絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一二九話

神崎

 

 

本来なら、StrikerSの時期に突入した。

まあ、八神はやて率いる機動六課は設立されたし、フォワードの新人達も入隊したのは間違いない。ただ、敵のはずであるジェイル・スカリエッティが原作前に捕まって師匠のアーティファクトで改心してしまってはいるけど。

俺は、今も地上管理局で嘱託戦士として活躍していた。

まあ、トーレやシグナムが良くバトルしに来る以外は平和なモノで……師匠の無限書庫の方では、クアットロとウーノが色々と手伝ってくれているらしい。

ジェイル・スカリエッティは、何処かの衛生拘置所で『ロリ~ロリ~ロリ成分が足りないぃ~』とか言ってる以外は至って平和だ。他のナンバーズも、更正施設を出てナカジマ家や聖王教会に引き取られて今は生活している。

なんで、ナカジマ家や聖王教会かと言うと俺がレジアス中将を説得した訳ではない。師匠が、ゼスト・グランガイツとルーテシア・アルピーノとおまけアギトを連れて帰って来たのが全ての原因だ。全く、いったい何時からストーキングしていたのかは不明だけど……ジェイルを捕まえたんだから、問題ないよね!とメガーヌさんまで復活させて、今はナカジマ家の近くに住んでいるらしい。

それからゼストは、強制的にアルピーノ家に突っ込まれた。その時の師匠は、間違いなく暴君だったと言える。

 

『そのまま、結婚してしまえ。ルーテシアには、父親が必要だ。異論は、認めない……あ?文句があるなら、模擬戦で僕に勝ってから言って欲しいモノだ……』

 

まあ、流れ的に模擬戦になったのは当たり前で……ゼストが、薙刀を持った本気の師匠に赤子の手を捻るように、簡単に撃破されたのは最早ギャグとしか言いようがない。

開始直後から、問答無用だった。ゼストが、オーバードライブを使っているのに全く意を介した様子もなく淡々と攻撃をいなし、返し、払って、突いて、斬ってとチートっプリを披露してくれた訳だ。見た目、9歳程の子供に良いようにあしらわれたゼストは、撃破後メッキリ意気消沈してしまって隠居暮らしを始めてしまったのも仕方ない。

最近では、レジアスやオーリーさんが戻って来るように説得しに通っているらしい。

全く、師匠にも困ったモノだ。

 

 

 

そして、今現在。

 

目の前には、師匠が腕を組んで座っていてお悩みモード。机の上にある、菱形の青い物体とにらめっこをしていた。

ここは、時空管理局の無限書庫にある一般公開用の資料室である。リンディさんに用があったので、寄ってみた訳なのだが……何だろう?少しだけ、興味が湧いてしまった。

膝の上には、かなり分厚い本が乗っていてそれを親の仇みたいに睨んでいる。背後から覗き見た感じでは、何かの説明書の様に思えた。兎も角、声を掛けてみる事にする。

 

「それ、何ですか?」

 

「ん?神崎か……さて、なんだろなぁ……」

 

あの師匠が、微妙に黄昏ていて影を引いている。

これは、何となく覚えがあった。そう、【組織】からの依頼やモニターを言い渡された時の様な感じである。

という事は、この菱形の物体はそれ関係と考えるべきなのだろう。この場に、居合わせた事を少し後悔する。

いや、まだ後悔するのは早いかもしれない。ここは、六十八計逃げるが如しって事で静かに立ち去ろう。

 

「神崎、インフィ○ット・スト○トスって知ってるか?」

 

「はい!存じております!!」

 

クソッ!逃げ遅れた!!ってか、IS?来栖川や遠藤に与えたスパ○ボの機体のアレだよな?それが、今更戻って来たのだろうか?

