絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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テーマは、【重力】です!!


八三話

神崎

 

 

 

数日後。

海から帰って来た師匠は、仕事場に籠った切り外に出て来なくなった。ちょこっと覗いた限りでは、何処かの遺跡に繋がっていて容易には探索できそうに無かったので、未だに放置中である。ついでに言えば、俺はその遺跡に関する知識を持っていた。きっと、あれが因果律に通じていると俺がいた世界のフェイトが言っていた遺跡なんだろう。

断言出来る。中の広さは折り紙付きな上に、入ったが最後……迷って出て来られなくなる自信があった。あの手のダンジョンには、決して近づかない事をおすすめする。

そして今、俺は一つのファイルと格闘中だった。

別に、ファイルと肉弾戦をしている訳ではない。

この10㎝にも及ぶ、分厚く細かい文字で濃厚な内容のファイルとにらめっこをしていた。

何のファイルかというと、師匠の使い魔達が集めてきたレン・K・ヴォルフラムの調査報告書である。何でこれを読み始めたかというと、自分が書く時空管理局風報告書と比較をする為であった訳なのだが……ヤバイ!全部書き直したくなってきた。アレとコレを比べると、俺の……しいては時空管理局風報告書が幼い子供の絵日記レベルに思えてくる。事細かに記載されたソレには、使い魔さんの優秀さが滲み出ていた。

ファイルの内容は、レン・K・ヴォルフラムの出生から始まっている。レン・K・ヴォルフラムは、ベルカ自治区の位の低い庶民の生まれだったらしい。

 

「…………は!?庶民って、一般家庭の事か……見た目がアレなんで、貴族か王族かと思ってたんだけど……」

 

俺の感じた印象のお嬢様ってのは、幻想だったらしい。

あの立派な縦巻きロールが、実は当人の趣味だとかそういうモノなのだろうか?

もしくは、特典の別途設定があるのかも。

だが、その予想は別の意味で裏切られる。

何故なら、レン・K・ヴォルフラムは『王族の血筋。妾の子孫』と出生の備考欄に書かれていたからだ。

古代ベルカの王族の血筋ってだけでも希少なのに、まさか王族の妾の子孫とは驚かせてくれる。普通に本物の血筋だった。まあ、家柄が良ければお嬢様確実であるが……。

ただの一般家庭では、越えられない壁が実在するだろう。

しかも、St.ヒルデ魔法学院の小・中等科の生徒だという事も記載されていた。

 

「何となーく、オチが見えてきたぞ?」

 

嫌だなぁ……このオチでない事を願いながら、ファイルを読み進めて行く。

レン・K・ヴォルフラム、古代ベルカ王族の血筋。

しかし、妾の子孫で家柄は最低。

見た目が、お嬢様なので間違われやすいが一般家庭出身。

それ故に、周りからは浮いた存在だったらしい。それにも関わらず、古代ベルカ王族の血筋だからか……王様の記憶を継承しているという。何処の王様かは、不明。

因みに、王族の血筋っていうのは特典ではないとのこと。

 

「へぇ……運が良いのか悪いのか……ってか、どうやって調べた!?謎過ぎるぞ、使い魔さん達!!」

 

少しだけ、使い魔さん達の情報網ってのが気になった。

特典云々の話は、どうやって調べたのか……俺が持つ知識の中では、確認できそうなスキルは思い当たる。

だが、その為の方法がわからなかった。一瞬、師匠の顔が頭を過ったけれど……師匠が、使い魔さん達に呼ばれた事はなかったはずだ。それなのに、どうやって特典を調べたのかとっても気になった。

……と、話を戻そう。

王族の妾の子孫である事がバレて、彼女は入学の数年後にイジメを受ける事になるらしい。

 

「前世についての報告は……ないか。つーか、前世でもイジメられていたら最悪だな……」

 

