絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします……。

では、本編は放置してとある物語を進めましょう!
今回は、【リリなの】をクリアしてSAOモドキ世界も終えた未来でのお話です!


新年特別企画!

何時かの未来でのお話。

 

 

 

次元の間。

数多の世界へ通ずる場所で。

一隻の青銀の船が、ポツンと飛んでいた。

彼の船は、希望と絶望を携える魔王が乗る船。

絶望する神を、殺す事なく救い未来へと繋げる力を持つ者の船である。否。今は、魔王と魔女の船。

数多の絶望を払い、堕ちた神々をその身に宿し希望の明日へと繋げる彼の者達の【未来】を少しだけ垣間見せよう。

 

 

 

……………………。

 

 

 

薄暗い部屋の真ん中に、キングサイズのベッドが一つ。

その中で、一人の少年が目元を覆い微睡みの中で過去を思う。嘗て、くだらない神々の遊戯に奔走した日々を懐かしく想いながら、腕に掛かる重みに愛しさを感じていた。

 

「あれから、一万年か……」

 

「……うむぅ……どうしたのだ、双夜……?」

 

彼……如月双夜の呟きに同じベッドの中で眠っていた彼女……静・クリスティーナ=D=アスフォードが、モゾモゾとシーツの中から這い出して不思議そうな顔で問う。

彼女は、嘗てのパーティーで襲撃された際、双夜と同じ様に神格を得てその衝撃で永く変革の眠りに着いていた。

その眠りが覚めたのは、襲撃から二万年程経ってからだ。

眠っている間に、必要な変化を終わらせて目覚めた時には彼女の外見は16歳程に成長した姿だった。

襲撃当時は、12歳程の年齢外見だったのが一気に成長していたので、普通の生活に慣れるのに時間が掛かったが今では普通に日常を謳歌している。もちろん、愛する者の傍で。

まあ、口が裂けてもそれを告げる気は彼女にはないけど。

『恥ずかしいではないか!!』とは、本人談。

それに双夜は、苦笑いで返し思い出した嘗ての『母』になってくれた人達の思い出を少しだけ話す。

 

「いや……静が、まだ眠っていた頃……俺の『母』になってくれた人達がいてな……ちょっと、思い出していたんだ」

 

「……構わぬよ。お主を大事にしてくれた者達の話だ。幾らでも聞こう。しかし、少し肌寒いのぉ……」

 

そう言いつつ、起き上がり惜し気もなく素肌を晒す彼女。

シーツが落ちて、彼女は生まれたままの姿で目を擦る。

当然の事ながら、そんな格好でいれば肌寒くも感じるだろう。

 

「……………………」

 

双夜の方針で、惑星で過ごす一年の気候を船のシステムで再現してあるこの船では、朝は涼しく昼間は暑くーーという風に快適さを求める様な事はせず、日々の変化を感じられる様になっている。もちろん、雨や台風、大雪等……様々な気候を体感出来るようになっていた。

この日は、実りの季節から休眠の季節へと替わる合間の早朝の気候を再現していたので、少し肌寒い気候となっている。

 

「誘ってんのか?」

 

少し憮然とした表情で、彼はヒョイっと手を伸ばしてグニュッと彼女の胸を掴みそのままモミモミする。

瞬間、左アッパーが飛んで来てガツンと彼は顎を撃ち抜かれた。

 

「な、ななななな、なな、何をするかぁっ!!!!」

 

己が胸を庇い、数歩分身を引いた彼女は羞恥に顔を赤く染め、動揺し切った口調で双夜を怒鳴る。

 

「良いじゃん。俺に呪いを掛けて、他の女に手を出せないようにしたのはお前だろう?」

 

嘗て、彼の想い出の世界で『母』となってくれた人達を困らせた【幼児後退化】だが……それが、この少女の嫉妬心から来た呪いだった事を未だに引き合いに出す双夜。

実際には、彼女の願いを【始まりの魔法使い】達が汲み上げたのが原因だった訳だけど。

 

「だ、だから、あれは……謝ったであろう!?」

 

「謝られても、俺が受けた傷は塞がらないんだよ!だから、お前が身体で払えば済む話なんだ!」

 

「ええい!訳のわからん理屈を捏ねよってからに……止めよ!!触るでないっ!!」

 

