絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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踏み台くん名募集中!!
名前だけでも良いのでくださいませんか?
サブ登場人物の名前も募集中です!

神崎くんの武器名募集中!!
神崎くんの格好いい中二病溢るる武器名を考えてみませんか?感想でも活報でも良いのでカキコよろしくです!!
テーマは、【重力】です!!

スマホ、壊しちゃった……。
執筆データが……orz
執筆期間が、遅くなるかもしれません。
御了承ください。


九七話

 

 

あのチビッ子が、訓練校に入れられた頃、私は少し思い悩んでいた。それは、もう一人の住居人とどう接したら良いのかという事である。

当初、私が取った行動はその住居人を使った実験と実践の数々だった。男という生物が、何処までやって良いのかとか、何処まで攻めれば決壊するのかをやったみた訳だ。

だが、それでわかった事は同居人が普通の男性以上に忍耐強いって事と、同居人が前の世界での私の恩人だって事だけだ。彼が私の恩人だっていうのは、あのチビッ子が見せてくれたチビッ子への報告書でわかった事だった。

守護騎士となる前、私は親の下らない欲望の為にイジメを受けていたのだが……そのイジメを彼が、処理し続けてくれていたらしい。眠っている間の事だったから、私はずっと知らないまま彼と顔を毎日合わせていた訳だけど。

確かに、あの頃の彼の行動には不可解なモノがあったんだ。

女の子のパジャマパーティーに顔は出して来るし、事ある毎に私と関わろうとしてくるし……だけど、私は彼が踏み台だからそんな行動を取るのだと思い込んでしまっていた。

まさか、私が嫌がらせを受けている事に気が付いて、私の知らない内にそれらを処理してくれていたなんて……思いもしなかったんだ。だって、ずっと……ずっと、私に味方してくれる人なんていないと思っていたから。

転生してからの日々は、私を守ってくれる処か私を不幸にして自分達の欲望を考える両親しかいなかった。私が不幸になると何故か、家が……他人が……幸せになって行く。

だから、それを知った時、私は一生幸せにはなれないんだと理解してしまう。そうなってしまった後は、涙の日々。

悲しくて、苦しくて一人で泣き続けていた。

誰にも相談なんて出来なかったし、相談したところで頭のおかしな子だと思われるだけの話だ。

でも、だからこそ同居人が私を守ってくれていたんだと知った時、私は不思議な感情の昂りに襲われ泣いてしまった。

涙こそ流さなかったけれど……ずっと、一人なんだと思っていたのにそれが違ったんだとわかってしまったから……私は、この同居人にどう接したら良いのかわからなくなってしまう。

そうなってしまった後、私は私の行動すらまともにコントロール出来なくなってしまった。その一例が、彼が購入して来たパジャマを着て夜は眠っている。たまに、悪戯と称して彼のベットに潜り込み一緒に寝てみたりもしているし……前は、彼に朝昼晩と料理を作らせていたけれど、最近は私がメインで作ってしまっていた。

 

どうしたら良いのだろうか?

 

私の周囲に、相談できそうな相手はいないし……まあ、あのチビッ子の使い魔さん(♀)に相談しても良いけれど、その場合はあのチビッ子にまで知られてしまう恐れがある。そうなったら、チビッ子経由で彼にも知られてしまうかもしれない。

だから、相談できそうな相手がいないという訳だ。

流石に、この世界の原作人物達に相談する訳にも行かないし……本当にどうしたら良いのだろうか……?

そんな事を考えながら、今日も彼の後を尾行する。

ストーキングじゃないわよ!?だって、私は別にあの男の事が好きじゃないものっ!!全く、全然これっぽっちも好きじゃないわっ!!それだけは、誤解しないでよ!?

