絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一一五話

Re:

 

 

面倒さレベルが、一定ランクを超えた頃……漸く、原作人物達が到着した。だが、既に転生者のほぼ全員(?)を神崎達が拘束して、使い魔の手伝いもあって入口付近に集められている。そのままだと、後々面倒になる可能性もあったので、特典を《ルール・ブレイカー》でスキルブレイクして削除し、弱体化&無能力状態で管理局が引き取れる様にした。更に、原作人物達が到着するまで時間があったので、世界の裏話も語り聞かせて見たところ散々文句を言っていた馬鹿達は何も言わなくなってしまう。

 

「あるぇ?さっきまでの元気は何処へ?」

 

現実を理解出来なかったハズなのに、唐突に黙り込んでしまった転生者達。なんで、黙り込んじゃったのかな?

 

「無理ですって、スキルブレイクして正気に戻した所へ、裏話というネタバレをしたら……誰でも黙りますって……」

 

「魔法少女の世界で、主人公になりたきゃ少女に転生しなきゃならないって言っただけじゃん……」

 

一番にそれを告げたら、信じられないモノを見るような眼で俺を見ていた。その後、しばらく黙っていたけど段々顔を青くして納得と同時に絶望感に堕ちて行ったみたい。

 

「それ、結構洒落になりませんから……」

 

「イケメンを願って、美少女にw 当然、自分達がロリコン共の性処理対象になるって言っただけじゃん!」

 

「主人公に成れない理由を教えた所へ、更に精神ダメージの追加をしちゃ立ち直れなくなりますから!!」

 

現実を教えた所で、更なる可能性を教えたら完全に沈黙してしまった。どうやら、本当に自分達に都合の良い世界へ来たのだと思っていたらしい。

 

「ついでに、インスタント・ソウルの話や【管理者】の真実……裏特典という悪辣さを教えただけなのに……」

 

「アニメの世界に転生したと思ってる方々に、現実を直視させたらそうなりますって!」

 

実は、転生者が全員では無いけど元の人格と記憶をコピーしただけという現実は衝撃的だったみたいだ。

死んだと思っていたのに、実際は死んでなくて人格と記憶をコピーして別の魂に書き込んだだけの粗悪品だという現実は彼等にとって根底を覆すには十分だった。

 

「そもそも、アニメの世界に転生した場合……物語に関われる訳ないだろう?始まりと結末が決まっちゃってるんだから……それに、君達がしたのは【転生】なんだよ?転生の意味知ってる?生前の記憶があったって……神様から特典を与えられていたって、生まれ直して最初からやり直しをしているんだよ?生前とは関係のない他人の人生だ。基本的な積み重ねを初期化して、元の自分とは関係ない新しい他人としてやり直すのを転生っていうんだ……意識が同じだったとしても、元の人生の延長線じゃ無いんだからね?」

 

「わかってますって!自覚は無いでしょうけど、みんな一応わかってはいるんです。実際に体験すると、意味不明過ぎて別の意味にすり替えてしまいますけど……」

 

わかってないから、言っているんだよ?幾度言っても、神崎自身転生したという現実は夢現と同義だったらしい。

 

「すり替えんな!ゲーム感覚でいるから、こういうアホな事が出来るんだ。お前ら、元の人生のままだったら……こんな事しているか?」

 

まあ、普通ならしない。

 

「してませんて……やったら、警察に捕まります」

 

「そ、警察に捕まる。だけどこの世界では、【管理局】っていう名前が違うだけの【警察】と同じ意味合いの組織に捕まるんだ。これが、現実だ。わかってる?」

 

「実感が、薄れるんですよね……転生という、非現実を体験したばっかりに人生そのモノが最初よりも軽くなるんです」

 

転生者達の様子を見る限り、今一こちらの言葉を理解しているのかわかり辛いが聞いてはいるみたいだ。

 

「やっぱり、生前の記憶を消去した方が良いのかなぁ?」

 

「や、原作知識だけ……消した方が良いかもしれません」

 

「えー……面倒。いっそうの事、記憶を初期化した方が良いかもしれない……ついでに、妖精魔法(真)の《リヴゥフロー》で幼児に戻せばOK。それで、良いんじゃないか?」

 

イライラしつつ、適当に提案と指示を出して行く。

 

「vividに出てくるんじゃあ……」

 