 

「アレとは、別件だ。【鮮血の】が、新しいのを造ったから試しに動かしてみて欲しいと依頼された……」

 

「テスト運転ですか?それなら、やってみれば良いじゃないですか?何を迷っているんですか?」

 

「完全なオーバーテクノロジーだろうがよ?だから、どうしたものかなぁ……って思ってなぁ……」

 

しかも、Uranus Systemというモノが乗っかっているらしい。Uranus Sと言えば、スパ○ボでヒッケバインとかトロニウムエンジン搭載型の機体に異星人が組み込んでいた念動力増幅システムだよな?この場合のUranus Sって、何を指すシステムなんだろう?

 

「Uranusは、搭乗した者の闘争本能に反応してパワーアップするシステムの事だ。アレが起動した後のISは、キチガイだぞ?」

 

闘争本能って……武装錬金の核鉄か!?そう、聞いてみたところ……それはそれで、別にあるらしい。

 

「あるんだ……核鉄……」

 

「まあ、使った事はあるが……《神殺し》の戦闘能力に耐えきれず、砕けちゃった……」

 

「ああ、でしょうね……」

 

神速が基本の《神殺し》戦、耐久度がある武装では意味がないらしい。しかし、耐久度の無い武器なんてあるのだろうか?……まあ、あるんだろう。でなければ、戦えれるはずもない。基本的に、キチスペックだもんな《神殺し》は。

師匠は、分厚い説明書(辞書レベル)を閉じると菱形の青い物体を手に取る。それを持って、去って行った。

このまま、逃げても良かったのだろうけど興味の方が勝ってしまった俺は師匠の後を付いて行く。

師匠は、リンディさんの執務室に戻ってしまった。

成る程、秘密基地内で装着するんだなと推測した俺は一緒にリンディさんの執務室に入って、普通に挨拶をしてから秘密基地内へと入った。

師匠は無言で進み、広間を通って普段は使わない電子錠のある扉の前に。俺は慌てて、師匠の後に急いで共に中に入った。そこは、狭くて薄暗い階段と通路が続くモノでとてもISが展開出来る様な場所じゃ無い。

だが、師匠は気にもせずにドンドン進んで行く。

すると、大きく広い拓けた場所にたどり着いた。

バツンという音と共に、明りが灯りその場所を照らし出す。拓けた場所と思っていたそこは、巨大な格納庫のような場所だった。入って直ぐの右手方面に、綺麗に並べられたマクロスバルキリーが……あれ!VFー19か!?ヤバイ!テンション上がってきたぁ!!つい、ヲタク魂に火が点いてVFー19が置いてある場所に駆け寄ってしまう。

 

「VFー19が、珍しいか?」

 

「これ、動くんですか!?」

 

「……燃料を抜いてあるから、動かないよ?それに、整備もしてないし……」

 

「ちょっと、触ってみても?」

 

「電源は入ってないけど、乗ってもいいよ?」

 

「アザース!!」

 

俺は、ヒャッホーと一通りVFー19の外周を見て回ってからコックピットを覗き見る。コックピットのハッチは、普通に開いていたのでそこから中に入ってみた。

両手で、操縦菅であるグリップを握って引いてみようとするがビクともしない。

 

「師匠、動かないッスよ?」

 

「ロックが、掛かってるからな!」

 

「ああ、なる……」

 

って事は、操縦体験は出来ないという事か。

それでも、ヲタクには堪らない体験だった。

まさか、熱気バサラと同じ(制作者は別)機体に乗れたんだ。興奮しないはずが無かった。

 

「ヒャッハー!俺の歌を聞けぇ!!って、言葉だけなら言ってたんッスけどねぇ……」

 

「アニメか?マンガか?」

 

「アニメッスよ?ああ、それにしてもVFー19……いいッスよねぇ…………」

 

「そうか?癖があって、試乗の時は大変だったんだけど……」

 

「ああ、そういう設定でしたもんねぇ……」

 

そこまで、忠実に再現した訳か……流石、わかってますね!【鮮血の】さん!!全力で、趣味の産物だった。

 