しばらくすると、何故か訓練校までやって来てしまった。

訓練校を見ていると、閃きみたいなモノだったけれど合点がいった。どうやら、彼はあのチビッ子の様子を見に来ただけみたいだ。

そう思って見ていたら、唐突に原作のフェイトが現れる。

偶然を装っていたけれど、彼の事だフェイトがここに来る事を知って先回りしていただけに過ぎないのだろう。

それに、彼は自分の目的をちゃんと言葉にして私に伝えていたじゃないか。それでも、私は複雑な気分になってしまう。

だって、彼の目的が原作人物にあるとわかっていても、ああやって隠れて会われたらちょっとムカつくじゃない。

まるで、誰かに見せ付けるかのように、仲むつまじく二人が並んでいるのを見て思い出すのは彼のあの言葉。思い出したくなくても、脳が勝手に私の意思とは反対に自動再生する。

 

『何が悲しくて、転生者と恋愛をしなければならないんですか?俺は、この世界にこの世界の人物と恋愛をする為に転生したんですよ?』

 

それは、彼らしい目的で言葉だと言えた。だがしかし、この後に続く言葉があのチビッ子の策略だったとしても、私に与えた衝撃は計り知れない。それだけは、何としても再生させたくなかったので全力全霊で脳内再生をキャンセルする。

しばらくすると、フェイトの知り合いとおぼしき人物が二人増えて、彼が慌てた様に先に訓練校へと入っていく。

追い掛け様と思ったけど、フェイト達がまだ訓練校に入って行こうとしないので私は動けなかった。ギリッと手を握る。

気が付くと、何故かコンクリートの破片が私の手の中で粉々になっていて、周囲を見回すと先程まで私が隠れていた物陰の壁に亀裂が入っていた。どうやら、またやってしまったみたいだ。最近、何故か力のコントロールが上手くいかない。

特に何もしていないのに、フライパンの柄を握り潰したり……壁や床を粉砕したりしている。

 

「あ!フェイト達が、いなくなった!?」

 

余所見をしていた間に、フェイト達が訓練校に入って行ったみたいだ。今の内に、訓練校へと入って彼を探しに行こう。

素早く、それでいて正確にフェイト達に姿が見られない様注意をしながら私は訓練校の中へ侵入を果たした。そのまま、彼を探してフェイト達が入って行った中の様子を伺う。

すると、ちょんちょんと誰かが私をつついて来た。

振り返ると、ニヤリとした顔で腕を組んでいる強面の男性がいてゆっくりと私に手を伸ばしてくる。まさか、暴漢!?

そう判断した私は、ほぼ無意識にその暴漢の顎を打ち抜いていた。予備動作なく、相手の意識を刈り取った訳だ。

その辺りの技術は、あのチビッ子によって一通り教えられているので問題ない。倒れて気を失った男をそのままに、私は再度校舎内をみる。しかし、フェイト達が入って行った施設内に彼を確認できなかった。

その為、私は彼の姿を探して別の場所へと移動していく。

暴漢は、そのまま放置しておいた。どうせ、ここは管理局お抱えの施設だ。誰かが勝手に、処理してくれるだろう。

フェイト達がいた施設から、少し離れた場所のグラウンドで訓練生と思われる一団がそれぞれの訓練をしているのを横目で見つつ私は彼の姿を探す。

どうも、この辺りにはいないようだ。

残念に思いながら、建物内に入って行く。

そのまま、廊下を進みガラス越しに教室内を見回しつつドンドン進んで行った。しばらく、校舎内を探していたけど彼は見付からず、仕方なく別の場所へと移動し様としてまたフェイト達を見付けてしまう。彼女達は、こちらに気が付いてないみたいだったけど……このまま出て行って、一緒に回る事になっても面倒なのでやり過ごす事にする。

フェイトが、何かを付き添いの二人に話しているようで、しばらくグラウンドの方を指差していたけれど、話が終わると別の場所へと移動して行った。それを見届けてから、私もその場から離れようとする。たが、またもや先程の暴漢とその仲間とおぼしき人達に囲まれてしまう。

まさか、管理局お抱えの施設で何度も暴漢に襲われようとは思わなかった。まあ、暴漢なんてバリアジャケットを纏っていても敵にもならないので一撃×3で片付けて、サッサとその場を後にする。それにしても、中々見付けられないものだ。ちょっと、目を離した程度でこれなのだから、早々簡単には見付けられないのは覚悟していた。しかし、これだけ探して見付からないっていうのはどういう事なのだろう?

まさか、こちらの動向を把握された上で避けられているという事なのだろうか!?

そう思った瞬間、背筋に氷を突っ込まれたみたいにゾッとした。周囲を見回す。だが、見える範囲内にサーチャーの影はない。少しだけ、ホッとして歩みを進める。

それにしても、この施設……訓練校とはいえかなり広いのは何故なのかしら?模擬戦などで見掛ける、レイアウトを見回しながら私の歩みは止まらない。ドンドン進んで、レイアウト内をくまなく探した私は踵を返して元来た道を引き返す。

本当に、どうしてこうも彼に会わないのだろうか?

