絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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踏み台くん名募集中!!
名前だけでも良いのでくださいませんか?
サブ登場人物の名前も募集中です!

神崎くんの武器名募集中!!
神崎くんの格好いい中二病溢るる武器名を考えてみませんか?感想でも活報でも良いのでカキコよろしくです!!
テーマは、【重力】です!!

とりあえず、時空列的にはSTSかなぁ……って事で、書き始めていた奴を棚上げして、ちょこっと暖めていた分を上げていきます。まあ、STSなんで誰かさんはまた出てきませんw
なんでこう……ユーノくんとは、出会わないかなぁ……(笑)


八九話#

双夜

 

 

「???」

 

目が覚めると、俺は荒野に寝転がっていた。

身体を起こして、周囲を見回すと俺を中心にして広がるお椀状の大地。まるで、爆心地の様だった。

何があったのかはわからないけど、結論だけを言うなれば……俺は、クレーターのど真ん中にいるらしい。

と、視界の端にチラッと白いモノが見えた様な気がして視線を戻す。すると、クレーターには似つかわしくない白い布切れが落ちていた。近付いて、拾ってみると布と共にピンク髪の幼女まで土の中から引き上げる事となる。

 

「あ、服だったか……」

 

ちょっと驚いたけど、俺にとっては良くある事なので気にしない。

 

「あーーー!?」

 

「ん?」

 

声が聞こえたので、振り返るとユーリが空から降りてくる所だった。いつの間に、現界したのかは不明だがこのクレーターはユーリの仕業だったのかぁ……と納得する。

しかし、何をそんなに驚いているのやら訳がわからない。

 

「私が、一生懸命護っていたというのに……双夜は、私が頑張っている間にその子とイチャ付いてたんですか!?」

 

「拾ったんだよ。地中で、かくれんぼしていたみたいなんだ……ほら、ここに穴が……」

 

「かくれんぼ?……………………ああ」

 

何故か、言いにくそうに納得するユーリ。

俺から視線を外して、ゆっくりと確実に顔を反らしていく。その様子から、ユーリが何か後ろめたい事をやらかしたという事を理解する。だが、ちょっとやそっとの事柄で俺が怒ると思っているのだろうか?

 

「で?怒らないから、言って御覧?因みに、遠回しな言い訳をするなら怒るよ?」

 

「ええっ!?そっちをですか!?」

 

「ほら、早くぅ!」

 

「え、えっと……わ、私が、双夜諸共その子を魔法で吹き飛ばしまして……あ、別に双夜をどうこうしたかった訳じゃ無いんですよ!?双夜が、怪獣に襲われそうだったので追い払おうとしたんです!!」

 

「…………で?その、怪獣とやらは?」

 

「あ、はい!あんな感じでーーー」

 

ユーリが指し示す方を見ると、紅のバインドに捕らわれた巨大蜥蜴がいた。それを見て、思い出すのは【組織】で飼育されていたティラノサウルス。

【組織】に来たばかりの頃、何も知らなかった俺は目の前に現れた巨大蜥蜴を捕まえて食べた事があった。当然、それを管理していた方々が激オコで超叱られた記憶がある。

だが、周囲数キロ圏内に人の気配はない。

瞬間、俺はリミッターを解除した。

 

「今日のご飯GETォー!!!!!」

 

「ガウッ!?」Σ(゚д゚lll)!?

