絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一四五話

凍真

 

 

俺は、《時空石》に導かれて幾つかの平行世界を飛び越えた後、とある何処かの無人?世界に降り立った。

あのゾンビ世界から、全く掠りもしない監視対象を探して多くの世界を渡り歩き、様々な事件や問題にブチ当たったが何とかクリアして俺は今ここにいる。

 

「…………とりあえず、見た事のない世界の様だが……」

 

一応、【リリなの】の世界であるとは思うのだが……見た事のない動植物のせいでビクビクしながら周囲を探索する。

基本的に、俺が飛ばされる世界は何かしらの問題を抱えている。だから、この無人世界も何か問題を抱えているはずだ。そしてそれは、俺が降り立った場所の近くである事が多い。ついでにいうと、【転生者】の近くでもあるという事だ。まあ、言うまでもないけど【リリなの】の世界の問題は基本的に【転生者】が生み出すモノだ。

周囲を散策していると、目の前にポッカリと口を開けた洞窟が出現した。恐る恐る、中を覗いて確認。すると、所々に人工灯の様なモノが内部を照らして奥へ奥へと続いている。それを見た俺は、瞬間的にそれが違法な施設であるという事を看破した。経験則から来る勘ではあるが、俺はその勘(霊感?)を外した事が無い。

それ故、俺は何の躊躇いもなくその洞窟へと入って行く。

一応、不法侵入な扱いになるのでコソコソと辺りを見回しながら進み……一つ目の扉を見付けて中を確認する。

 

「…………当たりだな……」

 

部屋の中は、薄暗くてあまり良くは見渡せなかったけれど、培養液の入った巨大な試験管を見てそれがプロジェクトFの残子である事は理解した。俺は、左右を確認してからスルーっとその部屋へと入り奥へと進んで行く。

そして、奥にあるコンソールへとたどり着くと【組織】で渡されたハッキングツールをパネルの上に置いた。

ここまで、この違法施設の警報システムに引っ掛からずに来られたのも全部あの【組織】が生み出した超技術ツールのお陰である。全ての文明より、進んだ魔法と科学。

それにより、魔法の警報も……科学の警報、何もかもを阻害するツールにより俺の侵入を施設の主に知らせなかったのだ。いやはや、ここまで便利なモノがあろうとは……局員時代では、考えられなかったモノだろう。

 

「ハハハ……早いなぁ……」

 

乾いた笑いが、俺の口から漏れる。

ハッキングツールをパネルに置いて数秒、この施設全体の管理権限を掌握した。いや、もう超技術様々である。

 

「……恐ぇ……これ、後で悪い事起きないだろうなぁ!?」

 

いや、本当にこれら超技術ツールを使う度に様々な運が消費されているような気がして怖くなる。

超恐い。マジで恐い。大丈夫だと、太鼓判を押されているけど……監視対象に会えないのは、このツールのせいじゃないよね?と様々な考えが頭を過るが今はそれを考える時では無いので一旦棚上げしておく。

兎に角、俺は恐怖を押し殺してその施設の照明を点けた。

そして、照明に照らされてそのプロジェクトFの残子を見た瞬間、沸点を振り切った感情で危うく《迦楼羅》を抜いてしまいそうになる。

 

「くっ……」

 

何とか、暴走しそうになるそれ(感情)を抑えて柄に掛けられた手を離した。心を落ち着け様と目を閉じて、出来るだけ怒りを抑えつつ……ある程度、冷静になった俺はその光景に再度視線を向ける。それでも、腹の底から溢れ出る感情を誤魔化す事は出来なくて……俺は、なけなしの理性で感情を抑え込んだ。

 

「……………………」

 

試験管の中に居たのは、原作人物……いや、主人公である高町なのは達だ。それ以外にも、培養液の中で眠っている子達がいる。それは、魔導師等とは全く関係ない少女達で、何故こんな風に培養されているのか全く訳がわからない。

培養液の中にいたのは、『すずか』と『アリサ』のクローンであった。見た感じ、小学生くらいの彼女達は眠っているかの様に培養液の中で漂っている。

一応、心電図パネルを確認するとちゃんと生きている事がわかるのだが……試験管の中にいる彼女達に本物の様な精気はなかった。しばらく立ち尽くしていたが、これ以上ここにいても何も出来ない事を理解して俺は先を急ぐ。

