絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一四六話

神崎

 

 

という訳で、やって参りました!ルグルー回廊前です☆!

あれから、更に数日掛けて俺達はルグルー回廊前までやって来ていた。目の前に、ポッカリと開いた穴が見えている。その背後には、白い山脈がそびえ立っていた。

それにしても……と、レコン達から聞いた情報を思い出して疑問に首を傾げる。ゲームでもないっていうのに、あの山脈に限界高度があるってどういう事なんだろう?と。

普通なら、そんなモノが存在するはずも無いというのに限界高度は鎮座していた。結果、妖精達はルグルー回廊を越えるしか世界樹の元には行けず……そして、世界が現実化してしまった後は【転生者】の出現によって世界樹にすら行かなくなってしまったらしい。それ故に、ルグルー回廊は現在モンスターハウス状態になってるという。

ポッカリ開いた洞窟に近付くと、中からワラワラと屈強な体格をした猿が溢れ出てくる。それを見て、俺はこの後の未来を考えて陰鬱な気分になった。獣臭い洞窟を通り……しかも、戦闘もこなさないとイケないのかと思うとズッシリとした重さがのし掛かって来る。

師匠は、既に錆びた剣を抜き放ち猿の群れに飛び込んでしまった。今は、三~五匹の猿を纏めて斬り払いながら前に進んでいる。それに続くように、翼(槍)や鉄(刀)が師匠が討ち溢したモンスターを狩り殺していく。

 

「はあああぁぁぁ……」

 

俺は色々と諦めて、『ダーティー・ニーズ』を抜くと彼女達の元に駆け寄り同じ様に猿のモンスターを斬り裂いて行った。背後からは、すずかが弓を使って矢を放ち援護してくれる。すずかのソレは、師匠が考えた戦闘方法だった。

護衛の《神殺し》も、乱戦の最中で対象を護衛をするのは大変だからと、その戦法には賛成している。

ただ、本人は不満だったみたいだけど。

 

「……おい!厨二病、お前も戦えよ!?」

 

「フッ……何故、我(オレ)が戦わねばならん?」

 

「OK。なら、お前も殲滅してやるよ!!」

 

「ひぃ!?ヤるよ!ヤれば、良いんだろう!?」

 

厨二病は俺の恫喝に怯え、諦めた表情で俺のゲート・オブ・バビロンから返した武器(一本のみ)で洞窟から溢れ出るモンスターを倒していく。ただし、その戦闘はド素人丸出しの拙い動きで……見ているとイライラして来るモノだった。

 

「チッ……」

 

所詮は、ギルガメッシュか。身体的能力値が、普通の人よりちょっと上レベルの存在だったなぁ……と考えを改める。

まあ、あの転生者事態が怠け者の可能性も否定出来ないが……面倒な事この上なかった。一応、護衛の《神殺し》使い魔さんが一人付いていてくれているが、それでも猿からの攻撃を受けている辺り程度が知れる。

あれの程度で、戦闘が終った後ウザウザしく褒められたら……俺なら、殺る!間違いなく、息の根をとめるだろう。

 

「気絶させて、秘密基地に放り込むか……」

 

一瞬の迷い。だけど、その迷いは猿によって妨害される。

まあ、硬気功を使っている俺にダメージ等入らないけど。

ダーティー・ニーズを一旦、正眼へと持ち直して剣で敵を威嚇し、間合いを取ってから一息で敵を斬り払う。

その間にも、それぞれの戦いが行われ……最終的に、洞窟から溢れ出るモンスターはいなくなった。その代わり、俺達の周囲は獣臭と血の臭いで充満し、今にも吐きそうなくらい気分が悪くなっている。と、何気なくすずかに視線を向けると、厨二病にのし掛かっていて……驚きの顔で、硬直している馬鹿に噛み付かんと口を開けていた。

 

「あー……翼!」

 

「え!?ハッ!すずか、ソレの血は美味しくないわよ!」

 

振り返り、状況を正しく理解した彼女は血に濡れたままの状態ですずかを押さえに行く。俺は、師匠に声を掛けてから厨二病を回収。まあ、回収しなくてもそのまま女性にトラウマでも持ってくれれば以降の生活が楽になったはずだ。何はともあれ、師匠が俺達を含む周囲に浄化の魔法を掛けてくれてなんとか事なきを終える。

 

「な、何なんだよ!ソイツッ!!」

 

「あれ?お前、トラハ知らねぇの?」

 

「と、トラハ!?」

 

「【リリなの】の原作だよ……」

 

「せ、生前はまだ18歳未満だったんだよ!」

 

「あー……成る程……」

 

題名は知っているけど、18歳未満だったから内容は知らないという事らしい。じゃあ、仕方がないかもしれないが……18歳未満でセックスにハマるとか馬鹿だろう!?