そして、どうしてこうも暴漢が簡単に出没して更には増えていくのかしら?現れた暴漢五人相手に、私自身もセットアップしてデバイスを構える。

 

「邪魔よ!!」

 

魔力ダメージでノックアウトした後、追撃で私の拳を暴漢達に叩き込み立ち上がれない程に痛め付けたところで、私は諦めムードで訓練校の門を目指す。

 

「あるぇ!?翼?」

 

と、そこで大きくなったチビッ子に呼び止められた。

振り返り、少し期待して彼の姿を探す。

しかし、そこにいたのはチビッ子ただ一人だけだった。

 

「神崎は?」

 

「え、馬鹿?あ!何々?ストーキング?」

 

「違うわよ!!私は、別にアイツの事は好きでもなんとも思ってないもの……」

 

「ふーん。まあ、翼がそれで良いなら構わないけどねぇ……」

 

少し、口元に拳を当てて考えている風だったチビッ子は、フと思い出したかの様に私にある事を教えてくれた。

どうも彼は、食堂にいるらしい。

 

「僕は、この辺りに出没したらしい侵入者をブチのめしてくるよ……」⬅超理解

 

「そう。頑張って……」

 

「……………………」

 

チビッ子に、笑顔で送って貰って情報通りの私は食堂へと急ぐ。それにしても、管理局お抱えの施設に侵入者とは……やはり、あの暴漢達の事なのだろう。

私は、急いで食堂へと向かう。

食堂に入ると、お昼休憩になってしまったのか訓練校の生徒とおぼしき人でごった返していた。周囲を見回すが、彼の姿は確認できない。フェイトと一緒にいるだろうから、フェイトを探すのだけれど様々な色合いの髪が邪魔をしてわからない。チッと、はしたなく舌打ちをしてしまう。

仕方がないので、食堂の出入り口を張っていると……白昼堂々、先程の暴漢達が集まって来た。今度は、人数が多い。

周囲の目を気にした様子もなく、堂々と襲いかかって来た。

まず、一人目を容赦なく殴り飛ばす。飛び掛かって来たバカを全力で叩き落とし、背後から向かって来る奴を裏拳で吹き飛ばし、武器を振りかぶって来る者には回し蹴りをお見舞いする。シューターの魔法を使われたら、受け止めて投げ返して間合いを詰めて顎を打ち抜く。最後の暴漢は、足払いで転がした後マウントポジションを取って、振りかぶった拳を顔面に叩き込むと殺してしまう可能性があったので、その真横のアスファルトを全力で打ち抜いた。

アスファルトが、木端微塵に砕けて陥没する。暴漢は、ピクピクと白目を剥いて更にはお漏らしまでしていた。

 

「汚いわね……」

 

「いやー……今のは、仕方ないんじゃない?」

 

いつの間に近付いていたのか、チビッ子が私の真横にいてニヤニヤと暴漢を見下ろしている。

 

「…………双夜。彼、いないじゃない!!」

 

「あー、うん。とりあえず、フィルターを取っ払って話をしようか?さっき、僕は食堂とまでしか言ってないんだよ?」

 

「フィルター?何を言っているのかしら?」

 

「ああ、うん。わかってないとは思ったけれど……この人、この施設の職員だよ?」

 

「……………………え?」

 

「え?じゃなくて、この人達は暴漢じゃなくて……ここの職員なんだよ。強面で、パッと見た感じ、その手の方々に見えるだろうけど……歴とした、管理局の局員さん達だ!」

 

「れ、れっきと、したは……余計だ……」

 

「…………そう、なの?」

 

「疑われてるw疑われてるwごめんねー?彼女、今全力全開で■○▲×乙女なんで、ちょーっとおかしなフィルターが掛かってるんだ。何を言っても、全部フィルターが挟まるから正気じゃないと考えた方が良いかもねー♪」

 

「…………くっ……」

 

チビッ子と話をしていた局員(?)が、ガックリと気を失ってグッタリとしてしまう。もし、本当に局員であるなら……それを、ブチのめした私は犯罪者という事になるのだろうか?

