絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~ 作:葉月華杏
双夜
この度、カエデ・バニングスの説得に成功した。
あれ……アリちゃ分離事件から五年経って、漸く楓の説得が完了する。いやもう、大変だった。足茂なく通いつめて、何度も何度も説得し続けているのに全然態度か変わらなくって……何を話し掛けても、ただひたすら『お金お金』言うので腹黒な交渉を展開せざるを得なかった。なのに、口を開けば『お金お金』っていう癖に金儲けの話に乗って来なくて、なかなか交渉が進まない。
だが、ある日……《ルール・ブレイカー》の話が出てから微妙に話の噛み合わない交渉が続く事になる。
だから、もしやと思い《ルール・ブレイカー》の使用を問うと全力拒否されてしまう。
今一、要領を得ないまま交渉を続行。
やっぱり、《ルール・ブレイカー》を使用してみた方が良いと判断して使ってみようとした訳だが……楓が、逃げ出したりして中々使わせてくれなかった。なので、最終的に楓を挑発して乗せて、《ルール・ブレイカー》で能力一時封印と相成る。全く、どこまでも面倒な存在だった。
結果だが……黄金律を封じてみた所、思っていた通り性格の一部の歪みが無くなって普通に話せるようになる。
しかし、強固な態度は『カリスマ』を封じても変化がなく……適当に、無効となっていた『乗っ取り』を封じたら態度が反転。どうやら、『アリサ・バニングスに転生する』が悪意ある裏特典の元だった様だ。
即ち、『黄金律』は『お金執着』で、『乗っ取り』が『性格反転』か『人格反転』だったモヨウ。全く、傍迷惑な。
ついでに言うと、楓は《ルール・ブレイカー》の使用を求めていた訳だが裏特典に邪魔されて今一要領の得ない事を口走っていたという。気が付けずに申し訳無かったと反省して、今後はもう少し分かりやすい合図をお願いしておく。そこで、楓の本心を《正直者の陣》を使って聞いた訳だけど裏特典が無ければ普通の転生者である事が判明。
特典は裏表が、連動しているタイプだったのでブレイク出来なかったけど……裏特典を、封印する方向で何とかした。
ただ、それをすると特典が弱体化してしまうので、そこら辺の調整に戸惑うことになる。
「とっても、面倒だった……」
兎も角、楓にはリンカーコアの譲渡と実家への帰省に関してOKを貰い、アリちゃとの会談を早急にするよう求めた。楓自身も、【管理者?】に騙されていた事とアリちゃに対して辛辣に当たった事を反省していたので即了承。
直ぐにも、行動してアリちゃとの面談要求を俺に求めた。
後日、アリちゃに謝罪した楓は『戻って来て欲しい』と願い出たのだが……アリちゃが、今の生活が楽しいので帰りたくないと拒否。でも、いずれ戻って来ると言って次元通信機を渡してたので、浅くはない溝はあるものの家出を継続する意思はないと思われる。
要は、楓の誠意次第という事だ。
「これに関しては、僕の関わる事じゃないんだよね……」
これで、地球方面の面倒事が解決した事になるので、それだけは楽になったと諸手を上げておく。
それらをアリちゃに説明した所、神様に祈りを捧げるのは止めにする事にしたらしい。それから、楓との関係を少しずつ良い方向に持って行ける様に頑張るとも言っていた。
まあ、《ルール・ブレイカー》で特典を弱体化させておいたので、微軽減された『執着』と『強固』がどういう風に作用するかは今の所不明だ。
「……………………」
これで、アリちゃの問題が解決した訳だが……そこで、更なる懸念事項が持ち上がっていた。彼女の裏表特典だが、どうも【等価交換を原則】にした強化型特典だったみたいだ。更に、楓を転生させた【管理者】の特定が出来ない。
探りは入れているけど、全く尻尾すら掴めないらしい。
そこで、俺の脳裏に浮かんだのは《神殺し》初期のスカウト組で、鍛練に付いて行けなくなった奴等が悪落ちしているって話だ。セイビア曰く、《神殺し》の出来損ない。【厨ニ病集団】、《永久の終演者(エターナル・エンド)》。
自らを【奇跡の代行者】と呼び、奇跡と偽って【等価交換を原則】とした悪意ある奇跡を実行するクズ共である。
「その方々が、楓さんを転生させたと?」
「可能性はあるなぁ……」
自ら望んで《神殺し》に至った癖に、落ちこぼれて全力全開で関係ない人々を憎んでいる彼等は……《神殺し》の上層部に喧嘩を売っても勝てない事はわかっているので弱者を相手にして威張っているアホ共らしい。面識はないが、誰かを不幸にする行為を嬉々としてやってくれている。
しかも、基本的に隠密行動に傾倒している奴等ばかりなので、早々簡単にはこちらの情報網にも引っ掛かっていない。今のところは、探りを入れつつ相手が罠に引っ掛かるのを待つしかなかった。まあ、情報網に引っ掛かったとしても俺では彼等に太刀打ち出来ないのだけど。
落ちこぼれてと言っても、能力的には俺よりも数ランク上の存在。《神殺し》ではないけど、【堕ち神】程度なら瞬殺出来る優秀なエージェントだ。
全く、才能の持ち腐れであった。十分な戦力な癖に……《神殺し》に成れず、人類愛が無いってだけで腐るとは何様?