彼女は、伸びてくる手を叩き落としつつ後退を開始。

それでも、彼の近くに居る辺り本気で嫌がっている訳ではない事が伺えた。まあ、ここで本気で嫌がれば彼が魔王化するのはわかっているだろうし……このまま、押し倒しても誰も文句は言いまい。

 

「文句、言いますよ?」

 

「ひゃっ!?」

 

第三者から、唐突に声を掛けられて彼女は素早くシーツを被りベットの中へ隠れる。不満そうな彼が視線をずらしベッドの外に向ければ、いつの間に現れたのか【風紀委員】の姿があった。位置関係としては、双夜、その正面にシーツを被った静、静の後方……ベッドの外に【風紀委員】。

【風紀委員】……本来は、『春日昴(カスガ スバル)』と呼ばれる元人間の高次元生命体。

嘗て、《幻想界》と呼ばれた『亜人達の世界』に迷い込んだセイビアの同郷者。ただ、セイビアと違って元から高魔力持ちで何の媒介も無しに強力な魔法を使えた人間だ。

元来、真面目な奴だった彼は《幻想界》の現状に嘆き、世界を良い方向に向ける為活動を開始をしていた者。

亜人世界は、奴隷制度が普通にあり幼い子供であっても自身の肉体を売る等、爛れた性を日常的に繰り広げていた。

 

それにブチ切れたのが、彼……『春日昴』である。

 

彼は、少しずつではあったが異世界の常識を広め、亜人世界を自分の生まれた世界レベルには至らなかったけれど、彼が許容出来るレベルまでに法を整備した。

例えば、上下水や便所の設置。奴隷制度の廃止。子供による性的客引き廃止等……それに代わる、様々な常識・廃止した事柄に代わる分野の整備を行った人物だ。

《風紀》や《法》という概念を、亜人(獣人)達に広め国の発展等に貢献する。その後、欲をかいた国を相手取り戦争をしたり……世界を統治していた神々の世界へ殴り込みを掛けたりして日々を過ごしていた。

そして、趣味であった魔導を極めた彼は高次元生命体へと至り二万年の休眠の後【組織】へと合流を果たす。

 

「失せろ、変態!」

 

「変態ではありません。双夜、貴方は何度言えば彼女に手を出さなくなるのですか?私も、それ程暇では無いんですよ?」

 

「なら、帰れよ。ってか、俺はもう【組織】の者じゃ無いんだぞ?何時までも、見張ってるんじゃねぇよ!?」

 

「見張ってなどいません!これは、私の『勘』です!!」

 

「「……………………」」

 

【風紀委員】の言葉を聞いた瞬間、二人は無言となる。

 

「な、なんですか……なんで、そんな目で見るんですか…」

 

無言となった二人を見て、不穏な空気を感じた【風紀委員】は少したじろいだ。

 

「いや……だって……なぁ?」

 

「フム……まあ、そういう事なんじゃろうなぁ……」

 

「え、えっと……」

 

「「モテない奴のひがみ(じゃったとは)だったとは……」」

 

「違います!なんですか!?その、リア充は爆散しろ的な発想は!?ふざけているんですか!?」

 

「って言われても……あんま、恐怖とか感じないんですけど……あ、もしかして、図星だった?」

 

「まったく、私達からすれば良い大人であろう?それが、女にモテぬからとは……なんたる不出来……」

 

「違います!そんなんじゃないんです!!ちょ、何生暖かい目で私を見ているんですか!?止めて下さいっ!!」

 

「「……………………」」

 

「止めて……………………」

 

生暖かい目で、【風紀委員】を見詰め続ける二人。

その結果……謂われない風潮に晒されて、居たたまれなくなった【風紀委員】はその場から消えて行った。

 

「「撃退完了……」」

 

「毎度毎度、面倒臭い奴だよな……」

 

「まったくだ。何故、あの様な者達と知り合ってしもうたのだろうなぁ……私は、のんびりしたいのだが……」

 

「……そこは、俺と二人っ切りでイチャイチャしたいって言うところじゃね?もしくは、愛を囁いてくれると嬉しいんだが……」

 

「ばっ!!馬鹿かお主は!?私が、何故その様な事をせねばならぬ!?「魔王化……」…………そ、そそ、そ、そなな、な、たた、と……うわわあああぁぁぁぁ/////!!」

 

双夜に脅されて、彼女は頭を抱え羞恥に悶えつつ頑張ったが直ぐに限界に至り決壊する。

双夜は、残念に思いつつも彼女が自らそれを伝えようとした事を評価して優しく頭をナデナデするだけにしておいた。

 