「……………………」

 

師匠を見ると、何やらとても嫌そうな顔をしていた。

まるで、『このヲタク共は……』と今にも言い出しそうな顔をしている。そこら辺は、【鮮血の】さんに言ってください。決して、ヲタクだから……いや、ヲタクだからこそ設定に忠実なのか。あ、師匠がまだこっちを見てる。

もし、俺が異端技術を得ても似たような事をしそうだったので、否定出来ずに視線を反らしてしまうのだった。

 

「そ、そう言えば、ゆりかごはどうしたんですか?」

 

段々、居たたまれなくなって来たので無理やり話を変えてみた。露骨過ぎたかもしれないけど、師匠は気にしないだろう。それに、こればっかりは興味のある話だろうし。

 

「ゆりかご?ああ、聖王のアレな……ジェイル捕まえたし、最高評議会もいないし、放置しているけど?」

 

「…………前みたいに、転生者に利用されるとは考えなかったんですか?」

 

「……………………」

 

師匠が少し焦った様子で、ウィンドを開き何か指示を飛ばしている。何でこの人は、たまに致命的なミスをするのだろうか?まるで、遠坂凛みたいである。

ここ一番って所で、ミスをする所なんか完全に似ていた。

 

「態と?」

 

いや、きっと……次世界のバイオハザードで、忘れたのかもしれない。あれは、インパクトあり過ぎたもんなぁ……。

ある程度、遊んで満足した俺は師匠の元に行こうとしてガン○ムSEEDに出てきたアストレイを発見する。待て、アストレイがあるって事は……フリー○ムが、あるんですか!?っと少し探してみた。しかし、フリー○ムは発見できずアストレイだけが格納庫に収用された状態で仁王立ちしている。なので、師匠に断りを入れるべく声を張り上げた。

 

「師匠!アストレイもいいッスか!?」

 

「そっちは、動くから外周のエレベータを壊すなよ?」

 

「ういッス!!つーか、起動ディスク抜けばイケるんじゃないんッスか!?」

 

マク○スのバルキリーが、そうだったので聞いてみるがどうやらガン○ムは起動ディスクに対応していないそうだ。

つー訳で、アストレイに搭乗してみました。コックピットに入った瞬間、電源が順次入って行って大興奮してしまう。一応、ロックが掛かっていたので動かせはしなかったけど……頭部に付いてるガトリングが発射されて超ドン引き。

何故、実弾が!?と思ってたらペイント弾でした。

でも、勝手に動かした事とペイント弾で汚した事について叱られて、早々に引きずり出された俺は半ば強制的にペイント弾の掃除をする事になる。

それでも、普段は出来ない体験に興奮冷めやらぬまま掃除は終了。今度こそと思ってたのに、ヒュッケバインMkーⅢを発見。クソッ!なんだ、この宝箱は!?全く前に進め無いじゃないか!!しかも、ガンナーも発見。

ヤバイ!乗りたい!!合体させてGインパクト・キャノンを撃ちたい!!

 

「つーか、これだけあれば……ゆりかご、敵に使われても問題無いんじゃねぇ?」

 

運用に問題はありそうだけど、普通に撃沈が可能の様な気もしてきた。しかし、ヒュッケバインMkーⅢは量産型でガンナーはハリボテなんだそうだ。武装もショボいレベル。

 

「何で、ブラックホールエンジンじゃないんだ!?」

 

「プロトタイプは、ブラックホールエンジンだったよ?」

 

「ガンナーの中身は!?」

 

「飾りなんだから、必要ないだろう?」

 

とのこと。

ヲタク魂を、徹底的に裏切ってくれた師匠だった。

 

「ただのガラクタじゃないですか!?」

 

「僕、魔法使い。必要ない!!」

 

