絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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テーマは、【重力】です!!


八七話 ちょっとその前に……。

???

 

 

 

-生前ー

 

 

 

彼女は、ずっと独りだった。

別に、親がいなかった訳でも、愛されていなかった訳でもない。きっと、普通の子供よりかは親に愛されていた方だったと言えるだろう。ただ、彼女には同年代の友人は愚か話し相手は看護師や医師位しかいなかった。

とても身体が弱かった彼女は、ずっと入院していて無菌病棟の個室で親が買って来た漫画や小説を読み漁るだけの日々。

幼い頃は、普通の子供の様に保育園に通っていたけれど、病気が発病してからはずっとこの無菌病棟に隔離されている状態だ。保育園に通っていた期間も、短かった為に友人なんて呼べる同年代の少年少女もおらず……その上、無菌室で無ければ命に関わる可能性があった為部屋から出る事すらままならなかった。

だから、彼女は常に孤独だ。

親が来ている間は問題なくても、面会の時間が過ぎれば何時だって独りだった。そこに逃げ道は無く、外に出たくても外に出れば命に関わる状態。

彼女は、常に見えない鎖で繋がれていた。

孤独で、不自由で、何処にも逃げられなかった彼女は『外』の事を知らず、TVゲームや漫画ばかりやり込んだり読むだけの日々を過ごしている。

お気に入りのゲームは、テイル〇シリーズ。やり込んだ時間は、多分他のゲーマーの誰よりも多かったはずだ。

その次に、名作と言われている『ドラゴン〇-ル』。

アニメも漫画も飽きる程に、ホンの少しだけどゲームもやった。時間の許す限り、徹底的にである。

それでも、彼女は退屈だった。

親と医師以外の面会者はおらず、ずっと籠の中で過ごす。

たまに聞く、友人という言葉も自分自身には関係の無い話だった。この病室から出る事も、誰かと会う事も無い日々が静止した彼女の日常だ。

今でならば、防護服等を着て病院の幼児病棟へ出る等の事も出来ただろうが、当時の技術や状況ではそんな事はさせて貰えなかった。

そんな彼女が、自分の我が儘で親を心配させる訳がなく。

決して、本音を告げる事はしない。

口を閉ざし、叶わぬ未来を夢想する。

みんな、彼女の孤独をわかっていただろうし、何とかしてあげたいと願ってはいたけれど……『外』に出れば、確実に感染症を引き起こす上に、複数の病原菌に掛かれば命すら無い彼女の抗体機能損失症がその願いを邪魔していた。

そう、彼女の身体機能には抗体機能が存在しなかったのである。その為、病気に掛かれば何の事のない風邪でも命に関わる病気に発展する可能性があった。

そもそも抗体機能が無いのだ、ウィルスに感染すればあっという間に死亡してしまう。

幼い頃は、まだ少しだけその機能があったらしい。

だけど、大人になるにつれその機能は完全に失われて行った。そういう疾患らしい、という事しかわかっていないらしく……彼女を助けられる画期的な技術も薬も無い。

生きている限り、彼女は無菌室に閉じ込められ続ける人生でしかなかった。

だが、ある日の事……その人生に終わりが訪れる。

別に、院内感染が起きたとかではなく……彼女が気が付くと、意識だけが白銀の世界に放り出されていた訳だ。

そして、彼女は【神】と呼ばれる存在と謁見する事になる。【神】は、彼女の人生を哀れに思い【転生】させて上げる事にしたと語った。その上で、彼女に【特典】なるモノを与えてくれるという。

当然、彼女は『健康な身体』を望むが……【神】は、漫画やアニメ等のスキルだけしか与えられないと条件を提示した。その結果、彼女は『ドラゴン〇ールの【サ〇ヤ人】』の様な『強靭な肉体』を一つ目に選ぶ。