「………すまぬ。だが、何時かは……待ってて……くれるか?」

 

「もちろん!ゆっくりで、良いんだよ?」

 

上目遣いで、捨てられた子犬の様に言われたら彼には何も言い返せない。例え、説得(?)が成功して彼女が密かにガッツポーズをしていたとしても……。(バレバレ)

 

「……うぅ……情けない……」

 

「下手に急ぐと、平行上の俺達みたいになるだろうからね……あの結末だけは、回避しないと……」

 

視線を外し、思い浮かべるは羞恥心に沈んだ平行上の生まれた世界の事。あの結末を繰り返すのは、流石の二人でも不可能な話だった。今度は、間違いなく半世紀では済まないだろうと予想している。

何故なら、今度の協力者になりそうな奴等は皆不老不死だ。

下手をすれば、一生涯言われ続ける可能性がある。

それだけは、何が何でも避けたい未来だった。

彼女には、その危険性と結末に関してを映像込みで説明・説得をしている。今度は、時間はタップリとあるので『待つ』と伝えてあった。前回の様に、焦る事もないだろう。

『二万年』……二万年もの時間彼は待っていたのだ。

それが、もう少し延びたところで問題はない。

彼は、自信を持ってそう言い切れる。だって、既に気が遠くなる程の時間を重ねて待っていたのだから。

それに、自信があったとしても『それはそれ』で色々ヤる事に変わりはない。

邪魔者が……居るには居るが、それもさっき撃退した。

馬鹿(【鮮血の】)が、乱入して来る事もない。……して来ても、脅すネタは幾らでもある。それに、『腐蝕の呪法』が使える【魔女】も居るから軽率な真似も出来ないだろう。

最悪、奴の造った趣味物を目の前で腐らせてやれば二度と乱入しようとは思わないはずだ。

そう思いながら、彼は彼女の頬に手を当ててゆっくりと距離を詰めて行く。彼女も、目を閉じて彼を受け入れる体制へ。

 

「…………【風紀委員】が、泣いてたぞ?」

 

「うわわあああぁぁぁぁ!?!?」

 

「ガッ!?」

 

唐突に声を掛けられて、驚いた彼女は反射的にストレートパンチで双夜を殴り飛ばす。そしてまた、彼女はベッドの中へと潜り込み……双夜は、殴られた顔を押さえながら乱入者を睨み付けた。

 

「おい、【魔導兵器】……また、全面戦争がしたいのか?」

 

そこにいたのは、なんと【始まりの魔法使い】……又は、【魔導兵器】と呼ばれるあの【組織】の最高顧問だった。

嘗て、神魔創世戦争を潜り抜け、弱き人間達を助け様とした存在。強大な魔力を持っていたが故に、神々(旧・神族)に捕まり【魔導兵器】に創り変えられた被害者。

過去の記憶を失い、神々の命令のまま戦い続け、【世界の境界を断ち切る剣】を創りし者。

しかし、その【世界の境界を断ち切る剣】は完成間近に神々に奪われた。そして、神々の魔改造を受けた彼の剣は……【担い手を対価に世界を滅ぼす剣】となる。

神魔創世戦争・最終戦の折、彼の剣の最初の担い手と成ったのは当時の最高神。何も知らぬ最高神は、【担い手を対価に世界を滅ぼす剣】を使い……消滅した。

それと同時に、当時の魔族代表と奪い合っていた世界をも消し去る。結果、最高神を屠り創成世界を消滅させた張本人として全ての責は彼の者に。彼の者は、ありとあらゆる《呪い》を受け……その責任の元、世界を《創造》する。

それを成した時、彼の者は更なる高見へと至り……同時に、彼の者は【大いなる母】に《祝福》を受けた。

初めて、《神殺し》を達成した者として……。

初めて、《人間から高次元生命体》に至った者として……。

初めて、《世界を創造した》者として……。

初めて、《生命体を創造した》者として……。

ありとあらゆる《呪い》を打ち砕く、《大いなる母の祝福》を受けたのである。失われる前の世界を……神々を……魔族を……人間を……創造した上位存在。

それが、《大いなる母》と呼ばれし者。

その《祝福》を受け、彼の者は【始まりの魔法使い】と呼ばれる様になる。それが、彼等のいるベッドの前でヤンキー座りをするその人だ。

 