一番じゃないからって、十分戦力になるなら【軍】に入れば良かったんだ。俺の言うべき事じゃないけど、訳のわからない理想を掲げて他者の不幸を貪るアホ共。
ぶっちゃけ、消えてしまえば良いんだ。
「……………………」
アカン。それを殺ると、ブーメランになってしまう。
何故なら、俺の《ルール・ブレイカー》ならアホ共を【消して】しまう事は容易いからだ。いや、アホ共だけじゃない……現存する《神殺し》や【組織】に所属する全員を、問答無用で【消し去る事】が出来てしまう。
アイツ等の願いを……その最終目標を達成させる事が可能だ。即ち、俺は《神殺し》を殺す事が出来るのである。
俺は、奴等にとっての【絶望】でもあり【希望】だった。
「それで?原作の方はどうなってる?」
「はい。ホテル・アグスタの警備任務に着任した様子です!ただ……エリオ少年が、入院したままで戦力的にどうなるかは不明とのこと……いかがいたしますか?」
「うーん……エリオの抜けた穴は大きいか……まあ、彼女等が【転生者】に対抗出来るかといえば……不可だ……」
「手助けいたしますか?」
「そうだな。少し、様子見しつつ、ヤバそうだったら手を貸してやれ……ただし、見付かるなよ?」
「御意」
そう言って、俺の背後に控えていた影が消えていく。
言うまでもない事だが、消えて行った影は隠密部隊筆頭の使い魔である。名前は、【トウモク】。『お頭』とも呼ばれている暗殺者だ。基本的に、黒装束を着ているので見た目的には忍者。【混血】の趣味だった、時代劇を見せていたらいつの間にかああなっていた。
凄まじい影響を受けちゃった使い魔であるが、本人は至って真面目に忍者をやっているらしい。
「【組織】の暗黒部分に染められたキチガイが……もう、ダメかもしれない……」
【組織】の趣味と道楽で汚染された使い魔が、とても痛々しい現状……マジで、何とかしないと俺まで染められそうだ。戦々恐々しながら、消えて行った使い魔を見詰める。
マトモなのが、俺の親衛隊5000程度で……残りは、【組織】の趣味と道楽に染められた【厨ニ病集団】が《ミリオネア・アガシオ》の正体だ。まあ、戦闘狂はまだ良いが職業系が危険過ぎる。戦闘狂は、『世紀末覇者』とか言うヒャッハーな馬鹿共で……職業系は、正に【個性豊か】と称せてしまうキチガイだ。
因みに、《神殺し》に成れなかった【厨二病集団】は『闇』とか『暗黒』とか意味不明な言葉を並べる痛々しい集団だ。見ていると、居たたまれなくなって逃げ出してしまうレベルらしい。そんな能力は無いくせに、『封印された右手が疼く』とか『邪皇真眼?』がどうとか言うらしい。
ウチの汚染使い魔とは、別の種類の【厨二病】だった。
《ミリオネア・アガシオ》は、【職種厨二病】で……落ちこぼれ共は、【妄想系厨二病】らしい。
「神崎に聞けば、何かわかるか?」
アイツなら、俺の疑問に答えられるかも知れないが……あまり、そっちに引きずり込まれても困るので止めて置こうと思う。触らぬ神に祟り無し。まあ、祟られたら斬り捨てれば良いだけだが……今回ばかりは、手は出さない事にする。
「さてはて……無駄な考察は止めて、報告を待つとしますか……」
そう言って、俺は無限書庫の整理を再開した。
……………………。
「スバルが、味方に撃たれて……ヴィータが撃沈?……なんだ、コレ?」
今俺は、ホテル・アグスタの警備を終えた機動六課がどうなったのかの報告を受けている訳だが……結果は酷いものだった。エリオが抜けた穴をヴィータが埋めた結果……ティアナが暴走して、スバルを後ろから狙撃。カートリッジの四発ロードをして、味方を後ろから狙撃とか……最悪だ。
それに、拐われそうになったキャロを助けようとしたヴィータが転生者とおぼしき敵に撃沈されたらしい。
なんとか、キャロを取り戻しはしたもののヴィータはしばらく現場復帰は出来ないとのこと。
「エリオは、数日中に復帰するみたいだけど……スバルとヴィータが抜けた穴は大きいか……」
翼のフォローは、長い年月によって積み上げられたトラウマには勝てなかったという事か。知略戦闘を目指せば、パワー戦闘なんて軽々淘汰できたモノを。ついでに言うと、ティアナの精神状態がマッハで暴落しているとのこと。