呆れてモノが言えなくなったので、翼に視線を送ってこの後どうするかを聞いてみた。

 

「別に、気を失ってる訳じゃないんだから……続行よ!」

 

因みに、師匠に聞かなかった理由は……俺達が、この世界からいなくなった後、誰が指揮を取るのかという話が上がったからである。最初、護衛の《神殺し》が候補として持ち上がったのだが……本人が断りを入れてきたので、すずかか翼をという事になった。しかし、すずかが指揮は出来ないと申告して最終的に翼がリーダーになった訳だ。

よって、俺が何かを判断する時に問題を投げ掛けるのを師匠ではなく翼に切り換えた。その方が良いと、師匠からも太鼓判を貰っている。

これも、翼が一人立ちした時の訓練となるだろう。

 

「じゃあ……」

 

洞窟に突撃しようか……と言い掛けて、俺は口を継ぐんだ。

そして、ジーっと翼を注目して黙る。

 

「そうね。突撃しましょうか!」

 

翼の判断を扇ぎ、俺達はルグルー回廊へと入っていく。

流石に、大量に狩った後では直ぐに敵が襲ってくる事はないらしい。つーか、狩り過ぎたかもしれない。

まあ、害虫と同類視されるモンスターだから、狩り過ぎという事は無いだろうけど……こうして、何もいない所を見ると罪悪感が湧き上がってくる。これが、ゲームであったならば罪悪感とは逆に全滅させたという清涼感が生まれるんだけど……こう、あたかも生物を虐殺しました感を出されると参ってしまう。要は、気の持ちようなのだとわかっているのに、いざそれを目の前にすると凹んでしまうのだ。

いつの間にか、ビットを回収して数機のみを周囲に展開した師匠が洞窟の奥へと進んでいた。慌てて、師匠を追い掛けるが……何だろう?何時もなら、頼もしく感じるあの背中がやけに恐ろしく感じるのは?

 

「そろそろ、正気に戻す必要があるか……」

 

と、今の今まで黙っていた護衛の《神殺し》がポツリとそんな事を呟いた。いや、呟いたというのは語弊がある。

むしろ、周囲に聞かせるように言った様な気がするのは俺の気のせいだろうか!?

 

「えっと、どういう事ですか?」

 

「いや……アイツ、血の臭いに酔ってる可能性があるんで……ちょっと殴って、正気に戻してやらないとイケないかなぁって思ってさ……」

 

「えっと……師匠、今正気じゃないんですか?」

 

「失いつつあるだろうね……呼んでみたら?」

 

そう言われるまま、深く考えずに師匠を呼んでみる。

すると、何故か殺気を含んだ視線のまま可愛らしく首を傾げて振り返る師匠がいた。

その視線が、バッチリこちらの視線と重なり合った瞬間、俺は直感的に『あ……ヤバイ……』と凄まじい危機感を心の内から溢れて来て虫の知らせよろしく焦燥を募らせる。

そう……あれは、間違いなく捕食者の眼だ。

 

「一瞬、食われるかと思ったんですが……」

 

「だろうな。お前等、アイツの食欲を開放したんだろう?たぶん、原因はソレだろうな……」

 

護衛の《神殺し》さんが言うには、食欲の解放と【リリなの】の世界で溜め込んだストレスと、現在サクサクと開放されているストレスの比例度が違うから暴走気味という。

ゆっくりジックリと溜め込まれたストレスが、急激に消化されているが故に精神的な処理が追い付いていないらしい。その結果、師匠の狂暴性が表に顔を出して周囲に撒き散らされているという事だった。

俗に、戦闘狂化というらしい。

 

「師匠って、戦闘狂だったんですか!?」

 

「アレ、元は『魔王』だぞ?暴走を始めたら、狂化は免れまい……」

 

そうだった。ついつい、忘れがちだが師匠は『元魔王』だ。それに師匠は今、幼児化しているから精神がブレブレ何だと護衛はいっていた。だから、師匠が何時も通りのつもりでも実際は収まる所に収まり切れてないんだそうだ。