「……そんなつもりはないが……アイツが、泣いて頼んで来るから仕方なく?」

 

「OK。なら、全面戦争だな!」

 

たった二人(使い魔含むと数百億となる)で、【組織】と全面戦争等と言っても勝負にもならないと思われるだろうが……そこで活躍するのが双夜の《ルール・ブレイカー》。

《ルール・ブレイカー》を使用して、科学技術使用不可・魔法&スキル全般使用不可(双夜達は使いたい放題)にしてしまえば蹂躙出来る。

発動に時間は掛からないから、彼が『砕けろ!』と思うだけでOK。虹色の剣は、敵に“これを使わなければ《ルール・ブレイカー》は使用出来ない”と思わせる為のブラフ。

そんな事をしなくても、《ルール・ブレイカー》は使用者の認識だけで使う事が出来る。

なので、それが使われた事がわからなければ敵(敵対者)は逃げるタイミングを失い蹂躙されるだけだ。

 

「キスの一つや二つ、させたいのは山々なんだが……流石に、児童ポルノを見て見ぬ振りは出来んからなぁ……」

 

「「子供(ではない!)じゃねぇよ!!」」(怒)

 

因みに、児童ポルノに引っ掛かるのは双夜の方。

見た目年齢で言うなれば、二人ともアウトだが……流石に12歳の姿のままである双夜のソレは倫理に反する。

まあ、双夜が【高次元生命体化】の《転化》を受け入れて眠りに就いたところで、その外見が大きく成長するかというと……変化しなかったりするのだけれど。

 

「…………お前達の周齢を考えろ……」

 

「……周期年輪なんざクソくらえっ!俺達は、人間年齢で全然問題ねぇよ。【風紀委員】にも、そう言っておけやっ!」

 

外見年齢だけでなく、彼等の周期年齢は零歳のまま。

どちらにせよ、まだそういう行為が許される年齢ではない。

 

「そなた等の言い分はわかる……だが、私達はもう人ではあらぬ。成長云々と、肉体を持たぬ私達に注視する必要はないと思うが……」←(正論)

 

そう言われても、【魔導兵器】は静かに首を横に振った。

 

「だからと言って見過ごせば、【組織】の風紀が乱れる可能性があるのでな?なので、全力で阻害させて貰う……」

 

「あ゛?俺達は、【組織】に所属している隊員って訳じゃねぇんだぞ!?なのに、なんで【組織】の為に我慢しなきゃならない!?」

 

「悪く思うな。言うまでもないが、お前達は異端だ。異端は目立つ。注目される者達が、ルールを守らぬならば……それは風潮となりて、【組織】を汚染するであろう……」

 

「「俺(私)等は、放射能か!?」」

 

「そっちの方が、浄化出来る分まだマシだ……」

 

「「放射能以上!?」」

 

「……双夜、これは全面戦争で良いのではないか?」

 

「え!?」

 

「……おーい、アルカァー!」

 

「はい。心得ております……」

 

「ええっ!?」

 

双夜が呼べば、直ぐ様現れる側近使い魔アルカリア・フォーゲスト。片膝を着いて、薄暗い笑みを浮かべ頭を垂れる。

瞬間、【魔導兵器】の表情に焦りが見られた。

 

「いやいやいやいや!ちょ、待って!別に、我らは双夜達と事を構える気はないから!!」

 

「でも、キスもさせてくれないんだろ?」

 

「滅びてしまえ。そんな組織……」

 

「人の恋路を邪魔する奴は魔王に蹴られて滅んでしまえ!つー事で、アルカ……全面戦争だ!!」

 

「ちょ、待ってくれない?そんな理由で、滅んだら凄く情けない組織になるから!!」

 

「知らぬ。私にだって、双夜と…………ええぃ!こっちを見るでない!!「ムギュッ……」ここまで邪魔をされては、少しお灸を据えたくなるのも致し方無いのではないか?」

 

「えっと……そこは、諌める方向で動くべきなのでは?」

 

恥ずかしさを紛らわす様に、双夜の顔面にストレートパンチを叩き込んだ彼女は、いつの間にかバスローブを着てその場に仁王立ちしていた。

 

「む……シーツを被ってる姿のままでも良かったのに……」

 

「客人が居るのに、何時までも裸というのは精神的に無理だ!それに、戦争をするのであろう?」

 

