絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一三九話

幸政

 

 

数日後、俺はあの少女の名前を知る。

彼女の名前は、アリシア・テスタロッサ。

喫茶店『翠屋』の近くに住む女の子であることが判明した。まあ、隠す事もないので言ってしまうが……その情報をくれたのは、噂大好き情報通の女子生徒達である。

まあ、俺のクラスメイト達なんだが……彼女達によると、アリシアは私立聖祥大付属小学校で七大美少女の一人として認識されていたらしい。

他に、高町なのは、月村すずか、アリサ・バニングス、八神はやて、浅上美愛、フェイト・テスタロッサがいるとのこと。

 

「……………………」

 

フェイト・テスタロッサと聞いて、疑問に思っていると二人が姉妹である事を聞かされた。

その上で、あの残メン達が執着している女子達の名前も情報として得る。喫茶・翠屋の看板娘こと、高町なのはを筆頭に七大美少女の一人を抜いた六人を狙っているという事だった。というか、この法治国家日本で一夫一妻制を無視してハーレムを築こうというのは頭がおかしいとしか言いようがない。

 

「そんな経済力も無いくせに……」

 

そう考えて、フと前世の記憶が思い起こされた。

『鎧○』が終了した後に、ネットで乱立されたSSをの事を思い出す。まあ、俺は特撮ヒーローモノやレディスモノ・可愛いモノが好きではあるけれど物珍しさもあって、ネット小説をそこそこ読み漁ったのを覚えている。

そのついでに、俺は適当に他の作品にも手を広げ……しかし、やはり読むよりも観る方が楽しいという結論に至り途中で止めてしまった。だが、今世のクラスメイト達に聞いた話とSSで語られていた記実に重なる部分がある。

例えば、物語のヒロイン達にちょっかいを出して嫌われるという所とか、ヒロインに『俺嫁』とか『ハーレム』とか言う所がだ。実際、アリシアやその周りの少女達にあの変態達が煙たがられていた様だが。

あれが、『踏み台』とか呼ばれる人種なのだろう。

まさか、現実で『俺嫁』とか『ハーレム』等という言葉を聞く事になろうとは思わなかった。あんな痛い台詞を、恥ずかし気もなく大声で叫べるとは気が触れているとしか思えない。俺だったら……と考えて、頭を抱えて悶えてしまった。無い。絶対、無いわー。それ以上に、複数の女性と交際っていうのがそもそも理解出来ない。

まあ、これは前世の両親達の影響が強いんだけど。

 

『男なら、一人の女性を全力で愛するのが当然だ!』

 

そう、親父は言っていた。俺が幼かった頃から、俺が死ぬ直前まで会う度に言ってたのを覚えている。まあ、母と父は異様な程仲が良くて喧嘩しても翌日には仲直りしていたからなぁ。だから、俺には複数の女性と爛れた関係を持つという事に忌避的な感情があった。

 

「ま、それ以前に……」

 

自分好みの女性が、そうそういなかった訳だけど。

俺の好みは、出来るだけ小さく儚げで可憐な成人女性だ。

間違っても、ロリではない!体格的に小柄な女性で、成人しているならば全然問題なし。

欲を言えば、美人であれば尚良しって話なだけだ。

それで言えば、アリシアは俺の好みドストライクだった。

あれで、同い年っていうのだからおいs……うれしい話である。ただ、成人女性ではないないけど……だがそれは、時間が解決してくれる事なので今は気にしなくてOK。

 

「問題があるとすれば……」

 

あの、『踏み台』的な男達だろう。

アイツ等は、ヒロイン全員を手に入れようと企策している。表面的な状態を見れば、まだ彼等の手の内に彼女達が堕ちたとは考えにくいが……人間の心内なんて、目で見える範囲を超えているので断言は出来ない。

ならば、どうするか。

普通に近付いては……イケないだろう。あの踏み台達のせいで、彼女が男性に対して苦手意識を持っている可能性がある。しかも、こちらもアリシアと仲良くなりたいという欲望の元に行動するんだ。警戒されても、おかしくはない。

 

「くっ……踏み台共が……」

 

下手を打てば、あの踏み台共と同列に扱われ兼ねない。

排除するという手も、無い訳ではないが……それは、最後の手段にしておきたいので、あの踏み台達の情報を出来るだけ調べる事にした。その上で、アリシアの交友関係……あの七大美少女達の一人とコンタクトを取り、アリシアを紹介して貰うのが良いと思い付く。