きっと、俺が感じている疑問の答えはこの先にあると考えられる。ならば、彼女達を保護するにしても一度奥にいるであろう『疑問の答え』と『敵』を排除してからにしないと邪魔されそうだ。俺の予想が正しければ、違法研究施設とプロジェクトFによる原作人物達のクローン。

それだけで、この施設の奥にいる『敵』が何者なのか大体予想が付く……付いてしまう。まさか、監視対象を見付ける前に世界の問題を見付けるはめになろうとは思いも寄らなかったけれど仕方がない。周囲に監視対象がいない以上、俺がこの問題を解決する必要があるのだろう。

その為の《神殺し》であり、新たに生まれ変わった『俺』という存在だ。大きな溜め息を吐いて俺は奥へと進む。

その通路は、先程のクローン施設からずっと一本道だった。その間に扉はあれど、壊れているのかウンともスンとも言わない。使い魔を使って、中を確認するけど壊れ切った施設があるだけで生きているシステムは一つもない。

 

「ああ。元々、犯罪者が使っていた違法研究施設をそのまま貰い受けたのか……」

 

この荒れようからして、現在の主は元襲撃者なのだろう。

その後にここの設備を利用して、原作人物達のクローンを造りろくでもない事に使用していると思われる。

クローンの中に、非魔導師である『アリサ』や『すずか』がいるんだ。十中八九、エロい事に使用していると断言出来る。以上の事から、この施設の奥に陣取っているのは【転生者】の一人か複数だと考えられた。

 

「クローンで、原作ハーレムとか……」

 

それが、容易に想像出来てしまって鬱になる。

攻略出来ないからって、クローンでハーレムを造るとか……もう、涙なくして語れない事実に俺も涙を禁じれない。

是非とも、それを実行した【転生者】の言い分というのを聞いてみたい所である。一体、どんな言い訳が出てくるのかちょっと楽しみだった。

そして、俺は当たりを引く。

施設の通路は、まだ奥へと続いているが目的の人物達がいたのはその部屋だった。使い魔を通して、部屋の中を確認する。予想通り、そこでは裸の男と女が絡み合っていた。

男ーーゲスな笑みを浮かべたイケメンが二人、あまり動かない女達を玩具の様に扱っている様子が伺える。

そんな男女の絡み合いから、一人離れた場所でピクリとも動かない少女がいた。

二人の内の一人が、ピクリとも動かない少女に近付いて『おい!これ、息してねぇぞ?』と声を上げる。

声を掛けられたもう一人の男は、『なら、腐っちまう前に捨ててしまえ!』と声を上げて『ギャハハハ!』と笑う。

その後、『代わりは幾らでも造れる』だとか『なんなら、食っちまうか?』等とおおよそ人間とは思えない様な会話をしていた。それが、あまりにも不愉快で……俺は、あまりの嫌悪感に胃から込み上げてくるソレに堪える様に口許を押さえる。これが……こんな奴等が、俺と同じ【転生者】か!?と思ってしまう程に常識から掛け離れたクズがいた。

 

『早く、《オリジナル》ともヤりてぇなぁ……』

 

『慌てる必要は、ねぇよ……魔導組が、ミッドに行った後でも遅くはないさ!』

 

『へっへっ。まずは、「すずか」と「アリサ」かぁ……』

 

『特に「すずか」は、《吸血鬼設定》があるからヤり易いだろうぜ!強制発情で、ヒィヒィ言わせてやるぜ!』

 

その会話の内容は、聞くに堪えないモノだった。事もあろうに、すずかが《吸血鬼》である事を利用して強姦する等と言うクズを許しておけない。世界が、自分の思い通りにならないからって無茶苦茶をしても良い訳じゃない事を知らしめる必要があるだろう。

親指で、鍔を押して鎺を外し《迦楼羅》を何時でも抜ける様に準備しておく。《神殺し》に『非殺傷設定』がない故に、相手を無力化する術はそこそこ豊富だった。

人間とヤり合う時など、細心の注意と手加減を持って殺り合うという。これが、モンスターだと自嘲しないらしい。

俺がしようとしているのは、モンスターに対する事と同じ事だ。自嘲無しの手加減無し。全力全開を持って、相手を完全に無力化する予定だ。殺してしまっても……仕方がない。どうせ、相手は人間の皮を被ったナニカなのだから。

