絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一五五話

双夜

 

 

幼少の神崎を、弄ってイビって虐め抜いた俺達は朝を迎えていた。夜通しになってしまったが、神崎(幼)は号泣の果てに疲れて寝てしまう。まあ、だからって虐めが中断される事はなく、現在進行形で継続中だった。

 

結果……。

 

「ガチ、さーせんでしたっ!!!!」

 

記憶(知識?認識?)の上書きもあって、『神崎大悟』の人格(平行世界)を得始めた彼は、俺の目の前で土下座をしていた。それを適当に流しつつ、俺は神崎(大人)が居ても《上書き》が数日掛かる事を知る。

ならば、浅上兄妹がそれなりの長い時間を掛けて、裏話等の知識・認識を得た事に思い当たった。

つまるところ、その確証を得るまでの間、彼女達がどれ程混乱したたか……が理解出来る。不安もあっただろう。

しかも、その結論が【インスタント・ソウル】だなんて残酷にも程がある。何の救いもない結論は、自分達の評価基準を投げ槍にしてしまう程だっただろう。

そりゃ、神崎が悲しむのも当たり前である。

アイツは、自分を認めて貰いたいが故に能力を得た様なモノだ。なのに、ソレですら幻想だったなんて救われない。

全く、神々も残酷な事をしやがる。

そんな、救いを求める者達に認識を歪めて能力を与え転生させるなぞ悪魔の所業に等しい。

これを考えた奴は、余程ひねくれていると思われた。

 

「とりあえず、君……学校に行ったら?」

 

「え!?えっと……なんで?」

 

「なんで?って……義務教育なんだろう?」

 

「黒歴史を知る者達がいる場所に、正気に戻った転生者を向かわせるなんてなんて鬼畜!御見逸れしました!」

 

「……ああ。彼等の視線を感じる度に、自分がしてきた様々な思い出が甦り羞恥心に悶える……って事か……」

 

「…………嫌だ!それは、断固断るっ!!」

 

「特に、原作人物達から向けられる冷たい視線が突き……刺さらないなぁ。恋愛系認識阻害で、惚れた男を見ている乙女風に見えるんだっけ?」

 

「っ!?」

 

「うわぁ~……見た目は、恋する乙女。しかし、その実体は……って奴ですね?どうなんだろうな?」

 

神崎(幼)は、ニヤニヤとした笑みを向けると青冷めた顔を更に青く白くしていく。俺が、《ルール・ブレイカー》をチラつかせて見せれば『ハッ!』とした表情でこちらをガン見。だが、俺の笑顔にドン引きとなる。

 

「解せぬ……」

 

「いや、わかれよ!?」

 

「お願いします。俺……いや、憐れな子羊に慈悲を……」

 

「クズだろう?与えられた能力に胡座をかいて、訓練する事無く実践で使用。その結果が、高町なのはの殺害……」

 

「グッ……憐れなクズに御慈悲を……」

 

いや、言い直せって言った訳でなく。

神崎(大人)による、神崎(幼)に対するイビりは見る者に不快感を与えるモノだ。良い大人が、9歳の子供を虐めるなど世間体が良いはずがない。

それが許されているのは、神崎達が同一存在だからだ。

これが、他人だったら神崎(大人)は世間から非難されていただろう。例え、幼い神崎の家の中だったとしても……押し込み、立て籠り、監禁罪が付いてくるっていう素敵状況。

因みに、俺は除外で(笑)。見た目、五歳児だからヤバくなったら神崎(大人)に押し付けて逃げれば済む。←鬼畜。

 

「つーか、殺人犯じゃん……お前……」

 

「僕が居なければ、警察に逮捕されたあげく不法滞在者扱いされて外国に追放される運命だった?」

 

「あ……?あ!そ……っか、薄氷……」

 

「お?教えてないはずの知識を……?」

 

「本来、《ルール・ブレイカー》に巻き込まれた者はアカシックレコードに残留する平行世界の自分の記憶を呼び覚ましやすいからなぁ……」

 

「ああ、だから浅上兄妹が前回の記憶を持っていた訳ですね?残留していた記憶を呼び覚ましたから……」

 

「ウンム!僕の能力にさえ、触れていなければ一般的な神様転生だったんだけど……ままならないよなぁ……」

 

それでも、影響があるのは俺が初めて降り立った第一世界だけだと思いたい。つまり、神崎大悟・不知火翼・霧島白亜・浅上亮・浅上美愛・有栖川零・遠藤蒼炎・月詠拓斗・黒龍巽・三桜燐がソレに該当する。

まあその内、オリジナル・ソウルだったのは不知火翼と浅上兄妹それから三桜燐くらいだろう。せめて、翼以外の彼等だけでも確保しておけば、後々楽になるかも知れない。

翼は、三度目の世界からインスタント・ソウル化していたから除外。今後も見掛けたら、保護していく予定だけど……そう言えば、この世界にも不知火翼はいるのかな?