「ヴィヴィッド?じゃあ、ミッドチルダ以外の管理外世界に棄てて来いよ……無人世界でも可!」

 

『ヒイィッ!?』

 

ああ、もう!!なんで、こんなに面倒な存在なんだ転生者という輩は……殺してしまった方が、問題解決が早いような気がしてきてしまった。

 

「……………………師匠。もしかして、何か焦っていますか?」

 

「元凶をブチのめしに行きたい。もう良いよね?後は、任せても!僕は、【外】に行って他の《神殺し》と共に【管理者】をブチのめして来るから!!」

 

「あ、はい。どーぞ……」

 

「あ!鉄翼刀は、地上でアルカリア達が確保したから気にしなくて良いよ?だから、ヴィヴィオの事……よろしくね、なのはママ!!」

 

「……うん!任せて!!」

 

なのはママ達が、ヴィヴィオ救出の為ゆりかごの奥へと飛んで行くのを見送ってから、俺は存在の維持を放棄する。

 

 

 

 

 

瞬間、目覚めるのは意識を戻した本体の俺。

己を封印している棺と、それを固定している四本のボルトをゴカッ!ゴカッ!!と外して棺の蓋を吹き飛ばした。

ゆったりとした動きで、大理石の床に降り立つは虹色に輝く12対の翼を展開し環を頭の上に浮かべた……天使(?)。

天使じゃない!中身は、極悪非道の魔王だけど!見た目!見た目が、天使の様に見えるってだけの似非天使っ!!⬅必死w

魔力の塊である翼を広げて、その一部の翼を戦闘用の衣服へと変化させた。そして、外へと直通になっている通用口から船外へと飛び出す。【鮮血の】が、最後までカタパルトを着けたがっていたけど、平らな大理石の床が続くだけの通路になっている。

俺が使用している船体は、凡そ150メートル程の小さな機体だ。まあ、例によって中は船体とは比べようの無い広さではあるけれど……言うまでもなく、【王家の船】と呼ばれている何かの模倣品だ。

普段であれば、この中で生活をしているのだけど……仕事中は、今のように俺を棺の中に封印するだけのモノと化す。

外に出で、まずは【時の回路】と呼ばれる場所を目指す。

そこから、天の杯を通って世界樹を登り、雲石の草原を抜ければ天の門がある。門を抜ければ、【管理者】達が仕事をする『天界』等と呼ばれる空間へと至るのだが。

眼前に、ワラワラと涌いて出て来るのは《堕ち神》とおぼしき黒いシルエット。どうやら、【管理者】達が逃れる為に召喚した時間稼ぎの様だ。

 

《Access‼》

 

ーーシステム起動、魔術回路接続……

 

ーーシステム変更。通常モード ➡ バトルモード、移行

 

ーー出力、インフィニティ……魔王モード

 

ーー太陽波、魔力変換……

 

ーー全能力、開放……リミットブレイク

 

ーールール・ブレイカー起動、【理】撤廃

 

「フン!」

 

空間諸とも、指で掴んで捻り伸ばすように世界を分断する。捻伸ばされた空間に、黒いシルエットは輪切りの様にバラバラに分断された。そのまま勢いを落とさずに進む。

すると、空を覆い尽くさんと黒いシルエットが翼を広げて飛んでいた。無駄なことを。

 

「だから……」

 

面倒だったので、空間事握り潰した。

片腕を突き出し、開いていた手を握る。それだけで、空を覆っていた黒いシルエットの大半が消失した。

 

「今の俺には、足止めなぞ……意味も価値もないっ!!」

 

【時の回路】を駆け抜けて、天の杯を通り世界樹を飛び越える。雲石の草原は、加速術式を展開して眼前にはプロテクション。轢き逃げ上等の大加速にて、『天の門』へと至った。天の門に至るまでに、何かに当たった気はするけど何に当たったかは不明。当たった方(?)には、運が無かったと諦めて貰うしかない。

 

門を抜けて、【天界】に入ると働いていた【管理者】達が『ギョッ!?』とした顔で俺を見た後、ワタワタと慌てて逃げ出して行く。

 

「おらぁ!サボってる奴は、いねぇがああぁぁ!?」

 

『ぎゃあああぁぁぁーー!!!』

 

なまはげの要領で、怒鳴り叫んでみると其処らかしこから悲鳴の様な声が上がる。何柱かが、休憩室から飛び出て来て自分の持ち場へと戻って行った。

 