 

「まあ、厳重注意をされる程度だろうさ。さて、神崎くんなら訓練生と体育館倉庫の方にーーー」

 

聞き終える前に、私は走り出していた。

体育館倉庫と言われて思い付くのは、転生した世界で美愛が貸してくれた同人誌等で見たエッチなストーリー。

体育館倉庫を探している間も、美愛と白亜の会話が思い返される。学生が、男女で体育館倉庫に入った場合……高い確率で、エッチな行為へと発展するという。

そんな話を、パジャマパーティーで聞いた事があった。

(何を想定して、そんな会話をしていたのかは不明w)

体育館倉庫を探す途中、フェイトに会った気がしたけどチビッ子が訓練生と言っていたのを思い出す。つまり、フェイトではなく別の原作人物に手を出したという事になる。

 

ーーあんの……プレイボーイが!!

 

一瞬で、頭に血が登った私はトップスピードのまま、カーブを曲がり切り問題の場所へとたどり着く。そして、私が目にしたのは女子生徒の体をベタベタ触っている変態だった。

 

「このっ!変態っ!!!!」

 

そう言って、私は女子生徒の身体をベタベタ触っていた馬鹿を全力で殴る。私は、驚く女子生徒に駆け寄り変な事をされていたのか!?大丈夫なのか!?と問いただす。

女子生徒は、目を白黒させて私の言葉に首を傾げ一言。

 

「えっと、あの私……その人に、何もされてまけんけど?」

 

「…………え?でも、貴女身体中を触られてたわよね?」

 

「あ……まあ、そうですけど。それは、私のフォームでは拳を痛めてしまうからって……」

 

「???フォーム?って、え?」

 

この子の話を纏めると、馬鹿が魔力を纏わないなら怪我するだけだと言ってフォームを直してくれていたという事だった。どうやら、私の早とちりの勘違いだったらしい。

一応、私も彼女のフォームを見て同じ結論に至ったので後で謝らないといけない様だ。それにしても、何でこんな場所でこの子は鍛練をしているのだろうか?

 

「その子で、今日は最後なんだよ」

 

「……双夜?それ、どういう意味?」

 

唐突に現れて、私の思考を読み取った様な事を言ってくるチビッ子。だけど私は、それをスルーして疑問を返す。

 

「どういうも何も……魔力Dランク以下の子達を集めて、少量の魔力で戦う方法を教えているだけだよ」

 

「そんな事が、可能なのかしら?」

 

「可能だよ。本当なら、もう少し生徒がいるんだけど……僕の授業は毎日30分程度のモノだから……他の子達は、自主練に行ってしまった後なんだよ」

 

可能だと言われて、このチビッ子が魔力を持たなくても十分強い化け物だという事を思い出す。以前見せられた、瞬動術や鎧通しとかいう反則を教えているのだろう。

あれはもう、魔法に喧嘩を売っているとしか思えない攻撃方法だ。バリアジャケットは、無意味だったし……ああも簡単に、意識を刈り取られたんじゃあ魔導師という職業が特権ではなくなってしまうという感想を抱いた。

 

「……………………そう。なら、そういえば良いじゃない!」

 

「全部言い切る前に、走り出した人に怒られる謂れはないんだけど……違った?」

 

「……………………そうね……私の早とちりだったわ……」

 

そうだった。私は、チビッ子の話を半分も聞かないで現場に向かったんだった。少し、反省する。

 

「後、翼さ……訓練校に入る時、ちゃんと受付通った?」

 

「受付?」

 

「そう。基本的に、どこの施設に入るにしても受付で見学の登録しないといけないんだよ?翼、登録してないよね?」

 

「どうだったかしら……?」

 

「そうじゃなきゃ、侵入者扱いは受けないから……(苦笑)」

 

「……………………」

 

「とりあえず、馬鹿起こして一緒に謝って来なよ」

 

「ううっ……」

 

私は仕方なく、馬鹿を叩き起こすと一緒に局員達の教職棟に行き謝罪した。みんな、笑って許してくれたけど神崎が教職達と親しげだったのが印象的だった。

理由を聞いてみると、謝罪に来るのは今日が初めてではないらしい。あのチビッ子絡みで、何度かここに来ているとのこと。それを聞いて、私が思ったのはチビッ子が『ああ、ここでも悪戯してるんだぁ……』という事だった。

 

「それにしても、君達がいると魔力ランクというモノが飾りの様に思えてくるよ……人間の身体というのは、鍛えればそこまで出来るようになるものなのかい?」

 