 

バインドに捕らわれ、抜け出そうと暴れていた巨大蜥蜴がピタッと止まってこちらを見る。

そして、何を思ったのか全力全開で暴れ始めた。

 

「クックックッ……そこから、逃げられたとしても逃がさないよ。地の果てまで追い掛けてって、丸ッと食い散らかしてやるから覚悟すると良い!!」

 

「ガアアァァァ!!!」

 

「威嚇しても無駄無駄無駄!!大地の守護竜か……丸っと太ってるから食べ堪えがありそうだよなぁ……」

 

「ガ、ガウガゥ!!」(怯)

 

「じゃ、いっただきまーす♡」

 

「だあああぁぁぁ!!って、よっしゃっ!出られた!!って、止めて!?止めてください!!」

 

紫天の書から、突然神崎が飛び出して来た。

自力で、出てくるとは無茶をする。しかし、何の用があって出て来たのか……何か言ってるけど、どうしたものか。

 

「何だよ!?お前も食べたいのか?竜は、毒持ってる事があるぞ?ああ、僕は大丈夫だ。問題なくイケる!!」

 

「そうじゃねえよ!!ソイツは、ヴォルテールって言って原作の登場人物の召喚竜なんです!!って、何ですか!?何でそんなに残念そうなんですか!?」

 

「これも、原作の登場人物(?)なのか……じゃあ、あの幼女も?原作なのか?」

 

「はい!多分、キャロ・ル・ルシエです!!」

 

「……………………見なかった事にしよう!んで、お前は何も気が付かなかった……良いな?」

 

「良いな?……じゃあねぇよ!?駄目に決まってるだろ!?変な原作ブレイクしようとしてンじゃねぇよ!!」

 

「じゃあ、あの幼女と僕が契約するってのは?喚ばれたら即参上!何もかも吹き飛ばして、終了っていうのは?」

 

「一体、何を吹き飛ばすつもりだ!?つーか、キャロをどんなキャラにする気だよ!?引くわ!!」

 

ちょっと、交渉してみたけれど神崎は引く気がない様子。

残念無念ではあるが、巨大蜥蜴のお肉はお預けになった。

 

「わかった、わかった。じゃあ、何か食える物を採ってきて!腹ペコで、視界に入るもの全部食べ物に見えるんだ」

 

「サラッと、恐し気な事を告げないでください!!つーか、食える物って……何処にあるんですか!?」

 

「…………OK。僕の取って置きを「探してきます!!」うぃ。よろしくぅ~♪」

 

とりあえず、紫天の書を喚んで翼も召喚する。

ついでに、ユーリとピンク頭も預けて俺も鬱蒼と茂る森の中へ。神崎だけでは、食える物は採って来られそうに無かったからだ。適当に歩き回って、【真実の瞳】を駆使し食べられそうなモノを集めていく。

途中、何度か二足歩行している巨大な猛獣と出会ったけれど目が合った瞬間に逃げられてしまった。

どうも、捕食者の目付きになってしまっていたらしい。

 

「チッ!」⬅苛立ち

 

この辺りの蜥蜴は、『危機感知能力』と『とんずら』のスキルが備わっている。お陰で、中々お肉は手に入りそうにない。山菜(?)やキノコは沢山採れたので、それらを持ってクレーターに戻ると誰かの荷物を掘り出した翼が鍋の用意をしていた。良く見ると、どうやって狩ったのか白い飛竜の小さいのがいる。

 

「あ、お肉だ♪どうやって、捕獲したの?」

 

「…………たぶん、このピンク頭の子のペットじゃないかしら?って。何、エーって顔してるのよ!?」

 

「それって、原作組って事だろう?もう、気が付かなかった事にして食べない?」

 

「原作に関わってるなら、食べちゃ駄目じゃない?もう、潔く諦めなさい」

 

「ううっ……お腹すいたぁ……」

 

「貴方、精神生命体なんでしょう?食べなくても、問題ないんじゃなくて?」

 

「普通に名前で呼んでくれて良いよ?確かに、食べなくても問題ないけど……これまで、原作組に食べる事を強制されて来たから異様にお腹が空くんだよ……」

 

「……………………」

 

「いっそうの事、このピンクの幼女を……」

 

「ちょっと、食人はヤバイでしょ!?」

 

「なら、売る?売ってお金にする?」

 

「何、サラッと人身売買宣言してるのよ!?許す訳ないでしょう!?」

 

「…………じゃ、ミッドチルダに行ってゴミ箱漁る?」

 