「転生者ゲームで遊んでいるアホ共!断罪しに来てやったぞ!?テメェ等は、問答無用で断罪対象だ。神権剥奪なんて生っチョロイ事は言わない!!潔く、死に去らせ!!」

 

瞬間、『ギョッ!?』としていた一部のアホ共がワラワラと逃げ出した。それを見て、『うわぁ……あんなにいるんだぁ……』と思ったのは内緒。

呆れを通り越して、ドン引きしてしまった。

兎も角、内側でマーキングした【管理者】の元へと跳ぶ。

【理】撤廃により、移動にルールが無くなった俺は……ただ、望むだけで目的地に至る事が出来るようになっているのでとっても楽だ。

目標である、【管理者】の元に辿り着いた俺は数柱の【管理者】を視る事になった。俺の突然の来訪に、超慌てている数柱の【管理者】達は一様にその場から逃げ出そうとする。しかし、魔王モードな上にバトルモードな俺から逃げ切れるはずもなく最初の一柱は問答無用の《ニーベルンヴァレスティ》で撃ち抜かれた。

 

「我等、《神殺し》の邪魔をした上に賞金を掛けたのはお前らか!?恥を知れっ!!」

 

羽根を一本抜いて、槍へと変化させる。

瞬間、青白い火花を放つ《グンクニル》と変化したそれを俺は穿ち放った。それは、逃げ出した【管理者】の何柱かを呑み込み消滅する。

次にやったのは、空間をネジ曲げて手を突っ込み逃げ出した【管理者】の一柱を引きずり出して【神権】を剥奪した後、魂を破壊して散らした。

 

「その上、己の立場を護る為に【転生者】に協力したな?……この、うつけ共がっ!!」

 

次の柱を捕まえようとしたところで、黒い獣が襲い掛かって来た。アホ共が、俺から逃れたいが一心で人工的に造った《堕ち神》と思われる。

しかし、それを一睨みだけで消滅させて先程と同じ様に空間をネジ曲げて逃げた柱を捕まえ引きずり出す。

 

「そんなに《堕ち神》が好きか?なら、我【闇】を分けてやろう。何、ホンの少しだ……変質までは行かぬさ……」

 

『あ、ああ、あ、あ、ああぁーーー』

 

その柱は、面白いほど簡単に黒く染まって《堕ち》て行った。【神権】も剥がれ堕ちて、ただの眷族と成り果てる。

次の奴を捕まえる。掴み上げて、首筋に噛み付いた。

そこから、流し込むのは人間の血液。俺が、何をしようとしているのか理解したソイツは、暴れに暴れ回ったけど俺が逃がすはずもなく……背中の翼をムシリ取って、下界に放り投げてやった。

 

「そら、特典も付けてやろう。【確定された絶望】【決して変わらぬ運命】【悠久に続く悪夢】だ。嬉しかろう?」

 

落ちて行った柱は、人間として下界をさ迷うことになるだろう。死ぬことも壊れる事も出来ずに、俺の許しを得るまで永遠にだ。【神権】もない故に、ただの人間と同等に特典の効果で、絶望という名の悪夢を見続ける人生を過ごす事になるだろう。

それを見送って、俺は次の柱の元へ赴き首根っこを掴む。

 

「残念ながら、汝等にはマーキングがしてあるんだ……逃れられる訳があるまい。さて、色々してくれたみたいだからな……楽には、死なせぬぞ?」

 

「ヒイィッ……」

 

とは言え、このまま各個撃破するのも面倒なのでやりたくはないけれど神崎に習う事にする。

 

「防御術式をアレンジ。形状を剣へ。加速術式を最大出力で帯状展開。手順を量産、アレンジ式防御術式複数展開……なんちゃってゲート・オブ・バビロン、行きます!」

 

単純展開であるならば、何万でも展開出来る術式でなんちゃってゲート・オブ・バビロンを再現する。

加速術式は、一帯だけで最大に拡張し、そこへ形状を剣に変化させた防御術式を叩き込む。空間遮断レベルの防御力が、そのまま攻撃力に変化してマッハ10~20で撃ち出されるのだ。誰が防げて、避けられるのかは不明だが……中々、面白い攻撃手段になるだろう。

加速術式は、帯状の魔法陣の内側へ物体を通せば効果を得られる魔法なので、剣状の防御術式を魔法陣内に突っ込めばOK。加速術式も防御術式も単体でなら、単純で簡単な術式なので慣れれば幾らでも展開が可能だ。

