絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~ 作:葉月華杏
まあ、ぶっちゃけ……一話投稿後、時間を空けると誰にも読まれない可能性があるし……自分でも、「早くっ!!」って気分になるので……
では、どうぞ!
Side 高町なのは
すずかちゃんが帰った後、私は双夜くんと向き合っていた。
どうしても、この子が気になる。
すずかちゃんの話では、この子は自分が45歳だと言ったらしい。でも、私はこの子が45歳には思えなかった。
見た目がというのもあるけど、こうやっている限りではただの子供でしかない。
その場にいたわけじゃ無いから詳しいことはわからないけど。
「ねぇ、お名前はなんていうのかな?」
「う?……そうにゃ。きしゃらぎ、そうにゃです……」
「そ、双にゃくんっていうんだ……」
「そうにゃ!!きしゃらぎ、そうにゃ!!でしゅっ!!」
舌足らずな口調で、自己紹介をする子供。ちょっと、つり目でやんちゃそうな顔つきだけど、癒される。
「双夜くんだね?」
「にゃ!!」
片手を上げて、嬉しそうに笑う。
どうしよう……抱き締めたい……そんな願望が、沸き上がる。周りを見回すと、この場には私と双夜くんだけしかいなかった。お兄ちゃんは、すずかちゃんと一緒に帰っちゃったし、お姉ちゃんはまだ帰って来ない。
「ちょっとぐらい、良いよね?」
願望に負けて、両腕を広げ「おいで」というと双夜くんはキョトンとした顔でこちらを見ているだけだった。
しばらく、そのままでいたけど双夜くんは近付いては来ない。痺れが切れて、私は双夜くんを抱き締め様と近付いた。
すると、双夜くんが一歩私から遠退く。
「…………あれ?抱っこは嫌なのかな?」
「…………」
無言のまま、双夜くんは警戒した様子でこちらを見ていた。無理矢理……というのは私も嫌なので、残念に思いながら諦める。
「これって、やっぱり……」
虐待を受けていたという事なのかな?
お父さん達が帰って来たら、相談してみようと決めて夕飯の当番だったのを思い出した。
双夜くんに「良い子にしててね?」と言って立ち上がる。
そして、歩き出したとたん足に衝撃を受けた。
見れば、双夜くんが私の足にしがみついている。
「どうしたの?」
「ギュー……」
私を見上げて、ニッコリ笑う。
思わず、頭を撫でようと手を差し出した。
瞬間、双夜くんがビクッと身をすくませてしまう。
「あ……大丈夫だよ。私は、双夜くんを虐めたりしないから……」
「にゅ……?」
しゃがんで、ソッと抱き締める。
今度は、逃げなかった。
「大丈夫」を繰り返し、頭を撫でる。
最初硬かった双夜くんだったが、しばらくすると安心したかのように私に身を任せて来た。
どうやら、双夜くんが虐待を受けていたのは間違いないらしい。こんな小さな子に、ここまで怯える様な事ができるのか考えるだけでも怒りがこみ上げて来る。
「……そろそろ、本当に夕飯に取り掛からないと……双夜くん、ご飯にしよっか?」
「……ごはん?」
「そ、ご飯だよ?何食べたい?」
「……くるしくないの」
「? 苦しく無いモノ??」
苦しいとは、どういうことだろう。
ご飯と聞いて、苦しいというとお腹いっぱいになると連想されるが……でも、たぶん違う。
「えっと、前提が違うんだよね?食べて、苦しい?」
食べて、苦しくなる。
それで、連想されるのは『毒』だけど……まさか、ね?
「なのはお姉さんが、うんと美味しいご飯作って上げるよ!!」
「おいしい?」
「うん!!」
「おいしいって、なに?」
「…………」
どうしよう?
何か、地雷を踏み抜いた感じがする。
「…………くろいの?」
「ん?黒い?」
何か思い付いたらしい。
「くろくて、あしはやい……アレ?」
「???」
黒くて、速い……早い?アレ?