きっと、彼女の目的は周囲の人を見返す事か何かだろう。

何故なら、イジメを受けていた者の転生後の目的は大抵パターン化している。即ち、存在しない主犯への報復だ。

それ故に、他の転生者の存在が許せないっと言った所か。

もしくは、特典に主犯共をも『モブとして転生させて欲しい』と願っている可能性も考えられる。まあ、基本的には自身の強化が主になるので余程怨みが強くないとそんな願い事はしないだろうけど……。

イジメの内容を確認する。

ザッと読んだ感じでは、他の【転生者】云々には触れていなかったけれど……陰湿的なイジメがあった事だけは記載されていた。それを見ていて、このイジメをしている主犯各が【転生者】ではないのかと疑いたくなる。

もしかすると、10年後のStsやその先のVividを意識した奴がいたのかも知れない。ちょっと、St.ヒルデ魔法学院に行って確認してみた方が良いのかも知れないだろう。

だが、今はレン・K・ヴォルフラムの方が先なので申請だけ出してファイルを読み進めていく。

St.ヒルデ魔法学院を退学になる前。

同級生達によるイジメの内容だが……王族の血筋と持ち上げておいてから、実は妾の卑しい血筋だと叩き落としている。それだけで、俺ならばプツンと行きそうな感じだが、彼女はそれを努力する事で乗り越えていた。要は、継承した記憶から古代ベルカ式の技術や武術を習得。

イジメられて……だけど、努力して己の運命を嗤う者を力で捩じ伏せている。

 

「あるぇ!?予想と大分違ってきたぞ!?」

 

俺はまた、イジメられた仕返しに特典で無双するんだと考えていたが、レン・K・ヴォルフラムは正当法で対抗したらしかった。即ち、勉学と武道で優秀さを見せ付けて周囲を黙らせに掛かったみたいだ。

戦闘面だけを見るなら、学院内で負け知らず。

その後は、勉学の方でも優秀な成績を残している。

しかし、暴力沙汰の事件を起こして……それにより、St.ヒルデ魔法学院を退学していた。

確認した訳ではないので、詳しくは言えないけれど……周囲に他の【転生者】がいない状態で、St.ヒルデ魔法学院を追い出されるとは……余程の事が無ければ退学になるはずもない。やはり、誰かいたのではないのだろうか?

確認するが、その暴力沙汰事件の詳細資料は今の所見当たらない。読み進めて行けば、出てくる可能性大だが……今は、モヤモヤした気持ちを抱いてファイルを読み進めるしかないだろう。それにしても、読み進めれば読み進めるだけ俺の中で疑問が浮上して来てしまう。

どこまで考えても、このレン・K・ヴォルフラムが踏み台と呼ばれる程の存在ではない気がしてきた。

この様子だと、正統派オリ主の可能性も否定できないだろう。何処かで、何かが歪んでいる気がした。

St.ヒルデ魔法学院を退学になった後、彼女は地上管理局に士官として入隊。一年の研修期間を終えて、『海』へと渡っていた。その後は、部隊を転々とたらい回しにされて……それでも、空戦魔導師三佐まで上り詰めている。

実力は折り紙付きで、紆余曲折はあれどアースラの所属になるまではそれなりに有名な局員だった。

アースラに所属後は、今一目立った戦績も無くゆったりとした時間を過ごしている。きっと、『原作』……この場合はハラオウンだが……彼等に関われた事によって、彼女に何か変化が起きたのかも知れない。

更に読み進めて行くと、レン・K・ヴォルフラムの特典についての報告書に行き当たった。

だから、どうやって調べているのかわからない項目が多すぎるだろう!?なんで、こんなのが調べられるのか……一度、師匠を問い詰めた方が良いのかも知れない。

特典①高い魔力・魔力ランクSSS。②天武の才。③ニコポ・ナデポ(?)……真っ当な踏み台特典だった。

高い魔力……天武の才……まあ、最強を目指したらこうなるよな。いずれを見ても、確かにレン・K・ヴォルフラムは踏み台でしかなかった。だが、俺が持つ踏み台というイメージは基本的に努力なんてしない。能力に胡座をかいて、相手を蹂躙するのが踏み台だ。