魔力消費も少なくて効率的。

 

「何だろう……対人戦闘なら、これ最強じゃねぇ?」

 

空間遮断級の刃が、雨霰の様にマッハで襲い来る訳だろう?しかも、何千何万と。

むしろ、対軍魔法としても使えそうだ。

 

「もっと早く、思い付いていれば……転生者戦が、超楽になってたんじゃあ……はあ…………って事で、指パッチン!」

 

目に見えない、剣状の防御術式がマッハで撃ち出される。

適当に撃ち出したのに、目に見えないが故に【管理者】達を何の苦労も無く討ち取って行く。

 

「あ、コレ……アカンやつや……」

 

せめて、目に見えていれば虐殺だとか蹂躙等と言われなくても済むのだが……普通に情け容赦ない一方的な攻撃は【風紀委員】辺りが五月蝿くなる予感がする。

 

「……面倒だけど、幻影魔法で色でも付けるか……」

 

目の前に広がる、一方的な蹂躙という名の虐殺に少しだけアレンジを加えて断罪は終了した。

 

「蜂の巣だな……」

 

防御術式の形状を槍や針にしたら、【管理者】が蜂の巣みたいな状態になってしまった。何柱かの【管理者】が、激痛にのたうち回り呻き声を上げている。

多少、《神殺し》の特性を付与されているとは言え、ただの防御術式に【管理者】を消滅させ切る力はない。

これでは、本当の意味で拷問魔法である。

 

「あ、拷問で良いのか……うん。《ニーベルンヴァレスティ》や《グンクニル》では、加減が出来ないもんな!今までは、殺す事しか出来なかったけど……これなら、加減が出来る上に拷問も可能か!!」

 

使う魔法も、アレンジはしなきゃダメだけど防御術式と加速術式……それから、色付けの為の幻影魔法だけという省エネップリ。術式ランクも、最高が中級程度まででそれほど難しい魔法ではない。魔力消費量もお手頃なので、今までの様に存在維持が大変になる事も少なくなるだろう。

 

「わあぉ!良い事尽くしじゃないか!!」

 

今後は、メインで使っても良いかもしれない。

ただ、殺傷レベルが半端ではないので【管理者】の様な存在や殺しても良い存在にしか使えないのが難点だが……それでも、十分過ぎる創作魔法となった。

ついでに言えば、幻影魔法を付与するかしないかで相手に気が付かれずに蹂躙できるというのがスゴく良い。

今度、魔導兵器に使って有効そうであるなら切り札にしても良いかもしれなかった。

その後、残りの【管理者】達も《なんちゃってゲート・オブ・バビロン》で蹂躙して断罪は終了とする。

《神殺し》への賞金案を出した馬鹿は、問答無用で断罪して転生者に肩入れしていた馬鹿は神権を剥奪しておいた。

いなくなった管理者の仕事は、現在存在している管理者達に押し付けて、早急に従業員募集の御触れを打ち出す。

後で合流するジェイド達には、管理者研修の項目に転生者ゲームの詳細とルール。それに関わる《旧・神族》の陰謀についての説明案を早急に纏めるように言っておいた。

 

「…………さて、ふあっ!!」

 

世界の内側に戻る為、本体である俺を封印する為に自分の船に戻ろうとした所である事に気が付いた。

それは……今戻らなければ、俺の犯した罪は全て神崎が被る事になるという事だ。

 

「……あ!いや……既に、被っているって所か……」

 

そう言えば、【外】と【内】では時間の流れが違っていたんだった。【外】の時間の流れは、【内】と違って完全に停止している。【外】から【内】に戻る際、良くはわからないけど微妙な誤差が生じて数ヶ月から数年の時間が過ぎてしまうのだ。多分、【外と内】を隔てている間の空間が不安定なのだろうと考えられている。

 

「あー……マズッたなぁ……神崎、怒ってるだろうなぁ……」

 

俺が世界から抜けた以上、俺の行った全ては神崎か翼の行いへと変化する。即ち、俺の代わりに神崎か翼が罪を押し付けられているという事だ。可能性が高いのは、神崎の方だろう。何か、お詫びを考えないとイケない。

 

「兎も角、戻ってから考えるか……」

 

今尚、時間の誤差が生じているだろうから【外】ではなく【内】に戻る必要がある。ってか、早く戻らないと寂しさの余り暴走する女の子もいた事を思い出す。

 

「ヤバイ!ユーリが、キレちゃう!!」

 

何も告げずに飛び出して来たから、既に暴走している可能性大だけど……さて、こちらはどうしたものか!?