『友人』からの紹介だ。

あの踏み台共と似たような状態扱いにはならないだろう。ならば、あの六人の内から知り合いになる人物を選ばなければならない。

とりあえず、フェイト・テスタロッサは候補から外しておいた。理由は、姉妹だからだ。下手にちょっかいを出して、アリシアに嫌われてしまったら元も子もない。

彼女と知り合う為の切っ掛けとして、『親しい友人の紹介』という区分を選んだのは、姉妹を取り込んだ場合の友人関係との折衝を省く為である。

ここで、もし『姉妹からの紹介』を選択するとその姉妹の友人達とも友好関係を築かねばならなくなってしまう。

それでは、時間が掛かり過ぎてしまうから面倒この上ない。そういうのは、後からでも十分望ましい関係を築くことが出来る。

俺には、今後の憂いと成りえる『踏み台達』を排除する役割もあるから、余り他の事に時間を掛けるのは得策ではない。

更に、俺にはもう一つヤらなければならない事がある。

喫茶『翠屋』に、足繁く通い詰めるという作業だ。

あのお店は、フェイト・テスタロッサの親友の両親が経営している店だと聞いた。ならば……その親御さんと仲良く成れば、自動的にアリシア・テスタロッサの親とも親しくなれる可能性がある。

言うまでもないが、あの踏み台達の目に余る行為によってアリシアの両親が異性に対して過敏になっているはずだ。

となると、いざアリシアと付き合う事になった時に渋られる可能性が浮上してしまう。そうしない為にも、円滑な関係を築く必要性があるのだ。面倒な話ではあるが、『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』とも言うからな。

即ち、ママ友を落としてアリシアの母親と面識を得る事を優先する。それと平行して、七大美少女の中から最も簡単に落とせそうなのを落としてみよう。

その為には、行動を起こす前にまずは情報を集める事を優先するべきだ。クラスメイト達が知っていそうな情報から、ママ友が知っている情報と……ついでに、あの踏み台達の事も調べる必要があるだろう。弱みでもあれば、簡単にアリシアから手を引いてくれそうだし……尚良い。

ある程度、方針を固め翌日から行動を起こしてみる。

詰まりは、銀行に行ってお金を下ろし意気揚々と喫茶『翠屋』へと通う訳だ。

決して、あの店の味が忘れられない訳じゃない。

忘れられない訳じゃないから!!

 

 

………………………………

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

数週間後。

漸く、喫茶『翠屋』のマスター達に常連客という認識を得られました。長かった……とも短かったとも考えられる。

ただ、喫茶『翠屋』に通うに当たって、注意したのは娘さんが帰ってくる前に帰ること。

例え、帰る前に娘さん達が戻ってきても視線を向けない……関心を持たない事を心掛ける。

以前、マスターの娘さんに行き過ぎた行為をした踏み台達が殺気に近い威圧を受けているのを見掛けたからだ。

いや、マスターだけじゃないウェイターのお兄さんからも殺気に近い気配が漏れだしていた。

後で聞けば、あのウェイターはマスターの息子さんだと言うじゃないか。ここで、目を付けられると二重の意味で面倒なので出来るだけお店のファンである事を心掛けた。

 

「マスター、コーヒーとシュークリームで……」

 

「いらっしゃい。たまには、他のメニューも頼んでみたらどうだい?ここにあるメニューは、すべて桃子のだから」

 

「む……」

 

そう言われて、メニュー表を開きシュークリーム以外のケーキメニューに目を通していく。まさか、シュークリームだけでなくこのケーキ群も桃子さんの手が掛けられていたとは……恐るべし。という訳で。

 

「では、ショートケーキを……シュークリームは、テイクアウトで!」

 

「ははは。かしこまりました」

 

駆け付け一杯という訳ではないが、まずコーヒーを注文していただく。挽き立てのコーヒーが出されて来るので……まず、その香りを楽しんで次に一口含んで苦味とその中にある独特の甘味を味わい一息付いた。

 

「美味い……」

 

「嬉しい飲み方してくれるね」

 

目の前に注文していたショートケーキが運ばれて来たので、フォークを手にとってショートケーキに一刺しチョビットだけ切り分けて食べる。

 

「あ……」

 

一口、ショートケーキを食べた所で人生の一部を損をしていた事を悔やんだ。シュークリームもそうだったけど、このショートケーキも侮ることなかれ。

一般のケーキ屋さんより、一工夫されていて美味い。

特にスポンジが、パサパサではなくシットリとしているのにモチモチして噛み堪えもあると来た。

コーヒーを飲んで一息。

 

「いらっしゃい」

 