その後の報告は、どちらかというと特典に関する考察に近いモノである。高い魔力……もしくは、魔力ランクSSSに関してレン・K・ヴォルフラムが魔法を使うに当たって強ければ良い的なモノの考え方とかが考察されていた。

その上で、天武の才は戦える力を求めている事を指し示し、努力を嫌う踏み台らしいと言えばらしい。

実際、俺も力を求めていた訳だし……踏み台ならば、こういう特典を願っても不思議ではない。

だが、何故か俺はレン・K・ヴォルフラムが踏み台ではないと確信している。説明を求められても、答えられないのだけれど……彼女は、踏み台では無い気がしてならない。

ファイルのページをパラパラと捲って行き、俺はある事に気が付いた。高い魔力と天武の才は一端、棚上げして『ニコポ・ナデポ』に注目する。『ニコポ・ナデポ』は踏み台の代表的能力であるが……基本的に、自分以外の異性又は相手に対して使用される魅了系能力だ。

なのに、レン・K・ヴォルフラムは自分に『ニコポ・ナデポ』して自分に惚れているらしい。だが、それはおかしな話だ。『ニコポ・ナデポ』であるなら、自分に対しては効果が無い。つまり、この『ニコポ・ナデポ』は別の能力の可能性が考えられる。

パッと思い当たる能力は無いが、もし仮に『魅了系』で無かった場合はどうなるだろうか!?

レン・K・ヴォルフラムが、踏み台ではない可能性も考えられるのではないだろうか?

例えば……『ニコポ・ナデポ』ではなく、『自分を好きになりたい』という願いだった場合は?生前、自分が嫌いだった奴が何らかの理由で自分が好きになりたいと願っていたとしたら……とも考えられる。

それは、不思議な事ではないはずだ。

 

「あ!なんか、良い感じになってないか?」

 

その例題で、一旦特典を纏めてみる。

①高い魔力②天武の才③自分が好きになりたい。

なんというか、良くわからない特典になってしまった。

この特典を求めた転生者が、転生後に何をしたいのかがイメージできないのである。

 

「……………………」

 

②天武の才と③自分を好きになりたいだけであるならば、生前、自分自身が心底嫌いだった奴が転生後は自分を好きになりたいと願い……バトルが前提となる世界だからって理由で、天武の才を求めたと言うなら筋は通る。

むしろ、上手く纏まった様な感じだ。

そして、高い魔力もおまけ的扱いで得たのなら話は簡単。

順番が違うから、レン・K・ヴォルフラムが踏み台だと勘違いした可能性も考えられた。

即ち、自分を好きになりたいが先で……次が天武の才。最後が、高い魔力ならばレン・K・ヴォルフラムが踏み台ではないと断言出来てしまうのである。

 

「おお……何か、それッポイよな!!」

 

これならば、レン・K・ヴォルフラムがこの世界の正当派オリ主でもイケるはずだ。報告書の空白部分に、【転生者】としての意見を書き込んでいく。まあ、使い魔さん達の報告書に悪戯書きをしているようで罪悪感半端無いけど。

その後も、残りの部分を読み進めて行った。

すると、レン・K・ヴォルフラムのデバイスがストレージである事がわかる。ストレージという事は、魔法の処理速度を重視したのかもしれない。

インテリジェントデバイスの様に、高度なAIを搭載していない分、魔法プログラムの演算処理は最も速いだろう。

ただし、中級者様のデバイスなのでそこそこ実力がないと振り回されるだけだ。

因みに、俺のデバイスはインテリジェントデバイス。

まあ、小喧しいのを我慢すれば良い相棒だったと言えなくもない。一時期、こちらの事を全力無視していたけれど、師匠に会ってからは普通に会話をするようになって……最終的に小姑ッポクなってしまっていたが……(苦笑)。