一息置いて、使い魔に光源を担当させ中に突入する。

扉を開け、飛び込んだ瞬間……様々な臭いが鼻を突く。

しかし、憎悪の方が勝っていた為に気にはならなかった。

《迦楼羅》を抜いて、瞬動術で一気に間合いを詰める。

突然現れた俺に、敵共はギョッ!?とした顔で振り返り慌てた様子でワタワタとデバイスに手を延ばす。しかし、セットアップさせる時間を与える程俺は甘く無かった。

延ばされた腕を、容赦なく斬り落とす。返しの刃で、その綺麗に整った顔を切り上げた。

 

「チッ……」

 

浅い。そう思いつつ、もう一人の男にも斬りかかる。

もう一人は、既にデバイスを手にして勝ち誇った様な笑みを浮かべていた。だから、俺は《迦楼羅》に純粋魔力の刃を展開して斬り上げる。それと同時に、奴はセットアップを完了させた。しかし、ホンの少し遅かったのか奴は脇腹を押さえながら膝を付く。

 

「くっ……」

 

「チッ……」

 

返しの刃を《技》込みで、背後から奴の首へと振り下ろす。少し、刃に抵抗を感じたけれど首後ろ……脊椎をバッサリ斬る事に成功した。ブシュッ!と勢いよく血が吹き出し、俺の顔から腹の辺りまで吹き掛かってくる。

俗にいう、返り血というヤツだ。

 

「ひぃっ!?ひぃいぃぃぃ!!」

 

顔を押さえていた男が、返り血で汚れた俺を見て悲鳴を上げる。目の前で行われた強行に、漸く自分が置かれた状況を理解したらしい。顔を押さえ悲鳴を上げていた男は、そのまま訳のわからない言葉を喚きながら逃げて行った。

 

「はあ……」

 

一息を吐いて、荒ぶった感情を落ち着ける。

 

床を見れば、脊椎を斬られた奴が既に絶命しているのか動かない。反撃してくるかと思ったが、まともな抵抗すら出来ずに一人は死亡。もう一人は、逃亡という結果となる。

 

「……《クリアッショーン》!」

 

組織で教えて貰った魔法を使い、顔と胸に飛び散った血潮を消す。そして、絶命した男のデバイスを拾い上げ超技術ツールで俺の強行の記録を仲間割れに差し替えた。

その上で、救難信号を発信させて俺はその場から離れる。

救難信号を管理局が、キャッチさえしてくれれば彼女達は助かるだろう。まあ、それまではこの世界に残留して様子を見なければならないけど。

とりあえず、彼女達をこの不浄の部屋から別の部屋へと移動させないとイケないだろう。汚れた身体の方は、《クリアッショーン》で何とかすれば良い。

クズの死体は、その辺の試験管にでも入れておけば問題にはならないと思われる。密閉されているし、空気は……別の所からの流入だろうし、至れり尽くせりだ。まあ、布で見えないようにする必要はあるだろうけど。思い付く限り、対策を考えて実行しようとすると死体を入れて運ぶ黒い袋を発見した。徒労に終わった対策を放棄して、死体を黒い袋に詰め込んでチャックを閉める。

その後、奥にあった研究施設の空いていた巨大な試験管に放り込んで密閉し、俺は元の部屋へと戻った。アイツ等が、拠点?にしていた部屋の奥を調べると大量の保存食が発見。量を確認すると、一ヶ月程は問題なく食べられそうだ。これが見付からなければ、俺がこの施設の外で食料を調達しに出なければならなかったが、その問題が解決してホッとする。何故なら、クローン達の記憶や経験等が抜け落ちていたからだ。簡単な行動は出来るけど、言葉は喋れないし、まともに動く事すら困難と来たら長時間目を離すべきではない。全く、肉体を造る事だけを注視して記憶や経験をコピーしないとか……ガチで、クズだった。

 

「一週間待って、局員が来なかったら直接通報しよう……」

 