「山菜採って来たんでしょう?キノコもあるじゃない。ほら、これでご飯にしましょうね?」

 

「ううっ……お腹空いたぁ……」

 

冗談でも何でもなく、普通にお腹が減っていた。

もしかすると、魔力が足りないのかもしれない。

前回、“中”から“外”に出た後……他の《神殺し》達と協力して《旧・神族》を断罪した訳だけど、その時に無茶をし過ぎて一度本体に回収される事態になった。

そのお陰もあって、半分以下にまで消費しちゃっていた魔力は完全回復した訳だけど……前回の世界で、ゲペル〇ッチでミッドチルダを襲わせた際、一般人を避難させる為にかなりの魔力量を消費。

またもや、魔力に貧困しているという状況だった。

まあ、このまま何事もなく現状を確認し終える事が出来れば、そこそこ回復するだろうと予測はしているが……不測の事態というものは何時でも起きてしまうモノだ。

それに、だ……現状、ちょっとばかり厄介な状況になっていた。魔力枯渇で、本体に回収された事により……世界に突き立てていた《ルール・ブレイカー》等が、一度リセットされた形となってしまったのである。

ただし、個人に使用した《ルール・ブレイカー》は……使用された個人の生命力を吸収して存続維持されているので問題はない。吸収される生命力も、微々たるモノだしな。

だが、今一度《ルール・ブレイカー》を突き立て直さなければ、【次元消滅術式搭載型爆弾無害化】は無効状態になってしまっているだろう。

【転生者限定性転換】に関してもだ。

その代わり、有益な事もあった。一度、本体に回収された事で再構築された俺は前回まであったシステム的バグを取り除き、正常なシステムとなった事で劣化モード・通常モード・戦闘モードの切り替えを可能にし、更には回転式魔力動力炉も平常運転が可能となったのである。

ぶっちゃけ、魔力出力も上がって安定したので今まで使えなかった【召喚】も解禁されていた。

例の、あの天使だって喚べる。面倒になったら、彼を呼び出して転生者にぶつければ全て問題なく解決だ。

 

「…………ミッドに行こ?」

 

「行ってどうするのよ!?お金無いでしょう!?」

 

「大丈夫。僕達、強いから!!」

 

「思いっきり、駄目な方に走っているわね」

 

何れにしろ、最終的にはミッドチルダに行く事になるので遅いか速いかの違いである。

 

「ミッドの座標、覚えてる?」

 

「…………座標……知らないわよ?」

 

「ユーリは?」

 

「あー……ちょっと、わからないです……」

 

「前回の世界で、登録してないの?」

 

『忘れてました』

 

「うへぇ……神崎は、デバイス事態持ってないし……はぁ」

 

神崎のデバイスと武器は、まだ掛かるので今は棚上に上げて置いて……役に立たない、自称俺のデバイスとその守護騎士はシュンと小さくなっていた。

 

「レイジングハート……ミッドの座標、わかるかい?」

 

《Yes. It has been registered.》

 

「ここから、跳べる?」

 

《Yes.》

 

「あるんなら、私達に聞く必要無いでしょう?」

 

「レイジングハートやバルディッシュは、極力使いたくないんだよ。なのはママ達に不信感を、転生者達に敵対心を持たせるだけの代物だからね……」

 

「……確かに、反論の余地は無いわね……」

 

神崎の言う『GOD』を体験したのなら、ユーリを見るだけで封鎖されていた記憶が戻り原作人物達に不信感を抱かせる事になる。

その為に、平行世界とかの説明をしなければならなくなるのは時間の無駄だ。それをすれば、転生者との確執も出来るかも知れないと神崎も言っていた。

一般転生者(亡者)の回収が目的なのに、インスタント・ソウルの転生者と殺り合うのは効率が悪い。そりゃあ、彼等も断罪対象だけど上手く立ち回れば世界を歪める事なく、彼等は未来を形成できる様にもなっている。