 

「性格……自己中と思われる愛されたがり屋?だあああぁぁぁっ!!何で、この情報を先に読ませてくれなかったんだ!?」

 

余りにも恥ずかしかったので、頭を抱えて悶え叫ぶ。

やっちまったー!!と、痛々しい勘違いに悲鳴を上げながらソファーに身を乗り出して後悔した。

一通り悶え苦しんだ後、気を取り直して聞き慣れない『愛されたがり屋』というモノについて考える。

未だちょっと、先程の精神ダメージが抜けきってないけれど、レン・K・ヴォルフラムの性格調査結果で良くわからなかった『愛されたがり屋』なるモノについて考えた。

100歩譲って、『自己中』は良いとしても『愛されたがり屋』とは何だろう?言葉のままだとしたら、他人に全力で『愛されたい』というニュアンスになるが……今一不明瞭だ。ナニコレ?的な感じで、ページの前後をしらみ潰しに読むが、詳細は記載されていなかった。

 

「えっと……愛に飢えてたのかな?ううっ……俺がせっかく、弁護してやったというのにっ!」

 

結論を出すのが、早計だった。

それにしても、自己中とは……フォローできない性格だな。

人の事は言えないけれど……元・踏み台としては。(自爆)

だが、自己中の『愛されたがり屋』って事はアレですかねぇ?即ち、『こうすれば、自分に惚れるはず』とか『愛して貰えるはず』とか……想像と現実の差がわかっていない系の踏み台って事だ。

ああ、だから『自分を好きになりたい』って願いに繋がる訳か。自分が好きになれない奴は、他人に好かれるはずがないっていう……良く使われる謳い文句。(大ダメージ‼)

それを真に受けて、『自分を好きになりたい』等と願ったという訳かな?

 

「考えちゃダメだ……考えちゃダメだーーーチクショウ!!ブーメランじゃねぇよっ!!(自爆)……ゴフッ(吐血)」

 

等と考えている風を装っているが、俺は今別の事に夢中だった。つまり、ゴシゴシと先程書き込んだ意見を消そうとしている訳だが、ボールペンで書き込んだ為に消えてくれない。(必死‼)まあ、師匠の事なんで【真実の瞳】で見抜かれそうだけど……それでも、消しとく必要はある!(使命感)

結局、レン・K・ヴォルフラムは何をしたかったのだろうか?自己中で、誰かに愛されたくって自分を好きになった彼女は【原作】に絡む事で何を得ようとしたのだろう?

基本、【転生者】は【原作知識】をフルに使って何かしらの目的を果たそうとする。それは、自分の欲望だったり希望だったりする訳だが……彼女の場合、女であるが故に目的が不明瞭過ぎていた。これが、男であるならば『ハーレム』だとか『英雄』とかで間違いないんだが……性別というモノが邪魔をして、彼女の思考を読ませてくれないのである。

 

「ん?待てよ……イジメを受けてたんだよな?その上で、自分を愛されたい?愛されたいって事は、自分だけを見て欲しいって事だ……つまり、コイツの目的って……」

 

百合ハーレムか!?あ、でも……それだと、ディアーチェの存在説明が出来ないのか……全く、面倒な。

 

「後は、セオリー通りの踏み台とするなら……『英雄』?」

 

【原作知識】をフル活用して、自分自身を『英雄』的存在へと昇華させるという目的。まあ、『ハーレム』という考えを捨てて……『イジメ』られていた事を前提に押し出して考えた場合の周囲を見返す手段である。だが、現在状況を考える限り……もう、【原作知識】を当てにするのは無理だ。師匠が、『暇潰し』に片付けてしまっている。

 

「そう!『暇潰し』で!!」

 

「なんだ?神崎、暇なのか?」

 

「いいえ!?全くっ!!!」

 