 

「おい、人殺し。やっぱり、学校に行って来い」

 

「ちょ、その呼び方は止めて下さい!」

 

「五月蝿い。学校に行って、不知火翼がいないか調べて来い。それと、高町なのはの様子を伺って来い」

 

「えっと……不知火?それから、高町なのはの様子?」

 

「そうだ。そしたら、僕の《ルール・ブレイカー》を適用してやる。どうする?」

 

「是非、お願いします……」

 

そういう訳で、神崎(幼)に《ルール・ブレイカー》を突っ込み認識阻害を一時無効とした。そして、玄関から送り出し神崎(大)には翠屋に神崎(幼)の兄として顔を出すように告げる。神崎(大)は、そのお願いに難色を示すが命令だと言って強制した。

 

「何の意味があるんですか!?」

 

「謝って来いって言ってるんだ。自分のした事だから、感情も入りやすいだろう?」

 

「ちょ、そんなぁ~!勘弁してくださいよぉ~」

 

「ついでに、愚痴も聞いてこい。それが、お前の役目だ。僕は、使い魔を放って並列世界の様子を見るから……それと、悪質転生者の捜索をする」

 

「…………それって、引きこもるって事ッスか!?」

 

「後の方針は、神崎(幼)の報告を聞いてからだな……」

 

「くっ……自分の複製が仕出かした事とは言え、こんなの最悪だぁっ!!」

 

そう文句をたれつつ、神崎は幼い自分の貯金通帳と判子を持って出ていく。鬼畜的行為に、俺はアイツも大分こちら側に染まって来たなぁ……と感慨深く思うのだった(笑)。

俺はというと、神崎ズも追い出したので神崎家の掃除と買い出し等を使い魔に頼んで、この世界の因果律にアクセスする。調べるのは、気になっていた前回の《堕ち神》の影響。例え、平行世界と言えど近ければかなりの影響を及ぼしている可能性があった。ついでに、アカシックレコードから平行世界へのシステムにアクセスして、現在状況を数万単位で確認する。まあ、数が増えるに従って処理能力が落ちて行くんだけど。そこら辺は、“船”のシステムと同期させて何とかなる……かな?って程度。

 

「重い……」

 

流石の最新機でも、このレベル……【鮮血の】の技術も大した事ないなぁ(笑)。とは言え、世界のシステムに同期した上、それを支えられるトンデモ技術である事は間違いない。しかも、平行並列世界で数万単位とか(笑)。

 

「正気じゃねぇよ……」

 

まあ、本人も正気度は薄いので仕方がないとは言えなくもなかった。

 

 

……………………。

 

 

お昼頃になって、神崎(大)が戻って来た。

その第一声が、『引きこもりたい……』である。

何があったのかは、予想するしかないが……かなり、ヤツれた印象の馬鹿が部屋の隅で丸まっていた。

 

「神崎ぃ~?報告はぁ~?」

 

「もう、嫌ッス。あの馬鹿、どこまで迷惑を広げて……うっかり、聖祥の職員室まで行く事になったッス……」

 

「で?高町家の方々は、どんな感じだった?」

 

「どんなって……神崎(幼)の事があって、スッゴク責められた気分になったよ……ふふふ……」

 

「そうか。…………やはり、渦状になって巻き込んでいるか……ここまでは、届いていないが周辺への被害が酷い。短期間だったとは言え、《堕ち神》が及ぼす影響は……」

 

数十もの、展開された画面に表示される数値のアップダウンの激しさに頭が痛くなる。周辺の世界を担当する神々も、修復作業に乗り出している様だが手を焼いているらしく遅行しているらしい。まあ、《堕ち神》が“内側”で発生するなんて事が早々起きない事なのでわからなくもない。

 

「とは言え、注意喚起はしておかないと他はわからないしなぁ……こういう情報こそ、ネットワークに流して欲しいんだが……」

 