自身の裸を、双夜以外に見られていた訳でもないが……そこはそれアレはアレなので。彼女はさっさと、寝室を出て着替えの為に出て行ってしまった。

 

「どうすんの?静、超ヤル気満々なんですけど?」

 

「えっと……止めて貰えないですかね?ほら、理由が理由ですし……そんな理由で、滅びたくないんだけど……」

 

「知るか!でも、まあ……面倒は避けたいってのも事実。じゃあ、今後俺達には不干渉って事を了承してくれない?」

 

「……なら、少しは壌d「不干渉!」くっ……足下見やがって……子作りは、許さないからな!?ソレ以外なら……」

 

「えー、子作りさせろよー……」

 

「させるかっ!!たくっ……はあ、昴に何て言おうか……」

 

ブツクサ呟きながら、消えて行く【魔導兵器】。これから、彼に降り掛かるであろう苦労が思い浮かぶがスルー。

 

「ヒャッホー!゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚おーい、静ぁ!子作り以外ならOK貰ったぜー?まあ、ヤル時はヤるんだけど(笑)」

 

「……全面戦争は、せぬのか?」

 

「おおぅ……そこまで、俺とイチャイチャしたかったのか!よっしゃ!なら、全面戦争でも良いかな!!」

 

「いや、気が変わった。壌渡されたと言うのなら、それで良い。しかし、子作り……を、か…………」

 

彼女は、少しそれを考えて段々顔を赤色に変化させる。

そして、顔を両手で覆うと再度脱衣所へと引っ込んで行った。それを眺めていた双夜は、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。そして、ニヤニヤしつつ脱衣所の前へ。

 

「おやおやぁ……もしかして、気が付いて無かったのかなぁ?クックックッ……男と女が行き着く先なんざ何時でも何処でも同じだろう?」

 

「ええぃ、止めよ!考えさせるでない!!」

 

「はいはい。じゃ、そういう事にしておこう……」

 

ツッコミを入れるのはそこそこに、双夜は朝食を作る為ダイニングキッチンへ。そこは、彼女が作るのでは?と思うだろうが……彼女は、料理関係が壊滅的だった。

それは、千年単位で練習しても変わらないという状況。

最近では、ホトホト諦めて双夜の手料理に舌を打つ。

 

「くっ……魔力を子宮に集めれば、子ぐらい作る事は出来よう!?…………しかし、それでは《双夜の子》とは言えぬし……ぬあああぁぁぁ!!!」

 

「あんま、考え過ぎんなよ?お前は、すぐオーバーヒートするんだから……(笑)」

 

ニヤニヤしつつ、前の日に下拵えしたネタを取り出し豆腐・味噌・揚・ワカメを鍋に突っ込んで行く。水は、適量。

そこへ、全面戦争の準備をしていたアルカリアが戻って来た。アルカリアは、双夜の対面に立ち報告する。

 

「マスター、全面戦争の準備終わりました」

 

「おう!じゃ、組織の横っ腹に一撃入れたら戻って来て良いよ?反撃されたなら、主砲撃っちゃって良いから(笑)」

 

「おや?手を引くのでは?」

 

「にゃはは。俺達は、【魔女と魔王】一行だよ?馬鹿が調子に乗っているなら、首輪は付けておかないと……ね?」

 

「了解です」

 

そう言って、アルカリアは消えて行った。

それを見送って、双夜は日本人の平均的な朝食を作り上げテーブルに並べて彼女を呼ぶ。しばらくして、大分落ち着いた彼女が脱衣所から出てきて席に着いた。

 

「落ち着いたか?」

 

「聞くな。いただきます……」

 

「はぁ……いただきます」

 

とりあえず、オーバーヒートは治まった様なので共に朝食を静かに取ってしまう。朝食の席が静かなのは、彼女の方の習慣。エイスラミリオでは、食事中にお喋りをしたりTVを見たり新聞を読むのは御法度だったのである。

本来なれば、双夜がその習慣を終わらせているはずだったのだが……彼女一番の友人が、同じ世界出身者で食事に五月蝿かったので黙って食べる習慣が出来上がってしまったのだ。

 

「……ぷっ……クックックッ……」

 

「ん?何だ、いきなり……」

 

「いや、凛奈の事を思い出しちゃって……」

 

「………ああ……フフフ。食事中に何を言い出すかと思えば……アレは、お主がイケないのであろう?」

 

「ちょっと、悪戯しただけじゃん……クックックッ……」

 

話題に上がった『凛奈』と言うのは、彼等共通の友人である。彼等が人間だった頃、共に同じ学びの場に通っていた巨乳が特長の少女だ。

 

そ う 、 巨 乳 の ! !