「……?ああ、報告書を読んでいたのか……悪いけど、ソレ捨てておいてくれないか?」

 

「はいっ!え?……えっと?」

 

「あー……もう、それは必要なくなったんだ」

 

「必要なくなった?」

 

「ああ。そうだな……一応、教えといてやるよ。レン・K・ヴォルフラムは、《旧・神族》に肉体を乗っ取られている事が判明した。先程、正式に殲滅命令が降りたんで行って来るよ……」

 

「《旧・神族》!?殲滅命令!?」

 

今一、状況が呑み込めないけど、無茶振りをしている何かが来ているらしい。

 

「うん。今、“外”にいる《神殺し》が“内”に入って来ていて時空管理局本局の近くで殺り合っているらしい……」

 

「本局ぅ!?」

 

「あの辺、魔力乱流で大荒れらしいから近付けないよ?」

 

「次元航行艦でもですか?」

 

「次元転移含む……だ。とりあえず、ラヴォルフとテオルグは置いていくから神崎は修行頑張って……」

 

「あ、はい!……え?《旧・神族》!?」

 

今、《旧・神族》って聞こえたような気がした。

 

「前回の平行世界で、出て来てなぁ……“外”に追い出したんだが、また入って来たらしいんだよ……」

 

「うえっ!ラスボスじゃないですかっ!!」

 

“外”に追い出したのが、また“中”に入って来たらしい。

前回の平行世界からだから、結構時間が経っているはずなのに……まだ、倒せてなかったのかと“外”の《神殺し》達にごちる。まあ、俺みたいなのでは返り討ちになるんだろうけど……と他人事みたいに考えていた。

後で、自分も《神殺し》の肉体を得ていた事を思い出して頭を抱える事になるんだが……この時は、まだ傍迷惑程度にしか思っていなかった。

 

「うん。今から、狩りに行って来る……」

 

「あ、はい!お気を付けて!!」

 

「じゃ!」

 

そう言って、師匠は秘密基地広間から消えて行った。

それにしても、【転生者】が《旧・神族》に肉体を奪われるって話は他人事ではない話だ。そりゃあ、俺はそのくくりから抜け出ているとは言え……心持ち不安になってくる。

 

「師匠、大丈夫ッスかねぇ?」

 

「神崎、今の発言……我らに対する宣戦布告ですか?」

 

「あ、ラヴォルフさん!?お、お疲れ様です!!」

 

「おやおや、ラヴォルフだけに挨拶かい?」

 

「テオルグさんも、お疲れ様です!!」

 

「『も』?」

 

「止めなさい!全く、何弱い者イジメなんてしているんですか?」

 

「ああ!?喧嘩売ってんのか!?」

 

「あ、や、止めてください!!」

 

師匠も何で、この二人を置いて行くかな!?

もはや、水と油なんて表現するよりガソリンと灯油みたいな混ぜたら危険クラスの二人をっ!!師匠信者、No.1、2が勢揃いとか……俺、何も言えないじゃないですか!?

 

「落ち着いて下さい!御二人共!!」

 

「私は、落ち着いてますよ?」

 

「ああ!?まるで、俺が落ち着いていないみたいじゃねえか!?」

 

「事実、落ち着いてませんよ?」

 

「よっしゃ、戦争だな!!」

 

「えっと、緊急通信は……」

 

瞬間、ガシッ!と俺の腕が御二人の手に掴まれる。

見れば、とってもにこやかな二人の顔が視界の真ん中にあった。まるで、咎めるような笑顔に何も言えなくなる。

 

「良い度胸じゃねぇか?」

 

「そうですね!とっても、良い度胸ですね……」

 

「あー……良いコンビッスね?」

 