平行世界で、知り合いじゃないからとかそんな事を言ってる場合じゃない。目の前にいる、大きな赤ん坊達の為にも真当な局員に身柄を渡す必要があるだろう。

現状をしっかり把握して貰って、ちゃんとした設備を持つ施設に入れなければならない。全く、面倒な事をしでかしてくれる。これが、あのチビッ子だったらもっとマシなやり方で助けてくれるんだろうけど……俺には、この辺が限界だった。

 

 

……………………。

 

 

一日目。

 

「もう、無理だ。クロノと連絡を取ろう……」

 

身体は大人、心は赤ん坊の彼女達の行動力を甘く見ていた。体力が回復した彼女達は、普通に立ち上がって動き回るので当初は驚いた。驚いたけど、部屋の外には出ようとしないので安心して食事の用意をしていたら、いつの間にか部屋から抜け出していて探しに行く事に。使い魔と手分けして探し、何とか施設の外に出る前に確保して拠点としている部屋に戻ると……食料庫がメチャクチャにされていて、一ヶ月は持つと考えていた量は半分程になっていた。

 

「アカン……大人な赤ちゃんは、何するかわからん……」

 

四人の大きな赤ちゃんを、一人で世話するのは不可能だと心底思い知った。なので、俺は諦めてクロノ・ハラオウンに連絡を取る事にする。直通回線(通信)への、連絡先を知っていた件に関してどう言い訳しようとか……色々考えていたのだけれど、そこら辺は昼前にあった食料庫襲撃事件で考えるのを諦めた。

チビッ子でない子供の行動力がヤバイ件。

子供は、無邪気で無垢だから天使で癒しの存在だと言われるが……それは、チビッ子である事が前提条件だ。

大人な赤ちゃんは、行動されるだけ憎しみが沸き上がる。

見た目が、愛する人だったとしても目の前にいるコイツ等は、見た目が似ているだけの憎しみ対象と化していた。

何はともあれ、俺はこの大人な赤ちゃん達をバインドで拘束した後、別の場所からクロノ・ハラオウンに直接連絡を取る。(もう、四の五の言ってられない!!)

繋がった当初、クロノはとても困惑していたけれどこちらの必死さに細かい事は後回しにしてくれて、すぐにでも来てくれる事になった。沢山の疑問はあっただろう。他に聞きたい事も……それでも、『プロジェクトFateを使った施設があった』という情報に彼は動いてくれると言ってくれる。流石、お兄ちゃん。この世界では、どうかわからないけど彼がフェイトを保護する関係者である事に代わりはなかった。しかし、今日中には来られないかも知れないから数日は待って欲しいとのこと。

あ、俺死んだ……と思ったのは言うまでもない。

結果。次の日には、ボロ雑巾な俺が誕生した。

詳しくは言わない。だが、大人な赤ちゃん……怖い。

何故なら、奴等は……手を組んで襲って来るのだ。

しかも、疲れて眠っている所への襲撃である。

使い魔が気が付いて、教えてくれてなかったら死んでいたかも知れない。理由は不明。不当な扱いをされたとかの報復の場合、まあ仕方がないと言わざるを得ないがそこまでの知能があるのかわからない。

赤ん坊だろう?それとも、喋れないだけで何らかの知性があるのだろうか?今一わからない。だが、拠点部屋の扉にロックを掛けて夜は食料庫に籠城するようにした。

 

「……………………」

 

結論から言おう……全く、眠れなかった。

奴等は、人が寝ている事を確認すると金属か何かで扉を一晩中叩き続けて来る。しかも、四人いるからかローテーションを組んでガンガン扉を叩く。力加減が違うので、カリカリとかコツコツとかそれぞれの個性ある叩きではあった。何がしたいのかはわからないが、これが報復であるならば大成功だ。ご褒美に、殲滅してやんよ!!