 

「ああもう!なんで、こんな問題児ばかり仲間になっているんだ!?って、ユーリは《旧・神族》が持ち込んだんだった!おのれぇ……《旧・神族》めぇ。一々、面倒な事をっ!!」

 

逆恨みだとわかっていても、恨まずにはいられない。

悶々と、これからの事を考えていると色々面倒になってきた。神崎の事も、ユーリの事も……ただ、ヴィヴィオの無事さえ確認出来れば良い気分へと変化していく。

時の回路を抜けた頃には、ヴィヴィオの事だけになっていた。かつて、ゆりかごの影響で寿命が縮んでいたけど……今回は、大丈夫なのだろうか……とか。変な影響が、残っていたらどうしよう……とか。様々な不安が、押し寄せて来る。

船に戻り、数枚の羽を抜いて一つの塊を造った後、棺に入って念力で蓋とボトルを元に戻しつつ意識を閉じた。

次の瞬間、目覚めるのは先程造った羽の分体。ただの塊だったソレは、人の形へと変化して行って【俺】へと至る。

一通り、魔術回路や精霊回路等を調べて己に組み込まれているシステムを確認起動させた。

それで、ある事に気が付く。

 

「ヤベ……うっかり、バトルモードのままにしちゃった……」

 

棺から、はみ出ている翼に触れて遠隔操作でバトルモードのままのシステムを通常モードへと戻す。

ただし、魔王モードはそのまま。外部からの操作は、受け付けないシステムなので放置する事にした。

 

「……分体の能力が、アレだけど……問題ないよね!」

 

分体のエネルギーを捨て、本体に戻り再度分体を造るのが面倒になった俺はそのまま放置して置く事にする。

魔王モードの問題点は、多少魔の気配が強くなる事だ。

放置すると、際限なく魔を呼び寄せるのだが……時の回路周辺で、魔の者が出現したという話はここ数億年程なかった。可能性と言うのなら、今後も出現しないという事はないけれど……すぐに戻って来るから、大丈夫かもしれない。

 

「次の《時渡り》まで短期だし、問題ない……よね?」

 

不安はあったけど、ヴィヴィオの事が心配だったのでモード解除は後回しにして【内側】に戻る。

船の管制システム『ゆらぎ』に、もしもの時の為の指示をしてから俺は門を展開すると一気に抜けて行った。

 

 

 

 

 

紫天の書が、発する信号を頼りに時空管理局・本局に戻って来た俺は、ステルス魔法で存在を消すと本局内へと忍び込んだ。管制通信を起動して、本局内にいる使い魔と連絡を取り落ち合った。

 

「戻られたんですね?お帰りなさい、マスター」

 

「よう。どうだ?こっちの方は……」

 

「問題はありません。ただ、マスターは覚悟をしておいた方が良いかと思います」

 

「ユーリか……神崎か……?」

 

「ユーリ様ですね。新ハラオウン邸で、引きこもっておられます……」

 

予想よりも、もっと酷い状態らしい。

段々、ユーリに会いに行くのが嫌になってくる。

兎も角、使い魔にあの後の事を報告して貰いながらリンディちゃんの執務室へ向かっていた。

 

「じゃあ……【凌辱系転生者】は、ゆりかご内のアホ共で全部だった訳か……」

 

「はい。既に、最終確認は済んでいます。探している目的物は、この世界にはありません。ただ、各地に拘束されている【凌辱系転生者】が、また似たような事をしでかす可能性はあります」

 

「神々は、断罪して来たぞ?残ってないと思うがなぁ?」

 

「ええ。ですが、自分達が神々に選ばれた選民族であるとうそぶいている様で……能力が戻り次第、時空管理局を滅ぼすと言っているそうです」

 

「戻らないぞ?スキル・ブレイクしたからな……裏話もしたはずだから、現実を理解していると思うんだが……」

 

「ええ。その上で、のたまっている模様です」

 

「ああ、アレか。厨二病……」

 

「かと、思われます。スカリエッティは、1、2、3、4、7番の戦闘機人と共に各世界の衛星拘置所に拡散して捕まっています。他の方々は、現在再教育中です」

 