何だろう?良くわからないけど、嫌な予感がする。
「カサカサ?」
「カサカサ?」
「くろくて、はやい、カサカサ?」
「えっと、それって……食べ物なのかな?」
「パリパリするよ?」
食物?らしい。
「あ!……アレ!!」
突然、双夜くんが私の背後を指して言った。
何かな?と振り返って、私が見たモノは……台所で見かける憎い奴。誰も彼もが、見付けたら即退治する害虫。
台所の黒い悪魔とも呼ばれるGがいた。
瞬間的にスリッパを脱いで、投げつけるがGはささっと逃げて家具の隙間に消えて行く。
「あー……きょうのごはんが……」
そんな、落胆した呟きが聞こえた。
すぐに耳を塞いだが、頭の中でリフレインする。
『G!!が、今日のご飯!!』
駄目だ。考えちゃいけない。
それを考えてしまったら、何か決定的なモノを失ってしまう気がした。頭をブンブン振って、その記憶を追い出そうとする。しかし、一度得てしまったソレは段々と私の中を浸食していく。はっきり言って、最悪の気分だった。
双夜くんの虐待の事もそうだが、そんな状態を放置した親にも一言言ってやりたい。
「スターライトブレイカーが使えたら……」
使えたら……なんだろう?
双夜くんの両親に叩き込んだのだろうか?
いや、きっと叩き込んだだろう。
それぐらい、私は頭に来ていた。
「双夜くん!!美味しいご飯、食べよう!!なのはお姉さんが、双夜くんに全力全開で美味しいご飯を食べさせてあげる!!」
さっきのことは、忘れよう。
すぐには無理でも、必ず忘れてしまおう!!
気を取り直して、私は台所へと向かって行った。
◆◆◆ーーーーー◆◆◆
翌日。
エイミィさんに連絡して、ハラオウン家にやって来た。
出迎えてくれたのは、エイミィさんとクロノくんの子供で双子のカレル(兄)とリエラ(妹)。双夜くんは、現れた双子に驚いていたみたいだけど、すぐに仲良くなって今は三人で遊んでいる。
「お忙しい所、すみません……」
「いいよ、いいよ。丁度、暇してたから……で、あの子を調べればいいんだよね?」
「はい、お願いします」
エイミィさんは、快く引き受けてくれた。
ハラオウン家は、次元航行艦アースラの仮拠点だった場所だ。アースラが使える様になって、機材を引き上げたらしいんだけど……その後もある程度の設備は残してあるらしい。
「さすがに、詳細迄は無理だけど……リンカーコアの有無くらいは調べられるよ!」
それ以上は、無理だけどねーと笑うエイミィさん。
それでも、ありがたい限りだ。
リンカーコアの有無がわかれば、私のレイジングハートを渡して魔法を非殺傷設定にできる。そうすれば、ある程度危険性を抑えられるだろう。
「じゃぁ、ちょっと待っててね?」
エイミィさんは、そういうと双夜くんに声をかけて隣の部屋へと連れて行った。しばらくして、エイミィさんが戻って来る。結果だけをいうと、リンカーコアは無かったとのこと。
……………………………………………………
………………………………
……………………
…………。
「たぶんだけど、霧島くんみたいなマジックサーキット(魔術回路)なんじゃないかなぁ?」
「そうですか……じゃ、非殺傷設定やリミッターは付けられないですね」
「そうだね。でも、大丈夫じゃないかな?ほら、本来の人格?が戻れば、制御は可能なんでしょう?」
「あー、私は知らないんです。彼を拾ったのは、すずかちゃんですから……」
「詳しくは、聞いてないの?どういう状況で拾ったぁとか?」
「拾ったというか……兄が、海で釣り上げたそうです」
「……釣り上げた?えっと、それって……」
「言葉通り、釣竿で……」
苦笑いして伝えると、微妙な空気になった。
少しして、それが理解されるとエイミィさんが笑だした。
「あはははは!!そっか、海で釣り上げられたんだ」
「それで、月村家に運んで……眼が覚めたらしいんですけど、ひと悶着あって……」
「ひと悶着って?」
首を横に振って、聞いてない事を伝える。
エイミィさんは、「そっか」と言って腕を組んだ。
「わぁ!!すごぉい!!」
情報が少なくて、困っていると双夜くん達の方から歓声が上がった。気になって振り向くと、奇妙な生物がふよふよと空中を漂っていた。パッと見た感じでは、ぬいぐるみのような蜥蜴。
デフォルメされているというか……謎の生物としか表現できないモノが、カレルとリエラの側を漂っていた。
それを見て、カレルとリエラが大はしゃぎしている。
それと同時に、カレルとリエラの反応に気を良くした双夜くんが次から次へと謎の生物を出して行く。
水色、赤色、緑色、カラフルな謎の生物。
そして、十体程出した所で「せいれつ!」と双夜くんが言うと謎の生物たちが、あわあわしながら一列に並んで行く。
「あれって、何?」
「……さぁ?」
エイミィさんの問いかけに、気の無い声で答える。
「おどれる?」
双夜くんの一言に「え?」という感じで振り返る謎の生物達。何か困っているようだった。そして、謎の生物達は円陣を組みゴニョゴニョと相談を始める。
あれ、知能があるんだ……と、驚いてしまう。
「きゅっ!!」
「なに?」
一匹の謎の生物が、片手を上げて……質問する様だ。
双夜くんが、首を傾げて聞き返すと「きゅ!きゅきゅ!!」と身振りを踏まえて鳴き始める。
その様子が、ちょっと可愛かった。
「…………アルカ、よぶの?」
『アルカ』?