このまま行くと、機動六課は何も出来ないまま『聖王のゆりかご』と対決する事になるだろう。
「最悪、僕が動く可能性も視野に入れて動くしかないかな?何はともあれ、アルカリア……動けそう?」
「問題なく……」
「凌辱系転生者の動向は、掴めているの?」
「フレールくんと隠密部隊が、貼り付いています!『異端技術』に関しましても回収済みなので問題ありません」
「じゃあ、直ぐに動ける様にしておいて?『ゆりかご』が、浮上する事態になったらサクッと潰しに行くよ?それと、『ゆりかご』に【鮮血の特製・浸食ウィルス】をセットしておいてくれるかな?」
「了解しました……」
そう言って、アルカリアも消えた。
一応、ここは天下の時空管理局。早々簡単には、忍び込む事すら出来ない場所なんだけど……部外者が、割りと頻繁に出入りしてしまっているで、色々と残念な組織になってしまっていた。
「それにしても……ジェイルを捕まえただけで、ここまで原作からかけ離れてしまうとは……」
暗躍する凌辱系転生者が、色々と裏から工作しているのかな?何にせよ、俺が動く必要に迫られる事は明白ッポイ。
アリちゃもすじゅかママも、戦力にはなりそうにないし……色々と大変である。もう、いっそうの事【凌辱系転生者】を壊滅させてしまえば楽なのかもしれない。
しかし、そうすると機動六課の面目を潰す事になるし……時空管理局の無能さを世間に公表する事にも繋がる。
それは、俺の考える未来では無いので出来るだけ正体を明かさずに事件の収集に当たるべきだろう。
「隠密共に命じたら、大好きな変装で引っ掻き回してくれるんだろうなぁ……何処から、デバイスを引っ張って来るか……考えただけでも恐ろしい……」
職種厨二病共に、『空戦魔導師の振りして暴れろ』とでも言ってみようか?と思案する。それによって、起きるであろう未来を予測した。俺が準備を怠れば、デバイスを自分達で調達してくるだろうから楽ではある。だが、その場合不足するであろうデバイスを何処から持ち出してくるのかが問題になる訳だ。間違いなく、彼処から持ち出して来るのは予想が付く。時間が無いから、咎めたりはしないけど……出来れば、協闘する所からの持ち出しは止めて欲しい。
「いや、まだ命令してないから大丈夫なはずだ……」
もう、いっそうの事……変身魔法と再現魔法で、対応して貰えないかお願いしてみるのも手だと考えられる。
デバイスによる、通信手段が無いから敵認識されるかもだけど……現場が、大混乱になる予想が付いてしまうけど……それは、仕方がない事だと諦めるしか無いかもしれない。
「時間は……無いだろうなぁ……」
事実、ファストアラートが数週間遅れになった訳だから神崎が知る原作通りの時系列で物語が進むとは考えられない。更に言えば、スバルとヴィータが入院している今が、彼等の願いを成就させるチャンスでもあった。即ち、『ゆりかご』浮上イベントが起きる可能性大ということだ。
準備が整うのが先か、『ゆりかご』が浮上するのが先かはわからないが……いずれにしろ、ヴィヴィオが出て来ない事には手も足も動かせない。故に、真っ先にヴィヴィオの居場所を探したのだけど……邪魔されているらしく、ヴィヴィオ発見には至っていなかった。
「しらみ潰しにしているのに……ミッドチルダには居ないのかな?」
神崎の話では、培養液に入れられた状態でミッドチルダに運び込まれるという話だったので、ミッドチルダ及びその周辺にある研究所を片っ端からしらみ潰しにした訳だが……発見には至らなかった。原作通り、新人達の休暇中にエリオとキャロがデートしなければヴィヴィオを発見する事は出来ないらしい。
もしくは、既に凌辱系転生者達にヴィヴィオを押さえられている可能性もある。だが、それならば『ゆりかご』内部に転生者達が雪崩れ込んで来ないとおかしいので、彼等もまだヴィヴィオ確保には至っていないと思われた。
「まあ、確保されていようがいまいが関係ないんだけどね……いずれにしろ、彼等の居場所は無いに等しい訳だし……」