「ふーん。まあ、良いや。機動六課は?」

 

「既に解散しました。フォワード達は、それぞれの進路に進み毎日忙しく過ごしているみたいです」

 

「ヴィヴィオは?」

 

「ヴィヴィ様は、なのは様の養女と成られ六課の隊舎で過ごされています。体調面は、問題ありません……まあ、マスターは診た方が確実でしょう」

 

「…………神崎は?」

 

「局員になりました」

 

「はあ?」

 

「犯歴と功績。それらを天秤に掛けて吟味した結果、無罪放免となりました。それで、レジアス中将が一線を退かれた時に、超土下座されて断れなかった様です」

 

「レジアス、土下座したんだ……」

 

そこはもう、心を鬼にして断る場面だろう。

例え泣かれても、突き放してお断りする所である。

 

「どうするんだ?あの馬鹿、もうそんなに時間無いぞ?」

 

「ですよねー……あ、目的地通り過ぎましたよ?」

 

「お?とと……」

 

少し戻って、チャイムを鳴らす。

直ぐに返事があって、俺は普通に部屋に入って行った。

 

「チワッス!」

 

「…………………………………………双夜くん……戻って来たのね……」

 

部屋に入って目が合った瞬間、段々顔色が青く変化して次に赤くなった。どうやら、怒りで赤くなっている模様。

様々な感情が入り乱れて、最終的にリンディちゃんの口から出たのはそんな言葉だった。

 

「神々の断罪の為、次元の【外】に行ってたんだよ。あ、その辺りの説明必要?」

 

「クロノから聞いているわ。そう、【外】に出ていたの……」

 

「僕の体感時間としては、一時間程度なんだけど。まあ……【外】と【内】では、時間の流れが違うからなぁ……」

 

「それで、全ての罪を神崎くんに押し付けて、また何か仕出かしてくれたりするのかしら?」

 

「しないよ?ここに来たのは、後日談を聞いて……気になっている事を確認したら、《時渡り》で出ていくだけだよ?」

 

「……………………待って、次の平行世界に行くの!?」

 

「うん。油断してたら、ほら消えそうだし……」

 

右手を上げて見せると、金色の粒子がチラチラと放出され始めていた。それを押し留めて、素早く情報の整理をしつつ苦笑い。ウィンドを開き、大量の情報を展開していく。

 

「いやー、確認する事が多くて大変だよ。使い魔達が、最終だからってドンドン情報を送って来るからな……来たれ、紫天の書……召喚、ユーリ・エーベルヴァイン!」

 

呼んだ次の瞬間、ドサッ!とユーリが落ちて来て……動かない。どうやら、拗ねているらしい彼女はテコでも動かないつもりの様だ。

 

「ユーリ、ただいま……帰って来て早々なんだけど、直ぐに《時渡り》しないとダメなんで荷物まとめてくれるかな?」

 

「つーん……………………」

 

「……………………OK」

 

無理矢理こちらを向かせて、超早業で拗ねているユーリの唇を奪う。ユーリが唐突な行為にビックリしている所へ、更に舌を捩じ込ませて驚きを強化。ついでに、暴れそうになっていた両腕を掴んで床に押し付け、もっと深い繋がりを求める様に頭を下方へ舌をユーリの口の中へ深く突っ込んで行く。

ユーリの鼻息が上がって来た所で、ユーリの舌に自分の舌を絡めに行くとユーリの限界が来た。

ユーリは、顔を背けて息を大きく吸う。

 

「ぷはぁっ!!って、なんーーーん、んん、ん……」

 

言葉を発する前に、口を口で塞ぐ。

今度は、最初から舌を絡めに行った。

 

「……………………はっ!!ちょ、貴方達何をやっているのっ!?止めなさい!!」

 

ついに、呆然としていたリンディちゃんが正気を取り戻し俺の行為を止める為に動き出して、俺とユーリの接吻事件は幕を下ろす。

 

「にゃ、にゃんへひょとほひゅるんでひゅか!?」

 

ユーリは、混乱の極みにあるらしく、呂律すら回らない様子だ。顔どころか、耳まで赤くしてフラフラしている。

 

「スキンシップが、足りないのかと思って……ディープキスを迫ってみました……」

 

「ふにゃあぁあぁぁぁ……」

 