その日、俺は魔法万能理論と事実にムッチャ泣いた。

何あれ……ほぼ、出来ない事が無いってどういう事!?魔法と科学をフリジンして、魔法科学持ち出して来た辺りから俺の知る魔法や科学とは全く違うモノになってしまっていた。しかも、【王家の船】が実は魔法科学の産物って……ISのコアが、賢者の石だと言われてしまった時は頭がおかしくなるかと思った。唯一の救いが、ガン○ムとバルキリーとかの普通にイケる分だけとか言われても……(泣)。

とりあえず、ちょっと無茶振りの無理矢理感のあるモノには魔法科学が使われているんだそうだ。

特にISのコア……あんな小さなコアに、重力制御システムや諸々を組み込むのは不可能に近いとのこと。

そう言われてしまえば、確かに無茶振りだとは思える。

だが、そんな謎システムを持ち出されても困るだけだ。

とは言え、動くんだから仕方がない。

 

「まあ、魔法科学はもう良いです。諦めます。それよりも、ゆりかごはどうするんですか?このハリボテや量産機では太刀打ち出来ないでしょ?」

 

「IS第三十五世代型を使うっていうのは?」

 

「新型機ッスね?35世代?ああ、透け透けのパワードスーツッスか…って、透け透けじゃ無いじゃないですか!?」

 

「32世代型を試着した女性達からクレームが嵐の様に来たそうだ。だから、ある程度は仕方がないと諦めて外装を取り付けたんだと。でも、それだけじゃあアレなんで……エネルギージェネレータやその他諸々を最新ヴァージョンでリティクしたんだってさ……」

 

「スケスケ見たかったッス!」

 

「……ポアン・レイグ・アグレイが装着して、虐殺が行われたそうだ。ある意味、地獄の装着式になっただろうな」

 

「ポアン・レイグ……?誰ですか?」

 

「《神殺し》の武術を広めている最強の女剣士だ」

 

「ああ、クッコロの女剣士ですね!」

 

「クッコロ?なんだそりゃ?」

 

「えっとですね……」

 

師匠に通じなかったので、『クッ……殺せ!』の18禁女剣士を教えてみた。すると目を丸くして驚いて、視線を外し難しい顔で沈黙したと思ったら……何故か、謝られる。

 

「悪い。どうも、その18禁のクッコロ女剣士のイメージと、あの女龍族のイメージが重ならない……」

 

と言われる事に。その女剣士さん、一体どんな人なんだろうか?一応、一通り話を聞いてみて俺が思った事は……現実と二次元の差が、圧倒的に開き切っているなぁ……という事だった。女剣士、怖っ!!マジ、恐っ!!師匠の知る、最強の女剣士さんマジ恐いッス!!少しでも、軽口や悪口言ったらバッサリ斬り捨てられるってあり得ないッスよ!?

その中でも、決して口に出来ない禁句が三つもあるんだそうだ。もし、その禁句を言ったりしたら空間を飛び越えて斬撃が飛んで来るそうな……。

 

「なんつー、恐怖政治……俺、師匠と旅してて良かったッス。いや、マジで!普通に、セフィロトになんて行きたく無いですけど……行かなくて、良かったぁ……」

 

「……と、神崎はセフィロトへの召喚フラグを建てたのであった。そして、彼は地獄を体験する……」

 

「変なナレーション止めてください!洒落になってないです!!本当になったら、どうするんですか!?」

 

「今度、セフィロトに行こうと思うんだ。そろそろ、物資が心許くなって来ているからな……嬉しかろう?」

 

師匠が、邪悪な表情でニヤリと笑い掛けて来る。

アカン!こうなったら、この人は絶対俺をセフィロトに連れて行く!!そう、最近メッキリ使う事が無かった危機感知能力が囁いて来た。ガックリと諦めて、俺はセフィロト行きを覚悟する。とりあえず、厄介な人に絡まれませんように…ダメだ。何を言っても、フラグになりそうだ。orz。

 