その次に、〇UNTER×〇UNTERの『念能力』を医療系の限定能力として選ぶ。

そして最後に、テイルズシリーズの全技・魔法を願った。

というか、それしか選べるモノが無かった訳だが……彼女は気が付かない。

何故なら、健康な肉体を得られるチャンスが漸く自分の元に舞い込んで来たのだ。

そこに、【神】を名乗った存在の悪意があるなんて気が付かない。いや、気が付ける訳が無い。

そもそも、彼女がそれに気が付ける程に対人能力が高い訳が無いのだから。精々、幼稚園児程の対人能力しか持たない彼女が相手の悪意を知るはずがない。

籠の中の鳥だった彼女に、それだけのコミュニケーション能力が備わる訳もなかった。

 

そして、彼女は【転生】する。

 

 

 

 

 

-転生後ー

 

 

 

目覚めれば、見た事のない天井。

それを、遮る様に視界に入って来たのは見た事のない親の顔。全てが珍しく、何よりも眩しかった。

ずっと、欲しかった健康な身体を得た彼女は赤ん坊からやり直したにも関わらず……楽しそうに、嬉しそうに日々を過ごしていた。新たな両親達も優しかったし、何より彼女は外を走り回れる事に……その幸せに泣く。嬉しくって、楽しくって……夢想するしかなかったモノを手にして、彼女は幸福感でいっぱいだった。

月日は流れ、彼女が五歳程になった頃……漸く、自分の能力を試し始める。テイルズシリーズの技や魔法を使って、訓練みたいな遊びを始めたのだ。

確かに、周囲の目を気にしていたりもしたけれど、それ以上に自分自身の手と足でずっとハマっていたゲームの技や魔法を使う日々は彼女にそれを知られる危機感と危険性を忘れさせてしまう。その上、彼女は自分が得た【特典】がどれ程のモノなのかを理解していなかった。

その頃から、彼女の周囲の者達が彼女から距離を持ち始めたのである。最初は気が付かなかった彼女も、小学生に上がる頃にはソレに気が付いたけれど……既に遅かった。

みんなが……という訳ではなかったが、少しずつではあるが確実に彼女の異常性が広まって行く。

そして、半年もしない内に彼女は生前と同じ独りになっていた。家でも、外でも、学院内でも、彼女の周りには誰も近付かない。

まるで、腫れ物を扱うかの如く彼女は隔離されていく。

理由は、『ドラゴン〇ールの【サ〇ヤ人】』の様な『強靭な肉体』だ。それが、遊びみたいな訓練によって鍛えられた結果……他人に触れる事が、困難になってしまったのである。ちょっと触るだけで、相手を傷付けてしまう彼女は小学校に上がった時には周囲から『危険人物』の烙印を押されてしまっていた。小学生とは思えない、身体能力。

最早、『化け物』級の身体となっていた彼女は……小学生処か、大人ですら力で勝ってしまう程である。

最終的に、彼女には近付く者は誰一人としていなくなってしまった。近付こうとすれば、慌ててみんな逃げていく。話し掛けても、誰も返事すらしてくれない。

イジメではないけれど、誰も彼女に関わろうとしない状況が出来上がってしまっていた。それに気が付いた時、彼女は酷く傷付き『健康で強靭な肉体』がコンプレックスへと変わっていく。