彼等の思惑が成功したとしても、最終的には世界が彼等の思い通りになる事は無いのだ。世界の【未来】が、【混沌】となるならば【外】からの干渉も簡単になり、《旧・神族》によって無理矢理【外】に引きずり出されて蹂躙される事が決まっている。そして、転生者達は【堕ち神】の材料にされて、この世界の住人は【玩具】になる事だろう。
「人を呪わば穴二つ……自分達も破滅に落ちるんだよ……」
他者を羨み貶めて、欲望の業に焼かれる転生者。
その結果は、地獄行き。いや、地獄の方がマシだと言えよう。《旧・神族》の【玩具】になるという事は、生き物としての最低限の権利すら失われるという事だ。
地獄はまだ、亡者としての最低限の権利が与えられる。
それに、救いは無い。果てなき、他者の欲望に焼かれ続けるだけの日々だ。最初は、人身売買から始まったアレ等の愚行は日を重ねる毎にエスカレートして行き、今では死者ですら弄ぶ悪食と成り果てた。
亡者も糞もない。弄べるのであれば、亡者(死者)ですら弄ぶ悪意の塊がアレ等の正体だ。何の為に、転生させられたのか知って尚……己の欲望の為に走り続ける愚か者。
対抗するために戦うというのであれば、幾らでも手を貸したというのに……残念である。
「マスター。報告が……先程、機動六課が地球に現れたロストロギアの回収に向かいました。依頼を出したのは、聖王教会です……」
唐突に現れた使い魔に、おかしな報告をされて困惑する。
それは、ファースト・アラートの後すぐにあったイベントであったはずだ。つまり、ホテル・アグスタの前に依頼されていないとおかしい話だった。
それにともない、すじゅかママ達が地球に機動六課のフォローとして帰郷する事になったらしい。本来であるならば、すじゅかママ達は地球に残っていて『なのは』達を支援するはずだった訳だから仕方ないと言えば仕方がない。
そう言った、基礎状況の変化に伴う修正なのだろうと俺は考えた。しかし、そこでとある事に気が付いてしまう。
「っ……出し抜かれたっ!管制通信。全軍に告ぐ、ミッドチルダで合流!!今すぐだ、急げ!!」
「ま、マスター!?」
使い魔の報告で、ヴィヴィオが既に凌辱系転生者に確保されている事に気が付いた俺は直ぐ様全軍に管制通信を繋げる。奴等の目的は、機動六課を地球に向かわせて主人公達がいなくなったのを見計らい【聖王のゆりかご】でミッドチルダを制圧するつもりなのだ。まさか、ここまで後手に回っていようとは思ってもいなかったが仕方がない。
『マスター!ゆりかごが、浮上しましたっ!!』
次々と、ミッドチルダに潜伏している使い魔から報告の通信が開いていく。中には、のんびりしている暇すらない事を告げる報告も混じっていた。
最悪の状況だが、短期決戦で奴等の思惑を砕くのが最優先だ。全く、面倒この上無い原作ブレイクである。
「準備は、ほとんど出来てないが……やれるよな?」
「もちろんです!」
「神崎達にも伝えろ!最終決戦だ!!」
「了解しました!!」
無限書庫から飛び出すと、サクッとリンディちゃんの執務室に寄って秘密基地と鉄を回収。説明云々を求めた鉄は、戦闘終了直後《時渡り》の可能性があるので秘密基地に放り込んで黙らせておいた。俺は、ユーリを連れてミッドチルダに向かって神崎達と合流する。
……………………。
空を巨大戦艦が昇って行くのを眺めながら、俺達は混乱の極みに至っている地上管理局を横目に立ち尽くしていた。
「影の査察官達によって、航空武装隊が出撃制限を掛けられているみたいですね……」
「本当に、都合の良い組織になり下がったモノだ」
何も出来ない地上管理局を、俺は蔑みの視線を向けて次の札を切る。空に航空武装隊が、飛べないというのであれば都合が良いと言わざるを得ないだろう。
何故なら、これから使うのは質量兵器だ。
本来なら、魔導兵装に変更して非殺傷設定を組み込む予定だったけど間に合わなかった。仕方がないので、そのまま使わざるを得なかったモノが、今は馬鹿共のお陰で使いたい放題になった訳だ。その馬鹿さ加減に、俺は感謝する。
だが、あえて言いたい。
「馬鹿め……」
「自分達の欲望の為に取った手段が、無双フラグになるなんて思いもしないんだろうなぁ……」
「そうですね!」