発生させた世界の……いや、それを管理する【神】の“恥じ”扱いになるらしく、神様ネットワークにその情報が流れる事はない。

 

「そういうところは、全力で隠蔽して来るから面倒臭いんだよなぁ……」

 

だから、俺みたいなのがこっそりその情報を神様ネットワークに流している訳なんだが……一瞬、盛り上がるだけで直ぐに忘れ去られてしまうみたいだった。

 

「コイツ等、マジで他人事だなぁ……」

 

そう、神々は『教訓』としてそれを認識しようとしない。

転生者ゲームを嗜む癖に、それで起きる事柄に対して完全に他人事なのだ。まあ、娯楽を失いたくないからってのもあるのかも知れないけど。

全体的に、事実を自分達の都合の良いように捉え過ぎるというか……盲目過ぎると言わざるを得ない。

まるで、焼け石に水を掛けている様な気分である。

なんで、それが自分達の身にも降りかかる事だとわからないのだろう?

 

「……アカン。腐ってきた……」

 

ちょっと、心がスレて来たのでフレールくんを大量に呼んで巨大フレールくんに合体させた後、ベットと化したフレールくんにダイブした。フレールくんも、大歓迎っていう感じで両手を広げてウェルカムしているので気兼ね無く飛び込める。モぉフぅ~っ!とフレールくんのお腹に顔を埋めてそのまま日向ぼっこへとシフトした。

 

「…………師匠、俺もSAN値回復したいんですが……」

 

「断る!」

 

「ちょ……」

 

「探せば、エロゲーがあるだろう?」

 

「そんなモノで、SAN値は回復しません!」

 

「じゃ、何処かでロリってろ……」

 

「あー……もう、幼女は良いです」

 

「何ぃ!?神崎が、ロリに興味を示さないだと!?」

 

「ちょ……いつ、俺がロリコンだと!?」

 

「原作人物が、好きなんだろう!?」

 

「それは……そうなんですが……」

 

「なら、ロリコン確定だろ!?」

 

「違いますって!!」

 

「だったら、何で『StrikerS』から参加しなかった!?」

 

「恋人になるなら、子供の時から関わるのは当たり前でしょう!?」

 

「それにしては、原作人物に嫌われ過ぎてる様な……?」

 

「ゴフッ……」

 

神崎は、血を吐いて沈んで行った。

 

「お前はもうちょっと、現実を見た方が良いと思うよ?なんたって、踏み台転生者なんだから……主人公?たる転生者のカップリング踏み台になっていれば良いんだ……」

 

「カハッ……」

 

更に追い討ちで、辛辣な言葉を投げ掛ける。

もう、いっそうの事原作人物達に興味を示さなくなる程に精神を痛め付けてやった方が良いかもしれない。

 

「そんなに、『愛』に飢えてるなら……ハプシエル呼ぼうか?ムキムキの筋肉と最高の『愛』でもてなしてくれるぞ?」

 

「いえ、要らないです!それに、間に合ってます!」

 

「お前も不死者だからなぁ……不死者の心をへし折る方法で『真の愛』を体感してみるか?」

 

「メシ、未だですか?マジ、腹減って来たんですけど……」

 

必死な形相で、話を反らそうとする神崎。

捕まえて、ハプシエルと同じ部屋に閉じ込めて放置してやろうか?と考えるも……ハプシエルを送還する際の『送還戦争』が面倒なので諦める。人形使い魔の大半が、使えなくなるのは現状避けたい。

 

「チッ……惜しい……」

 

「ひぃ!?ちょ、俺のSAN値を削り切ろうとしないで下さい!それでなくても、だだ削られ捲ってるんですから……」

 

「SAN値直葬ENDとか、楽しそうだよなぁ……」

 

「とりあえず、暇なのはわかりましたから……もっと、実りのある話題にしましょう!!」

 

実りのある話題と来たか。

 

「じゃ、戦闘民族高町家ェと殺り合って来たのか?」

 

「なんで、それが実りある話題なんですか!?」

 

「踏み台共が、高町なのはの恋人と認めて貰う為にって挑んでいそうだから。彼等のストレス発散をしてあげたのかな?って思って……」

 

「そんな暇は、ありませんでした!」

 

「えー……無かったのぉ?ツマンナ~イ……」

 

「つまらなくて良いんです!そんな事より、因果にアクセスしてたみたいですけど……どうでした?」

 

「神々が超ウザイ件!」

 