ぶっちゃけ、彼等が悪落ちするのは一般転生者の記憶持ちにそそのかされたからってのが大きい。彼等に、そそのかされたインスタント・ソウルの転生者が原作人物達と敵対する事が最近判明した。

 

「それに、君達には僕と別行動して貰わないとイケなくなるだろうし……特に翼は」

 

「どうして?」

 

「何時までも、僕と行動を共にしていたら功績を上げる所じゃないじゃないか……」

 

「…………ああ、そうね……私は、功績を上げて【転生】するのが目的ですものね。貴方と一緒だと、功績を上げる所ではないわね……」

 

「うん。そういう事だね……ああ、僕が君達に伝えるのは方針だけだよ?それに対して、君達がどう行動するかは何も言わないからね?そこは、各自臨機応変に対応してね?僕と出くわしても、極力知らん振りを推奨しておくよ?」

 

「……了解よ。それで、方針ってどんなモノなのかしら?」

 

「神崎が戻って来てからでも良いけど……大まかには、【転生者】の捜索。発見した場合の対処。その後の監視や報告義務かな?」

 

これは、使い魔達が元から行っている方針を告げていく。

真面目な彼女は、メモを取り出して姿勢を正した。

 

「【転生者】の捜索と発見した場合の対処。それから、発見後の監視や報告ね?」

 

「監視の中で、スキルが判明したら……その都度、フレールくん経由で報告を上げてくれれば良いからね?」

 

「わかったわ。他には、あるのかしら?」

 

「転生者達が、企んでいる事の発覚。その後、転生者達がその企みを行動に移した際の戦闘参加とかかな?」

 

「結局、戦いになる確率が高い訳よね……」

 

「それは……まあ、仕方がないかな?」

 

世界そのものが、バトルを前提にしたお話だと神崎が言っていたから。その要素が、抜かれる事はほぼ無いらしい。

とは言うものの、戦闘方面で翼達の活躍は期待していない。その役目は、転生者の発見と監視に重点を置いているからだ。問題児……ではなく、一般転生者にたぶらかされた転生者が現れる前に確保しなければならない。

 

「……にしても、あの馬鹿はどこまで行ったんだ?」

 

「さあ?バカの事は放って置きなさい」

 

「どこかで、ここの蜥蜴にでも食われているのかな?」

 

「……蜥蜴?って、ドラゴンの事?」

 

「蜥蜴は、蜥蜴だろう?《ヴォーテット・アクア》はい、水……鍋に入れるよ?」

 

「まあ、蜥蜴とも言えるけど……あ、ありがとう」

 

「処で、翼は自炊可能なのかな?」

 

「できるわよ!これでも、この世界の両親に捨てられた時に出来るようになったわよ!!」

 

「…………苦労してるんだね……僕は、時間だけは有り余っていたから普通に出来るよ?まあ、段々ジックリガッツリヤるようになっていったから二ツ星レストラン級になっちゃったけどね……」

 

「……貴方、一人だったんでしょう?何で、二ツ星レストラン級だってわかるのよ?」

 

「料理の為に材料を購入しなきゃならんだろう?」

 

「業者に食べさせた訳ね!」

 

「業者じゃないけど……まあ、似たようなモノか。ソイツは、色んな資格持ちなんでザクッリ試験してくれて二ツ星をくれたんだよ」

 

「……ふーん。でも、何で二ツ星なの?普通に言ったら、三ツ星じゃないのかしら?」

 

「悪戯したから(笑)超濃縮激辛256倍を食わせてみた」

 

「……………………」

 

呆れたような顔をする翼。

だが、悪戯は俺のアイデンティティーの一つだ。

真面目な席だから、という理由で止められるはずがない。

激辛な一品に口を付けた業者(笑)は、壮絶に一暴れした後で痙攣しつつ俺の料理を評価したのだった。

即ち、二ツ星レストラン級の料理である……と。

その後も、『痛い、痛い』という業者(笑)に介抱する様に見せ掛けつつ【水】を渡したりした訳だけどお咎めはなかった。後日、正式書類を持って来た時にもみらたし団子風のおもてなしをしたけれど頑張って食べてくれる。