 

「はっ!?イケない、イケない……寝てねぇから、狂気に走る所だったぜ……」

 

とりあえず、組織で教わった《無音結界》で音を遮断して夜は眠る事にする。扉には、封印結界を掛けておいた。

もしかすると、ロックを解除される恐れがあったからだ。

俺のいる食料庫に入られると、安眠出来なくなってしまうのは間違いない。何はともあれ、安眠妨害だけは回避しておくべきなのでこれ以上彼女達に接触するのは止めた方が良いだろう。一人、食料庫に籠って調理器具をアイテムボックスから引き出し食材を調理する。この指輪型のアイテムボックス(?)は、《神殺し》の組織からの支給品だ。

もう、超便利。生物以外なら何でも入るし、引き出す時もストレージ表示で簡単操作だった。

食料を調理し終わって、俺は転移魔法で彼女達の元に届ける。使い魔を通して、彼女達を見ているので彼女達が今何をしているのかは良く知っていた。

食料庫の前に陣取って、俺が出てくるのを今か今かと待っている。彼女達は現在、薄手の医療衣を着て鉄パイプ等を装備。笑いながら、食料庫の扉が開くのを待っている。

それを見る限り、ここから出たらどんな目に遇うかはわかり切っていた。

 

「あの二人、この娘達にどんな教育をしていたんだ?」

 

行動を見る限り、マトモな教育なんてされていない事は一目瞭然だ。何を教えられていて、何がしたいのか全くわからなかった。

 

 

……………………。

 

 

食料庫に引き込もって数日。

漸く俺は、大人な赤ちゃん達から解放された。

 

「とりあえず、初めましてだな?クロノ・ハラオウン」

 

女性局員達に、連れられて行く原作クローン達を見送りながら俺はクロノ・ハラオウンに話し掛けていた。

来てくれた次元航行艦が、『アースラ』だった事もあり原作魔導師組の二人……高町とフェイトもいるけど、彼女達は現在施設の奥に行っている。

理由は、【転生者(踏み台)】の遺体の確認と回収だ。

多分、知り合いかもしれないって事で確認して貰う事に。

本当は、武装隊の方々だけにお願いしたかったんだけど……本人達が、行くと言って譲らなかったのである。

 

「君が、禍焔凍真か。色々、疑問はあるんだが……とりあえず、アースラまで来て貰えるか?」

 

まあ、そうだろうな。

色々聞かれるのは覚悟の上だけど、俺もまだ知らない事の方が多い。聞き齧った程度の事しかわからないので、出来ればチビッ子が到着してから訊問して欲しい。

 

「あれ?まだ、執務官?もう、艦長だっけ?」

 

「…………一応、艦長だが……」

 

「じゃあ、リンディさんはいないのか……」

 

ああ、そうか。XV級艦船「クラウディア」は、stsで乗り換えるんだったな。なら、今は建造中って辺りだろう。

 

「……君は、一体何者なんだ!?」

 

俺の呟きに一々反応するクロノ。

何だか、知っているクロノと違う人物みたいで新鮮だ。

 

「君達が、知覚出来ない平行世界の存在……ってもわからないか。基礎知識からになるけど、説明聞くか?」

 

「平行世界?浅上兄妹から報告があったアレか……?」

 

「アサガミ?……報告?」

 

「話を聞いた時は、眉唾だと思ったが……君が、彼等の言う《神殺し》なのか?」

 

「へ?…………あるぇ!?」

 

クロノの口から、《神殺し》の話が出てきて少し狼狽える。ってか、アサガミ兄弟って誰だよ?頭が混乱して、何が何やらサッパリであった。

 

「兎に角、君は平行世界から来たという事で良いのか?」

 

「あ、はい」

 

混乱していて、頭が回らなかったがその質問だけには明確な返答をしておいた。アサガミ兄弟ってのが、どんな奴等なのかは知らないが《神殺し》を知っている以上、接触した方が良いと思われる。クロノとは、平行世界からこの世界に来た所からの詳細を適当に語っておいた。

そこで、クロノとエイミィの結婚話になる。

この世界では、既に結婚しているはずなので……その裏話をするのと同時に、本人さんに確認してみる事に。

要は、当事者にクロノがエイミィに襲われて出来ちゃった結婚したのか!?という事をだ。その手質問に、クロノが大慌てで超否定していたのが印象的だった。

 

「そうか……本当なのか……」

 

「だから、違うと言っているだろう!?」

 

「男として、それはどうかと思うんだが……」

 

「~~~っ!もういいっ!!」

 

うっかり、カラカイ過ぎてクロノが怒ってしまった。まあ、でも……クロノ・ハラオウンと言えば、常に怒っている様なイメージがあるのでこのままでも良い気がして来る。

 

「なのは達も戻って来た様だし、アースラに戻るぞ!」

 

「あー、じゃ転移っと……!」

 