 

「とりあえず、剣の腹で殴っといた方が良いと思うぞ?」

 

「うッス!殺ります!!」

 

目を閉じ、気配察知のみで師匠のいる所を探し……ダーティー・ニーズの腹で、師匠を殴りに掛かる。普通なら、それが師匠に当たるはず無いのだが……微妙に暴走していた師匠は簡単に殴る事が出来た。まあ、目を閉じて視線と殺気が漏れない様にした甲斐もあったかも知れない。

 

「いてっ!?」

 

頭を押さえて、涙目で振り返る師匠。

睨んでいるのは、殴った俺と後衛にいる護衛だけだ。

 

「…………うー……」

 

殴られた理由が、わかっているのか師匠は何も言わなかったが……その視線に、怨めしそうな怨念が隠っているのは間違いない。それだけでも、背筋がゾッと冷たくなった。

 

「えっと……すいません。たぶらかされました……」

 

「…………良いよ。どうせ、護衛の奴がそそのかしたんだろう?なら、それは間違いなんかじゃないよ……ううっ……」

 

後頭部を擦りながら、師匠は剣を鞘に収め中衛へ。それ以降、出現するモンスターをガトリングSビットで始末する。G,Sビットは、毎秒数百発の直射型シューターを放つビットだ。今は、それ等を3~5機周囲に飛ばして敵モンスターを討ち取っている。段々、師匠の武装が凶悪になっているがあれは師匠の趣味では無いという。

どうやら、設計段階で師匠が引いたヤツとは別に趣味で引いている奴がいるらしい。

護衛の方の話では、そういうのを専門にしている《神殺し》が『船』の方にいるとのこと。

 

「ガチッスか……つーか、大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫と言えば、大丈夫。まあ、アレも技術者だ……」

 

「今は、対象もいないからな……暇なんだろう?」

 

師匠と護衛の説明を聞きながら、ルグルー回廊を奥へ奥へと進んでいく。師匠が、G,S無双しているので今のところ俺達に出番はない。しばらく進むと、地底湖を一望出来る場所へと出る。そこから、下を見るとアニメで見た通りの中立都市ルグルーが見えた。

 

「……………………」

 

いや、アニメで見たのと違うなぁ……。

 

「……………………」

 

本来であれば、湖の中心に町があったはずなんだけど……何度見直しても、町が存在するようには見えなかった。

むしろ、何かに食われたかのようなS状の廃墟が見える。

 

「えっと……これは、水竜型のモンスターに殺られたんッスかねぇ?」

 

俺と同じ様に、ルグルーが一望出来る高台のような場所から俺と共にルグルー跡を見ていた鉄が呟く。

 

「…………水竜型モンスター……」

 

「……あ。Ok、把握……」

 

放っといても、高レベルな存在を更に高レベルにしたんだろうという事は、崩壊したルグルーを見れば嫌でも理解出来た。ぶっちゃけ、何故放置しなかったのか理解出来ない。お気楽感覚で、適当なモンスターに手を出すのは止めていただきたい。全く、転生者という人種は何を考えているんだか……訳がわからない。

 

「後始末スル側ニナッテ初メテ知ル現実……」(棒)

 

『ごめんなさい!!』

 

護衛の発言に、俺と鉄は揃って謝罪した。

くそっ!忘れていたが、俺も鉄も転生者ですね!

 

「……町壊滅。転生者には、ろくな奴がいないようだ……」

 

「……我等が、殺った訳ではない。アレは、地底湖の主が殺った事だ……」

 

厨二病ギルガメッシュの言い訳。しかし、師匠に睨まれて黙った挙げ句に視線をあらぬ方向に向ける。

 

「通常のレベルなら、問題は無かったはずだ……」

 

「誰かさん達が、水竜型モンスターのレベルを上げなければなぁ……」

 

「はあ!?モンスターのレベルも、上がるのか!?」

 

「敵を倒せば、プレイヤーだろうとモンスターだろうと経験値は入るだろう?因みに、この世界で一番厄介な高レベルモンスターは……レベル二千万のドラゴンらしい」

 

「レベル二千万!?え、ちょ、誰だあぁ!?」

 

現実を知った厨二病が、慌てて喚き始める。

しかも、余りの驚きに素に戻ってしまっていた。

 

「お前等、転生者がヤったんだろう?」

 