「後で、セイビヤに連絡入れとくね?」

 

「トラブルメーカー来たーーー!!!」

 

俺の運命は、変わらなかった。フと思い出すのは、あの名言……『ニィーチェは言った、「神は死んだ」』……と。

ーーあ、いや、俺……今は《神殺し》だった。

クッ……何て悪夢。まさか、この名言のボケが封殺される日が来るとは思いもしなかった。

チラッと師匠を見ると、人の気も知らずにISを装着している所で、コンソールを展開して何やら調整をしている。

 

「起動……オート・フォーマット……」

 

「あれ?専用機なら、フォーマットなんてしなくて良いんじゃ無いですか?」

 

「僕が、分体で無ければそれでも良いんだけど……」

 

「あ、そっか……師匠は、分裂してたんですよね……」

 

「その言い方だと、スライムであるかの様に聞こえるんだが……何なら、召喚してネチッこくマッサージして貰うか?ヌルベチャになるけど……」

 

「遠慮しておきます……」

 

女性が、スライムに絡まれているのを見るのは好きですが、男がスライムに絡まれているのは勘弁して欲しいです。

 

「それなら、月村さんにけしかけたらどうですか?」

 

「スライムを?すじゅかママに?」

 

「はい。怯えて寄って来なくなりますって!」

 

「発情して、手が付けられなくなりそうなんだが……」

 

「…………スライムに崔淫効果なんてあるんですか?」

 

「あるよ?」

 

お前、何言ってんの?常識だろう?みたいな顔されても、そんな常識知らねぇよ!!今、初めて知ったわ!!

獲物を捕獲して、食う時に獲物を気持ち良くして『もう、食べられても良い!!』と思わせるんだそうだ。その際にスライムは崔淫剤を獲物に投与する事があるんだと。

スライム、怖ぇ……。

 

「師匠と話してると、予想外の知識が得られるんでムッチャ恐いッス……」

 

「なんだそりゃ?」

 

最強の女剣士しかり、スライムにしかり。

当人は、わかってないッポイけど……基本的に、そんな知識は持ってないのが当たり前だ。まあ、《神殺し》みたいに多種多様な世界に行くのであれば必要なのだろうけど……普通にはない知識だから!当然の様に、話し出さないで欲しい。全く、《神殺し》達はどんな教育を師匠に施したのだろうか?絶対、まともな教育では無いはずだ。

セフィロトに本当に行く事になるなら、そこら辺をちゃんと聞いて見たかった。って感じで、フラグを建てて置く。

 

「それで、フォーマットは終わったんですか?」

 

基本的に、透けて見えるので変化した様には見えなかった。形がハッキリしているのは、師匠を覆うボディースーツみたいな外装だけである。

 

「……うん。フォーマットは、終わったよ。Uranus Sは、通常稼働中だ。じゃあ、衝撃吸収室に行こうか?」

 

「???衝撃吸収室?」

 

という訳で、師匠に連れられて格納庫(?)から通路に入ってしばらく歩き上がったり下がったりして着いたのは、一面ブヨブヨした弾力があるスポンジ(?)みたいなのが張り付けてある部屋だった。

広さは、ちょっとした東京ドームくらいあるだろうか?

 

「なんッスか?ここ……」

 

「どんな衝撃も吸収出来る部屋さ。お前は、そっち側にある管制室に入って見てろ。さて、試運転の時間だ!!」

 

そう言って、師匠はその部屋に入って行った。

俺は適当に歩いて、師匠の言った管制室とやらに入室する。そして、電源ボタンを入れると機体に振り回される師匠がメイン画面に映った。それを見て、俺は目を疑う。

あの師匠が、機体を上手く扱えなくてあっちこっちにぶつかっては弾き飛ばされていた。

 

「つーか……神速?」

 

師匠は、そんな風に思ってしまうほどのスピードで移動していた。俺が、自分の目で確認出来るのは衝撃吸収スポンジに当たった時の一瞬だけで後はほぼ見えない。

 