そこへ、奥の方から桃子さんもやって来る。

目礼して、再度ショートケーキにフォークを入れた。

通い詰めていると言っても、毎日通っている訳ではない。

平日はそこそこ、土日は入り浸っているけど……その程度の常連である。まあ、土日は娘さん達がいない事の方が多いので踏み台達がいない分ゆっくり出来て桃子さんとも交友出来るのでありがたい。今の所、目的の人物が『翠屋』に来ることが無いのでそれ以上の進展がないけれど。まあ、この辺は根気の問題なので長期戦も止むを得ない。

桃子さんと世間話を交えつつ、最近の近況を聞いてマスターともコーヒーや紅茶の話で盛り上がる。

娘さん達が、帰ってきた頃合いに席を立った。

 

「すまないね……」

 

そうする事で、俺が娘さん狙いで無い事を告げると同時に静かな喫茶店を求めているというアピールを表明する事になる。それ故に、マスターから謝罪をされる事がしばしばあった。

 

「いえ、大丈夫です……」

 

こうやって、地味ではあるが喫茶店のマスター達の信用を勝ち取っていくのだ。まあ、自分が望むレベルまではまだまだなんだけど。

 

「また、来ます……」

 

それだけ告げて、俺は入れ違いに翠屋から出ていった。

途中スレ違った踏み台達は、もう俺に視線を向ける事はない。最初は、絡まれたりしたけれど俺が気のない振りを続けていたら排除対象から外してくれたらしい。

まあ、散々彼女達と関係を持たないように行動して入れ替わる様に店から立ち去れば対象から外れたとしてもおかしくはない。

家に帰ると、見慣れない無地の封筒が郵便受けに入っていた。取り出すと、結構分厚い感じがする。

それを持って中に入り、封筒を開けてみた。

中から出て来たのは、とある調査会社に頼んでいた踏み台達の情報。ぶっちゃけ、日本人じゃない上に不法滞在者と来たもんだ。きっとこれは、転生をした者共通の落とし穴なのだろう。つーか、俺含めて良く今まで無事だったと背筋をヒヤリとさせてしまう。とりあえず、俺は後でその辺りの手続きをしてしまおうと考えてから続きを読む。

まあ、後でわかる事だが……手続きは必要なかった。

見た目が、アジア系だった為に俺の国籍が日本となっていたからだ。ラッキー。言うまでもない事だが、踏み台達の容姿は西欧風なので外国人扱いになるらしい。

 

「…………ってか、警察に連絡したら良いんじゃね?」

 

不法滞在者がいるとか何とか言って、踏み台全員を排除してしまえば良い。そうすれば、手を汚さずして踏み台達の排除が完了する。これは、良い事を思い付いたと思ったが、次の報告書に目を通して気が変わった。

そこに書かれていたのは……俺が、一番嫌う最悪の事柄。

これを調査した会社は、報告書に助言として素早く警察に知らせる事をオススメしている。常識的に考えて、これは調査会社でなくても警察に通報するレベルのお話だ。

俺が、直接通報するのはアレなので調査会社に電話して、調査会社から警察に通報して貰えるようにお願いする。

その方が、報復とか色々面倒事からこちらの情報をシャットアウト出来ると考えたからだ。調査会社の方も、その方が良いだろうと俺の提案を飲み、あちらが警察に通報してくれる手はずとなった。

 

「まさか、誘拐して暴行とか……犯罪行為をやりまくっていたとは……流石、踏み台。馬鹿としか言いようがない」

 

とは言え、あのアホ共のせいでアリシア攻略の難易度が更に上昇した。その上、警察が踏み台達を逃がしてしまい迂闊な行動が出来なくなってしまう。

最悪、俺が馬鹿共を探し出して神様特典を破壊。警察に、保護させる方法を取らなければならないかもしれない。

 

「うわぁ……面倒な……」

 

警察、しっかりしろよ!職務怠慢だぞ!?

色々、言いたい事はあるけれど逃げちゃったモノは仕方がないので、調査会社の方に連絡をしてとあるお願いをしてみた。万が一の可能性を考えて、俺が踏み台達の調査を依頼したというログを消去して貰えないかという依頼だ。

例えば、踏み台達が神様特典を使って調査会社に忍び込んだりして、俺が依頼したという手懸かりを入手させない為である。予想ではあるけれど、踏み台達は警察に捕まっても逃げ出す術を持っている可能性があった。

事実、警察に捕まって署に連行されたのにも関わらず、踏み台達は意図も簡単に逃げ出している。

その情報は、調査会社の方にも伝わっていたので簡単に了承を得る事が出来た。

 

「全く、自分を主人公だと思い込んでいる踏み台は、始末におけんな……」

 