そして、生前と変わり無く彼女は孤独になってしまった。

周囲には、たくさん人がいるのに彼女は常に独りだ。

話し掛けても、遊びに誘っても、誰も彼女と一緒にいてはくれない。その内、彼女は諦めて何もしなくなった。

誰とも話さず、【特典】も何も使わず、日々を怠惰に過ごすようになる。昔の様に、本を読んだりアニメを見たり独りで出来るような事ばかりするようになって行く。

更に、彼女の孤独を加速させる要因が発覚する。

彼女が、不幸になるのと比例する様に、彼女の家が大きくなって行くのだ。即ち、お金持ちになっていくのである。

彼女が生まれてから、現在の家は少しずつ大きくなっていく。ソレは、彼女が友人を作るのを止めると同時に激化した。だが、彼女は気が付かない。

不自由なく暮らせるし、今世の両親が毎日笑顔で暮らしているから気にもならない。まさか、自分がどれ程現在の両親に気味悪がられているのかさえ理解していなかった。

何故なら、彼女の異常性は誰が見ても明らかだったからだ。どれだけ、彼女が隠していると思っていても周囲には筒抜けだ。

美少女というには、あまりにも人間の枠を超えた様な美しい顔立ち。まるで、作り物の様に作られたかの様な肉体。

そして、史上最高の身体能力。不可思議な能力を持ち、神様に寵愛されているかの様な不思議な少女。

成長すればするほど、それらは際立って行く。

ただ、生きているだけなのに周囲からは注目の的になっていた。ただ、友達が欲しいと願っているだけなのに周囲からは妬まれ憎まれ続ける。

周囲の少女達からは、嫉妬と憎しみの対象に。

周囲の少年達からは、憧れと畏怖の対象に。

何処にでもいる、普通の子供であろうとすればする程悪目立ちして行く。

結局、夢想するのは叶わない夢。

普通の人生と、健康的な身体。そして、友人のいる生活。

だけど、叶わない。どれだけ願っても、どれだけ手を伸ばしても……その手は、何も掴めない。

彼女は、転生してもその願いを叶える事が出来なかった。

今も生前も、外を自由に歩けるという事以外変わらぬ生活。そこそこの刺激はあったけれど、友達的なイベントは相変わらず無い寂しい人生。

周囲からは、妬まれ疎まれ憎まれて両親にさえまともに会えなくなってしまった頃……その日常が変化した。

それが変化したのは、自分と同じ存在……つまりは、自分以外の【転生者】と出会った事で一転する。

小学三年生の春、彼女が通う私立聖祥大学付属小学校の一室でそれは行われた。

つまり、踏み台転生者との出会いだ。

彼は、『君、モブにしては可愛いね?』と彼女に声を掛けてきたのである。

それまで、彼女は二次創作物の知識はあっても周囲にそれらしいモノが無かった為に転生した世界が何であるかを知らなかった。

だが、この出会いが彼女に【魔法少女リリカルなのは】の世界である事を知らせる事となる。

生前、彼女はそのアニメを見た事は無かったけれど……それに関しての情報は一応持ち合わせていた。

だが、彼女はそれに関わる気が無かった為にその少年とも距離を置こうとする。

今更、誰かと友人になる気も関わる気も無かったからだ。

しかし、『彼』の言う【原作人物】達がそれを許してくれない。事ある毎に話し掛けてきて、いつの間にか友人扱いされてしまっていた。ついでに言えば、『君、モブにしては可愛いね』と言ってた奴も絡んで来る。

いや、絡んで来るというより最早ストーカーと言っても良いレベルで彼女に『俺の嫁にならないか?』と追い掛けて来るようになった。

それからと言うモノ、【原作人物】からはお茶会やお喋り等様々な事に引っ張り出されてしまう様になり、【転生者】からはストーカーをされる始末。

それにより、とっても不本意ではあったが彼女は少しだけ夢想していた夢が叶った様な気がしていた。

昔……一度目の生を受けた時、何度も何度も夢見て現実に打ちのめされたその絶望を……今になって漸く、拭いされるような気がしたのだ。

しかし、現実は酷だった。

少しずつ、笑える様になって来た頃、彼女は屋敷に一人残されて両親に捨てられてしまう。捨てられたと言っても、世間的には親が仕事の為に彼女を置いて外国へと移り住んでしまった程度の話だ。だが、両親は彼女に『ここ(家)には、二度と戻って来ない』事や生活(お金)は保証してするがそれ以外は自分自身でやれとハッキリ告げていた。

何故なら、彼女に友人が出来た頃、両親の会社が傾き始めたからである。この時には、両親も自分達の生活が豊かになった理由に気が付いていて、自身達の為だけに彼女の現状を放置していた訳だ。それが、唐突に傾き始めたという事は彼女が幸福になりつつあるという事でもあった。

だから、彼女の両親は彼女を突き放す事でそれを立て直そうとしたのである。

結果、彼女の両親の会社は立ち直った。

それどころか、以前よりも儲かるようになったのである。

彼女を手離す事は出来ないが、彼女を不幸にすればする程自分達が幸福になれるという法則に気が付いてしまった。

その事があるからか、両親は事ある毎に彼女に辛く当たる様になる。人を雇って、彼女を誹謗中傷してみたり、あらぬ噂を流してみたりとやりたい放題。

ただし、直接的な事は彼女の身体能力を考えると不可能な話になるので暴力や暴行をする事だけは避ける。

だが、それ以外なら何でもやった。一番、効率の良い方法が取れない故に少しだけ苛立ちめいたモノがあった事は否めない。だが、それだけでも彼女の両親にもたらされる富は十分なモノだった。