「とんでもない事をするわね、貴方……」

 

「急いでいるので、手っ取り早い方法を取っただけさ。翼は、どうしてるの?」

 

「神崎のストーカー化しています」

 

「そう。なら、六課の隊舎へ行くぞ。ゆりかごの影響が残ってないか確認しないと《時渡り》出来ないからな!!」

 

そう言えば、ゆりかごはどうなったのだろう?定石通りなら、アルカンシェルで消滅したはずなんだが……。

 

「ゆりかごは、アルカンシェルで消滅しましたよ?」

 

「何も聞いて無いけど……」

 

「話題が出たので、報告をと思いまして……」

 

「そっか。なら、良いよ……さて、他の奴等を全員呼び戻して!じゃ、リンディちゃん。末永く美人でいてくれたまえ。まあ、僕はこれから【若い】リンディちゃんに会いに行くんだけどね!!」

 

「くっ……い、今だって、若いわよ!!」

 

「うん。見ればわかるよ……クロノンに、よろしく言っといてって言っても《時渡り》したら、また忘れちゃうんだけどね!!」

 

それだけ言って、俺はミッドチルダの機動六課があった場所へと転移する。因みに、ユーリはリンディちゃんの元に置いてきた。身辺の整理もあるだろうからという配慮である。また、置いて行かれたと怒っているかもしれないけど、そこら辺は使い魔にフォローをお願いしておいた。

転移した先は、ついこの間までお世話になっていた六課の隊舎前。俺的には、数時間前まで機能していた施設だった気分なんだけど……既にもぬけの殻だった。人員の方は、隊舎を整備している局員程度で見知った者達の姿はない。

 

「……と。ティーダは、どうなった?」

 

偶々、思い出したのでティーダを閉じ込めていた部屋の前に行くと結界は無くなっていた。

中を覗いても、ティーダの気配すらない。

 

「…………これ、神崎がやったんだよね?」

 

余り恐ろしい事は考えたく無いけど、ティーダが殺った訳では無いと思いたい。

俺の張った結界を、破壊する程の力を得たというのであれば《時渡り》なんて出来るはずも無いと考えられる。

是非共、そうであって欲しいモノであった。

その後は、真っ直ぐなのはママ達の部屋へ向かいチャイムを鳴らす。すると、首を傾げたアイナさんが出て来た。

俺を見て、しばらく考えていたが『双夜くん?』と疑問符を浮かべたまま呼ぶ。

 

「アイナさん……まさか、痴呆ですか?」

 

アイナさんは、その言葉を聞いてギョッ!?としていたけど……大丈夫だよ。ただの意地悪だから、うっかり弄った俺が慌ててしまうほどアイナさんは落ち込んでしまったのだった。

 

「にゃははは。ごめん、ごめん。でも、忘れられていた腹いせだからオアイコって事で……」

 

「今日は、どうしたの?」

 

「ヴィヴィオに会いに来た。もうすぐ、遠くへ行く事になったから……最後のお別れかな?」

 

「え?最後のお別れ?って……もう、こっちには戻って来ないの?」

 

「うん。あ、ヴィヴィオ?」

 

「うん?……………………ソウニャ?」

 

「……………………うん。ヴィヴィオ、元気にしてた?」

 

「うん!ヴィヴィオ、元気だよ!!」

 

「そっかー。僕ね……ヴィヴィオにお別れしに来たの……」

 

「お別れー?」

 

「うん。ヴィヴィオにもう会えなくなるから、バイバイしに来たんだよ……」

 

「そうなのぉー?」

 

「うん…………」

 

【真実の瞳】を通して診る限り、ヴィヴィオにゆりかごの後遺症があるようには視えなかった。

その他にも、色々ヴィヴィオの肉体を調べてみたけど……何の問題も無さそうだ。適当に話を合わせながら、ヴィヴィオの状態を確認して俺はやっと安心した。

 

「じゃあ、もう時間だから……ヴィヴィオ、元気でね?」

 

「うん!ソウニャも元気でね?」

 

ヴィヴィオとバイバイして、俺はアイナさんに挨拶をしてからなのはママの部屋を後にした。アイナさんは、最後までなのはママ達の帰りを待ってからと言っていたのだけれど……それを待てる程の時間はなく。

俺は、サクッと切り上げて隊舎を出た。

 

「……………………双夜くん?」

 

「にゃ!?」

 