「質量兵器って事は、実弾を使うのよね?バラ撒いたら、重力に従って地上の人達に迷惑なんじゃないかしら?」
質量兵器使いたい放題だ!等と言っていると、翼が変な質問をしてきた。きっと、時代錯誤な勘違いから来た質問だと思われる。まあ、言いたい事は通じたので問題ないけど。要は、実弾イコール鉛弾的なイメージだったのだろう。
「翼、何言ってんの?使うのは、ビーム兵器だよ?」
『普通にファン○ルじゃない(か)!?』
神崎と翼が、ハモって突っ込んで来るけど気にしない。
地上を神崎・翼・ユーリに任せて、俺はISを起動し闘争本能を全開にして《Uranus S》を解放した。
《Uranus S》は、ISの弱点であるエネルギー問題を解決する事が出来る上に、ISそのものの機能を向上させる働きがある。まあ要するに、ISに発電機が組み込まれているってだけの話。ただし、《Uranus S》を起動させていないと使えない様になっていた。
【鮮血の】の話では、これらの機体が宇宙開拓を目的とした技術だなんて未だに信じられない。間違いなく、戦闘をやらを踏まえた技術他ならないだろう。元ネタを知らないので、断言は出来ないけれど……それだけは、言える。
「数万規模のビット(B・S)もあるから、今更なんだけどね……じゃあ、地上は任せたよ?」
『はい!』
それだけ告げて、俺は三人から機体を離していく。
ある程度、距離を取った後フルブーストで巨大戦艦右側面に移動する。そして、左アームに装備してあった【レグナム】……【鮮血の】命名。正式名:零式・重加速連動砲。即ち、重力で弾を撃ち出すレールガンの事である。重力で弾を浮かせるので、その分砲身に籠る熱量が軽くなるらしい……を巨大戦艦に向けて乱射を開始した。
音は然程しないけど、オレンジ色の線が毎秒数百と延びていく。たった一発で、巨大戦艦背上にある砲台を消し飛ばして行くので反撃はほぼ無く右側面の砲台を無力化する。
すると、下方からワラワラとガジェットが吐き出されて向かって来たけど、こちらに近付く前にビーム兵器に変更したB・Sビットによって次々と討ち取られていった。
魔導や魔法でなければ、AMFなんて驚異ですら無い。
回避力の低いガジェットは、動く棺桶とほとんど変わらない。何十、何百と巨大戦艦から吐き出されて行くけど、こちらの殲滅の方が速くて……最終的に、B・Sビットがガジェットの出撃待ちを始めてしまっていた。
「…………容赦ねーな……」
流石、レイジングハートが操るB・Sビット達である。
セットアップせずに、レイジングハートにはビットのコントロールをお願いしていた。魔法やら何やらの処理等をしなければ、その分のソースをビットのコントロールに回せる訳で……ビット3~5機に編隊を組ませて、一纏めにコントロールさせればあんな感じになる。
このビットの編隊攻撃には、バルデイッシュも一枚噛んでいて……そのままで、編隊を組ませると途中からバラバラに行動して編隊陣形を崩してしまう。故に、バルデイッシュには編隊に加えて並列処理を担当して貰っていた。
即ち、レイジングハートが誘導&攻撃担当でバルデイッシュが編隊維持&並列処理。それにより、編隊は崩れることなく敵の殲滅を可能にしてくれている。
レイジングハートは、ビットのエネルギー残量を踏まえて一斉砲火したり一発づつで敵を確実に殲滅して行く。エネルギーがヤバくなると、後方の光学迷彩で隠れている弾薬庫に帰還させて充電。そして、弾薬庫に戻したビットは充電機に繋いで、充電が終わった別の機体に変更して出撃させていた。
「編隊の数は、50程か……もう少し、追加するか?」
《No. Looking a little more state…》
「OK。まあ、過剰戦力みたいな感じだから……か?」
このまま、様子を見つつもう少し攻撃を加えて行く。
その合間に俺は、ISの武装をチェックしていた。一応、ある程度の装備は引き継がれているからわかるけど……【鮮血の】の事だ。異常な攻撃力を持つ、武装を追加していてもおかしくはない。そして、それは直ぐに見付かった。
「《Angel・Chaisar(エンジェル・チェイサー)》?」
えっと?……チェーンソーか、何かの綴り間違い?