更に月日は流れ、彼女は最強の理不尽に出会う事になる。

それは、見た目的には幼い幼児であったが、自由奔放でやりたい事をやっているだけの幼児だった。

その幼児と会ったのは、指折りで数えられる程度だったけれどその在り方には少しだけ憧れてしまう。しかし、その憧れは108機からのディバインバスターとスターライトブレイカーによって粉砕された。もう、無茶苦茶だった。

それまでの自分の人生は、何だったのかと思う程にソイツのやる事成す事全てが無茶苦茶だった。

だけど、一つだけ学んだ事がある。

彼女は、我慢はしない事にした。

嫌な事は、『嫌』と言える人になると誓う。

 

 

 

 

ーTAKE2ー

 

 

 

そして、彼女は世界の消滅と共に人生のやり直しを実行する。こうなる事は、あの幼児に聞いていたので別段驚きはなかった。

しかし、赤ん坊からのやり直しだなんて思っていなかった彼女は少しだけ、その羞恥心に後悔の念を持つ。

だからという訳ではないが、彼女は今度こそ幸福になる為に奔走する。二度目の人生だ。今度は、遊びの様な訓練はせずに、普通の子供としてそのやり直しを慎重に進めて行く。だが、周囲の反応は二度目でも同じだった。

大人しく、目立たないようにしているのに注目の的になってしまう。人の視線から、逃れる事が出来なかった彼女は頭を悩ませる事になった。

だけど、一つだけ変化した事があるにはあったのだ。

それが、目の前に座っている幸薄そうな少女。

名を『霧島白亜』という。TAKE1(彼女に取って)で、無茶苦茶な幼児に【十字架天使】並の浄化を受けてしまった、あの『霧島白亜』だ。現在では、きっと【転生者】の中でも一、二を争う程に変わってしまった少女だろう。

彼女が驚いたのは、『彼』が『女性』になっていた事だ。

あんなにも悪質だった彼が、こんなにも可憐な少女になって来たこと事態が、あの無茶苦茶な幼児の手によるモノ。

そんな少女が、自分を訪ねて私立聖祥大学付属小学校に上がる前に会いに来た事が一番不思議だった。

 

「ご、ごめんね?い、いきなり訪ねて来ちゃって……」

 

「別に構わないわ。それで、用件を聞いても良いかしら?」 

 

「あ、うん……僕ね、この間……拉致られたn『ゴン!!』え!?あ……だ、大丈夫!?」

 

「誘拐!?誘拐されたの!?何で!?」

 

唐突な告白に、彼女はテーブルに頭を打ち付ける。

一瞬だけ、あの無茶苦茶な幼児の邪悪な笑みが頭を過ったが、確証の無い事を口にするのは憚られるので喉まで出掛けたその言葉を飲み込んだ。

 

「うーん……多分だけど、より女の子が凌辱される時の絶望を知らしめる為じゃないかな?」

 

首を傾げて、霧島は少しだけ怯えた様に苦笑いする。

それを見た彼女は、またもや幼児の邪悪な笑みを頭に浮かべた。彼女のその予想は、当たっている訳だが決してそれを口にはしない。

 

「……………………はあ。それで?」

 

「僕ね、誘拐されて暴行を受けたんだけど……」

 

「暴行を受けたの!?」

 

「え?あ……うん。すごく、怖かったぁ……」

 

霧島が、目に涙を溜めて泣き始める。

それで、彼女は気が付いた。別に霧島は、自分に用件がある訳ではないのだと。ただ、体験した恐怖を誰かに聞いて貰いたくて自分の元にやって来たのだろう。だけど、彼女には気の効いた言葉を掛けてあげる事は出来なかった。

 

「僕も、あんな事をしてたんだよね……」

 

「そうね…………苦しい?」

 

「……うん。でも、自分がした事だから……」

 

「……………………強いのね……」

 