こちらが、申し訳なくなるくらいお人好しだった(笑)。

その後、翼の料理は続き……水の入った鍋に、山菜とキノコを突っ込んだ所で周囲を見回した翼が固まる。

 

「火は、どうするの!?」

 

「火?魔法で、何か燃やす?」

 

「燃やすって言っても、何を燃やすのよ!?」

 

「森!」

 

「山火事になるわよ!!」

 

「じゃ、精霊魔法を使う。えっと……火の精は……と?」

 

「精霊魔法?って、貴方……一体、幾つ魔法を修得しているのよ!?」

 

「双夜で良いって言ってるだろ?あ、いたいた!おーい」

 

という訳で、翼から見ては何もいない何もないはずの所から炎が上がり俺が鍋を空中に置くと頭を抱えてしまった。

 

「支えるモノが、無いでしょう!?どうなっているのよ」

 

「重力制御。無重力状態で、鍋を浮かべてるんだ」

 

グツグツ煮たって来た所で、適当に香料を入れて更に煮込む。しかし、山菜とキノコだけとは……何とも、味気ない鍋になったモノである。

 

「せめて、川か水溜まりを探してお魚でも捕ってくれば良かったな……」

 

「その手があったわね。……あ。もしかしたら、神崎……魚を探してるんじゃないの?」

 

「お肉は無理だから、魚かぁ。あり得るかも……」

 

俺の為に!とか言いながら、あっちこっち走り回っているような気がして来たのでフレールくんに神崎捜索を頼んでおいた。見付かれば、知らせが来るので気兼ねなくご飯に集中出来るというモノだ。

しばらくして、煮込み終えた鍋を火から降ろし……いざ、食べよう!となった所で翼が小さく悲鳴をあげた。

振り返ると、料理の入った鍋を片手で掴んだまま何かに捕まった体制でギリギリ鍋を落とさない様に頑張っている翼が視界に入って来る。

良く見れば、彼女の片足に赤色の光が見えた気がした。

 

「時空管理局だ!抵抗を止めて、大人しく投降しろ!!」

 

見上げれば、数人の局員の姿があった。

抵抗とは、なんぞ?ってか、何をしたというのだろう?

意味がわからなかったが、話をするような気配はない。

【真実の瞳】からは、手柄とか点数稼ぎとか色々。

俺はというと『ああ、アレが余りよろしくない局員の方々なんだなぁ……』等と考えていた。

一度、思考を戻し翼を押さえているそれを見る。

翼を捕まえているのは、あの局員のバインドらしかった。

全くもって、無抵抗で何もしていない俺達を拘束するとか意味不明である。ここでは、ご飯を食べてはいけないという法律でもあるのだろうか?ともかく、俺は翼の手から料理を受け取り翼に引き千切れないか問う。翼は、首を横に降って『抵抗しない方が良い』と言い出した。

すると突然、俺の手にあった鍋が吹き飛んで行く。

 

「抵抗するなっ!この蛮族共がっ!!」

 

「僕のご飯……」

 

「お、落ち着いてください!」

 

「落ち着きなさい。今は、アレを刺激しては駄目よ!?」

 

どっちが、犯罪者なのかわからない対応だった。

相手は、こちらを見下しているのか傲慢に事を進めようとする。高々、Aランクに満たない下級魔導師の分際でだ。

ちょっと、魔力を解放してやれば一瞬で腰を抜かしチビって情けない姿を晒してくれるのに……面倒な話だった。

俺達は、出きるだけ動かないようにしつつ近付いてきた局員に拘束される。拘束された後で、俺は少し後悔していた。俺や翼は、大丈夫だけれどユーリは完全な魔法生物だ。

多少、誤魔化しているけれど……どこまで、コイツ等の目を欺けるかはわからなかった。

次元航行艦に連れて行かれ、牢屋とおぼしき場所に入れられる。と、そこには気を失っている神崎の姿もあった。

 