俺は、まともなのでそんな風には思わない。

アイツ等みたいに、この世の常識が自分達に通用するはずがないとか本気で考える事はない。アニメだろうが、何だろうが……その世界に【転生】した以上、『郷に入れば郷に従え』の精神でその世界の常識に組み込まれるのは当たり前の事だ。踏み台達の有り余る馬鹿さ加減に、俺は頭を抱えて悶えるはめになった。

あんなのが、俺と同じ転生者とか……マジで、恥ずかしい。

この世界の原作を知っているからと言え、主人公だからと何をしても許されると考える事は子供の思考だ。

あれでは、【転生】の意味を全く理解していないだろう。

なまじ、生前の記憶がある為に前回の人生をリセットして、最初から人生をやり直しているという感覚もないと思われる。まあ、それは俺も似た様なモノだけど。

だがしかし、それは周りの迷惑も考えず行動して良いという訳ではない。常識は常識として、それを加味した上で行動するべきだ。女性を口説くにしたって、いきなり『お前は、俺の嫁だ』とか言ったってドン引きされる事はあっても好意を持たれる事はない。

考えてもみて欲しい。ある日、自宅へ唐突にやって来た美少女・美女が『貴方こそ、私の運命の人。結婚して下さい』なんて言って来たらドン引きこそすれ受け入れるなんて選択肢を選ぶだろうか?俺だったら、いくら自分好みの美少女だったとしても怪し過ぎて追い出す自信がある。

 

「無いな。うん、無い……」

 

それが、『一目惚れです!』だったとしても……いや、状況によるか。学校で、後輩若しくはクラスメイトにそんな事を言われたら、お試し感覚で付き合い始めるかもしれない。ここら辺は、ケースバイケースだな。

ただ、初対面で複数の女性に『俺嫁』言ってる踏み台よりかはマシかもしれない。一対一であるならば。

 

「ああ。複数系でなければ、不思議ではない……な」

 

今一、完全否定出来なくなって俺は考察を途中で放棄した。何はともあれ、転生者が俺を狙って来るというのならば『降り掛かる火の粉は払うだけだ!』という方針で今後は行動をしていく事になる。出来るだけ慎重に、こちらの目的を悟らせない様に行動しなければならない。

 

「…………過度な接触は避けるべきか……」

 

焦りは禁物だ。今まで通りを心掛けて、友人となれそうな人物を得なければならない。さっさと候補を絞って、出来るだけ自然に接触しなければ、あの踏み台共が現れて計画をおじゃんにしかねない。とは言え、クラスメイト達の情報網に聖祥七大美少女達の人間関係図が入手されていないので手の出しようが無かった。

情報料として、有名所のケーキや甘味を引き換えにはしているが、そろそろ彼女達を使うのは潮時かもしれない。

もう、運任せでアタックして成り行きにまかせた方が良いかも知れなかった。だが、関係図を得てからの方がしがらみ的に楽なのは間違いない。駄目元で、翠屋のマスターに聖祥七大美少女達の仲を聞いてみた。

 

「ウチのなのはに気があるのかい?」

 

「……噂で、聞いただけだ」

 

一般論として、学校内で一目を置かれる美少女達が仲違いするという話が多いのでマスターの所は大丈夫なのか聞いてみた事にした。ついでに、仲が良いならその秘訣を聞きたいとも告げる。すると、俺の通う学校で学内美少女と呼ばれる女子達がいがみ合っているというバックストーリーが出来上がってしまった。

しかし、この時の出任せストーリーが事実である事を後日クラスメイト達から聞かされる。しかも、かなりの泥沼戦になっているらしい。

全く、美少女が腹黒とは嫌な時代になったモノである。

因みに、マスターから聞いた秘訣は特殊で参考にはならないモノだった。

何故なら、月村すずかと高町なのはが親戚になるのが確定していて家族ぐるみの付き合いだというのだから特殊過ぎる。この時点で、彼女達の関係はかなり複雑化していると考えられた。ついでに、アリサ・バニングスがこの二人と小学校初等部からの友人で、更には双両親も仲が良いらしい。良く、バニングス・月村・高町の三家で旅行に行ったりもしたとマスターは語っていた。

 

「あー……両親の影響が強いのか。参考にはならんなぁ」

 

「そうかい?それは、残念だ……」

 