「オレ、どらごんトハやッテネェヨ!?」

 

「ふーん。水竜型モンスターとは、殺ったんだな?」

 

「アア、負ケタケド…………はっ!?」

 

「「やっぱ、お前か……」」

 

厨二病には、後でシッカリお仕置きするとして……とりあえず、俺は壊滅したルグルーを見て向こう岸に渡れない事も無いだろうと判断する。とは言え、向こう岸に着くまでに何度地底湖に住む水竜型モンスターに襲われるかはわからない。最悪、翼達や鉄達を秘密基地に放り込んで俺と師匠で強行突破する他方法はないだろう。

 

「…………?(右)…………?(左)…………?(背後)」

 

あるぇ!?師匠、どこ行った?

 

「《ボルケーノ》ッ!!」

 

いつの間にか、ルグルー大橋の根本に辿り着いていた師匠が、巨大な平面魔法陣を展開して聞きなれない呪文を唱えていた。何が起こるのかわからず、周囲の警戒を俺と鉄で行うが……何の変化も見られない。

 

「……………………えっと、不発?」

 

「そんなわきゃねぇだろ!?良いから、警戒してろ!」

 

「……………………」

 

警戒を厳にしたまま、俺達は周囲に変化がないか慎重に確認していく。だがしかし、師匠の足元に展開された魔法陣が輝き続けているというのに、周囲に何の変化も見られない。もしかして、本当に不発なのか?と思い始める。

10分程して、何の変化も見られなかった故に警戒を解いたけど……師匠はまだ、魔法陣を展開していて何かをしている様子だった。

 

「何も起きませんねぇ……」

 

「だが、あのチビッ子が失敗するとは思えん……」

 

「実は、私達を巻き込んで死亡した後だったとか?」

 

「つまり、こうして駄弁ってる俺達は同じ走馬灯を見ているという訳か……ダメだ。洒落にならんかった……」

 

『以下同文』

 

冗談のつもりで、言葉にしてみたのに全然あり得る話だった事に戦慄を覚えながら頭を抱える。

ダメだ。冗談が、冗談にならない。

 

「ボルケーノって、『火山』や『噴火口』の事だよね……」

 

すずかの指摘に、俺と鉄が周囲を再確認。

しかし、溶岩も焼けた石も確認できなかった。

 

「……周囲に変化なし!」

 

「……異常無し!」

 

「地面が、温かくなってる事も無いわ……」

 

「他に、変化は……ないなぁ……」

 

魔法陣が輝いている以上、《ボルケーノ》という呪文が発動しているのは間違いない。しかし、周囲の変化はなく至って平和そのものである。

 

「ねぇ……少し、ジメジメしてない?」

 

更に20分程して、翼の何気無い一言が事態の深刻さを顕した。先程まで(ルグルーに辿り着いた頃)、カラッとしたヒンヤリ空気だったのに……今は、ジットリとした湿りっ気のある空気と熱気が洞窟内に立ち込めている。

まるで、盆地の夏と言った感じだ。

 

「これが、《ボルケーノ》の効果なのか?」

 

「まさか!!この程度の事を引き起こして、何になるっていうんだ!?」

 

「まあ、そうだよなぁ……」

 

俺達が困惑する中、師匠は何も言わずただただ魔法のコントロールを優先しているみたいだ。

更に20分後、原因が判明した。

ルグルー回廊の地底湖が、煮えくり返ったお湯の様に水面をボコボコと気泡で溢れかえらせている。

要するに、師匠の《ボルケーノ》という呪文は地底湖を沸騰させる魔法だったのだ。沸騰した地底湖は、凄まじいスピードで蒸発していく。そしてついに、茹で上げられた水竜型モンスターが水面にプカーンと浮き上がって来た。

 

「ひでぇ……」

 

「この世界の魔法と、人の持つ魔力では再現出来ない方法だな。そして、厨二病ギルガメッシュに同意……酷ぇ……」

 

「逃げ場のない攻撃って……あるんだなぁ……」

 

「ラスボスを水攻めで、倒すようなモノね……」

 

「想定してない倒し方が、一番最悪な件……」

 

「なまじ、HPがあるから地獄の苦しみだな……」

 

「そうだね。レベルが高いと、苦しみも倍増だね……」

 

「拷問的倒し方……酷い……」

 