「何時から、捕まってんだよ?」

 

「さあ?どうなんでしょう……?」

 

俺は、ユーリそれとピンク頭と共に神崎の側まで寄り腰を落とした。この場に、翼の姿はない。牢屋にくる前に、取り調べと称して彼女は別室へ連れて行かれた。

今頃、取り調べと称したセクハラ三昧が行われている最中であろう。俺達を引き裂いた時、局員には赤黒い情欲の感情が見えた。あれはもう、どうしようもないクズの光だ。

翼の容姿は、この上なく綺麗だし体付きは男の情欲をそそる。女日照りの男には、極上の女に見える事だろう。

しかし、翼の肉体は筋力EXの超強化型人間。

あの局員が、何処までヤれるかは不明だが……何となく、オチは見えている様な気がする。

 

「入るのかな?例え、入ったとしてもへし折られる未来しか無いような気もする……」

 

とりあえず、翼に着けてあるフレールくんには事の全てを記録に納めるようには言ってあるので、翼に手を出した局員は後で社会的抹殺をする予定だ。

しばらくすると、翼と翼を連れて行った局員が拘束された状態でこの牢屋ルームへ連れて来られる。

翼は俺達と同じ牢屋に入れられ、局員はもう一つの牢屋へと放り込まれた。

 

「我々の仲間が、すまなかった」

 

「お腹空いたー……」

 

「こんな辺境に来てまで、セクハラに遇うとは思わなかったわ……どう、落とし前を着けてくれるのかしら?」

 

「君達の拘束を解く訳にはいかないが、それなりに融通はしよう……」

 

「お腹空いたー……」

 

「そう。じゃあ、私達が拘束される理由を聞いても良いかしら?」

 

「……何を言っているんだ?君達が、保護区で暴れたからだろう?」

 

「お腹空いたー……」

 

『……………………』

 

「そう。ユーリのせいだったのね……」

 

「ご、ごめんなさい!でも、元はと言えば気を失っていた双夜が襲われそうになったのを退けただけなんです!」

 

「お腹空いたー……」

 

「……過剰防衛では?ま、まあ、そこで反省しておきたまえ。それと、直ぐにご飯は用意させよう……」

 

「わーい♪」

 

それだけ告げると、その局員は牢屋ルームの外へと出ていった。その後、先程の局員の言葉通り俺達には食事が与えられ、神崎を叩き起こしてご飯と相成る。

 

「すいません。不意を打たれまして……」

 

『踏み台だもの。仕方がない(わ)……』

 

「(泣)そ、そんなぁ……」

 

等と神崎をイジメたり、神崎が四次元ポケットから取り出したUNOで遊んだりしていた。

その間にも、取り調べはある訳で俺達は色々と調べられる。その結果が、俺と神崎がレアスキルはあるけど魔力無しとなり、翼とユーリは魔力ランクSの魔導師認定。

俺が気にしていた、ユーリに関しては問題にすらならなかったとだけ言っておこう。局員の目が節穴過ぎるのか、こちらの偽装が高等過ぎたのかはわからないがバレる事はなかった。

 

「それで、翼はどうするの?報復?訴える?社会的抹殺するなら、幾らでも力を貸すよ?」

 

「報復ならしたわよ?こう……グシャッとね」

 

翼は、手を開いた状態から一瞬で握った状態にした。

瞬間、『うおぉ!?』と神崎が股間を押さえて引く。

 

「その後は、翼が悲鳴をあげた訳じゃ無いんだろう?」

 

「もちろん、相手が『ぎゃあああぁぁぁ』って蛙が引き潰されたみたいな声を上げて沢山の局員が部屋に雪崩れ込んで来たわ。私は、服が破れてたから『襲われた』って言葉が通じたけれど……」

 

「フムフム。じゃあ、社会的抹殺でOKだね?」

 