言うまでもなく、俺の視界は暗転していった。

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

そして、あれから数年後。

師匠は、未だに戻って来ていない。

俺は、原作人物達が14、5歳になる現在まで放置プレイを受けている。

ラヴォルフさん達の話では、“外”と“内”の時間の流れが違うからという事だ。師匠がいるあちらでは、まだ数時間しか経っていないらしい。

意識を失った後、師匠から《旧・神族》を“外”に追い出したというメールが来て、追加で《旧・神族》を殲滅してから戻るという連絡を受ける。

とりあえず、現在の状況を説明しておく。

師匠が“外”に出た翌日位から、原作人物達の記憶から師匠が消えてしまって、これまでの原作ブレイクを俺やユーリがやった事に補正されてしまった。

ディアーチェは、良くわからないけどまだ存在しているので、この時代の【八神はやて】をフレールくんに頼んで監視して貰っている。

そして、時空管理局だが……《旧・神族》と《神殺し》の戦いの余波で、一部消し飛んでしまったらしい。

直撃だったら、時空管理局の本局がヤバかったらしいから運が良かったのだろうと思われる。

『日頃の行いが~』とのたまるディアーチェに、コンコンと管理局の闇を語って聞かせ『日頃の行いが~』なんて事はないと断言しておいた。

ディアーチェは、『そんなん、知っとるわぁ!!』と不満タラタラだったけど、少し暴れてストレスを発散して今は魄翼を出したユーリに怯えている。

 

「最近、ユーリがヤバイ……」

 

「師匠がいない分、ストレスがマッハですもんね……」

 

師匠が、いなくなってからというものユーリのストレスがヤバイらしい。正確には、師匠成分が足りないとのこと。

それを聞いた時、俺が思ったのは……『ユーリと師匠は恋人じゃないでしょ!?』というモノだった。

口にしそうになったけど、言った瞬間の自分の未来が容易に想像できて寸前でその言葉を飲み込んだ。

しかし、ディアーチェは止める事が出来なかったらしく、うっかり口を滑らせた所……魄翼で掴まれて宙ぶらりん。

次の瞬間には、俺も光のない目で睨まれて恐怖の体験をする事となる。だけど、ノーコメントで押し通した。

 

「じゃ、俺は『恋人』の所に行くんで……」

 

「ちょっと待て!我とユーリを二人っきりにする気か!?」 

 

「あ、えっと……時間が無いので、急ぎます!!」

 

そう言って、ディアーチェを振り切り待ち合わせ場所で待っている恋人の元へとその場から逃げ出す事に成功した。

俺は今、フェイト・テスタロッサと付き合っている。

師匠不在後、フェイト・テスタロッサの猛烈アタックに陥落してしまった形ではあるが……どうせ、師匠が戻って来るまでの夢。存分に、楽しませて貰う予定だ。

師匠が、戻って来れば修正力や補正力によって無かった事になるはずなので問題はない!

え?そんな事は、どうでも良い?俺の修行状況が知りたい!?ちぇっ、全く人の気も知らないで……他人の幸せ話よりも、不幸話の方が好きなんだな!?わかってるよっ!たくっ……。

結論だけを言おう。俺に、魔法方面の才能は無い!(断言)

そりゃあ、全身に魔力を纏って30分以上維持する事はできるようになったさ!最大45分は、イケる!!

しかし、魔法習得までには至っていない。

自分の脳筋レベルが、知れるというモノである。

何たって、魔法習得は出来ないのに神速は習得出来るなんて状態だ。完全に、脳ミソ筋肉状態だろう。

 

「多分、生前のポテンシャルに問題があるんだろうな……」

 

自分が、主人公の器ではない事くらい知っている。

踏み台なんてやってたんだ、主人公のポテンシャルと比べたらミソッカスレベルなのは仕方がない。それでも、と身体を鍛えて剣術を学び、テオルグさんにフルボッコにされながら日々を過ごしている。

 

「あ!大悟~♪」

 

「フェイト……待った?ワリィ……」

 

「うぅん。そんなに待ってないよ?」

 

「出掛けに、ユーリが暴れてさぁ……」

 

