絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~ 作:葉月華杏
凍真
皆さん、お久しぶりです。
てか、『皆さん』って誰だよ!?『お久しぶり』って誰に言ってんだ!?いや、まあ……誰に、何を言っているのかは不明だが、禍焔凍真だ。
現在、俺はセフィロト内を全力全開で逃亡中。
何故、そんな事をしているかというと……全ては、修行と称していい加減な事をする彼等にホトホト愛想が尽きたというか、心がへし折られたというか……そんな感じ。
「……………………」
ぶっちゃけ、あれは修行ではないと断言する。
修行とは、肉体をイジメ抜き、精神を鍛え、敵を倒す為に努力する事であって、重りを括り付け湖に沈めたり……超重力でペチャンコにされたり……滝行と称して、滝壺に突き落とし俺目掛けて丸太を落とすなんて行為ではないと思う。
理屈を問えば殴られて、文句を言えばバッサリ斬られ……悪口を呟けば、空間斬撃が飛んで来る毎日。
もう……もう、我慢の限界だ。
故に、ここでの修行は辞めて他世界に逃亡しようかと考えている。それで、【門】のある施設まで移動しようと頑張っているのだが……迷った。ピンチ!
追手がいるかは不明だが……何となく見られている様な気がして、とても不安だったり。
「……………………」
俺は、【門】まで辿り着き他世界へと逃亡仕切れるのでしょうか?ドキドキしながら、あちらへこちらへフラフラと施設内をさ迷って行く。
ピッ……ブーッ!!
「……………………」
ゲートを潜ろうとカードを指定の場所にかざしたら、エラーを示す表示とブザーが鳴り響く。えっと、この身分証ではここは潜れないのだろうか?それとも、既に手を打たれていて彼等に連絡が行ってしまっているのだろうか?
今一、良くわからないが……俺、今超ヤバイ?
とりあえず、すぐにでもここから離れるべきだと考えて別のゲートへと移動する。ええ、それが最善だ!
そそくさと来た道を戻り、別のゲートを目指して物陰から物陰へと隠れ潜んで移動した。
「……………………」
良くわからない文字が並ぶ案内板を見上げて通り過ぎ、『今度こそ』と思いながらカードを指定の場所にかざす。
ピッ……ブーッ!!
俺は、銀河さんに渡されたカードを見詰める。
既に、逃亡した事が発覚して使えなくされている可能性が大と見た方が健全だろう。ここまで、試したゲートは二桁に上り……大体、諦めに似た気持ちが沸き上がって来た所。
次こそは!と思い、次で駄目だったら諦めようと思っていたところで、『ピピッ!』と音がしてゲートが開いた。
「!!」
ヒャッホー!とゲートを潜って階段を下りて行くと地下鉄の様な場所に出た。しばらく待ってると、電車の様な乗り物が来て俺は乗車する。
何処に行くのかはわからないが、俺は『外』へと出て数時間という時間を掛けて修行場のある施設から別の施設へと入って行く。『外』から見た修行場のある施設は、ガ○ダム等でお馴染みの『コロニー』の様な場所だった。
ただ、宇宙空間ではなく『ゼロの次元』と呼ばれる灰色の空間に浮かんでいるコロニーだったけど。
とりあえず、あの場所から遠ざかれたので良しとする。
とは言え、俺は一体何処に向かって突き進んでいるのかサッパリわかってはいなかった。ぶっちゃけ、修行場のある施設に行くのも『門』に行くのも全部誰かの転移魔法での移動だったから自分が何処にいて何処に向かっているのかもわかっていない。しかも、案内板はあるけれどその内容はわからないと来たもんだ。
ハッキリ言って、不安しか無かった。