今一わからないので、武器説明を読んでみる。
すると、その説明欄には俺のワンオフアビリティを使って連結刃を精製し、鞭の様に使うとしてあった。
「怖っ!それ、ムッチャ怖っ!!」
俺のワンオフアビリティと言えば、空間を操るというアビリティである。そんなモノを、連結刃として使用したらどうなるか想像しなくてもわかってしまう。
空間遮断イコール攻撃力の連結刃が、距離関係なく追い掛けて来るようなモノだ。しかも、先端がビット扱いとか……アホだ!アホしか考え付かない武装だった。
「《Uranus S》と《Angel・Chaisar》のセットで無双しろと?まあ、現状的に不可能ではないけど……」
過剰過ぎると言えるモノだ。ぶっちゃけ、聖王のゆりかごを真っ二つに切り裂けと言われている気がした。
不可能ではないけど……チラッと聖王のゆりかごを見て、中でふんぞり返っている転生者を思い浮かべる。ついでに、してやったりの顔も貼り付けてみた。
「うん。ぶつ切りにしよう!」
他人の資質を使って、聖王のゆりかごを浮かべたあげく、彼等が振るう能力も他人から与えられた能力。そんなクズ共に遠慮してやる必要もないと即決して俺は《Uranus S》の能力を解放した。
右側アームの先端が、変形して柄へと変化する。そして、次に現れるのは薄い半透明の蒼白いエネルギー刃が成形された。見た目は、90センチ程の長剣。何処にも、切れ目なんて見当たらない普通の両刃に見える。
「……魔力波動、検知……………………確認」
左手に見える、巨大戦艦・聖王のゆりかごに視線を向けてジッと観察する。【真実の瞳】で、ヴィヴィオがいるであろう場所を確認する為だ。程なくして、ヴィヴィオの魔力波動と生命反応を確認した。
「ビット、システムリンク…………」
右手に持つ連結刃と、自分の近くに寄せたSビットをシステム的に繋げて、連結刃を振るった時の誘導を任せる。
自分がいる場所の、反対側にリンクさせたSビットを配置して準備は整った。
アームを一振りして、エネルギー連結刃を伸ばしていく。
連結刃は、アームを振るう度に自分の周囲へと展開されて行った。ある程度、拡がった所でその勢いのまま連結刃を鞭の様にSビット目掛けて振るう。
連結刃は、俺のイメージ通りにヴィヴィオがいる場所を中央方面に避けつつ、一切の手応えすらなく素通りした。
「……………………?」
あるぇ?えっと、切れた???