 

あ、すいません。睨まないで下さい。ちょ、腐蝕魔術を準備しないで……あ、ちょ、待っtぎゃあああぁぁぁーーーーー!!!!!!

 

「全く……」

 

「ナレーションに攻撃したよこの子……」

 

 

 

……………………。

 

 

 

はい、お待たせしました。続きです。

きょ…………何でもないですよー。本当に何でもないです!

ちょ、まだ何も言ってないじゃないですか!本当に何も言ってませんよ!?…………はぁ、失礼しました。

 

話題に上がった『凛奈』と言うのは、彼等共通の友人である。彼等が人間だった頃、共に同じ学びの場に通っていた静クリスティーナ=D=アスフォードの親友だった少女だ。

その子は、エイスラミリオで生まれたのですが地球人とエイスラミリオ人の間に生まれたが為にエイスラミリオ人から迫害を受けていました。その故に、幼い頃は満足な食事が出来なかった為、友人と成った頃には大変食材を大事に扱う様に育っていたのである。

だから、双夜のちょっとおかしな味付けのお弁当にとても良く反応していた。ええ、それはもう……二重人格かと思う程に。余りにも、性格が変わり過ぎる為に双夜が面白がっておかしな味付けの悪戯を良くやったのである。

その度に、『凛奈御乱心事件』が勃発して大騒ぎとなった訳だ。

 

「クックックッ……凛奈みたいな奴、居ないかなぁ……」

 

「……ホドホドにするのだぞ?」

 

「えー……そこはもう、全力で弄りに行くのが俺の主義じゃないですかー(笑)。三段重ねで殺りますよぉー(笑)」

 

「そなたの悪戯は、私にも被害が飛び火するから……困る時があるんだが……」

 

「大丈夫。その時は、美味しくいただきます♪」

 

「いや……それでは、全然安心できぬのだが……」

 

彼女の懇願に、双夜は全く取り合わない。

ニッコリ笑って、同じ事をリピートするだけだった。

 

『失礼します。準備、整いました』

 

そこへ、使い魔達からの連絡が来る。

 

「じゃ、待機してて。合図は、【風紀委員】でやるから…」

 

「……お主も相当、悪人だな……」

 

「そうでもないさ。組織の奴等に比べれば、俺のなんて児戯に等しいよ……」

 

双夜は立ち上がると、彼女の隣へ移動してソッと彼女の頬に手を添えた。そして、ゆっくりと距離を詰めて行く。

その結果……だが、その前に敢えて言おう!

これ(キス)は、【風紀委員】と【組織】を嵌める為の行為である。しかし、邪魔されなかった場合はそのまま実行されるので、それを阻止したい【風紀委員】は間違いなく飛び込んで来る。

その時が、【組織】の最後(嘘)だ!!

 

「ーーーらぁめぇえええぇぇぇーーーー!!!!!」

 

『ヒャッハー!!汚物は消毒だあああぁぁぁ!!!!!』

 

結果。行為(キス)を阻止する為、飛び込んで来た【風紀委員】を合図に使い魔達による総攻撃が開始された。

画面の向こう側で、組織の横っ腹に大量の砲撃と魔法が穿ち込まれて行く。当然、【組織】もシールドを張るなり対策はしていたみたいだが……魔工技術で作られたモノまでは、対策出来る訳がなく横っ腹に巨大な穴が開く。

 

「……【鮮血の】の悲鳴が聞こえる様だ……」

 

「あ、あるぇ!?……えっと、キスは!?」

 

リビングにて、【組織】への総攻撃の様子をウィンドで確認している双夜の呟きに【風紀委員】はキョトンとした顔で首を傾げる。静は、静かに食事を再開させパクパクと料理を口に運んでいた。

 

「ん……なんの話だ?そなた達の監視がある以上、出来ないモノをする訳が無かろう?」

 

ホンの一瞬前まで、キスを仕様としていた者達の雰囲気ではない状況に【風紀委員】が混乱する。

そこへ、【魔導兵器】がやって来て『あちゃー……』と言わんばかりに目元を手で覆い天井を見上げていた。

 