冷静に考えて、これが無謀な行為である事はわかっている。しかし、あの場所で大人しく訳のわからない修行をする気にはなれなかった。ちゃんと、何の為の修行なのか理屈と目指すべき場所を指定されているのならまだ我慢も出来ただろう。だが、それらが全く示されないまま無茶苦茶な行為を強行されるのは我慢ならない。
だから、俺はあの場所から逃げ出した。
最終的に行き着く先は、わかってはいるのだが……それでも、俺はあえて逃亡という無謀な選択を取る。
「ぶっちゃけ、誰かに捕まるのはわかってるんだけど。それが、セイビアさんか銀河さんかはわからないけど」
「だったら、辞めたら?」
「でも、訳のわからない修行はしたくない………ふぁ!?」
独り言に合いの手を入れられて、慌てて振り返ればセイビアさんがいた。その瞬間、俺の逃避行が終った事を理解する。だけど、セイビアさんの口から出て来た言葉は違った。
「で?どこ、行きたい?」
「は?」
「だから、何処に行きたいの?」
「えっと……捕まえに来たんじゃないんですか?」
「いや?まだ、お前が逃亡したなんて連絡受けてないけど?連絡が無いんだから、君の逃亡は続行ね?」
「あるぇ?捕まえ無いんですか?」
「捕まえないねぇ(笑)。連絡があっても、捕まえる気もない。つーか、そろそろ限界だろうと思ったんで網張ってた(笑)」
「マジっすか……」
「真面目な常識人にあの修行は辛いだろうからな(笑)。息抜きも必要だろう?ちょこっと、遊びに行こうぜ!」
何もかも、見通されていた気がして少し気分が悪いが、セイビアさんのその提案はとても魅力的だった。
「近くに、フェイやシュウを待たせてるんだ。アイツ等と合流して、遊び倒そうぜ!!」
「フェイ?シュウ?」
「俺の元同僚。飛龍(フェイロン)と秋月愁(アキヅキシュウ)な?特に、シュウとは会わせたかったんだよ。同じ、苦労人だからな。絶対、仲良くなれると思うぜ?」
良くわからないが、セイビアさんは俺に会わせたい人がいるらしい。とりあえず、逃亡して来た者としては内部に詳しい人達と息抜きが出来ると言われて少し気が楽になった。そんな訳で、俺はセイビアさんに連れられて紹介したい人と会う事になる。
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……………………………………
……………………
「……………………」
「こちら、禍焔凍真くん」
「こんにちは……初めまして……秋月愁です」
「あー、こっちが愁ね。で、あそこで屋台を荒らしているのが飛龍ね?つーか、アイツ口座凍結されてなかった?」
紹介された愁さんは、薄いピンク?のストレートロング髪で中性的な顔立ちをした男性だ。
「別口で、稼いだんだって……嘘か本当かは、わからないけど……使えてるんだから、大丈夫なんじゃない?」
飛龍さん?は、金色に近い茶髪のボサボサ頭で襟元で髪を一括りに纏めている少年?だった。両頬にハムスターの如く、食べ物を詰めに詰め込んでモグモグと口を動かしている。それを、呆れ顔で見ている愁さんとセイビアさん。
「……本当に、大丈夫なのか?まあ、いずれにしろ捕まるのはアイツだけだし問題ないだろう……」
「その後で、柄受けに行くのは私なんですけどね?」
「何時も、お世話になってます!アザーッス!」
因みにセイビアさんは、黒髪を中別けにした青年。
今は、手を後ろに組んで愁さんに頭を下げていた。
会話の内容は、全力でスルーしておく。
是非とも、こちらを巻き込まないで欲しいモノだ。
「大丈夫ですよ。捕まるとしたら、フェイだけです(怒)」
「えっと……顔に出てました?」
「ええ。とは言え、普通の方々にはわからないレベルでですけどね。私達は、そこそこ経験が高いですから……」
「はぁ……」
色々、苦労されているらしい。