「ええ。お願いするわ」

 

「OK。アルカ、あの局員の素性調べて潰せそうなのがあったら流出させちゃって!」

 

〔了解です……〕

 

「…………出て来ないわよ?」

 

「出て来て消えたら、監視カメラに写っちゃうじゃん……」

 

「…………ああ!えっと、私達の会話は?」

 

「大丈夫。防音してる……」

 

基本的に、こういう場所の監視カメラには音声を拾う機能は無い。そりゃ、特定の人物や複数の犯罪者を入れてるなら別だけど犯罪者の動向を見るだけで良いのならカットした方が効率的だ。それでも、俺は防音結界を展開していた。何故なら、俺達の隣には翼にセクハラを働いた局員が入っているからである。今後、コイツがどういう扱いを受けるかわからないが危険視して置いた方が良い。

転生者ではない、この世界の住人だけど何処で誰と繋がっているのかもわからないのが現状だ。

ならば、出来るだけ警戒して置いた方が正しいのである。

 

「……それよりも、僕はその子の事が気になるかな?さっきから、目が覚めてるのに寝た振りをしているみたいなんだけど……」

 

「はうっ!?」

 

目を開いたピンク頭は、起き上がるとキョロキョロと周囲を見回してハワハワと慌てながら、俺達と距離を出来るだけ取って牢屋の反対方向へと駆け寄り頭を抱える様にしゃがみ込んでしまった。

 

「えっと……今のどう取れば良いのかな?」

 

「気を失っている間に、知らない所で知らない人達に囲まれていれば、ああなるんじゃないですか?」

 

「じゃ、ユーリにおまかせで」

 

「ええっ!?わ、私ですか!?」

 

「そうね。適任だと思うわ……」

 

「大人な俺達よりかは……まあ、師匠でもイケそうですけど……見た目と中身のギャップさえ、目を瞑れば……」

 

「とりあえず、神崎は鉄格子の間に頭突っ込もうか?」

 

「ヒィイィィ!すみませんでした!!」

 

という訳で、ピンク頭をユーリに押し付けて俺達は今後の話を進める。クレーターで、話した通りの事を神崎に伝えた訳だが難色を示す。

 

「それって、修行を放置する事になりません?」

 

「……そんなに、ブラックなのか?管理局って……」

 

「ええ、まあ…………」

 

「……生活するなら、お金は必要よね?」

 

「神崎と翼は、セットで行動するの?」

 

「あー……それは、不知火の判断待ちかな?」

 

「私は、構わないわよ?セクハラを働くなら、グシャッと握り潰すだけの話だから……」

 

「するか!?ってか、襲うか!?死ぬわ!!」

 

「……………………それはそれで、ムカつく話なのよね……」

 

いっそうの事、ラフな姿で毎日目の前をフラフラうろついてやろうかしら?とのたまる翼にドン引きして、涙目ですがり付いてくる馬鹿の頭をナデナデしてやる。

 

「師匠ぉー…………」

 

「ガンバ!踏み台」

 

何とも情けない姿であるが、いずれは踏み台を卒業して先頭に立って貰う予定の馬鹿である。

やはり、精神強化を考える必要があるみたいだ。

それに関しては、今は良いとして俺は管理局に着いた後の事を考えていた。きっと、ユーリと共に別の所へ行くだろうと予測する。

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

結果だけを言うなら、その予測は正しかった。

俺達、子供組はとある施設へ。

神崎達は、デバイスやら何やらの登録の為に別行動になるらしい。希望があるなら、局員にお願いするとある程度は通った。しかし、保護観察対象が保護者にはなれないらしく、俺達子供組は施設へ移される事となる。

 

「必ず、迎えに行くからね?」

 

「にゃ!」

 

「はい。お待ちしております!!」

 

「身体には、気を付けて……るんだよ?し……双夜……」

 

「にゃ!」

 

「それは、大悟も翼もです。気を付けてくださいよ?」

 