師匠が、ボロッカスに言われているが言い返す事が出来ないので気にしない事にする。つーか、フォロー出来ない。

ところが、師匠はBビットを操って水竜型モンスターを全体が見えなくなるまで沈めてしまった。どうやら、そのまま調理して(茹で上げて)しまうつもりらしい。まあ、アレだけ大きければ量的に最大の食料となるだろう。

 

「ハッ!?アレをスイルベーンに!?」

 

まさか、師匠が食料事情の事をそこまで考えていたとはーーーと、思っていた頃もありました。

現在、目の前で水竜型モンスターを嬉しそうに解体している。その解体には、使い魔の皆さんも参加していて……これまた、楽しそうであった。そんな光景の中、一部の使い魔さん達が端の方で秘伝のタレを使い香ばしい匂いを漂わせている。そっちには、鉄や厨二病が集まっていてダラ~っと涎を飲み込みながら蒲焼きの様子を見詰めていた。

 

「スイルベーンで消費した食料分は取り返したか?」

 

「素材の方は、どうしますか?」

 

「次の町で売れ。上と下も、同じ通貨なんだろう?」

 

師匠の言う『上と下』は、アインクラッドとアルヴヘイムを指すと思われる。略し過ぎだ。

 

「ですね!では、この素材は翼様に預けます!」

 

そう言って、使い魔の一人が水竜型モンスターの素材が入った袋を翼に預ける。それを俺は、恨めしそうにみていた。何故なら、レプラコーン種が仲間にいれば武器や防具には出来るはずなんだが……モッタイナイ事間違いない。

 

「ゲーマーの血が疼く……」

 

『ゲーマーの血』とは言ったが、実際はアニメや漫画知識オンリーでゲームの知識は、アニメでゲーム化したモノの分しか覚えていない。それでも、俺には十分だった。

『レア』な素材を売る……そう聞いただけで、思い浮かぶのは『モッタイナイ』という言葉のみ。次に思い浮かんだのは生産職の事。十二分にゲーマーだった。

 

「師匠ぉ……」

 

「駄目だ!!」

 

「まだ、何も言って無いッス!!」

 

「すじゅかママも翼も鉄も、『組織』で購入した防具や付加装飾品で防御を固めてるんだぞ!?要らないだろ!?」

 

「くっ……それは、そうなんですが……」

 

「武器だって、魔改造されたデバイスがあるんだ……必要性があるか!?」

 

完璧な正論で、返されてしまった。

《神殺し》の生産職の方々が造った、《堕ち神》の攻撃にすら耐える防具と水竜型モンスターの素材で造ったモノの防御力では天と地程の差が存在する。ぶっちゃけ、手間とお金を掛ける必要性を感じないのも事実だった。

 

「『組織』の生産職の方々が怨めしいッス……」

 

「言うな。あそこは、色々突き抜け切っているんだ!」

 

だから、気にしちゃイケないらしい。

もう、諦めてレアな素材を売り払い市場を賑わせば良いと師匠は告げる。あれ等を売り払って、それによって引き起こる騒動も気にするなという事らしい。

 

「荒れるだろうな……」

 

「何が?」

 

「……レアな素材を売るんですよ?市場が、荒れますよね?『レア素材を、何処の馬鹿が売ったんだ!?』って……当然、それを売った俺達はそれ以上の良い装備をしているんだろうという憶測が流れて……欲に駆られた馬鹿が、俺達を探します。見付かったら、最悪PKって事になると思うんですけど……どうだ?厨二病?」

 

「なるだろうな……」

 

「……………………」

 

師匠は、そこまで考えていなかったらしく酷く驚いた様子だった。その上で、翼達が『負けるか?』と聞かれたら俺は『その場限りではない』と答えるしか無い。

つまり、幾度となく襲撃されるよ?と師匠に告げた。

 

「PKって、可能なのか?」

 

「可能です」

 

「可能だな……」

 

「翼達が、負ける可能性は?」

 

「無いですね……」

 

「襲撃が、一度だけとは限らん……」

 

「チッ……ハイエナか……」

 

「言いたい事はわかります。ですが……」

 

「所詮は、雑種だ。捨て置くが良い」

 

「…………厨二病、転生者ってどれくらい居るんだ?」

 

「流石に、我でも全貌は知らん。だが、予想では数千から万といった所であろう……」

 

「その内、何人が死亡した?」

 

「…………死者は、いない。死んでも、デスペナがある程度で最後に立ち寄った町に強制送還されるくらいだ……」

 

「「え!?マジで!?」」

 

因みに、NPCは生き返らなかったらしい。

マジ、お前等……何してんの!?と厨二病に振り返った。

最早、転生者の正気度を疑う発言が厨二病の口から出てくる出てくる。そして、ある日を境にSAOのプレイヤーキャラ達が出現。彼等も、殺した処でデスペナを受けるだけで最寄りの町で復活するという事だった。

マジ、何してんの!?