「詳しく聞いても?」

 

神崎の願いを聞いて、俺は神様ネットワークの事を含めて語り聞かせる。途中、段々腹が立ってきて半分怒りながらの語りとなったけれど神崎は辛抱強く聞いてくれた。

 

「普通にネット住人化しちゃってますね……」

 

「後で、全員〆る!!」

 

「〆るって……ネットワーク内は、匿名なんでは?」

 

「ああん?そんなん、簡単だろう?その時間帯にアクセスしていた全員を〆りゃあ良いんだから……」

 

「oh……右斜め上の発想だった……」

 

片手で目元を覆い、大袈裟にのぞけって嘆く神崎。

ちょっと、イラッ!としたけど嘆きたくなる理由もわかるので黙っておく。全く、五月蝿い奴だなぁ……。

 

「メシにするか……」

 

 

………………………………

 

 

…………昼食中。

 

 

昼食を終えた俺達は、神崎(幼)を抜いた状態で今後の流れを話し合っていた。神崎(幼)の報告によっては、少し方針が変化する可能性もあるが……大まかな流れは決めておく。

 

「じゃあ、基本的には何時も通りって事ですね?」

 

「懸念事項はあるけど、大体はそれで行く。後は、臨機応変に対応する事になるだろう……」

 

「じゃあ、ジュエルシードは……」

 

「……手元には、二個しかありませんよ?」

 

ヒョッコリ質問してきたユーリは、寝ている処を無理矢理叩き起こして昼食を取らせた。最初は怒ってたけど、昼食中に機嫌も治ったらしくキョトンとした顔をしている。

 

「カモフラージュとして、一個はこの世界のレイジングハートに持たせたからな。後は、知らん。神崎の記憶に従って他の場所のジュエルシードを回収してしまうのも手だ」

 

「三つあったんですか?じゃあ、劇場版とみて良いか?」

 

「「劇場版???」」

 

「えっと……TVアニメ版と映画版があるんですよ。今回も映画版になるのかな?って思いまして……」

 

「ふーん。何はともあれ、混合の場合もあるだろうし全然違う場合もあるだろう?」

 

「そうですね。まあ、臨機応変で大丈夫じゃないですか?」

 

「僕が知っているのは、海に六個?あるって事だけだ」

 

「TV版なら、最初の一個をユーノが。二個目が、ユーノを襲う思念体。三個目が、神社で犬に取り憑いていた。四個目が、学校にあった。次にフェイト戦、五個目が大きな猫から。温泉。六個目は、庭の池の中から。街中。七個目、強制発動で次元振。木に寄生、時空管理局到着。局と協力して鳥形を。その間にフェイトが二個GET。更になのはが、どっかで二個GET。最後に海で六個。あれ?十九個?……残り二つは、局員がGETしたのかな?ま、まあ、そんな感じです……」

 

「成る程、劇場版ってのはそれの短縮版か……」

 

「あ、わかります?ええ、そうです。必要最低限で纏めた話構成になってます。二時間程になっていました……」

 

削れる所は、徹底的に削って見せ場を多くしたのが劇場版らしい。【魔法少女】モノなのに、バトルアニメだと教えられた時は驚いたモノだが……今では、普通に受け入れられる様になった。……というか、そんなコンセプトの世界に恋愛を求めて転生する転生者達が、恋愛に失敗するのは当然だと思われる。それで、世界を滅ぼす!と言われても……俺からしてみれば、幼い子供の癇癪と同じ様に思えてならない。いや、もう本当に。もっと、別な理由が良かった。

 

「何はともあれ……ちょっと、探索しに行ってくる!」

 

「…………面白そうですね!」

 

そう言って、神崎は俺の冗談を真に受けるとそそくさとリビングから出て行った。俺も暇なので、それに参加して一回を隈無くガサッてみる。結果、女物のランジェリー(エロ系)を発見。更には、暗黒ノートも発見した。内容は、エロ下着を原作人物に着せて楽しく遊ぼうというモノ。

 

「…………これ、大人用だよ?」

 

えっと、大人になった頃に使用する予定だったのかな?