「これ、要は点で見えてるって事なのか……?」

 

ハンターハンターのリアルゲームで、ゴン達がマリモの様な生物を捕まえようと頑張っていたアレに似ている。同じ要領であるなら、線となる部分は見えていないからやっぱり点での確認だろう。神速を使って見ても、影みたいなモノが見えるだけで師匠自身を捉えられない。

きっと、ISの出力が師匠の制御範囲を遥かに超えているのだと思われた。

 

「あれ、作ったの【鮮血の】さんだよな……」

 

もはや、人が乗る事を想定していないかの様だ。

あんな欠陥品作って、何がしたいのかもう俺には判断着かなかった。その後も師匠は、スーパーボールの如く跳び跳ねる様に飛び続け……数時間後、エネルギー切れで墜落する。つーか、アレどう考えても使えないだろう!?

師匠が、退室したので慌てて管制室を出て駆け寄った。

 

「師匠、無事ですか!?」

 

「ああ。なんとか、無事だよ。とんだ、じゃじゃ馬だ……」

 

じゃじゃ馬どころの話ではない。

ハッキリ言って、ただの欠陥品である。

 

「Uranus Sを、常時起動させる事を前提に作ってあるからな……通常モード時は、制御が今一になっているんだ。で、俺達テストパイロットに求められるのは、そんな欠陥品を乗りこなす技術を得る事になる……」

 

「マジッスか……そんな、シビアな世界なんですか!?」

 

「お前……バルキリーのVXシリーズに乗ってみろ……」

 

「VXシリーズ?」

 

「アレこそ、人間が乗る事を想定してないから……出撃後、直ぐ障害物に当たって落ちるんだぞ!?」

 

「うわぁ……」

 

「いったい、何体ゴミにしたかわかるか!?」

 

「えっと……10機くらいかなぁ?」

 

「三百機以上だww」

 

「想像以上だった……」

 

【鮮血の】さんが、何度も泣いたそうだ。

丹精込めて作ったのモノを、次から次へと壊す仲間達に号泣したとか師匠が言っていた。楽しかったー!とのたまる師匠が、鬼過ぎて俺も泣いてしまう。VFー1機の大量生産機だったとしても、あの夢のVFー1機なんだ!

それを、ワザと壊したと聞けばヲタクは誰でも泣く。

ワザと壊すくらいなら、俺達に譲ってください!と。

とりあえず、セフィロトの話を聞くたびにモッタイナイと思うので、話はそこそこに切り上げて俺達は広間へと戻るのだった。

後日、鉄をここに連れてきたら……師匠が、衝撃吸収室に入って訓練している間にアストレイを動かして格納デッキを破壊してしまう。それを見た師匠が、本気で怒り出して……その怒りに反応したISが、Uranus Sで覚醒モードを起動して紅い天使が降臨した。

しかも、師匠のワン・オブ・アビリティーが発動して空間を飛び越えると、鉄をアストレイから引きずり出して今後似たような事をするなら虚数空間に落とすからな?と脅す。鉄も、流石に自分のした惨状を目の当たりにして反省したのか小さくなって謝っていた。

その後は、Uranus Sを起動させてコツを掴んだのかアッサリISを操れる様になった師匠は、魔法や武術をも使ってその機能を確かめている。IS装着したまま、《神殺し》の奥義を幾つか見せて貰ったけど……ヤバイ。本気になった師匠に、勝てる気が全くしなくなった。