 

「マジ、どうなってんの?」

 

「SAO組は、転生者が神様特典で願った……死のない労働力って所だ……だから、我は悪くない!」

 

「クズか!?」

 

「だからって……何しても、許されるはずがないだろう!?」

 

「我は、王よ……あべしっ!?」

 

「死ね!」

 

「滅びろ!!」

 

厨二病は、俺や師匠、鉄にボコボコにされた。

すずかや翼は、蔑みの眼で厨二病を見ている。

まあ、こんな正気を失ったキチ○イには褒美にしかならないだろうけど。

 

「師匠、どうしますか?」

 

「SAO組に関しては、該当する転生者を探し出して特典ブレイクするしかないだろう……それで、SAO組は解放されるとして……その後のコイツ等を『どうするか』になると思うが……」

 

「俺と師匠なら、虐殺する事は可能ですか?」

 

「ひぃ!?」

 

流石の俺も、コイツ等の馬鹿さ加減に冷徹な感情が表に出てくる思いであった。流石にコレはない。どんな馬鹿でも、その世界のNPCであれSAO組であれある程度の線引きと道徳は持ち合わせているはずだ。

なのに、ここまで突き抜けられると頭が痛いを通り越して殺人衝動が溢れてしまう。ぶっちゃけ、殺してやりたい。

 

「ま、待て。は、話し合おう!!」

 

「サクッとイッちゃう?」

 

「サクッとヤっちゃう?」

 

「却下だ。ぶっちゃけ、放っておけばその内食料事情で世界が崩壊するはずだ。問題ない……」

 

「……餓死状態になると、どうなるんですか?」

 

「そりゃ……HPが減って、デスペナになるんだろう?」

 

『……腹ペコで、死ぬのか……』

 

「ちょ!?それは無いだろ!?」

 

「断食させるか?」

 

「実験は、必須科目だな……」

 

ジロリ、と厨睨むと青い顔を更に白くして後退っていく厨二病がいた。馬鹿は、逃げようとしたが翼に捕まってポキパキッと両腕両足をへし折られる。我慢する事無く叫ぼうとした厨二病だったが、師匠が先に沈黙の魔法を掛けていたらしく声にならない悲鳴を上げていた。

一応、師匠が厨二病を治療(ギプスで患部を固定)して、世界樹の麓にある都市にたどり着くまで断食を強制させる事になる。断食の結果は……次回!!

 

 

 

 

 

 




このメンバーだと、すずかのトラウマがとても軽い扱いにw
もしかすると、ここはすずかの理想郷かもしれないw
周り、すべて……とまでは言わないけど……厨二病だしw
トラハ知ってる転生者が、大半?だし。エロゲーした奴が、10割中8割いたとして、2割程はプレイしてなくても『あー、Ok。把握……』とか言いそうだしw
まあ、それで吸血OKしてくれるかは別なんだけどw
それでも、迫害はされないと思われw
にしても、翼の発言は酷いw
『ソレの血は美味しくない』とかw
まあ、正解なんだけど……残酷過ぎる発言だw
皆、納得してツッコミすら無かったけどwww

双夜が、流されやすくなってる件。
まあ、精神が幼児化してるから仕方がないw
因みに、あのまま放置すると狂戦士化してモンスター&味方への吸血行為にまで発展してた可能性が……(焦)。
危険なので、元に戻しました。

厨二病が、レベル二千万のドラゴンがいると知って慌ててるけど……まあ、あれが普通の反応ですw
普通の反応を、厨二病にさせる作者はおかしい……w
でも、知らなかったのはコイツだけだった訳だし……選択肢が無かった。スイルベーンで、原作人物達に喋っていればなぁ……惜しいことをした。

後は、可能性のお話しw
まあ、水竜型モンスターは御愁傷様って事でwww
《ボルケーノ》……溶岩召喚の魔法。どこに召喚したのかは言わなくてもわかるだろう?つまり、そういうこと(笑)。

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