出来れば、こんなわかりやすい場所ではなく……もっと、隠しておいて欲しかった。

 

「師匠!師匠!メイド服がありました!!」

 

「こっちは、大人の女性用下着が出て来たよ?」

 

「うわぁ……流石に、引くわぁ……例え、自分の複製でも!」

 

「もう少し、ガサ入れする?」

 

「徹底的に行きましょう!!」

 

探せば探す程、様々なグッズが出て来る出て来る。

何故か、ラバースーツなんてモノまであった。

それと同時に、使用目的が書かれた黒歴史ノートも発見され神崎が頭を抱えて悶絶するはめに(笑)。

 

「なんで、こんなピンポイントなモノばかり……」

 

「お前が、変態踏み台である事の証しだな(笑)」

 

「ち、違いますっ!」

 

「まあ、収集癖があるんじゃないか?」

 

「グッ……こんなはずでは……」

 

「だが、これでは……見た目が良くても、モテない理由がわかるよな!真性の変態だもん。滲み出る変態性に女性達も気が付いているんじゃないか?」

 

「……………………否定できない(泣)」

 

その後、ガサ入れを続けた俺達は時間を忘れ、気が付いた時は神崎(幼)が帰って来ていて、頭を抱え号泣しているのを発見した。神崎(幼)に気が付いたのは、俺が見付けた分の黒歴史ノートを全部読み終えた頃だ。

 

「何、やってんだよっ!!」

 

「「ガサ入れ」」

 

「なんで、そんなに自信満々なんだよっ!!」

 

「そりゃ……お前の弱味を握ったからだろう?」

 

「お前が、モテない理由がわかったよ……自分の事ながら、これはないわー……」

 

「ちょ、お前……俺の未来なんだろう!?」

 

「ごめん。軌道修正したから別人になってるよ……」

 

「なっ……軌道修正!?」

 

「シグナムと結婚した!!」

 

「ーーーーー」

 

口をパカーンと開けて、神崎(幼)はその軌道修正に固まってしまった。面白かったので、更に強化要素を突っ込む。

 

「ついでに言えば、魔法有りのシグナムを素手と剣術のみで撃破したらしいぞ?」

 

「ーーーーえ!?」

 

神崎(幼)は、信じられないモノを見る様な目で未来の自分に視線を送る。そして、呟かれる『ラカン』の一言。

そう言えば、『ラカン』って何の事かまだ聞いてなかった様な気がする。多分、転生者共通の認識だからアニメ関係だとは思うけど……『ラカン』ってなんだ?

ニュアンス的には、バグ的な強さを持つ存在なんだろうけど……今一理解出来ていない。

 

「う、嘘だろう!?あ、あのシグナムを、素手と剣術のみで倒したのか!?」

 

「おう!流石に、20年は掛かったけどな……」

 

「………………………………」

 

「因みに、この御方が鍛えてくれたおかげだ!!」

 

そう言って、神崎(大)は俺を指差した。

 

「あ、それは知ってる……しかし、こんなチビッ子に……」

 

「見た目はチビッ子だが、一万二千年生きてるぞ」

 

「ええっ!?ふ、不老不死かよ!?」

 

不老不死ではないが、あまり詳しく語りたくもないのでそういう認識で良しとする。まあ、死なないのは事実なのでわかりやすい言葉で理解させた方が楽だ。不死種って訳でもないが、神々の呪いとか命が複数あるとか言っても理解はされないだろう。ならば、波風が立たない不老不死って事にしておいた方が良い。

 

「とりあえず、報告お願い出来るかな?」

 

「へ?あ、ああ。報告な……えっと、不知火翼って奴は聖祥には居なかったよ。職員室で聞いたから間違いない。まあ、それ以上に高町なのはの異常性が目に付いてドン引きだったけどな……」

 

「「異常性?」」

 

「なんつーか、すずかやアリサを小さくて可愛いって……でもって、フェイトの事を知ってたりはやてがどうのって……」

 

それは、俺が懸念していた事が現実になった瞬間だった。

間違いなく、なにょはママが死亡した高町なのはを上書きして、この世界に転生した結果だろう。

 

「…………ちょ、僕、翠屋に行ってくる。ちゃんと、お話しして来なきゃ……未来がメチャクチャになっちゃう(泣)」

 

「お仕事、ご苦労様です。帰って来れたら良いですね……」

 

神崎(大)が、まるで他人事みたいにリビングで寛ぎながら見送りをする。その隣で、神崎(幼)も疲れた様子で寛ぎの構え。言うまでもないが、神崎(幼)は当事者です。

 

「お前等も来るんだよ。そして、責められ捲ってろっ!」

 

「「殺されます!!」」

 

「自業自得だろう?」

 