天空を舞い翔ぶ炎の鳥、『朱雀・鳳凰飛翔天駆』。

空を裂いて突き進む波動砲、『青龍・衝烈撃昇波』。

ありとあらゆる物を切り裂く爪、『玄武・獅子死線』。

大地の龍を纏いて穿つ、『白虎・白皇真一閃』。

もはや、常識の範疇に収まらないエゲツない業だった。

その後に見せられたモノは、神速の攻撃から織り成される無限の技。師匠は、適当に【無限流】と呼んでいるみたいだけど……アレは、ガチヤバイ。ISが、耐えきれずにエラーを出してたくらいだから相当な負荷が掛かったのだと思われる。つーか、あのISに負荷を掛けるってどういう技ですか!?モード・Uranusでも、エラーになってたのが頭おかしいとしか言い様がない。

 

「ただの危険物が、あそこにいるんだが……」

 

「止めろ、鉄。師匠に聞こえる……つーか、アレでも耐えられない技が使える師匠の底が知れない……」

 

「もう、ロストテクノロジーとかで良いと思う……」

 

「俺の目標が……段々、遠退いて行ってる気がして来たよ」

 

「お前の目標って、アレ?」

 

鉄が、俺の目標を知って少し引いていたけれど……とりあえず、あの人の足下辺りまでは至りたい。目標を下方修正しつつ、ラヴォルフ師匠達の修行を頑張ろうと誓いを新にした。まあ、かなり難しいだろうけど。

何事も、やってみない事には結果はわからない。

 

「よもや、【組織】の中でも上位に位置するマスターに届きたいとは……」

 

そう、考えていると隣にポップしたのはテオルグさん。

 

「て、テオルグさん……え?でも、下から数えた方が早いって……前、言ってませんでした!?」

 

「純粋に、武術のみで言えば……かなりの上位者ですよ?ウチのマスターは……特に、薙刀と徒手空拳に関しては……」

 

その疑問に答えてくれたのは、ラヴォルフさんだった。

 

「神崎さん、骨は拾ってあげますので頑張って下さい!」

 

物騒な事を言い出す、鉄がうざい件。

ただの居候が、生言ってんじゃねぇよ。

第二のディアーチェ状態の奴が!!

 

「ちょ、ま、マジで!?せ、せめて、隣は無理でも足下には行けますよね?」

 

「…………それは、両手剣での……話ですよね?」

 

「マスターは、薙刀か槍か徒手空拳ですよ?」

 

「…………いや、それは……今更、路線変更はちょっと……」

 

「いえいえ、技術的な面を……と言っているのでしょう」

 

「成る程、技術的な面でマスターに並びたいと……」

 

『……………………』

 

ラヴォルフさん達が、沈黙状態で考え込んでしまった。

何となく、言われる事はわかっていたので俺も黙っていたのだが……少しだけ、違う事を言われる。

 

「無理ですね。今のままでは……」

 

「そうだな……今の三倍は、訓練しないと届かないだろうしな!」

 

二人に笑いかけられて、ポンと肩を叩かれて見れば二人の邪悪な良い笑顔だった。それを見て、脳裏を過ったのは『守りたいこの笑顔』って言葉。……じゃ、ねえよ!?

前世であるなら、ほぼ間違いなく書き込んでいたかも知れないけど、今ここでは不適切な言葉である。

 

「ああ、平穏が……」

 

『諦めて下さい!』

 

ハモられた。

段々、イメージしていた未来と現在が重ならなくなって来たけど……仕方がない。郷に入れば郷に従えというし、諦めて頑張るしかない。一瞬、夢見た師匠と俺の双璧によるチート三昧の日々は一先ず棚の上に上げて置いて、最強への階段をゆっくり登って行くとしますか。

 

 

 

 

 




インフィニット・ストラトス+スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーション+武装錬金を合体させてみましたww
IS+ Uranus S+闘争本能で、Mood・Angelが……双夜の機体は、深紅のエネルギー翼を持つ連結刃ヴァージョン。ワンオフもあるよ?でも、りりなのの世界では使えないワンオフだねww
殺傷力が高過ぎるww
なんだよ……空間を断裂する能力ってww
防御不可とか、止めて!!

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも読んでくれる方々に感謝を……。

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