《迦楼羅》を一瞬解放して、アースラのブリッジにクロノ共々転移する。何故か、クロノが物凄い形相でこちらを振り返っていた。ああ、そう言えば……次元航行艦のブリッジに直接転移したら駄目だった様な記憶が。最近は、あのチビッ子を探して『これでもかぁ!!』って程、世界を移動していたからほぼ忘れかけていた。

 

「ごめん、ごめん。そう言えば、駄目だったよな!忘れていたよ……」

 

「一応、防壁があったんだが……」

 

「俺等みたいな人外には、紙くずレベルのモノだよ。止められるとは、思わない方が良い……」

 

「………………君達は、例外という事にしておく!次からは、気を付けてくれ!」

 

「はいはい」

 

そこそこ、気を付ける事にして俺はクロノの小言をスルーした。(気を付ける気無し!)当分は、あんな感じのままだろう。見た目的には、むくれていないけど半分拗ねちゃってるクロノがいるブリッジに高町達が戻って来た。

 

「初めましてだよね?」

 

「ああ、この世界軸の君達に会うのは初めてだよ。禍焔凍真だ」

 

「えっと、世界……じく?」

 

「おい、クロノ……」

 

「ああ。浅上兄妹が喋ってる間、頭から湯気を出していたからな。それに、大分前の話だから覚えてないんだろう」

 

「お前、何気に酷いよな。えっと……イメージの話になるんだが、お前等のいう次元を別の言い方で表現すると横並びの世界。もしくは、並列に並べられた世界……だと考えてくれ。ここまでは良いか?」

 

「えっと……えっと……う、うん」

 

「じゃあ、俺の言う『世界軸』って言うのは……その並列に並べられている次元世界を縦積みに置いた場合。俺がいる次元世界を表現しようとすると『次元世界』だけでは足りなくなる。なので、『この世界軸』と称する方法がわかりやすくて簡単だろう?」

 

「……………………」

 

「おい、クロノ……」

 

「前提が、おかしいんだ。世界が、次元世界以外にもあるなんてコト事態が知られていないんだから……」

 

「ああ、なるほど。要するにだ、世界って言うのはお前らが認識している世界以上に大きくて広いって考えれば良い」

 

「ううぅっ……」

 

「兎も角、纏めると平行世界……決して、交わる事のない平行状に存在する世界から俺は来た……ってところだ」

 

「平行する世界?…………絶対交わらないんだよね?そこから来た?」

 

「特殊な方法を使ってね。因みに、それはロストロギアではないよ。ロストロギア反応は、無かったからねぇ……」

 

寧ろ、《迦楼羅》に調べて貰ったら『ただの石だ』なんて答えが返ってきた。流石に、ただの石は無いだろう!?

そう、思ったのだが……魔力を込めてない《時空石》は、本当にただの石だった。

 

「ところで、アレ……本当に知り合いだったのか?」

 

「え?…………ああ。うん、知ってる人だったよ……」

 

ちょっと、無理矢理だったけど俺は話を変えた。

まあ、気になっていた事でもあったので調度良かった質問ではあったのだが……それにしても、『知り合い』ですか。

踏み台だったとしても、小学校から一緒にいる『転生者』の奴等を『顔見知り』程度の扱いとかw

どんだけ、嫌われているんだよwww

 

「えっと……【転生者】って、知ってる?」

 

「…………うん。知ってるよ?美愛ちゃんが、教えてくれたから……えっと、禍焔さんも関係者なのかな?」

 

「ミア?」

 

「浅上美愛。浅上亮の妹だ」

 

「浅上『兄弟』って……『兄妹』の方だったのか。まあ、そうだな。関係者と言えば、関係者だが……『転生者』の危険度を訴えている奴がいるなら問題ないか?」

 

「……彼等を危険人物扱いか……」

 

「いやいや、実際に危険人物なんだよ。【転生者】って。ぶっちゃけ、『生前』の記憶があるから引き継がれた経験プラス年齢プラスでの『精神年齢』だから……30や40の良い年したおっさんが、高々9歳程度の少女捕まえて『俺嫁』って性的な意味の視線を向けてくるんだぞ?」

 

『『……………………』』

 