不思議な事に、連結刃を獲物に当てた際の手応えが全く無かったんですけど……それに、見た目ですら変化ないから今一わからない。少し迷ったけど、俺は確認の為に艦首付近に近付いて武装を一時解。除両アームで、切れたと思われるゆりかご艦首をフルブーストで押してみた。
その結果、割りと簡単に艦首がゆりかご本体からズレて行って……俺は、ヴィヴィオがいる玉座の間をゆりかご本体から切り離す事に成功する。
「…………(´・ω・`)))」
とりあえず、ゆりかご本体を放置して艦首を機動六課があるミッドチルダ中央区画湾岸地区へと移動させる。
ぶっちゃけ、移動事態はISのお陰で簡単だった。
ただ、ゆりかご艦首を地上に下ろす際に機動六課の隊舎を一部屋分削ってしまう。けど、隊舎前の広い空間に下ろす事には成功した。
「アルカリアっ!!」
「はい。ここに!」
「レイジングハートとバルデイッシュを頼む!!」
「お任せあれ、My Master!」
何事だ!?と、機動六課の隊員がワラワラと集まって来たけど気にせず、俺は中へと突入する。外は、使い魔と預けたレイジングハート達がなんとかしてくれるだろう。実際、背後で爆発音が連続で聞こえるからゆりかご艦首から出て来たガジェットと戦闘でもしているのだと予測出来る。
そのまま、駆け抜けて途中出てきた転生者を瞬殺して、玉座の間へ突入した。
「そこまでだ!大人しく、武装を解除して投降しろ!」
再装備した【レグナム】を向けて、降伏勧告を告げる。
玉座の間には、数人の転生者とヴィヴィオ。
それから、何時か見たフードの女がいた。
その一瞬の隙を付いて、転生者の一人がフッと消える。
ゆりかご本体から切り離した事により、AMFが機能していなかったらしく普通に魔法が使える様だ。それにより、一人取り逃がしてしまったらしい。失敗してしまったが、さっきの転生者は使い魔に任せるしかない。
「動くな!大人しくーーーっ!?」
再度、降伏勧告を告げ様とした瞬間、背後の空間が揺れた様な気配がして咄嗟にスラスターを噴射して【レグナム】を空間が揺れた方向に向けて発射した。一呼吸の間に、ISの方向転換をして逆噴射する俺が見たのは、【レグナム】から穿たれたオレンジ色の線が揺らめく空間に吸い込まれて行って、中から下半身を失った転生者がキリモミしながら飛び出して来る光景。その転生者は、玉座の近くにいて逃げ出して行ったと思った人物だった。
「なっ!?…………て、てめぇ!!」
「動くな!大人しくしていろ…………残念ながら、こちらの武装には非殺傷設定なんて組み込まれて無いただの質量兵器だ。抵抗するモノには、問答無用でレールガンを叩き込ませていただくよ?」
「ふ……ふざけんな!何なんだよ、突然現れやがって……俺達の邪魔をしてっ!!」
憤慨した転生者の一人が、怒鳴り散らして来る。
「文句を言われる筋合いは無い。お前らが、無茶な事ばかりをするから“世界”に呼ばれて来ただけの《神殺し》だよ」
「か、《神殺し》!?お前が、天使が言ってた《神殺し》か!?……なんで……何で今更、神様の関係者が俺達の邪魔をするんだ!?転生させたのは、お前達だろう!?」
「違う!断言させて貰うが、俺達は神の関係者じゃない。お前達が『神様』と呼ぶ存在とは別系統の存在だ。むしろ、お前達の前に現れた天使の方が『神様』の関係者だ!」
「…………はあ!?」
「どういう事!?何が、どうなっているって言うのよ!?誰か、説明してよ!!」
ぶっちゃけ過ぎとも思える説明に、転生者達が混乱し始めた。全く、説明しろというから説明したのに混乱するとは何事!?受け入れるか、否定するか二択でお願いしたい。
「《旧・神族》と呼ばれる“天使”がいる。奴等は、自らを『神々』の正統後継者だと名乗り現存する世界を我が物にしようと企んでいる」
なんだか、変な方向に話が進んでいるような気もしないでも無いけど、説明を聞きたいという者を無理矢理殺すのもアレなので順序だてて説明していく。
「でもって、君達を転生させたのは【管理者】と呼ばれる存在だ。アレらは『神様』じゃない。アルバイトの“天使”達だ。それらに【神格】を与えて無理矢理存在を引き上げただけの『張りぼて神様』だ」
『……………………』
あるぇ?転生者達が、絶句しているような気がする。
まあ、どうでも良いので説明を続行。