まあ、あの様子だとトラブルに突っ込んで行くのが目に浮かぶ様だし……セイビアさんという、トラブルメーカーもいるから愁さんはとても大変そうだ。
自己紹介が済んだ俺達は、それから繁華街へと繰り出した。セイビアさんが、先ずはゲームセンターだ!と言うので【鮮血の】さんが趣味全開で造ったゲーセンに行き、中二病の心をガッシリ掴むゲームを堪能する。
スターウ○ーズのジ○ダイよろしく、ライトセイバーで飛んで来るビームを切り払ったり、ガ○ダムのコックピットモドキで戦闘シミュレーションしたりした。他にも、数々の趣味ゲームを遊んで俺達はとある喫茶店へ。
そこで、俺は最近の悩みを打ち明ける。
「……あの方の、修行に行き詰まっているという事ですか?…………何処に行き詰まっているのですか?」
「修行するのは良いのですが、ヤってる修行の意味がわからないです。何の修行なのか、聞いても教えてくれなくて……」
「「……………………」」
何故か、フェイさんと愁さんはジト目をセイビアさんに向けている。セイビアさんを見ると、冷や汗を流していて『あるぇ?言わなかったかなぁ?』と呟いていた。
「どうやら、セイビアの伝え忘れの様ですね。仕方がありませんが、私から説明させていただきたいと思います」
「…………はあ……」
セイビアさんの伝え忘れというが……もしかして、あの修行?に意味があったのだろうか?
「簡単に言いますと、私達《神殺し》はその大半が『不老不死』です。年を取る事がない上、殺されても死にません。ですが、この『死なない』という状態は生物としてのとある機関を麻痺させてしまうんです。それが、『危機関知能力』です。ハッキリ言いますが、ありとあらゆる戦闘面でこの能力がない者は敵に勝てません。死に対して、鈍感になり過ぎていて回避なんてしませんから攻撃に当たり捲りになります。その結果、戦闘の大半を肉体の再生に時間を宛てる事になり、敵を逃がしてしまう事に繋がりかねない。故に、修行では極限状態を維持しつつ『危機関知能力』を育てねばならなくなりました。死に対する恐怖と共に、危機関知能力の向上を目指し……その上で、敵を圧倒する戦闘能力を得ねばなりません。ですから、今しか無いのです。生き物から不老不死に転生した『今』しか、危機関知能力は育ちません。あの修行は貴方が【死の気配】を感じ取れる様になる為の修行なのです」
「……………………」
あれ、ちゃんと意味があったんだ……。
この話を聞いて、俺が思ったのはそれだけだった。
だがしかし、その理由はとても納得が行くものだ。
俺も思ってはいたんだよ。不老不死なのに、なんで回避する必要性があるのかと。漫画やアニメみたいに、再生能力を飛躍的に引き上げて瞬時再生とかすれば問題ないじゃん!とか。だけど、《神殺し》の相手は《神様》だ。
ホンの一瞬、ゼロコンマの世界で再生に時間を掛けている暇なんて無いに等しい。そんな事をチンタラとしていれば、相手に逃げられるのが必至。
言われて初めてそれに気が付いた。
「本来ならば、修行を始める前に貴方を召喚した者が説明する事になっていたのですが……」
「コイツを召喚したの、【始まりの魔法使い】だぞ?アレも、伝えそうにない奴だよな!!」
「そうだとしても、新人にはちゃんと研修を受けさせてから修行させて下さいとあれ程言ったでしょう!?」
「忘れてたんだから仕方がない……」
「仕方がない訳ないじゃないですか!!全く……そういう訳で、貴方は修行の中で危機関知能力の向上を計り、【死の気配】を感じ取る能力を得ねばなりません」
「あ、はい。了解しました!」