「……保護者の方が、今出張中なんでしょ?ユーリも寂しいんだよ……」

 

「わかってはいるんだけど……俺らじゃ、代わりにならないらしくて……まあ、良い。今日は、どうするんだ?」

 

「うん。ちょっと、お願いがあるんだけど……」

 

フェイト達は、紆余曲折はあったけれど原作通り管理局に就職した。どれだけ、出会いの部分が違ったとしても管理局に入局する流れは変わらないらしい。

フェイトは、やっぱり執務官になった。原作と同じで、執務官試験は二回落ちている。ただし、一つだけ違う事があるとしたら……高町なのはが、撃沈していないという事柄だろう。まあ、一度過労で倒れてはいるものの撃沈イベントは回避したと言えた。そして、カートリッジシステムを最近になってからレイジングハートに搭載したらしいので、師匠の忠告をシッカリ守った結果の様だ。

師匠の記憶が無いのに、律儀にそれを純守するなんて……やっぱり、高町なのはは真面目らしい。

それと、夜天の書に関してだが……闇の書とは別の魔導書という事になった。クロノとユーノが、頑張ったらしい。

目の下にクマを作って、ユーノがヒィヒィ言っていたのを覚えている。その後、クロノが無言で延々と机に向かい裁判では大立回りをしていたらしいから大変だったみたいだ。全く、頭が上がらないとはこういう状況をいう。

 

「そうそう、はやてがね……ツヴァイとーーー」

 

後、これも修正力なのかはわからないが……はやてが、リインフォース・ツヴァイを作ったという事だった。

アインスがいるのに、ツヴァイを作る意味は何かと思えば……戦力の底上げらしい。ヴィータやシグナムの戦闘バリエーションを増やす目的もあったとのこと。

だが、それは二次的な理由だと俺は考えている。

夜天の書とリンクが繋がっているシグナム達に、戦力アップの必要性はない。多分、原因は俺だろうな。

ついうっかり、夜天の書が失われた未来の話をディアーチェと共に八神はやてに話したのが原因だと思われる。

不可抗力だったなんて言い訳はしないが、面白半分になっていた事は間違いない。

『リインフォースに娘とかどうよ?』なんて、謳い文句ではやてを挑発した結果がツヴァイだ。それはもう、ノリノリでユニゾンデバイスを造るはやての姿が目撃された。

師匠の持つ、蒼天の書は現在ディアーチェが持っている。

返却された訳では無いらしいが、二人はいつも一緒だ。

ディアーチェは、師匠のツヴァイとユニゾンこそ出来ないもののそれ以外は抜群の相性で、常にコンビを組んで行動していた。見ている方としては、実に百合百合しい光景を見せ付けられる訳だが……多分、あれもユーリのストレスに一役かっているのかもしれない。

 

「師匠……ユーリが、病んデレになる前に戻って来て下さい……」

 

「大悟、何か言った?」

 

「……………………」⬅?

 

「いや。それじゃあ、遊園地にでも行くか?」

 

気を取り直して、フェイトに紹介されたエリオ含む俺達は遊園地に向かう事にする。フェイトのお願いとは、エリオをデートに同行させる事だった。なんでも、プレシアさんが是非にと言ってエリオを連れて行かせたらしい。

何となーく、プレシアさんの悪意が目に見える様で俺は泣く泣くそれを受け入れた。それに断ったら、超遠距離からの落雷魔法が待っているような気がしてならなかったからだ。マジ怖いッス、プレシアさん(ガタブル)。

ふと見れば、エリオと目が合った。目が合った瞬間、フイっと視線を反らされるが原作知識でエリオの心情を知っている俺は、ポムッと頭に手を置いてグリグリと力強く撫でてやった。ついでに、頬を摘まんで引っ張る。

 

「何か要望があるんだろ?だったら言ってみなさい!」

 

「いふぁい、いふぁいでふ……」

 