「そんなこと無いよ。逃げ出したいけど、向き合わなきゃイケないことだから……」

 

「……それで?そんな事を報告しに来た訳じゃ無いんでしょう?何故、私に会いに来たのかしら?」

 

「神崎くんに言われたんだ……自分に相談するよりも、不知火さんに相談した方が良いって……」

 

「?神崎が!?私に???」

 

「男である自分じゃあ、僕の疑問には答えられないだろうからって……」

 

「……………………」

 

神崎が、そう言ったのだから女の子に関する質問なんだろうと思う。だけど、それを聞いた私はまたもテーブルに頭を打ち付けた。

霧島の質問は、極々ありふれた普通の質問だったけれど……例え、女性の彼女であっても答えにくい事柄だ。一瞬、答えに困り神崎が自分に霧島を押し付けた理由を理解した。

しかし、ここで別の【転生者】に押し付ける訳にも行かずそれに答えて上げた。

 

「そっかぁ……やっばり、なってみないとわからないんだね……話には、聞いてるんだけど……重かったら嫌だなぁ……」

 

「でも、何でそんな事を思っちゃった訳?まだ、先の話でしょう?」

 

「ああ、うん。暴行を受けた時にね……犯人が、孕ませるとか言ってたから」

 

「ーーーーー」

 

普通に地雷だった事に、彼女は顔を手で覆ってガックリと力を抜く。もう少しで、また頭をテーブルに打ち付ける所だった。チラリと、目の前にいる少女に視線を向ける。

ちょっと、困った様な笑顔を浮かべた少女が、段々その純粋さが心配になって来てしまう。

偶々、少女が相談した相手が神崎だったから良かったモノの……これが、何の関係もない一般のキャラだったらどうなっていただろう?相談した相手が、女性であるならまだ良い。しかし、真っ先に神崎に相談した事を考えると……下手をしたら、その誘拐犯よりも酷い事になりそうだ。

 

「OK。わからない事があったら、何時でもいらっしゃい。私にわかる事なら、答えてあげるわ……」

 

「うん。ありがとう♪」

 

こうして、彼女と少女は友達になった。

そこに神崎も加わって、彼女達は三人で良く行動するようになる。学校ではもちろんの事、下校後も霧島とは良く見掛けられるようになり、私立聖祥大学付属小学校に入学後は【原作人物】達も加わって聖祥五大美女とまで呼ばれるようになった。他の転生者達との交流は、浅上美愛くらいだけで他とは顔を合わせる程度の関係となる。

それも、神崎を挟んでの交流で遊んだりはしなかった。

まあ、神崎発案の【転生者会議】が始まると、そこそこの交流が始まったけれど積極的に関わる様な事はない。

三年生になると、彼女はまた一人になった。

何故なら、両親と別居状態になったからである。

だけど、前回の様な嫌がらせは無い。

二回目では、彼女が不幸になっても家が大きくなる様な事が無かったからだろう。

それに、霧島や浅上が頻繁に泊まりに来るようになって彼女は以前よりかは孤独ではなかった。

その上、神崎のド阿呆が女の子だけのパジャマパーティーに顔を出すのである。一度目は、見逃した彼女だったが二度目は殴り飛ばしていた。【サ〇ヤ人】の『強靭な肉体』の一撃が、彼に瀕死のダメージを与える事となる。

当然、彼女は神崎の治療をしてから悪夢に魘される霧島の隣で眠った。神崎の方は、自業自得な上にその踏み台ッポイ行動が彼女達には不評である事を知っている。

それでも、それをしていたのはJS事件中夜の見回りで彼女が何者かに嫌がらせを受けていたのを知ってしまったからであった。彼女は、気が付いていなかったみたいだが両親の嫌がらせは確かにあったのだ。

ただ、彼女が知る前に誰かさんがその嫌がらせを無かった事にしていただけなのである。まあ、当人は精神修業の一環としてやっていたみたいだけどその後に様子(パジャマパーティー乱入)を見てから帰っていた。

原作が始まると、神崎や他の転生者が介入して事件の主犯を助けたりしたらしいという話を彼女は美愛から聞く事になる。それで、プレシアとアリシアが助かった事を彼女は知った。