良くわからないけど、何かを呼ぶらしい。
「なのはちゃん、あれ、召喚魔法じゃない?」
「召喚魔法ですか?でも、魔法陣出てませんよ?」
「たぶん、魔法陣が出ないタイプなんじゃないかな?」
「アルカ、きて!」
様子を伺っていると、一瞬のうちに男性が現れていた。
そして、双夜くんを見て顔を青くしている。
「マスター……また、ですか?」
『また』ということは、良くあることらしい。
男性は、その場で崩れるようにキレイなorz状態になり、頭を振って悶絶している。
「う?」
「マスター……やっぱり、治した方が良いですって!!その局地的なトラウマは、任務に支障が出ます!!いえ、出てますから!!」
「にゃ!!」
「ああ、驚かせて申し訳ありません!」
大声に驚いた双夜くんに、慌てて謝る男性。
「マスター……とりあえず、任務の方はこちらでなんとかしますので、出来るだけお早い復帰をお願いします」
その言葉で、その男性にもこの状態の双夜くんをなんとかする術が無いことを知り落胆する。
ちょっと、期待していた事に驚きながら見ていると男性は立ち上がりこちらへとやって来た。
「現地の方ですね?」
「貴方は?」
警戒しつつ、質問してみる。
こちらの警戒が、わかっているのかあまり近付いては来ない。どうやら、ちゃんとした教育を受けている様だった。
彼は、はっきり言って美形だ。
この手のイケメンには、耐性があると思っていたのだけど……ドキッとする様な、かっこよさが彼にはある。
「私は、マスター……如月双夜の使い魔で、アルカリア・フォーゲストと申します。この度は、マスターを助けていただいたようで慎んでお礼申し上げます」
一礼して、「ありがとうございました」と言うアルカリアくん。とても、礼儀正しいその振る舞いにビックリする。
これでは、ほとんど人間と変わらない。
「その上で、お願いがあります。マスターをもうしばらく預かっていただけないでしょうか?」
「え?どうして?」
「我々には、任務があります。どんな任務かは、守秘義務上お答えすることはできませんが……」
守秘義務。
そんなことを言う、使い魔がいるとは……驚きの連続である。
「任務上、今のマスターを連れて行くことは……任務に支障をきたす恐れがあり、失敗する可能性も考慮せざる終えません。ですので、マスターには安全な場所で治療に当たっていただき……その間は、私が代わりに陣頭指揮を執らせていただきます」
「おお……ってか、君……使い魔なんだよね?」
「はい。そうですが?」
「動言が、人間にしか思えないよ?」
「マスターに自律術式を組み込まれていますので、その影響かと……」
「自律術式?」
「自ら考え行動するというコンセプトを元に組まれた術式です。ただ、命令されて行動するだけでは、いざというときに支障をきたすだけだからと伺っています」
「ははぁ……すごい、技術だねぇ。」
「マスターが、開発した術式ではありますが……使い魔作成術式では、最先端の技術だと聞いています!!」
ものすごく、嬉しそうに胸を張って断言する男性。
マスターである双夜くんの事を誇りに思っている態度だ。
「そっか……」
「……それで、マスターに対する注意事項があるので、お伝えしたいのですが……」
「「注意事項?」」
取り扱い説明書的発言に、エイミィさんと声が被った。
なぜか、恥ずかしくなって乗り出していた身体を引く。
「……はい。マスターには、トラウマがあります。例えば、女性の『裸』に酷く怯えたりとか……心当たりは、ありますよね?」
「あ、ごめんなさい。双夜くんを拾ったのは、私達じゃないんです。私達は、その人から双夜くんを預かって要るだけなので……」
「ああ、そうでしたか。では、マスターは女性の『裸』に対して精神を幼児後退させるほどのトラウマを抱えておられます。原因は、お話しできませんが……出来るだけ、肌を見せないようにしていただけるとありがたいです」
「肌を見せないように?」
「はい。以前、水着でもあんな感じになられたので……」