「プロジェクトFateを使って、彼女達のクローンを造り凌辱していたのが良い証拠だ。ああ、そう言えば……彼女達を保護した部屋に人が入れるくらいのダストシュート無かったか?確か、腹上死したクローンを捨ててたーーー」

 

「何だって!?わかった。直ぐに、武装隊に調べさせよう!施設全域を調査している武装隊に連絡ーーーー」

 

顔色を変えたクロノが、次々と部下に指示を与えていく。

その横顔を見ると、滲み出る苛立ちが読み取れた。

まあ、自分が関わった事のある事案(Project Fate)で……仲間だと思っていた者達が、信頼する仲間である彼女達のクローンを造り、凌辱していたって事だけでもショックだったはずだ。それなのに、腹上死したらってゴミ箱にポイしていた事実はどれ程の衝撃か。

 

「……だから、はやてのクローンが居なかったんだ……」

 

「……許せない。クローンなんて造って、あんな酷い事した上に死んじゃったら捨てるだなんて……」

 

ああ、これは……非殺傷設定でないSLBで、吹き飛ばされる転生者達……わかります。主人公を怒らせたら、ダメダメですよね!!だからこそ、こんな辺鄙な無人世界でクローンを凌辱していた訳だ。それが、本人達に公になったんだ地球には戻れない事間違いない。

 

「地球で、あんな事したっていうのに……デバイスを取り上げなかった俺達の責任だ……」

 

おや?地球でも、何かやらかしていたらしい。ってか、『デバイスを取り上げる』って……相当な『事』だぞ?

 

「そっちでも、何かヤったのか?」

 

「女の子達を拉致して監禁して凌辱していたんだ!」

 

「ああ……」

 

つまり、地球で犯した犯罪が明るみになったから、無人世界でクローン凌辱に励んでいた訳だ。そこを俺が襲撃。

時空管理局に連絡して、次元犯罪者扱いになった……と?

 

「ハハハ……クズだ……」

 

成る程。アイツ等、『凌辱系転生者』だったのか……そうなら、容赦なく皆殺しにしておけば良かった。

いや、ソレはあの有り様を見れば予測が付いたはずだ。

なのに俺は、それを考えず見逃して……こりゃ、チビッ子に会ったら何言われるかわかったもんじゃないぞ?

 

「……………………」

 

自分が、甘い奴だって事はわかっている。ならば、他の《神殺し》達の様に『非情』になる方法を作って置いた方が無難だろう。師匠(女剣士)も、戦闘用の精神を作っておいた方が便利だと言っていた訳だし……成る程、ああいう場面で精神を切り換える訳か。納得の理由だな。

とは言え、それをする為には場所と時間が足りない。

一度、組織に戻る必要があるかもしれなかった。

今後の課題である、自分の甘さを何とかする為に俺は動き始める。

 

 

 

 

 

 




はい。現在、行方不明の双夜を探しているトウマくんの登場ですw それにしても彼、双夜と再会出来るのでしょうかね?……作者は、不可能と推察します(笑)。
じゃあ、今回の登場人物を紹介しましょう!。
今回、死亡したのが『大道寺砕牙』こちらは、初登場かな?
その相方で、『金剛大地』。こちらも、初登場か。
はてさて……コレだけ、転生者が出現しているというのに仮面ライダーが変身すらしていないという事実に大笑いしてやってください。つーか、変身するのだろうか?スッゲー、疑問だ(笑)。変身しない可能性も?おいおい、特典を仮面ライダーにした意味がないだろう!?(自己ツッコミ)w
変身、させるよ!?させる予定だよ!!でも、それは……本当に未定となりつつある(笑)(笑)。ああんもう!!『アリシアを恋人にして!』って要望が、ここまで彼の変身を邪魔するとは……しかも、『策を労して』とか。こうなるのは目に見えていたはずなのに……(作者が)変身、もう少しまってねぇ?
必ず、変身させて見せるから!そして、戦わせて見せるから!!初の実践。苦戦は、必至!!相手は……誰になる事やら(苦笑)……。
ぶっちゃけ、トウマくん。そのまま、君が解決しちゃえよ。この世界の問題。そしたら、双夜をSAWからこちらに戻さなくて済むから(本音)。平行並列世界を旅しているんだから、一人の一人前《神殺し》として解決させちゃおうか?(笑)

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m(_ _)m

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