世界を堪能する。

新しい場所を巡るのは、それなりに楽しかった。

流石に、雪山は避けたけどにゃ。

山を越え、谷を越え、様々な難所を越えて辿り着いたのは赤い虫がウジャウジャいる場所(サラマンダー領?)。

近くにあった、人間の集落に寄って久々に日向ぼっこを堪能した我輩は屋根の上から人々の生活を眺める。

何となく、活気がない様に感じられた。あの町なら、もっと活気があったかの様な気もしたけれど……あの町って何処だ?ふむぅ……考えても思い出せないので、気にしない事にして散歩を再開する。町を出て、遠目に見えた大きな水溜まりを目指す。最近は、お風呂に全く入ってないから久々にお風呂を堪能出きるだろう。

その喜びに、綺麗好きとしてはとてもウキウキしていた。

 

「にゃー♪」

 

だけど、途中で立ち寄った赤い虫が集まっている大きな町で……何故か我輩を見るなり赤い虫達が襲い掛かって来た。

なので、我輩はその虫を『敵』と判断して切り捨てる。

見覚えのある敵も多かったけど、数が多くて我輩でも何とかってレベルで全滅させる事に成功する。

その戦闘後、我輩は自分の『家』を手に入れた。

『大きな水溜まり』は惜しまれたけど、久々のお風呂は我輩に癒しの一時をプレゼントしてくれる。スッキリサッパリした事で、惜しまれたハズの『大きな水溜まり』はどうでも良くなった。目の前に、便利なお風呂があるのだから『大きく』なくても十分という気分になったからだ。

その後、赤い虫共に何度か襲撃されたけれど繰り返し追い返す事に成功する。とは言え、奴等も『家(ここ)』に帰りたいのはわかっているのでその内返してやるつもりだ。

我輩は、孤高の流れ猫。一所に腰を落ち着かせる事はない。何れは、また旅に出る。流浪猫なのだ。

日向ぼっこして、散歩してバッサリ切り捨てて、フラ~リフラリと自由気ままに旅をする。遠目に見えていた大きな水溜まりまで来て、そのまま浜辺沿いに歩いて行く。

 

テクテク。

 

ポテポテ。

 

ルンルン。

 

すると、今度は緑の虫がウジャウジャいる集落(シルフ領?)を見付けた。何となく、見覚えのある集落に首を傾げながら入って行くと何故か赤い虫が現れる。アッサリ撃退した我輩だったが、今度は緑の虫までも敵となってしまったらしい。まあ、この程度なら気にする必要もないのでサクサク切り捨てて赤い虫と緑の虫を蹴散らしていく。

 

ザシュザシュ。

 

最初は、とても楽しかったそれも虫の多さに段々辟易としてくる。最終的には、ただの作業と化し……面倒な事へとシフトして行った。楽しかった事が、楽しくなくなる……面白かった事が、面白く無くなるというのをリタルタイムで体験させられる。なので、我輩は地面から壁へ。壁から屋根へと走り回り、ある程度虫達を撒いたら屋根屋根を伝って近くの塔へと向かう。

己の強靭な爪を駆使して、90度近い塔の側面を駆け登る。

塔の途中にあった、中央の一番高い塔への架け橋に飛び移ると、そのまま一気に駆け抜けた。

そして、一番高い塔の側面をもう一度駆け上がって大きく息を吸い込みレーザーブレスを準備する。魔力を光属性に染め上げて、周囲にある魔力も収束して行く。

塔の側面を駆け抜けて、屋上に至るギリギリのタイミングでジャンプ。その身を反転して、地上を見下ろした。

未だ、我輩を探して多くの虫達が地上を蠢き回っている。

それ等に狙いを付けて、ガバッと口を開けたら収束した魔力と己の中で練り上げた魔法を融合させて吐き出す。

 

「行けぇ!《にゃんこふれあ》ーー!!!」

 

瞬間、直径八メートル位の青白い光線が我輩の目の前から地上に向けて放たれる。吸い込まれる様に着弾した閃光は、一息の間を置いて大爆発と衝撃を撒き散らしつつ広がって行った。

 

ヒューウゥゥゥ……クルクルクル……スタッ。

 

我輩は、自由落下しつつ適当な屋根に衝撃と自重を和らげながら着地してクレーターとなった着弾場所を観察する。

 

ーーー……ム…み…………実行。

 

次の瞬間、目の前に青白いウィンドが開いてEXPと拾得アイテム&お金を表示した。色々、表示されていたけど意味がわからず……しばらくすると、消えてしまったので我輩は気にする事なくその場から離れる。