「さあ。私は、魔法も使えるからわからないわ」

 

「あー……ちゃんとした訓練と修練を積めば、そこそこは出来るようになると思いますよ?」

 

ちゃんとした修練と聞いて、教職の局員が残念そうに肩を落とした。どうやら、低ランクの魔導師にある程度それを教えて自信を持たせようと考えていたらしい。

 

「だったら、調度うってつけの人がここに通ってるじゃない……チビッ子は、そういうことしないの?」

 

「…………まあ、師匠ならうってつけだけど……やる事にムラがあるから。それに、交換条件とか付けて来そうだ……」

 

「そうね。悪戯に目を瞑れ的な?」

 

「そうそう!それ的なヤツ……とは言え、前例を作る訳にも行かないだろうからな。無理だろう……」

 

そう言いつつ、馬鹿は難しそうな顔をして大きな溜め息を吐いた。その後は、馬鹿が嘱託の仕事があるからと帰るって言い出したので私も帰る事にする。一応、チビッ子の元を訪れて帰る事を告げてから訓練校を出た。

帰り際、チビッ子が私に『目的地のない歩みは、時に周りを不幸にするよ。出来るだけ、目的地を定めてから歩みを進めると良い』と良くわからない助言をくれた。

当人が、助言だと言っていたので助言って事にしているが……チビッ子は、何を言いたかったのだろう?

私は、バスに揺られながらチビッ子の言葉を考えていた。

『目的地のない歩み』って事は、目的もなくさ迷っていると解釈すれば良いのだろうか?その行為が、周りに不幸をもたらすらしい。だが、チビッ子は『時に』と言った。

つまり、『不幸』は常にではないのだ。それでも、『出来るだけ』目的地を定めておいた方が良いらしい。それは、『出来るだけ不幸を振り撒くな!』って事なのだろうか?

全く、意味不明かつ難解な助言である。

『目的地』が、何を指すのかさえわかれば簡単なんだろうけど。チビッ子が、そう易々と教えてくれる訳もなく……私は、この悶々とした気持ちを持ち続けなければならないらしい。

 

「目的地……目的地ねぇ…………」

 

『目的地』じゃなくて、『目的』だったらどうかしら?

 

これが、何かの隠語だったとしたら……少し何かが見えてきた様な気がした。

 

「『目的』。『目的のない歩み』、歩みじゃない?歩み、歩く、行く……動く?『目的のない動き?』。でも、これだったら……『目的のない行動』の方がしっくりくるわよね……」

 

って事は、残りの文面も延長線上の言葉と入れ替えるモノなのだろう。言葉遊び感覚で、私はその文面を紐解いて行く。

時間は掛かったが、結論を言うと『目的のない行動は、まれに親い人を不幸にするよ。行動を起こすなら目的を持って起こそうね?』となる。

そして、それは心当たりが十分以上にある事柄だった。

 

「なんでこうも、的を射た様な事をいうのかしら?」

 

それは、今私自身が直面している状況そのモノでもある。

即ち、あの馬鹿とどういう関係になりたいか……だ。

その場に、あの馬鹿もいたからあんな変な暗号みたいな言い方をしたのだろう。だが、私が彼とどうなりたいのかを目的として行動しろとは……それは、まるでーー。

 

「いえ、深い意味はないわね。きっと……」

 

私は、彼とどういう関係を築きたいのだろう?友達?……それとも、家族?。あのチビッ子は、つまるところそういう事を言っていた訳である。

 

「全く……敵わない訳ね……」

 

一人ごちる。しかし、私が望む彼との関係とはなんだろう?

彼には、助けて貰った恩がある。例え、それが私の為で無かったとしたとしても、その行為で私は十分過ぎる程助けられたのは間違いない。その恩に酬いる為には、どういう関係が好ましいのだろうか。友人?でも、男女間で友情って芽生えるのかしら?何となく、最終結論に至った様な気がするけど……家族とか?チビッ子とユーリと彼と私で?

 

「結局の所、そういう結論になるのよね……」

 

即ち、恋愛という関係。

だけど、彼は転生者同士の恋愛はしたくないらしい。

とは言え、私達は平行世界を渡り歩く存在となったから、そもそも原作人物との恋愛はきっと成立しない。

本当に、遊び半分での恋愛となるだろう。

 

「…………ちょっと、ムカつくのよね……」

 

この感情は……どういったモノなのだろう?