「やっぱり、双夜くんだよね?どこ行ってたの?心配したんだよ!?」

 

声を掛けられて振り返れば、なのはママとフェイトちゃんがいた。少し驚いたけど、最後の最後で二人に会えたのは嬉しい誤算だ。

 

「ただいま……それから、バイバイかな?」

 

「バイバイって……まさか、平行世界に行くの!?」

 

「うん。ここには、ヴィヴィオの様子を診に来ただけだから……なのはママ達に会えるとは思わなかったよ……」

 

この世界に留まる事を放棄して、金色の粒子をゆっくりと放出し始める。それを見た二人が、心配そうに俺の元へと駆け寄って来た。

 

「双夜、くん……それは?」

 

「この世界から、消える合図かな?」

 

「そんなっ……こんな、突然に……」

 

「仕方ないよ。僕達は、そういう存在だもの……」

 

「でもっ!!」

 

なのはママ達の必死さに、苦笑いが漏れてしまう。

こんなにも、しがみ付かれると次の世界へ行くのが怖くなってしまった。でも、ここで尻込みはしない。

次の平行世界の、なのはママに会うのは辛い事だけど……それが、俺の宿命なのだと割り切ってしまう。

 

「紫天の書よ、ここに……ユーリ?準備は、良い?」

 

『はいです!準備は、終わりました!!』

 

「じゃあ、神崎の馬鹿と翼を召喚して回収……」

 

『はい!』

 

馬鹿が、顔面から落ちて来て『がっ!?』とか言いながら紫天の書に回収されて行く。

 

「あ、そう言えば……鉄翼刀は、どうなったんだろう……ま、いっか。じゃあ、なのはママ。フェイトちゃん……バイバイ!元気でね?」

 

「あ……双夜、待って!!」

 

最後に聞こえたのは、フェイトちゃんの静止の言葉だった。はてさて……最後、俺はちゃんと笑って別れられたかな?

 

 

 

 

 

 

 




はい。一気に駆け抜けました!!
転生者へ八つ当たりを考えていた方々、実は元凶への八つ当たりが正解だったのです。即ち、《神殺し》ですね!w
つーか、これで転生者に八つ当たりしたって話が違うって話ですよね。元凶は、転生者に協力した管理者なんですから転生者を断罪しても意味がありません。だからこそ、【外】へ出て管理者達を千切っては投げ千切っては投げした訳です!
まあ、前回の双夜が捕まる事を前提にしていた覚悟は何処へ行っちゃったのかな?状態ではありますがwwwwとばっちりで、神崎が身代わりになってましたけど……当人自身、うっかり(怒りで)忘れてた事なので触らないでやってください。
え?物語的にはですか?予定通りですよ?wwwww
そして、S・Bビットが完全にファンネル扱いw
オールレンジ攻撃とかw
そして、《なんちゃって、ゲート・オブ・バビロン》。
ずっと、温めていたオリジナル技?ですw
俗に、『僕が考えた最強の必殺技』とか呼ばれるアレですw
最強過ぎですがw
空間遮断に匹敵する防御魔法をアレンジして剣形状に。
それを、帯状展開した加速術式に投げ込んでマッハ射出。
ギルガメッシュでも出来なかった……見えない、防げない、回避出来ない代物が出来上がりましたwww百万の見えない刃が、雨霰の如く降り注ぎます……シンプルだけど、ヤバイwwwww。いや、シンプルであるが故に尚最悪の技の出来上がりです。ってか、見えない、防げない、回避出来ないの三拍子はアカン!
誰だ!?ゲート・オブ・バビロンなんて考えたのは!?
最悪の魔法が出来ちゃったじゃないか!?
幻惑魔法で、色付けとか……必要?魔力の無駄かな?

《なんちゃってゲート・オブ・バビロン》
最大速度……マッハ20。(触手先生とは関係ない)強弱有
最大強度……空間遮断レベル=攻撃力
最大展開数……億単位イケるかも(単純操作で)
殺傷能力……無限大(物理・魔法どちらにしてもw)
命中率……‥100%(数撃ちゃ当たる的な)

防御術式(障壁)を剣状にアレンジして、加速術式で射出する簡易大軍魔法。加速術式(帯状)を増やせば、マッハ20ずつプラスされるという鬼畜使用。

誤字報告?
ロードオブバビロン➡ゲートオブバビロンに修正

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m(_ _)m

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