その上で、フェイト・テスタロッサの処遇について訪ねると無罪にはなるらしい。ただ、プレシアの裁判が終わるまではアリシアのリハビリに付いていてあげるとかでミッドチルダ行きになるとのこと。

彼女は、原作の話なんて聞きたくなかったが友人達がやった改変の顛末を楽しそうに話す美愛を止める事はない。

大事な友人だったから、合図ちを打ちながら適当に聞いていた。

空白期を開けて、第二期に入った10月頃……神崎が、何者かに襲われたと霧島に彼女は聞いた。一応、無事とのこと。霧島には、その時にそれが【闇の書】と呼ばれるロストロギア事件だという話を教えられた。

魔力を持っているなら、気を付けてね?とも言われた訳だが……まさか、彼女自身が襲われる身になるとは思ってもいなかった。TAKE1の時には無かったイベント。だけど、今目の前にいるのは紛れもない守護騎士だった。ピンクの髪をポニーテールにして、無言で剣を構えている女騎士風の女性だ。

 

「何か、御用かしら?」

 

「……………………驚かないのだな……」

 

「……驚異であるなら、逃げてるわよ?でも、あなた程度じゃあ驚異にすらならないわ。逃げるなら、今の内よ?」

 

「ほぉう……」

 

女騎士が、ニヤリと笑いギラギラとした瞳で更に一歩踏み込んで来る。彼女は溜め息を一つ吐いて、聞いていた通りだったと呆れて肩を落とす。

遊び半分の訓練等はしていないが、彼女の肉体スペックは『ドラゴン〇ールのサ〇ヤ人レベル』である。しかも、多少の運動でガンガン鍛えられて行くキチガイ使用のだ。

目の前にいる、守護騎士程度では傷一つ付かないだろう。

そんな事を考えていると、先手を女騎士に譲ってしまう。

『あ……』と、先手を譲ってしまった事に惜しむ気持ちがあった事は否定できない。だが、向かってくる女騎士を見て彼女が思ったのは『遅い』という事実だった。女騎士が振るう剣を、ギリギリで避けて一撃をその脇腹に入れる。

それだけで、女騎士は吹き飛ばされて地面を転がった。

女騎士は、物凄く驚いて立ち上がると……また、剣を振り上げて向かってきたけれど彼女は避ける事なくそれを身体で受け止める。女騎士の剣は、分厚い岩を剣で殴った様な……そんな衝撃と共にその反動を腕に伝えた。

 

「ぐうっ!?」

 

それには、驚愕の表情を浮かべ女騎士は彼女から飛び退く。そして、未だに痺れる自身の手を見ていた。

 

「帰りなさい。貴女では、話にならないわ……」

 

「なっ!?ば、馬鹿なっ……!」

 

彼女はその宣言と共に、女騎士を見限る様にそれを伝え一歩身を引く。それに対して、女騎士は驚いた様に剣を持たない方の手を彼女に向けてすがる様に前に出る。

そこには、『自分はまだやれる!!』とか『逃げるのか!?』という疑問の念が込められていた。

 

「逃げる訳じゃないわ。ただ、貴女程度では力不足なだけよ……私の相手には、なれないと言っているのよ……」

 

「なっ!?」

 

「私、バリアジャケットも展開してないのよ?デバイスは、家に忘れて来たから……魔法も何も使ってない状態で、貴女の剣は私に傷一つ付けられなかった。その時点で、貴女は私の相手としては力不足。身の程を知りなさい?」

 

「くっ……!!」

 

女騎士は、悔しそうに唇を噛み締めると剣を鞘に納めた。

 

「貴女の名を教えて頂きたい……私は、闇の書の守護騎士、烈火の将・シグナムっ!!」

 

「……不知火翼よ……」

 

「次に合間見える時は、貴女に見合う者となって来よう!その時は、私と戦って欲しい!」

 

「貴女が、私に見合えば……ね?」

 

「…………この勝負、預けるぞ!」

 

それだけ言って、女騎士は彼女の前から立ち去って行った。それを見送って、ふと彼女は思う。あの女騎士は、自分の魔力を奪いに来たのでは無かったか?まさかとは思ったが、思わぬ強敵との出会いに自分の使命を忘れてしまったのだろうか?と推察する。