恋愛?それとも、独占欲?

 

「いずれにしても、行き着くのは同じモノかぁ……」

 

そう、急ぐ必要もないので結論は棚上げにして……とりあえず、『家族』を目指してみる事にする。流石に、いきなり『恋人』とかハードルが高過ぎる様な気もするので家族レベルから始めてみる事にした。

バスがスラム近くのバス停に止まったので、私も人の流れに添って降りる。多少の視線が、私に向けられているけど何時もの事なので気にせず、自宅へと続く道を進んでいく。

すると、いつもであるならば直ぐに外れるはずの視線が、何時までも私に絡み付いてくる。気になって振り返ると、そこには神林が私を尾行して来ていた。

 

「やあ、奇遇だねぇ!」

 

「奇遇じゃないわ。尾行していたじゃないの……」

 

「そんな事……けど、会えて嬉しいよ……」

 

「……それで、私に何か様かしら?」

 

神林は、常にニコニコしながら話し掛けて来る。

一瞬、魅了系スキル《ニコポ・ナデポ》を思い浮かべたが、チビッ子が魔力資質が高ければ問題ないと言っていたのを思い出しその考えを切って捨てた。

何故なら、私の魔力資質はEXだ。最近の転生者は、暫定SSSなのでその程度の奴等には負けない。

 

「ただ、君に会いに来たんだよ。最近、ずっと会ってなかったからね!どうだい?これから、お茶でも……」

 

「お断りするわ。私は、これでも忙しいの。じゃ、さよなら……」

 

「おいおい待てよ!この俺が、態々会いに来てやった上にお茶にまで誘っているんだぜ!?そこは、『行きます』だろ!?」

 

何様よ!?コイツ……。

私の腕を掴み、強引に引き留めるクズ。

前回、チビッ子の【フェティッシュ】で散々イジメたのを覚えていないのだろうか?もし、そうであるならハッキリと言ってやらないとイケない。クズの手を振り払い、ハッキリと言ってやる事にした。

 

「離して!別に貴方の事、どうとも思ってないから!消えてくれないかしら?」

 

「全く、つれないなぁ~。子猫ちゃんは……ツンデレなのかい?」

 

勘違い全開だった。今のを聞いて、この目の前のクズが本当にクズである事を理解する。まさかとは思うが、前回のアレを愛情表現だとか解釈されていたら厄介だ。

 

「はあ……私にはもう、好きな人がいるの!だから……」

 

「わかってる!わかっているよぉー!それが、俺なんだろう?流石俺様!罪作りな男だぜ……」

 

「貴方じゃないわっ!その人の名前は、【神崎大悟】っていうんだからっ!!この変態勘違い踏み台転生者が、黙って消えろって言ってんのよ!!」

 

「…………お前……お前も、転生者なのか!?」

 

「だったら、何よ!?」

 

「チッ……その姿も転生特典?あーあ、白けちまったぜ……で?どんな不細工だったんだ?それとも男か?まあ、何でも良いが……とりあえず、死んどけ!!」

 

唐突に、何も持っていない手に二本の短剣が出現。

大きく振りかぶり、飛び掛かってきた。

突然の事だったけれど、動きが遅かったので難なく回避。

カウンターで、脇腹に一撃をお見舞いしてあげた。

 

「グッ……テメェっ!!」

 

「私の特典には、サイヤ人の孫悟空レベルの肉体が含まれるのよ?その程度の動きで、ダメージを入れられると思って?」

 

「ちょ、何だよ!?それ、反則じゃないか!!」

 

「ふん。私は、実用的な能力しかいらなかったのよ!貴方達みたいに、カッコ良いからなんて基準で能力を選ばないわ」

 

「クソッ!逃げるぞ、アルトリア!!」

 

《OK. A bastard!》

 

「は?何だっt」

 

クズが、デバイスに何かを話しかけている間に転移していった。それを見送って、ホッと息を吐く。

 

「お疲れ……」

 

「きゃっ!?」

 

安堵していたところに、突然声を掛けられて驚き振り返ると神崎が私の後ろに立っていた。一体、何時からそこにいたのだろうか!?