最初から、そうだと言ってくれていれば俺も脱走なんてしなかったというのに……肝心な事を忘れているなんて、セイビアさんも適当な人なんだなぁ。少し残念な気持ちで、セイビアさんを見るが……そもそもこの人、トラブルメーカーでもあるので、それも仕方がない事なんじゃないかと思い直す。この人のトラブル体質って、そういう性格から来ているのかもしれない。
その、ありうる可能性に俺は辟易してしまった。
「とりあえず、黙って出て来たんですよね?銀河さんにだけでも、連絡しておいた方が良くないですか?」
「あ、そうですね……じゃあ、ちょっと連絡しておきます」
愁さんに進められて、セイビアさんから何の説明もなく修行していた事を含め銀河さんにメールを送った。
すると、直ぐに返信が来て……開いて見てみると、『知らなかったの!?』『何も聞いてなかったの!?』的なニュアンスが多分に含まれた驚愕だった。その後は、謝罪文が続いて師匠には銀河さんが説明しておくという確約をくれる。その上で、息抜きにセイビアさん達と遊んで来ると良いと許可をくれた。どうやら、俺が修行をボイコットして逃亡している事を察してくれたらしい。
「銀河さんって、何気に優しいですよね……」
「「「銀河はね!!」」」
三人のハモり発言に、とても嫌な現実が含まれている様な気がして少し困る。それではまるで、師匠が全く優しくないって言っているみたいじゃないですか……ああ、優しくないんですね。知りたくなかった事実である。
「じゃあ、しばらくは遊んでいられるんですね?」
「はい。遊んで来いとメールにはありました」
「じゃ、ちょっと遠出して最新型のIS見に行かない?」
「スケスケのパワードスーツか……」
「それ、廃止されたはずですよ?」
「「ああ、あの残劇の……」」
なんでも、師匠がそれを纏ってブチギレ……恐怖の時間が開始されたとかなんとか。その際の被害をかんば見て、パワードスーツはスケスケから透けないパワードスーツに変更されたらしい。
「そもそも、なんでそんなモノを造ったんでしょうね?」
「「「ネタだろう?」」」
「ネタって……誰に装着させる気だったんだか……」
「「「女性にだろ?アイツ、ムッツリだし……」」」
ああ、【鮮血の】さんてムッツリなんですか……趣味全開の天才科学者と聞いていたからジェイル・スカリエッティのヲタクヴァージョンかと思っていました。
「ぶっちゃけ、あの後女性陣からコッテリと叱られてたよなぁ(笑)。俺達には、超法治的方法で女性の裸を見れる方法とか言ってたけど……まさか、ポアンが真っ先に試験運用のテスターとして来るとは思ってなかったみたいだけど」
「来た人物を見て、即『チェンジで……』とか抜かしてたらしいけど……あの人見て、身体の一部が好みじゃ無いからって即チェンジはマズイッしょ(笑)」
「あのムッツリは、巨乳派だからな……」
とても、良くわかる説明だった。
「ってか、それ……超法治的方法?じゃないでしょう?で、女性陣の裸は見られなかったんですよね?」
「「「見る云々どころじゃ無かったからねぇ(笑)」」」
「IS展開!即、師匠レイプ目!」
「IS超稼働!ウラヌスシステム起動!!」
「さあ、惨劇の始まりだ!!で、一気に殲滅されたらしいから……なぁ?」
「「ここ(組織)に居なくて良かったぁ……」」
仲良いなぁ……この人達。
というか、一字一句変わらずにハモるとかドンだけシンクロしてるんだよ!?ツッコミたい放題じゃん。
師匠さんが、大暴れしていたその日セイビアさん達は任務で【組織】を離れていたらしい。事の顛末を後で聞いて、心底ホッとしたそうだ。その後も、女性陣の機嫌が悪くて空気がギスギスしていたらしいけど……ここで、あのチビッ子『双夜』が【鮮血の】さんの格納庫を消し飛ばして女性陣の溜飲が下がったとか何とか。
「というか、なんで双夜が格納庫を?」
「あー、良くある事だからなぁ……理由までは、知らない」