「ほぅほぅ……こんな、お姉さんを『ママ』と呼ぶのは恥ずかしいか?だが、この人はそういうプレイが大好きなんだ。諦めろ……」

 

「え……ち、違うよ!!エリオとは、本当に家族になりたいと思ってるよ!!」

 

「だからって、『ママ』って呼ばせようとすんのは止めてやれよ。エリオだって男の子なんだから『母さん』くらいが調度良いんだ……なぁ?」

 

「……………………(コクリ)」

 

「ええぇ……」

 

「ホラ見ろ!よし、エリオ。ちょっと、絶叫系制覇してやろうぜ!!」

 

そいう訳で、俺はフェイトとエリオを絶叫系のアトラクションへと引っ張って行く。お化け屋敷以外は、問題なく順調に制覇していき、今はお化け屋敷の前で撃沈しているフェイトをエリオに任せて飲み物を購入していた。

ぶっちゃけ、とっても楽しいし充実している。

俺が、生前に間違いなく夢見たリア充な瞬間だった。

 

「………………」

 

師匠が戻って来たら、この生活を俺は手離さなければならないと思うとスッゲー未練が残るだろう。

本当なら、シグナムともう一度と考えていた事もあったんだけど……何故か、はやてと良い雰囲気になってしまったので諦めた。理由としては、はやてとイチャイチャしているとシグナムが目の前をウロウロする度に、前回の世界でヒヤヒヤしたのを思い出して断念した。

いや、まあ、うん。チキンな俺を笑ってくれ。

 

「あー、うん。はやてをフル時、一悶着あったけど……まあ、問題は無いだろう……」

 

問題と言えば問題なのだが、夜天の書の烈火の将シグナムを剣技と素手のみで倒したった。普段、ラヴォルフさんやテオルグさんと殺り合っている俺が、今更シグナムに遅れを取るはずも無く。まあ、空を飛ばれた時はヤバいと思ったけれど、基本的に近付いて斬る事しか出来ない俺とシグナムは最終的に地上戦でガチンコバトルと相成った。

地上戦になれば、負け知らずの俺だった訳で難なくシグナムを撃破してはやてをフッた訳である。

 

「そういえば、シグナムがまた模擬戦をしたいって……」

 

「またぁ!?何度殺ったって、結果は変わらないぞ?」

 

「すごい自信だね……」

 

「そりゃ……ウチの師匠連中を考えてみろよ。あんな、化け物揃いなんだぜ?」

 

「あ、あはは、はは……」

 

たった二人に、蹂躙される原作チーム。

あれを見て思う事は、師匠がいたら虐殺風になっていた事は間違いない。その後で行われた、vsユーリは攻撃が通らずに終わってしまったという事だった。いや、もう本当に【ラスボス】しかいないウチのパーティーは無敵としか言いようが無い。そのパーティーには、当然ながら『俺』も含まれるとの事だ。

もっと、ずっと先の話だと思ってたのに……化け物の烙印を押された俺は、もう泣く事も許されないんだって事を理解させられた。

 

 

 

 




レン・K・ヴォルフラムを知ろうの回。
最終的に、肉体を《旧・神族》に乗っ取られて終了。
完全に踏み台にされた感じだww
結局、何がしたかったのかねぇ……?

そして、神z……踏み台は、踏み台だった!!
神崎大悟、フェイト・テスタロッサの猛攻に堕ちるww
フェイトちゃんと付き合ってる理由も、ヘタレで踏み台らしい理由と来たら……もう、どうしようも無い。
それなのに、エリオ&フェイトちゃんと遊園地行きとか……ww 双夜が帰って来たら、どうするんだろうねぇ?

新平行世界に着手しました!
はあ、漸く本来の道に戻った感じがします。
まあ、そこに別要素も加えて……馬鹿を不幸にしつつ、おもしろおかしくヒャッハーしています。お楽しみに♪

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m(_ _)m

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