双夜くんを見る。
謎の生物を踊らせて、楽しそうにしていた。
カレルとリエラも楽しそうなので、このままソッとしておく。
「た、大変だね……」
「ええ、まあ……他にも、食事関係や常識関係にも疎い状態になっていますので気にかけていただけるとありがたいです」
「……ちょっと、聞きたいんだけど……」
この際だ。
私は、ずっと気になっていたことを聞くことにした。
「はい。何でしょうか?」
「双夜くんって、その……虐待、されてた?」
「…………そうですね。虐待と言えば、虐待されていたと言えるでしょう。ですが……」
言葉を濁し、言いにくそうに彼は続けた。
「虐待以上をされていました。ただ、【魔力】を持っているという理由で……」
「え?」
「どういうこと!?」
「マスターは、《反魔法団体》のリーダー的存在の家に生まれた子供なのです。ですので、【魔力】を持っているとわかった所で育児放棄をされて地下の座敷牢に閉じ込められました。当時、3歳と聞いております」
「そ、そんな……」
「酷い……」
予想を超える、とんでもない話にビックリする。
まさか、《反魔法団体》なんているというのも驚きだが、三歳で座敷牢に閉じ込められていたなんて想像すらしてなかった。
「そして、虐待というよりも……暴行ですね。ただ、憂さ晴らしにという理由で閉じ込められてから、一年程暴行し続けられたと聞いております」
「暴行……一年も……」
「はい。その影響で、十五年間ほど入院していたそうですが……」
「……?十五年間入院?」
「はい」
「待って、双夜くんは……何歳なの?」
「……45歳ですが……ああ、そういうことですか。マスターは、普通の方々と比べると寿命が長いんです。確かに、ここにいるマスターの身体は……私達が、最後に見たマスターの身体と異なる様ですが……そうですね、確か最後に見たマスターの外見年齢は12歳程でしたか……」
「45歳……外見年齢12歳?」
「今は、外見年齢5歳程ですか?……理由は不明ですが、縮んでいますね。元々、成長を忘れた人とか言われていましたので……まさか、縮んでしまうとは思いませんでしたけど……」
「本当に45歳なんだ……」
「はい、45歳です。とは言え、精神的な話をしますと肉体に引っ張られるらしく、外見年齢相応の精神年齢でしたが」
彼は、愉快そうに笑った。
「困っていたみたいですよ?」と付け加え、双夜くんを優しい目で見ている。
「双夜くんは、もう……大丈夫なんだよね?」
「はい。身体的には、問題ありません。ただ、精神の方はわかりかねます」
「どうして?使い魔なら、双夜くんの精神と繋がっているんじゃないの?」
「繋がってはいます。ですが、マスターの方でカットされているらしく……私達は、マスターがどんな精神状態でおられるのか全くわからないのです……」
「…………そうなんだ……」
きっと、使い魔まで悲しい想いをさせるのが嫌なんだろう。
そんな双夜くんの思いやりに、私は心暖まる想いだった。
「それでは、マスターの事……よろしくお願いします」
「うん。任せて!!」
「ありがとうございます。では、私共はこれで……行きますよ、フレール?」
『きゅ!』
呼ばれた謎の生物が、返事と共に手を上げる。
そして、緑色のと水色のが男性の周りに集まった。
「では、失礼します」
そう言って、彼は魔法陣も出さずに消えて行った。
原作元主人公に預けられた、この小説の主人公(笑)
うん。波乱の幕開けだね(笑)としか言いようがない。
っていうか、元々用意していたストーリーはオリジナル主人公の特殊スキルでハチャメチャになったので没にして、この話を投稿。
San値がガリガリ削られる話になってしまった。
作者にとっても、なのはさんにとっても、読者にとっても……。ごめんなさいm(_ _)m
自分の作風には良くある話し。
登場人物の能力に振り回される作者(笑)
主要人物が、いつの間にかフェイドアウトしちゃったり……色々アウトな話しに……。
そう、ならない様にしたいなぁ……。