「あの方の思考は、基本的に読めませんから……何で、そんな事をしたのかまでは……でも、ろくでもない事には間違いありません!(確信)」
「あの頃はまだ、女性の裸を見ても大丈夫だったんだよなぁ……アイツ。あの後、『彼女』が進言したからーーー」
「それ、機密だろ?良いのか、言って?」
「おっと、イケねぇ。今聞いた事は忘れてくれ……」
「えっと……はい、わかりました」
多分、俺には関係のない事だろう。
俺が、この【組織】に関わっていられるのはあのチビッ子に関しての事柄のみ。それ以外は、必要ない事柄なので耳にしても聞かない方が良いらしい。世界の調整が済んで、チビッ子が【魔法少女リリカルなのは】の世界を出て行けば俺と【始まりの魔法使い】との契約は切れる。
なら、知らなくて良い事は知らないままの方が良いのだ。
「とりあえず、セミオートでないシミュレーションがある所へ行きましょう。全てが、マニュアルですが……息抜きには最適でしょうから……」
「えー?ここは、いきなり本番に望む所じゃん!テスターしに行こうよ!」
「却下。そんなに行きたきゃ、一人で行けよ。俺は、凍真と全マニュアルシミュレーションで遊ぶからさ(笑)」
「むぅー…………ケチィ!!」
セイビアさん達が、断りを入れるとフェイさんはそう言って走って行った。今一、わからなくて首を傾げていると愁さんが説明してくれる。
「人数がいた方が、連携データも取れるので給金がアップするんですよ。それを狙って、あの子は私達を誘った訳ですが……凍真さんは、初心者なのでシミュレーションの方が良いでしょう」
「それに、散財しているのはあの馬鹿だ。そんなのの為に手伝ってやる必要はないさ。さて、シミュレーションルームに行こうぜ!」
言われるまま、俺はセイビアさん達と共に何度か電車?を乗り継いでその施設へ向かった。もう、そこまでに着くまでに俺の方向感覚は完全に大混乱中である。
そして、簡単な説明を聞いて何度かMS(モビルスーツ)のオートモードで機器の動きを確認後、実際に操縦管を握って動かしてみた。その上で、結論だけを述べよう。
「疲れた……」
「まあ、普通の感想だな……」
「アニメだったら、ただ座っているだけにしか見えなかったけど……いざ、操縦ってなるとあんなに細かな操縦をしなきゃならんとは…………コーディネーター、スゲー……」
キラ・ヤマトが、ガ○ダム動かしながらOS書き替えてる描写があったけど……そんな事、してる暇なんて存在しない。
イメージフィードバックシステム(IFS)があれば、何とか出来るだろうけど……生身では、かなり難しい話しだった。
「あれは、現実的ではないわぁ……」
「何を比較対象にしてるかはわからないが……大変だろう?ロボットの操縦って……」
「舐めてたわー……あの世界に転生した奴等、ご愁傷さま。俺は、行きたくないわー……」
「まあ、そういう世界は神様特典があっても五体満足とはならんからな……」
「大抵、初出撃で死ぬよね(笑)」
「死なない事を願っていても、良くて半身不随は間違いないし……悪くて、手足が無くなるとか……」
「それ、半身不随の方が重くないですか?」
「あははは。そうでもないよ?だって、完全に動けないなら諦めが付くけど……動けるのに手足が無いのって、かなりの精神負担になるんだよね……」
「幻痛とか、半端ないし……動けないって事は、それ等すら無いって事だから。どっちかっていうと、諦めが付く方が楽なんだよね……」
「成る程。そういう考えもあるんですね……」
そう言われると、動けない事より手足が無い方が辛いかも知れない。義手や義足でと思うけど、思う様には動けないっていうし……それなら、半身不随の方が楽かもしれない。