『ああ、わかってる(わ)』

 

「バイバイなのー」('-')ノシ

 

キリの良いところで、別れの言葉と共に手を振って置く。

何もわかっていない風を装って、その後は年長者ッポイユーリに抱き付いて様子見。

いずれにしろ、俺は非魔導師認定されているので、もしかするとユーリ達とも別れる可能性があった。

その時は、隙を見て脱走し紫天の書を呼び出して召喚すれば良いだけの話だ。だが、俺には囮として原作人物の周辺をウロウロしないとイケない使命がある。

この場合は、ユーリの隣にいるピンク頭を指す訳なのだが……さて、どうしたものか。

そうこうしている内に、俺達は別の局員に連れられて昇ったり下がったりしつつ開けた場所へと入って行く。普通であるならば、『出て行く』と表現した方が良いのだが、そこがドーム状の住居区でなければそう言っていただろう。

そして、俺達は住居区のとある施設に預けられる事となる。案内してくれた局員とは、そこで別れて俺達は一つの部屋へと押し込められた。

部屋の中を見回す。それから得られた情報は、本来ならば四人で使う部屋だという事だけだ。監視カメラや盗聴機みたいなモノは無く、普通に生活出来るような施設だった。

 

「……どうしましょうか?」

 

「ベット、上と下……どっちが良い?」

 

「え!?わ、私ですか!?」

 

「そそ。あ、僕、如月双夜。みんなは、双夜とかソウニャとか言うよ?好きな様に呼んでね?」

 

「あ、は、はい!」

 

「キャロは、上と下どっちが良いですか?」

 

「あー……それじゃあ下で……」

 

「僕も下かな?」

 

「じゃあ、私は双夜の横で寝ますね!」

 

「なんでやねん!」

 

「はわわわ/////」

 

その後、落ち着いたピンク頭が自己紹介をして漸く名前で呼べるようになる。

 

「じゃあ、キャロは住んでた所を追い出されちゃったんだ……酷い話だね……力が、暴走する程度の話で……」

 

「でも、仕方がない事だから……だから、私といると危険なんだ……よ?」

 

「大丈夫だよ。暴走しても、ユーリが何とかしてくれるから……見ただろう?ユーリが、キャロの暴走で出て来た蜥蜴をボッコボコにしてたの!」

 

「う、うん……」

 

「そうですよ。また、暴走したら私が止めますから!」

 

ムンと、力瘤も出ない腕を曲げてユーリが笑う。それに俺も、コクコクと頷いてキャロの頭を撫でてやった。

 

「だから、安心して良いんだよ?竜を制御するのは、後回しでも良いんだから。今は、史上最強の元でのんびりしていれば良いさ……」

 

「いざとなれば、双夜もいます。大丈夫ですよ?」

 

「……………………うっ……ううっ……」

 

張っていた気が緩んだからか、キャロはその日ずっと泣いていた。

 

 

 

 

 




ヴォルテール、逃げてー!ムッチャ、逃げてー!!
奴は、『食う』と言ったらマジで食うから!!本気で逃げてー!!とか、ユーリのバインドに捕らわれたヴォルテールを書いてて叫んでました(笑)
さて、ピンク頭の幼女のお話ですw
別に、思考がピンク等ではありません。
髪の毛がピンク色だから、ピンク頭何です!!(笑)

双夜を、腹ペコキャラにしてみましたw
危険度がヤヴァイ。見るもの全てが食べ物に見えるらしい。
何て恐怖を煽る発言!マジで危険人物となった双夜は、これから何を口にしていくのか……楽しみにしててくださいw(嘘)
まあ、レリックくらいは食べれるけどw
これも全て、アリちゃママ達が悪いんだ……いらないって言ってるのに、無理に食べさせるから……www

ルール・ブレイカーに関しては、全損。
今のところ、何のキャンセルも割り込みもリセット状態です。人物に関しては、問題なく継続中。

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!

いつも読んでくれる方々に感謝を……。

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