色々な事があったけれど、吹き飛ばした後に虫達が我輩に敵意を向けたり攻撃して来る事はなくなったので悠々と集落の外に出られた。突き当たりの『大きな水溜まり』がある砂浜に出て、元来た道を戻っていく。

すると、影が一瞬だけ我輩の周囲を暗くして消える。驚いて見上げれば、翼を広げた黒い大きな鳥が水溜まりの向こうへと飛んで行くのが見えた。

 

「流石に、アレは食い切れないにゃ……」

 

何となく、アレが我輩の抱えているモノとは違う様な気がしたけど……すぐにどうでも良くなってしまう。ハマッているつもりは無いんだが、どうやらそうとう傾倒してしまっているらしい。良くわからないけど、そんな気がした。

 

「にゃ?」

 

テクテク♪。

 

ポテポテ♪。

 

ルンルン♪。

 

そして我輩は、黄色い集落にやって来た。

前に来た時は、赤い集落だった様な気がしたけど……まあ、そんな細かい事はどうでも良いので久々の日向ぼっこと洒落込もうと考える。(ケット・シー領?)

そのつもりで、集落に入り屋根へと登ったら……何故かそこで、緑の虫に攻撃されるという事態に陥る。思わず、応戦して数匹屠ったけれど……まるで、一匹見掛けるとわんさかと現れる黒いのみたくワラワラと溢れ出て来た。

 

「にゃんだかにゃー……」

 

余り、よろしくない感情が溢れ出てきたけど……緑虫の集落みたいな事にしたくはなかったので、今現在の我輩に出来る範囲であるモノを呼び出し《でぃばいんばすたー》で蹴散らしていく。確か、『ぶらすたーびっと』とか言ったかにゃ?もしくは、『しゅーたーびっと』だったかにゃ?を使って反抗する気すら無くなるまで虫達を追い回してみた。その結果、緑と赤と黄色の虫達はみんな纏めて山の方角へと飛んで行ってしまう。

後で、使い魔達の報告でサラマンダー領とシルフ領……それとケット・シー領が解放されたという話を聞く事になるのだがそれは別のお話で(笑)。

虫達を見送って、周囲に危険がない事を確認した我輩は、ちょっと壊れてしまっているけどヌクヌクした屋根の上にゴロリと寝転がる。じゃあ、お休みなさい。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

「痛っ!?」

 

激痛を感じで、ガバッと起き上がると見覚えのない場所で俺は目を覚ました。キョロキョロと周囲を見回し、フと手元に視線を向けると何故かナイフ(長)を片手に返り血で身を染めたフレールくんと目が合う。

 

「怖っ!?てか、何このホラー!?」

 

目が覚めたら、見覚えのない場所で目の前には返り血に染まった使い魔の姿。わかるか!?この恐怖が!!

今一、状況が把握出来ないまま俺はフレールくんに叱られてアルンに戻る様に言われる。まあ、フレールくんは人の言葉を喋れないから、感情やイメージそのものが俺の中に流れて来るだけなんだが……とても心配を掛けていた事がわかるので大人しく説教を聞く。

 

「ごめんなさい……」

 

立ち上がり、周囲に人影がない事を疑問に思いつつも飛行魔法を使って黄色い町を後にする。後でわかった事だが、あの黄色い町はケット・シー領の首都で本来なら人が溢れているはずだったらしい。そう言われても、周囲を見回しても気配を探っても人っ子一人いなかったんだから仕方がない。その話を聞いて、原作人物『ケット・シー』達が自領を調べたら、占拠していた転生者すら居なくなっていたというのだからおかしな話だった。

アルンに戻って、その話をした時にピーンと閃く事があったけれど俺は一切気が付かなかった事にする。

多少、すじゅかママが俺の反応に微妙な顔をしていたけれど……マジ、何も知らないよ!?ホントだよ!!

【俺】の記憶には、一切何も残ってないからね!?

《野生化》しちゃった結果の果てと、予想は付くけど確信は持てないので何をやらかしちゃったとか色々言われても何も出来ないのが現状。うろ覚えで、何かヤバイ事をやっちゃったという感情があったけれど……それが、どんな事なのかまでは覚えてはいなかった。多分、思いもしない様な事柄だとは思うんだけど理性のない獣のやる事だと笑ってくれたら幸いだ。もしかすると、笑って済ませない事柄かも知れないけれど……もう、笑うしか他に出来る事はない。

色々と思う事はあるけれど、幸いな事にフレールくんが現場を目撃していなかったのもあって、獣と化していた俺が何かをやらかしたという決定的な証拠はないので無問題。

黙ってさえいれば、俺がシルフ領首都の一部を消し飛ばしたなんて……いやいや、全く覚えてないよー?そんな情報が、フレールくん経由で流れて来ただけだからね?