実際には、忘れてはいなかったが彼女から魔力を奪う為には自分の全身全霊をとしたとしても不可能だろうと判断しただけの話だった。それに、自分を見下す程の武人だ。

命を奪われたとしても、本望ではあったが今は主はやてを助けなければならない為、女騎士は彼女から手を引く事をやむ無くすることとなった。

その後は、女騎士が現れる事もなくクリスマスを迎えて事の顛末を神崎から聞くこととなる。神崎の話では、美愛の兄が頑張ったらしいとだけしか聞いていない。

それと、シグナムという女騎士が自分……不知火翼に会いたがっていたと伝えられた。神崎に、面識があったのかと聞かれたので10月に起きた出会いを教えたら頭を抱えてしまう。どうやら、あの女騎士はしつこいらしいという情報を教えられる。実際、しつこかった。

会えば必ず、模擬戦を申し込まれる事となり、それを瞬殺して『まだまだね』というのが彼女とシグナムの日常となることとなる。だが、それも例の幼児が現れるまでの話。

例の幼児と模擬戦をやった彼女は、幼児を『化け物』や『チーター』と称するようになる。それまで、後五年。

彼女は、それなりに楽しい時間を過ごし、それでも原作と他の転生者達との交流には距離を置いていた。

会うのは、月に一度の【転生者会議】程度にして美愛や霧島が訪ねて来る程度に留めている。

そして、例の幼児が出現。その幼児がいる間と、魔導師組がミッドチルダに移住するまでだけは月数回にまで関わる様な状況になった。でも、それだけの話である。

魔導師組が、ミッドチルダに移り住んだ頃から彼女はまた両親の嫌がらせを受けるようになった。

(実際は、ずっと神崎が処理していただけ。)

それどころか、両親は彼女に見合いを進める様になる。

40を過ぎた、油ギッシュな中年男性が中心のお見合いをだ。それだけで、彼女は両親が何も変わっていない事を理解する。のらりくらりと両親が進める見合いを断って、行き着いたのは孤独で寂しい毎日だ。

霧島や美愛、それに数人の転生者は地球に残っていたけれど……彼女の苦しみを知る者はいない。唯一知っていた神崎は、今はミッドチルダで頑張っているらしい。だけど、彼女の『今』を知る訳ではなかった。

だから、彼女は独りだった。

確かに、友達と楽しい時間を過ごす事はある。

その時は、楽しいし嬉しい時間ではあった。

だけど、その時間が終わってしまえばまた独りだ。

誰にも教えていない故に、彼女を理解してくれる者はいない。彼女は、また孤独との戦いに戻ってしまった。

ただっ広い屋敷に、彼女一人。

話し相手もいなければ、帰りを待つ者もいない。たまに、月村すずかやアリサ・バニングスに呼ばれる事はあったけれど……彼女達が、彼女の異常を知ることはなかった。

 

最後に、彼女は空っぽの手を伸ばす。

 

何も掴めない……掴む事の出来ないその手を伸ばした。

 

「ーーーーーー」

 

呟く声に力はない。

 

否、声にすらならなかった。

 

叶うはずのない願いを彼女は呟く。

 

「ーーーーーて……」

 

手を伸ばして、夢想する夢に手を伸ばす。

 

「ーすーーて……」

 

悲しみと苦しみの果てに、彼女はその思いを口にする。

 

「たすけてーー……」

 

生前から受け継がれた、その言葉を最後に彼女は全てを諦め力を抜く。

 

腕が、ゆっくりと重力にしたがって落ちてくる。

 

その刹那に彼女は、両親の進める次のお見合い話を受けよう……と、自分の未来を諦めた。

 

でも、その前に……

 

「君は、馬鹿かっ!?」

 

小さいけれど力強い手にガシッ!と掴まれた。

 

「全く、そんなに磨耗するまで何を我慢しているんだ!?」

 

呆れた様な力強い声が、彼女を強く叱って来る。目を開けて見れば、別の平行世界に行ってしまったはずの例の幼児が自身を見下ろしていた。

その隣には、ミッドチルダにいるはずの神崎の姿もある。

 