そして、フェイト・テスタロッサが高町なのはと親友で共に百合の花を咲かせているらしい。マスターが、微妙そうに娘の将来を憂いていたのが印象的だった。

最近では、八神はやてやその家族とも旅行に行くらしい。

それを聞いて、計画の練り直しを考える必要がありそうだと頭を抱えるはめになる。

だが、光明が無かった訳ではない。

最後の聖祥七大美少女、浅上美愛がそれほど彼女達と交流を深くしていない事を知った。ならば、落として踏み台にするのは浅上美愛が良いだろう。そう結論して、俺は浅上美愛とコンタクトを取る為に行動を始めた。

駄目元で、情報通のクラスメイト達に浅上美愛との繋ぎをお願いしたところ……彼女達は、楽しげに頷いてすぐに行動してくれる。さて、彼女達への対価である隣町の有名ケーキ屋さんに予約を入れに行こう。ただ、限定品の場合は早朝からの出勤となるので事前に『お願いの品』が限定品かどうかを調べておく必要があった。

まあ、言うまでもなく『限定品』だった訳だけど。

 

 

……………………。

 

 

その数日後、俺は浅上美愛と顔合わせをする事になる。

情報通のクラスメイト達の話では、彼女が運営している特殊な会合に割り込み参加出来るようにしたとのこと。

ただし、参加条件として『お笑い』に関する知識を得ろ!と、お笑いの資料を渡されて読み漁る事となった。

その資料は、お笑いに関する初期の歴史から現代に至るまでを書き記したモノや現在芸能界にいるお笑い芸人に関する情報の塊である。それを出来るだけ覚えろと言われた。

しかし、一日二日で読む事も暗記する事も出来ないので『お笑い初心者』としてある程度の下地知識だけを刷り込まれての参加となる。ハッキリ言って、興味のない事を覚えるという事がここまで苦痛になりえるとは。

 

「……普通に死ねる……」

 

そしてその『集まり』とは、近隣の少年少女達を集めた趣味の会だった。『お笑い』という、他人を笑わせる事に命を賭ける素人芸人達が集まる会。

それが、浅上美愛が運営する『会』らしい。

ゆくゆくは、お笑いデビューして世界を笑いの渦に巻き込む事を夢としていると情報通のクラスメイト達は言っていた。今は下準備の段階で、世情を調べネタを仕込み日々精進を重ねているらしい。いやはや、中学生でそこまで考えているお子様がいるとは……正直舐めてました。

俺事態、未だに将来のことなんて考えてもいないから頭が下がる思いである。

 

「リアル中学生に負けてる俺……」

 

これまでやって来た俺の愚行を振り返り、将来の夢の為に頑張っている中学生の活動を見てちょっと凹む。

幻想に憧れて、現実を無視し夜の繁華街を放浪する危ない奴……そして今は、一人の女性を自分の女にする為に策を労し他人を蹴落として……自己中にも程があるだろう!?

 

「……………………」

 

ヤバイ。現実に向かって、頑張ってる中学生を見て冷静になってしまった。その結果が、頭を抱えて自分の犯した暗黒歴史に悶え苦しむハメって何!?

ここに来て、自分の行いを直視するハメになるとは……ああ、もういいや。(賢者モード)

原作とか、仮面ライダーとか……何もかもどうでも良くなったので恋人を得る為に頑張ろう。その後は、自分の将来を考えて彼女と共に歩む道を探して行けば良い。

グダグダではあるが、俺は現実を見る事にした。

この世界が何であれ、俺は今までを水に流して薔薇色の未来の為に邁進する事に。

高校生になるまでに、アリシアを恋人にして今ある世界を楽しむ事を目標に定め直す。

とりあえず、就職活動もしなきゃならないので今まで放置していたこの世界の社会を学ばねばならないだろう。

そう考えて、俺は自分があの踏み台達となんら変わらない人種である事に気が付き、二重の意味で血ヘドを吐くハメになった。

 

「ああ……もう、本当に……」

 

 

 

 

 




さて、漸くですねw
浅上兄妹は、第一世界で影が薄かった子達ですねw
ギャグ系としていたのに……全く、手を付けられなかったキャラ達です。まあ、あの子達は使い方が違う子達なので仕方がなかったんですけど。原作と原作を知らない踏み台との緩衝役と言えば良いのかな?そんな、役回りの子達なんですよw
だから、メイン扱いにはなりません。だけど、幸政と原作を繋げる程度には役に立ちます。まあ、それだけの為に出した訳では無いんですけどね。今回は、アリシアとリインフォースを復活させる為に出しただけだったり。
浅上妹→蘇生特典所持。
浅上兄→夜天の書の基礎データ特典所持。
まだ、双夜出てないのに……微妙に改心して行っているように思えるけどねww本格的な改心は、未だだよww

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m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも読んでくれる方々に感謝を……。

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