「嵌められてやがる……」

 

【魔導兵器】の呟きは、組織への総攻撃音でかき消され……双夜達以外は、後片付けに奔走する事となる。

 

 

後日、セイビア経由の報告書で双夜が知ったのは……組織が被った被害が甚大だった事だけだった。まあ、言うまでもない事だが……使い魔達が、双夜の邪魔をする組織に容赦するはずもなく……おかしな所まで、被害が拡大している。

 

「……流石、ギャグキャラ。美味しい所は、全部持って行きやがる……」

 

「ん……どういう事だ?」

 

「飛龍、捕まったって(笑)」

 

「はぁ!?」

 

双夜は、その報告書を静に手渡しニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべていた。そこに、反省や後悔といった憂いはない。

誰が見ても、『コイツ、またヤル気だ』と思う様な顔をしていた。

 

「顔出しもしてねぇ癖に、なんて美味しいオチに……」

 

報告書には、セイビアが使い魔達の元へ合流し、共に『ヒャッハー!汚物は消毒だー!!』という台詞を唱和したと記載があった。その際、セイビアに付いてその現場に向かった飛龍が、その場のノリと勢いで使い魔と共に組織の施設に攻撃を加えたと報告されている。

 

「…………これ、背任行為なのか?」

 

「そうなったらしい(笑)」

 

彼女のいう通り、飛龍は背任行為として施設破壊に加わった罪人として逮捕されていた。しかも、禁固刑で数百年の実行判決である。執行猶予は、付かなかったモヨウ。

 

「全く、何をやっているのだ……」

 

こうして、彼等の騒がしくも楽しい毎日が過ぎていく。

今も昔も、然程変わらないけど確実に進んでいく日々が……いずれ、共に歩んだ者達と敵対するまで彼等は笑顔で過ごしていく。

 

《旧・神族》を滅ぼし、未来への道を繋げた彼等は新たな未来の為に……その身を御祓、消えて行く。

双夜は、その為の人材なのだ。

《神殺し》を殺す事が出来る“彼”は、新たな未来の道を塞ぐ事に成りかねない《神殺し》……否、《歪な命》達を滅ぼす役割を担っている。

 

だからこそ、彼は【組織】と馴染まない。

 

彼は、新世代の《神殺し》であるが故に。

 

 

 

 

《神殺しの異端児》

 

如月双夜。

 

静クリスティーナ=D=アスフォード。

 

 

 

彼等の物語は、まだまだ続く。

 

 

 

 

 

 




双夜の過去と恋人を紹介したお話で、恋人がどんな娘なのかわからないと言われたので、書いてみました(笑)。
こんな感じの娘です(笑)。外見は、『よくわかる現代魔法』の綾瀬弓子クリスティーナ。中身は、『ハピネス』の式守伊吹を狂暴かつ暴力的にした感じだと説明したのですが……わかりにくいと言われたので。っても、暴力的なのは恥ずかしさを紛らわせる為だし……地雷さえ踏まなければ、狂暴ではないというオチ。しかも、割りとデレモード。
双夜を受け入れてはいるが、他者の目があると暴走気味。
まあ、この二人の話を書くのは好きなので筆は進む進む(笑)。だけど、オチを担当するのは何時もの馬鹿だった!!

微妙に、【魔導兵器】と【風紀委員】が壊れ気味だけど普通にこんな奴等です。凍真と一緒にいるアレは、染まり切ってない凍真に遠慮している感じに書いているから……。
今回は、あの二人の本性を書いてみました(笑)。

それと、ナレーションにあった双夜の役割は本当。
最終的には、《神殺し》vs《神殺しの異端児》が始まります。まあ、一方的な蹂躙劇なんですけどね。
《ルール・ブレイカー》で、科学・魔法・スキルを使えなくして虐殺します(笑)。もちろん、それが未来の為になるんですよ。そういうお話だったので……だから、双夜は極力【組織】に所属する・関わるのを嫌がっていた訳です。
最悪のシナリオですよねぇ……これ。

因みに、作者は自分がモテ無くても自分の生み出したキャラに『爆ぜろ』とかは言いません。まあ、例外はありますが基本的に不幸な感じに創るので、言ったら色々罪悪感が……。
ロリコンは、逝って良し!!

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m(_ _)m
 
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いつも読んでくれる方々に感謝を……。

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