「まさか、今の両親に嫌がらせされてるなんて思いませんでした……」

 

「神崎は、出来る事をしたのだろう?だったら、後は彼女の責任だよ。困っているなら、困っていると言えば良かったんだ……」

 

彼女には、何を言っているのかどうしてここにいるのかわからないけど……どうやら、彼女の未来は繋げられた様だ。

グイッと、彼女は引き起こされた。

 

「とりあえず、君の絶望は僕が預からせて貰うよ?紫天の書よ……ここに!」

 

「え!?ちょ、師匠!?」

 

「黙れ。……さて、不知火翼。君に選択肢を与えよう。ぶっちゃけて、君の絶望は【管理者】によって捏造されたモノだ。このままの人生では、君の未来は心を削るモノでしかないだろう。だが、そんなモノを甘受する必要はない。だが、僕には君を無償で助ける事は出来ない……」

 

「あれ?助けられるんじゃ無いんですか!?」

 

「最後まで聞けよ!?潰すぞ!!」

 

「はっ!すいませんでした!!」

 

「はあ。君を無償では、助けられないんだが……一つだけ、助ける方法がある」

 

「……………………」

 

「ギブアンドテイクだ。即ち、僕の仕事を手伝って欲しい。君がそれを了承して、僕の仕事を手伝ってくれるのであれば……君が未来で上げるであろう功績によっては、普通の転生をさせてあげる事ができる……」

 

「???変な言い回ししますね……」

 

「……まあ、な。功績を上げたら、通常の転生をさせてやる事が出来るって話なんだが……。生前の記憶は引き継がれないし、特典すらないそういう転生だ……」

 

「ああ、メリットが無いんですね……」

 

「僕が出来るのは、健康な身体と多くの友人。そして、希望ある未来だけしか保証できないんだよ。だって、僕の保有する神格は【希望の神格】だからねぇ……」

 

「やるわ!!」

 

『おおっと!?』

 

彼女、不知火翼が唐突に覚醒した。

例の幼児に、掴み掛かる様に勢い良く向かっていく。

 

「え、えっと?じゃあ、転生に見合うだけの功績を上げるって事で良いのかな?」

 

「ええ、もちろんよ!」

 

「あー、じゃあ……この魔導書の守護騎士になって貰う事になるんだけど……良いかな?」

 

「…………この魔導書の守護騎士ね?良いわよ?あ、デバイスも必要よね!?」

 

「ああ、うん。直ぐ使える奴がいた方が良いかな?なぁ?かーんざーきくーん?」

 

「ヌグッ…………」

 

だが、紫天の書に取り込む前に『生体強化』と『妖精処理』は必須なので、一度彼等は秘密基地で数時間を過ごし、その上で不知火翼を紫天の書に取り込んだ。

そして、もう一つ……彼、如月双夜は一仕事をやった。

それが、クローン技術を駆使し遺体を一つ作成する。

 

 

 

 




ちょぉーっと、台詞無しの長文ですが……お付き合いいただきありがとうございます!
ずっと、謎存在となっていた不知火 翼の絶望でした。
設定には、色々書いていた訳だけど……最初から、こんな感じのストーリーだったんだよ!まあ、紫天の書に取り込む予定は無かったんだけどねw
それ以外は、元のまま書かせていただきました。
それにしても、転生させてくれた管理者が悪意満々とか……酷い事を考えますよねぇ……あ、私(作者)がですねw!

双夜が、干渉してくれたお陰で、TAKE2を体験。
それでも、不幸になる彼女が哀れすぎる。最終的に40過ぎの油ギッシュな男に嫁がせようと画策する両親が最悪だ。
もう、好きにさせておけば良いものを……。

神崎が、微イケメンに!!
あるぇ!?と思った人、これはこれで翼を守護騎士にした事にあたっての前振りです。今後の二人の関係は見物になって行くかも!!wwwww予定が無かったが故に、面白そうですよね!作者も、この先の事はわからないのでちょっとワクワクしてます。さあ、どんな風になって行くのやら…楽しみな分ですね!!wwwwwww

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m(_ _)m

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