それだけ言って、俺は玄関へと向かう。

時計を見れば、まだ五時を少し回った所だった。

 

「よっしゃ。今なら、ママ達もいるはず!未来が、望まぬ未来になる前にサクッとなにょはママを説得してしまうぞ!!ユーリ、出掛けるよぉ~!」

 

「は~「おいっ!!『ママ』って、どういう事だよ!?」

 

ユーリの声に被さる形で、神崎(幼)が怒鳴り声を上げる。

 

「あーもう!後で、ちゃんと説明するから黙ってろ!」

 

神崎(幼)が、俺の言葉に一々反応するが神崎(大)が拳骨を落として黙らせた。その上、うずくまっている馬鹿の服を掴んで引き摺る様に俺を追い掛けて来る。

 

「歩くっ!歩くって!……たっく、ほら説明しろよ」

 

「一度、殺した方が良くないですか?」

 

「ソレなんかに、蘇生魔法使わないぞ?」

 

「黙ってます……」

 

ギャーギャー騒いでいた神崎(幼)は、漸く黙り込んだ。

 

 

……………………。

 

 

翠屋に到着。テラスを見て、なにょはママ達が居ないのを確認。そのまま、チッコイ身体全部を使って扉を開けた俺は翠屋の店内へと入っていく。

 

『いらっしゃいませ~♪』

 

店内を見回し、あるモノを見た俺は力が抜ける思いだったが、何とか持ち直して奥にあるスペースへと駆け寄る。

 

「なにょはママっ!!」

 

「ふぇ!?」

 

「あ!ソウニャくん!!」

 

「なんや?この子、なのはちゃんの知り合いか?」

 

車イスに乗ったままの八神はやてが、首を傾げて割り込んで来た俺を見下ろす。そう、俺が見付けたのは八神の車イスである。つまり、なにょはママは昨晩の内に八神はやてに連絡を取って、今日翠屋で会う約束をしていたらしい。

 

「なにょはママ、未来をブチ壊す気か!?」

 

全力全開で、俺を抱き締めるなにょはママに俺は開口一番に文句を告げた。

 

「えー……でも、はやてちゃん一人っ切りで寂しいかと思って……それに、私の言ってる事わかる人がいないんだもん」

 

「あー…………この後、時間あります?高町家で、お話しがあるんですが……」

 

「あるわよ。ってか、あんた誰?」

 

突然、割り込んで来た俺を怪しそうに見るアリちゃ。

その目には、冷たい他人を見る様なモノが含まれていた。

 

「ちょ、アリサちゃん!えっと、お話しってなのはちゃんの事かな?」

 

こっちは、純粋になにょはママの事を心配している様な感じ。やっぱり、マスコット的な『高町なのは』が好きなんだろう。

 

「いきなり、人格が変わっちゃったなにょはママの事について……それらを含む全部を……かな?」

 

「そ。じゃ、場所を変えましょ!」

 

「そうだね。私もなのはちゃんの変わり様はちょっと気になるかな……」

 

「えっと……私も良いんかな?」

 

「うん!良いんだよ。はやてちゃんも関係者なんだから!」

 

「……………………」

 

その関係者ってのには、『未来の』って言葉が憑き纏いますが……概ね、間違いではないので黙っておく。目の前で、楽しそうに笑うなにょはママを見て、俺は頭を抱える以外に出来る事が無かった。さて、どうしたモノか……。

そんな状況下に、神崎ズも混ざって来て更に騒がしくなって行く。アリちゃが、全力の嫌悪を露にしたりすじゅかがドン引きしたりと……面倒臭い状況へ。俺はというと、なにょはママに捕まってケーキをご馳走になっていたり。

何はともあれ、俺達は翠屋が終わるのを待ってから高町家へと移動する。

 

 

 

 

 




いきなり、押し掛けて上がり込み相手を拘束するって、犯罪ですよね!わかってますが、相手が殺人犯なんで同罪です。

そして、答えは……『なにょはママ』上書き現象です!!

因みに、なのはに関しては死亡して生き返らせる以外に上書現象が起こるギミックを考えられませんでした。だって……生きている以上、不屈の精神を持つ彼女が早々簡単に絶望するイメージがわかなくて……。この間は、プレシア(幼)ちゃんを出したかったのであんな感じにしましたが……今回は、なにょはママが主役です(笑)。はてさて、どんな未来になるか楽しみですねぇ!!

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