 

「そう言えば、《バハムート》を見た様な……見なかった様な……?」

 

フと、大きな黒い影を見た様な記憶が頭を過る。

みんなの反応を見て、調度良かったからその話題で疑惑を反らす方向に話を持っていく。

まあ、あからさまな話題変更になるので疑いが強くなるかもだけど……何時もの事なので忘れてくれるだろう。

 

「居たんですか!?《バハムート》が!?」

 

「んー……翼を広げた黒い大きな鳥?を見た様な気がする……黒っぽい……影?大きな鳥を……ドラゴン???」

 

「くっ……獣化していると、記憶があやふやになるのが欠点ですね。何とかなりませんか?」

 

「さあ?流石に、現状でアカシックレコードにアクセスするのは……」

 

一番、手っ取り早い方法を提案してみるが……この世界の事情により拒絶される可能性の方が大きいだろう。

 

「却下です。今現在の状況では、軽はずみな行為は“外界”に放り出されかねません……」

 

「デスヨネー……」

 

案の定、拒否されたのでホッと一息。相手に気取られるかどうかは、ギリギリの範囲で吐き出しておいた。

という訳で、俺がやらかした事は闇に葬られる事となりました。まる(笑)。やったね。無罪放免だよ(笑)!!と、顔は無表情にして心の中では大喜びしておく。

次の瞬間には、記憶の底にあるあの大きな黒い影についてを思案。俺の知る《バハムート》と、あれが重なりはしないけど多分似た様な存在なのだろうと結論付けた。

何となく、俺の勘が『違う!』と叫んでいる様な気もしないでもないけれど。どっちなのかな?どうなのかな?

 

「もしかして、シルフ領のクレーターも《バハムート》が……?」

 

「シルフ領も、ドラゴンの攻撃を受けたのですか!?」

 

「うん?ああ、フレールくんからそんな話が来てるよ?後、サラマンダー領とケット・シー領から人が消えたって…」

 

「なんですか?そのホラーっぽい話は……」

 

「えっと、ドラゴン?の襲撃があったッポイシルフ領にフレールくん達が集まってて……それの関係で、周囲を捜索していたフレールくん達が各領の首都から人が消えたって報告が……」

 

「わかりました。サクヤさんとアリシャさんに話を通しておきましょう。貴方は、もっと詳しい情報を収集してください」

 

「はーい」

 

という訳で、何となく助かった様な気がしつつフレールくん達に情報収集の命を出す。そう言えば、守護者には俺が《野生化》してもある程度の魔法が使える事を伝えてなかった事を思い出した。だけど、今その事は関係ないと判断したので無言のまま、その場を後にして貝のように口を閉じている。おやおや?とは思うものの、ワザワザ己を窮地に立てる意味も感じないので思い出さなかった事にした。

『犯罪は、バレなきゃ犯罪ではないのだよ』という言葉が頭を過るけど……気にしない。気にしないぞ!気にしないからね!?

 

「アカン!!深みにハマッてるっ!!」

 

周囲を見回して、誰もいない事を確認しつつ顎に手を当てて思案中。……駄目だ。深みにハマッてる。絶対、シルフ領のアレは俺がやらかした事柄だ。多分、黒い影の話も俺の無意識がやったカモフラージュかもしれない。

もしくは、誰かしらの干渉を受けたのかも……。

 

「“彼”が、目覚めた?いや、“彼”が、目覚める事なんて早々ないだろうから別の要因?」

 

己が内で、眠り続ける“彼の者”が目覚めて干渉してくる事は億が一にもないハズだ。“転生者”である“彼”が、【俺】に干渉する事は基本的にない。

“彼”が、何らかの理由でこちらに“接触”したのならともかく、俺の理性がない状況で干渉してくるなんて事はあの絶望の中でも無かった。つまり、何らかの理由があって……それで干渉してきたというのだろうか?

 

「まさか、悪戯……とか?」

 

それこそ、『まさか』である。

そんな、無駄な事を“彼”がするハズがない。

“彼”が干渉したのは、俺が生まれる前の事(転生特典)だけであるハズだ。それ以外の干渉は、ほぼないと言わざるを得ない。何せ、“彼”の目的は既に達成されているのだから……これ以上は何も求めない……ハズだ。

“彼”の目的は、【転生する事】であって転生後に何かをする事ではない。だからこそ、【俺】に自分の影響をもたらせない為に永遠とも言える眠りに付いている。

自身の人格を隔離し、【俺】とは全く異なる意識として存続し続けるだけの存在にして【俺】の記憶を観賞するだけの《霊魂》。それが、【俺】に“寄生転生”して深層意識の更に奥で眠り続け……時に目覚めて、【俺】の記憶をまるで小説やアニメを観賞する様に見るだけの《悪魔》。