 

「今の……」

 

「ん?ああ、別に構わないよ。男避けには、最適だろうからな……一応、見た目はカッコ良いらしいからな……」

 

ヤバイ!結構前から、聞かれていたッポイ。だけど、彼は気にした風もなくキョトンとした顔をしていた。

 

「帰るんだろう?さあ、行こう」

 

「え?ええ……」

 

その雰囲気から、本当に私が彼を男避けの方法として使ったと思っている様子が伺える。だけど、待って欲しい。

そうじゃないの……ああ、別にそういう恋愛という感じでもまだないんだけどっ……!!と、大混乱した頭で慌てたまま彼が促す様に私は帰路に着く。

 

「もう、アレが来る事はないだろう。だから、安心しろよ」

 

「あ、えっと、そうじゃなくて……」

 

「ん?ああ、今晩の夕食はエビフライにしようと思う。昼間、エビ反り顔面スライディングを見てなぁ……エビフライが、食いたくなったんだよ……」

 

「エビゾリ顔面スライディング?」

 

「訓練校の生徒が、師匠に師事を受けてて……瞬動術の練習をしていたんだ。走っている状態で、地面を蹴る方の足裏に魔力を集中させ爆発させる事で推進力を得るっていう術なんだが……それを見ていると、どうしてもエビフライが食いたくなるんだ……」

 

「ふふふ……何よそれ……」

 

彼の奇妙な話に笑いが込み上げてくる。でも、そのおかげで少し落ち着けた。混乱が治まり、私達は他愛もない話をしながら帰路を進む。それだけの話だったのに、私にはその時間がとても楽しく感じた。

 

「じゃあ、私が秘伝のタレを作ってあげるわ!」

 

「いや、俺がタレを作るよ。だから、翼はフライをお願いできるかな?師匠直伝のヤツだから、旨いはずだ……」

 

「それ、大丈夫なの?」

 

「数種類教えて貰った。多分、大丈夫……」

 

「レシピ見せて!」

 

「ん……」

 

彼から、チビッ子特製のタレレシピを受けとる。

本当に何種類か、エビフライに合うタレレシピが書かれていた。きっと、この中の何れかが危険なヤツなのだろう。

 

「で?どれだと思う?」

 

「恐ろしいまでのカモフラージュだわ。わからない……」

 

「俺は、これじゃないかと睨んでる……」

 

彼が、私の手の内から一枚のレシピを取って提示した。

 

見る限りは、変鉄のないレシピ。内容的にも、問題ないように思える。しかし、彼の危機関知能力はわかっているから……きっと、これがヤバイ物になるタイプのレシピなのだろう。

 

「師匠の悪意を感じる気がするんだ……」

 

「一応、全部作ってみて確認しましょう?その方が、確実だわ……もしかすると、貴方の関知能力も計算して……って可能性も否定できないもの……」

 

「だな……」

 

そういう訳で、自宅に着いた私達はとりあえず全部作ってみる事に。その上で、言うべき事はただ一つ……匂い系の悪戯だった。即ち、全部を作っちゃダメなタイプ。

まさか、あそこまでキツい匂いになるなんて考えもしなかった。

 

「部屋が……ドブ川臭に…………(泣)」

 

「地球に行って、ファ○リーズを買ってくるのよ!!」

 

「OK!!ファ○リーズだな!!」

 

数日、私達は部屋の匂いに悩ませられる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。翼回ですw
実は、神崎が感じていた危機感は自分に関しての危機感でしたってオチwww翼が、順調にストーカー化してますが気にしないで☆!『恋する』???乙女フィルターに、勘違いと早とちりのコンボ。神崎、頑張れwww
そして、踏み台現るw神崎が、途中から話を聞いていたけど……翼が、『好きな人』と言ってもいらぬ鈍感振りを発揮して、『男避けくらいにはなってやるか』的な感覚で話を合わせてくる始末。ダメだコイツ……www
この子達の恋愛模様は、もうちょっと先のお話になれば良いなぁ……程度のモノなので、楽しみたい方は案があればお願いしますwww
『恋愛と認めたくない恋する???乙女・翼』と『原作と恋愛がしたい神崎』との複雑奇怪な物語を展開する予定……wwwwwwしかし、予定は未定と同義なのだよwwwさあ、一石を投じてみないかい!?

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m(_ _)m

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いつも読んでくれる方々に感謝を……。

誤字がありました。
舞うんとポジション→マウントポジションに変更。
自己報告ww

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