「まあ、何にせよ……平和が一番だよな!」
「ですねー。平和が一番です」
「「一人、平和ではない人がいますが……」」
言われて、視線を追えばフェイさんが数機の赤いパトライトを付けた小さな円盤に追いかけられている。
俗に、『アダムスキー型』と呼ばれるアレだ。
「何あれ……」
「カンテル……ってもわからねか。アレだ、警察的な存在」
「アレに捕まると、数週間から数年は拘束されますね」
一応、【組織】にも法的システムがあるらしい。
ただ、相手が相手なので機能する者と機能出来ないモノがあるとのこと。流石に、【始まりの魔法使い】レベルには手も足も出ないんだって。まあ、仕方がない。
だが、常識的に大人しく捕まるのがマナーなんだそうだ。
常識とかマナーとか、そんなのが必要なのか……と思ったのはナイショ。で、中には常識に囚われず頑張る(抵抗する)人もいるらしく……フェイさんは、頑張る人だった。
最終的に、恐怖の【風紀委員】さんが登場してフェイさんはドナドナされて行ったけど……あれはもう、仕方がないとしか言いようが無かった。
「とりあえず、今日は帰りましょうか?」
「凍真は、俺ん家に直行な?」
「ふぁ!?」
俺は、セイビアさんと共に彼の家へとドナドナされる。
ドナドナされた先に待っていたのは、セイビアさんの奥さんでレイさんという人族の女性。もう一人、女性がいたけどそっちは奥さんの友人だった。名前はラミアさん。
悪魔族の末裔だとセイビアさんは言っていたけど……どう見ても、セイビアさんに気があるように見えてちょっと怖かった。お子さんは、まだ居ないらしくその日の夕食は友人含む四人で食べる。
「この子達は、元々パーティーを組んでいたのよ」
「パーティーって、RPGみたいな?」
「ええ、愁とフェイも……ね?」
セイビアさんとレイさんの馴れ初めを聞いたら、ラミアさんが懐かしそうに色々話してくれた。当の本人は、不敵な笑みを浮かべてレイさんを見詰め……レイさんは、耳や首まで赤く染めて俯いてしまった。ちょっと、反応に困る。
「昔、銀河が仕留めそこなった魔王を退治する為にセイビア達が死力を尽くしたの。私は、敵側で魔王がいなくなった後パーティーに入ったの」
「ラミアさん、敵だったんですか!?」
「フフフ。ええ、敵だったのよ?その頃から、セイビアは鬼畜だったわ……」
「え!?鬼畜!?」
「止めろよ、その話……凍真が、怯えるだろう?」
そう言って、ニヤニヤ顔のセイビアさんがラミアさんを嗜める。ラミアさんは、それでも続けた。
「コイツったら、私をガトリングガンで攻め立てたのよ!?邪眼持ちだったくせに、その能力は使わないで!!」
ロケットランチャーやスタングレネードで、悪魔達に取って訳のわからないトリッキーな攻撃で翻弄したらしい。
「良いだろう?邪眼石を手に入れたのは、偶々だったんだよ!不可抗力って奴だ。まあ、身体能力向上は役に立ったけどな!」
ドヤ顔で、それ以上の役には立たなかったと豪語するセイビアさん。要らない子扱いとか……もっと、突き詰めれば別の面も見えたはずだろうに……邪眼石が不憫で、少し涙が流れてしまう。まあ、邪眼石に意志があったかは不明だが。
「その上、コイツったら邪眼石を返上して人間に戻って人界に帰っちゃたのよ!?俺は、ただの人に成りたいんだ!とか、カッコいい事言って……」
「カッコ良くはないだろう?お前のセンスを疑うよ……」
「あら?カッコいいじゃない。力に溺れない男って……」
「……その後、フェイが無茶して天界から返上した邪眼石と聖皇石を持ち出してな……あの馬鹿の腹ん中で二つの石が融合して俺の中へ溶け込んじまったんだ……」
「また、人外に逆戻りってね?アレだけだけど……フェイには、ちょっとだけ感謝したわ……」