転生特典を押し付け、【俺】という生命を不幸のドン底に貶めておきながら自身は悠々と意識の底で眠り続けるとか……悪質にも程がある!!と言いたくなる《邪神》。

これを知った時は、《ルール・ブレイカー》で切り離してブチ殺そうかと思ったんだけど……そもそも、《ルール・ブレイカー》の元になった能力の本来の持ち主が“彼”らしい。なので、切り離せませんでした。(泣)

それ以前に、目覚める事のない“彼”事態に俺の能力が有効ではなく弾かれるだけの結果となる。

ぶっちゃけ、知らなければ良かったと心底思いました。

 

「……………………」

 

それなのに今更、“彼”が俺に何を干渉しようとするのか少し興味はあるけれど気にする必要は全く無く……シルフ領の事に至っては、別の思惑が絡んでいると思われる。

 

「……もしかして、庇ってくれたとか?」

 

まさかとは思うけれど、フレールくんに俺がやらかした事柄を隠す為にそんな事をやらかしたのかと思ったが……そんな事で、俺にした仕打ちが許される訳でもないのでもっと別の事柄に関する前振りなんだと予測する。

じゃあ、どんな事に関する前振りだというのか?

 

「……………………アカン。思い付かない……」

 

“彼”の干渉だけには、【真実の瞳】も役に立たないし……他の能力も無効化されるので調べようもなかった。

 

「完全に、悪質なだけの存在だよね!!ねぇ、何がしたかったの!?転生してまで、何から逃げたかったの!?」

 

永い未来の先で、その真実を知る事が出来るのかがわからないけれど……これだけは、明らかにしたい疑問だった。

まさか、己の人生の命題が『自分に寄生転生した者の逃げたかった理由』だなんて他を探しても俺だけだと思われる。

 

「ああんもう!ホント、悪質だよっ!!」

 

 

 

 

 




ソウニャが、準・バハムートに!?
はい、冗談です。痛!?ちょ、石投げないで下さい。
え!?ああ、青白いレーザーってのは《メガ・フレア》で間違いありません。多分、波動砲と似た様なモノです(笑)。
地面を這う、超ド級のレーザーみたいなモノが作者的には好みです(笑)。

双夜に寄生転生した奴に関しては、マジであんな悪質な奴でした(笑)。他人にマイナス転生しておきながら、自分には全くマイナス分を受け付けないとか悪質にも程があります(笑)。まあ、それに関しては何れ本作で明かして行ければなぁ……とは、思っていますけど。明かされるかどうかはわからない分になりそうです。(双夜に憑依している精霊についての謎もそのままなので、双夜に関しては後二つ謎がある状態ですね。忘れてたんだよ。)
予想、立てられたら立ててみてね?
双夜の本質にも、関わる問題だから(笑)。
で、183話では書かなかったけど……転生特典には、デメリット特典があります。ただ、双夜の場合はデメリット分が多い為にメリット特典になりますけどね。それが……。
①【転生成功確率UP】
②【転生先:如月双夜】特殊・転生先特定指定
になるのかな?そもそも、双夜の内側にいる人物は……自力で転生した強者ですから、デメリット特典を付けて転生確率を底上げし安全で安心な転生を強化してる訳です。これ、完全に等価交換の原則に乗っ取った寄生型転生なんですよ(笑)。
憑依だと、双夜を乗っ取っちゃうんで……寄生。
寄生であるが故に、双夜とは切り離されているし……特典被害を受けないというステキ仕様!素晴らしきかな寄生転生!!
被害を受けない方法としては、自力転生の『転生先』に与える特典と言えばわかる?言葉って、便利だよね!!
腹立つ程に!!
干渉とか、どうやってしてるんでしょうね?

さてはて。今回は、双夜の《猫化》による《野生化》が主題だった訳ですが……日にちに関する記実が一切無かったのにお気付きでしょうか?『おや?』の地文でおわかりかと思いますが……あの時点で、1日程過ぎています(笑)。
その後、あっちにフラフラ。こっちにフラフラ。で、かなりの日数が消費され……スイルベーンに至った所で、一ヶ月程過ぎてました(笑)。最終的に、双夜がフレールくんに見付かったのは行方不明になって二ヶ月程経ってからですね(笑)。
【リリなの】に合わせた結果が、これです(笑)。まあ、最初からやる予定ではあったんだけど……調整をサボっていた結末がこれとは……悪質にも程がありますよね(笑)。

それにしても、血生臭いにゃんこ(マスコット)が生まれてしまった……orz。いや!マスコットは、フレールくんなんだけど!!

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いつも読んでくれる方々に感謝を……。

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