「で、《神殺し》ってのは《旧・神族》と敵対し【管理者】を監視。必要とあらば、ぶち殺すのが役目となっている存在だな。【管理者】を管理してはいるけれど……まあ、敵でも味方でもない存在だよ。で、今回の転生者騒ぎは……《旧・神族》が広めた、『息抜き』?や『管理しなくても大丈夫!』という嘘八百が原因で、乱雑に複製した世界を《旧・神族》が住む世界に召喚し我が物にするのが彼等の目的だ。君達の野望が成就しても、数年で奴等に蹂躙されて瓦解するだけのお話って訳。お陰で《神殺し》は、ヤりたくもない介入と干渉をするハメになった訳よ……悪いんだけど、今すぐ野望を捨てて投稿してくれないかな?」
「…………拒否したら、どうなるのかしら?」
「……皆殺しか、魂の回収か。もしくは、生前の記憶を封印して管理外世界へ落とすかだな。後は、神様特典の破壊か……ああ、生まれてから得た能力はそのまま残るよ?例えば、魔力SSSとか……」
「…………そう。いずれにしてもそれなりのペナルティになるのね……だけど、唐突に現れた貴方の言う事情を信じる事は出来ないわ。ましてや、確認できない事柄ですもの……」
「じゃあ、RETAKEしてみるかい?」
『RETAKE!?』
と言っても、面倒なので了承しないで欲しいかな?まあ、破格な提案だから受け入れられる可能性は大だけど。
「そ、《神殺し》と出会うという特殊条件の元……生まれた所からやり直し!っていうRETAKE法があるんだけど……」
「つまり、私達に人生をやり直すチャンスをくれるって事かしら?」
「うん。破格な提案だと言えるけど?因みに、記憶はそのままにしておいてあげるよ?どうする?」
「……………………対価とか、あるのかしら?」
「無いね。そもそも、君達に僕達の存在が正しいと信じて貰う為に面倒なやり直しをすると言っているんだよ?ぶっちゃけ、こちらのメリットなんて時空管理局の正常化っていう益にもならない事柄だ……面倒なだけで、皆殺しにした方が手っ取り早いんだよね……」
「貴方、ぶっちゃけ過ぎよ!?まあ良いわ。私は、その提案に乗っても良いと思うけど……貴方達は、どうする?」
「人生のやり直しか……つまり、俺達が主人公になれる可能性があるんだな!?」
「無いよ?そっちの女性は、可能性あるけど……そもそも、【魔法少女】の世界で男が主人公になれる訳ないだろ?」
『…………………………………………』
ポカーンと、口を開けたまま転生者達は呆けた顔をする。
「君達は、何を勘違いしているのかな?【神様】が、言ってなかったか?【魔法少女リリカルなのは】の世界に転生させてやるって……」
『……………………』
「つまり、男性に転生したら主人公には成れないっていう条件が付くんだよ!だって、【魔法少女】の世界なんだよ?男が主人公になれる訳無いじゃん……」
『……だ、騙された……』
愕然とした表情で、彼等は膝を付き崩れ落ちる。
所謂、orzの格好で絶望していた。
「いやいや、気が付けよ……」
「気が付けるか!?」
さあ!サクサク終わらせるぜっ!!(面倒になったとも言う)
というか一度逃げに徹して、ゆりかごを持ち出したのに瞬殺。そんな存在に、転生者が『俺Tuee!』とか『倒してしまっても構わんのだろう?』とか考えると思う?無理だよね!
ついでに、転生者達に暴露しちゃえ!!(説得?w)
【魔法少女】の世界では、主人公は【少女】だけだと相場は決まっているんだよ!!
つーか、普通は気が付くから!!御都合主義なんて、現実にはそうそう無いって皆知ってるだろう?
さて、色々問題が片付いたっていうのに……RETAKE提案とは……双夜は、マゾなのか!?大変だったのだろう!?
天秤に掛けて、それでも腐敗した時空管理局を手掛けるのは嫌だったのか!?って訳で、次回に続く!!
ラス戦が、雑魚ッポイ理由として……亜高速戦闘を普段してる奴とvsしたら……普通にゆりかごが雑魚分類になるんだよw
しかも相手が、『マゾなの?』ってレベルの高速戦闘とかやらかしている化け物達だよ?
それに対するは、軌道上まで数時間掛かるゆりかご……ぶっちゃけ、相手になるはずがない。マクロスのバルキリーとvsしているラピュタみたいなモノだwwww
バリア無し、高速回避無しの戦闘なんて止まってる的当てゲームだよねw ついでに、防御無視の空間断裂連結刃とかw
ガジェットに対して、ビーム兵器を搭載したビットとかw
AMF意味ねぇwwww
『ちょ、おまっ、世界観無視すんなや!!』って感じにw
あー、笑った笑ったwwww
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m(_ _)m
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