「何故、お前がフェイに感謝するんだ?」
「そりゃ、想い人を連れ帰って来てくれたのよ?感謝するのは当たり前でしょう?」
「はあ……だから、俺にはレイがいるって言ってるだろう?」
「あら?想うだけじゃない。それすら、許容できないの?」
「……………………」
セイビアさんは、ラミアさんを無感情な瞳で見るとこれ見がよしにレイさんとイチャ付き始めた。それをラミアさんが、歯軋りしながら睨んでいる。何、この三角関係?。
「今、流行りのハーレムにすれば良いのよ!ロックウォーだってやってるじゃない!」
「嫌だよ。侍の国に生まれた者は、たった一人の女性に尽くすんだ。凍真だって、そうだったんだろう?」
ちょ……出来れば、その三角関係に俺を巻き込まないで欲しい。と言っても、もう既に遅く……ラミアさんが、こっちまで睨んで来ていた。
「俺も、そうしたかったんですが……ほぼ無理矢理二人の女性とヤるはめになりまして……」
「つまり、ハーレムを創ったのね!?」
「ハーレム……とは、言い難いですが……まあ、そうですね」
心痛むハーレムだったけどな。
双夜に執着したアリサと、子供が出来るまでの関係を築いただけで、それ以降は同じ部屋で寝る事も無かったけど。
あるぇ?……思い出しただけなのに、心がとっても寒く‥。
「なんか、辛そうだそ?」
「ハーレムなのに、辛い思いでもしたのかしら?」
「えっと……大丈夫?」
「ウグッ……アレは、余り良いモノではないですよ?」
「ホゥ……だそうだぞ?ラミア」
「ちょ……折角、同志を見付けたと思ったのにぃ!」
「ははは。もう、諦めろ。さて、そろそろ寝室に案内しよう。凍真もそれで良いよな?」
「そうですね。馴れ初めは、また今度にします」
思わぬダメージも受けたし……これ以上つつくと、こっちにまで飛び火するのがわかったので止める事にした。
立ち上がり、セイビアさんの後ろに付いていく。
「悪かったな?」
「あー、もうその話は……」
「ははは、本当に苦労してるんだな。こりゃ、愁に会わせたのは間違いじゃ無かったか……アイツも、苦労症なんで話し相手になってやってくれ。俺達が、かなり迷惑を掛けているからな……まあ、主はフェイだけど……」
「御自分では、なさらないんですか?」
「今は、それ程長く関わっていられないからな。たまに会って、遊ぶ程度だ。それに、カウンセリングなんて出来ないよ。専門でもないし、適正も無かった……」
「カウンセラーに適正なんてあったのか……?」
何はともあれ、俺に宛がわれた寝室に着いたのでセイビアさんは戻って行った。
何もする事が無かった俺は、その後直ぐに寝てしまう。
その翌日、朝食を食べて愁さんとの待ち合わせ場所に行こうとしたら……何故か、狂化した師匠が現れてこちらを見るなりギラリとした瞳と壮絶な笑みを浮かべて追い駆けて来た。慌てて、セイビアさんと逃げ出すが間に合わず俺は捕まり良くわからないままドナドナされていくのだった。
セフィロトでの一幕。凍真くんの悪夢な日々をお送りしました(笑)。なんの説明なく、修行をすると大体こうなります(笑)って見本。ガチンコで、究極の臨死体験をさせられる修行が《神殺し》の修行方法。『死の気配』を察知出来ないと、バッサバッサと斬り捨てられます。大体、凍真みたく途中で逃げ出す者が続出する(笑)。で、察知出来る様になった者達だけが《神殺し》となれるって訳(笑)。
後は、【鮮血の】の趣味全開なゲーセン話し(笑)。
作者も行ってみたいです(笑)。
誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m
感想もあれば、お願いします!
いつも読んでくれる方々に感謝を……。