かぞくになろうよ。(沙希×八幡)   作:イシジマ

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かぞくになろうよ。(沙希×八幡)

海浜総合高校とのクリスマス合同イベントも終わり、一週間ほど経った日曜日。元旦も目前に迫る中、俺こと比企谷八幡は絶賛冬休み満喫中である。コタツに入り、スマホのソシャゲで遊んでいた。まさに俺にはノーゲーム・ノーライフというこの言葉がビッタリである。あれだよあれ……ノーミュージック、ノーライフみたいな。前者はなんとなく廃人臭がするな。まあポケモンの厳選作業で一日潰すみたいな無為な時間の使い方をしないだけまだマシである。次シリーズでたら無駄になっちゃうじゃん。まあ対人戦しないぼっちには関係ないことでしたね。

こんな寒い時期に外でうぇいうぇいうぉううぉうしてツイッターに仲間との写真を貼りつけ、リア充アピールするより、家の中にこもりこうやってゲームしてる俺の方が賢いのは自明の理である。まあ、由比ヶ浜に怒られそうだけれども。ほんとにヒッキーじゃんとか。雪ノ下なら、ヒキコモリくんとか言いそう。小学校時代のあだ名やめてもらえますかねえ……風邪で二日ばかり休んだだけで何でそんなこと言われなければあかんのん。八幡泣いてないもん。

一人で無為かつどうでもいい思考にふけっていると、家の呼び出し音がなった。我がオアシスであるコタツから出るのが億劫なため居留守を使うか迷う。両親は休日出勤。小町は塾のためいないし。セールスマンとかだったら面倒なんだよなあ。アイツら 一時間とか平気で居座るしな。大抵は割高なオール電化なり勉強の教材なりを売りつけてくるのだ。生活がかかっているのかセールストークが必死すぎて引いてしまう。彼らを見て俺はいっそう専業主婦への思いを強めた。ありがとうセールスマン。

そういう輩ではありませんようにと神に祈りつつ、ドアをおそるおそる開けるとそこにいたのは青みがかった髪をポニーテールにしているカジュアルなファッションに身を包んだ川崎沙希であった。最近やっと名前を覚えられるようになってきた。

「川越さん?」
「誰が料理人だよ……川崎だよ川崎」

苛立ちを含んだ声音の川崎。
こええよ、今にも殴りかかってきそうなんですけど。

「で、その川崎さんが何か用? てか川崎、俺ん家知ってたっけ」
「おんたの妹に教えてもらったの。ほら大志が仲良いじゃん」

小町のやつ俺のプライバシーを勝手に流しやがって。ほんとSNSとかに俺の個人情報とか載せてないかお兄ちゃん心配だよ? ツイッター警察を自称する奴らもいるぐらいだしな。ツイッターの治安を守るってどういうことなんですかねぇ……(呆れ)まあ俺は一切そういうのやってないからどうでもいいけど。つながる相手もいないしな。

「色々と長くなるし、家ん中、あがってもいい?」

はたからみれば、クラスメイトの女子を家に連れ込んでいるように見えないこともない。そのことを指摘したらバカじゃないの?死にたいの?と言われそうだから言わないことにした。ぼっちは無駄な争いは好まないのだ。まあ襲うより襲われそうではあるけどな、暴力的に。お邪魔します、と律儀にお辞儀する川崎をリビングに通す。テーブルの椅子に座らせる。あ、足をテーブルに乗せたりしないのね、良かった。

「そういえば両親いないの? あとあんたの妹」
「あぁ、小町は塾。で、両親は共働きで家あけてんのよ
……今、コーヒー淹れるわ」
「ふーん、親御さんも大変だね。アンタみたいなのが息子だと」
「余計なお世話だ」

軽口を叩きながらキッチンへ行く。そいえば、大志も小町と同じ塾だったな。アイツ俺の小町に変なことしてないだろうな。まあ変なことしてたらアイツはこの世にいない。こうみると川崎って佇まいが綺麗だな。大人の色気というか、なんというか。カップにインスタントのコーヒーを淹れ、川崎の前に差し出す。

「ミルクと砂糖いれるか?」
「ブラックでいい。砂糖とかいれると甘ったるくなる。あとあたし健康志向だから」
「下着の色もブラック?」
「バカじゃないの」

蔑むような視線を向ける川崎。蛇に睨まれた蛙のごとく、後ずさりそうになるがこらえる。無駄な争いはしないと言ったな、あれは嘘だ。川崎を挟み正面に座ると、俺は砂糖をスプーンで二杯、三杯といれていくと徐々に川崎の顔が訝しげなものに変わる。

「そんないれたら糖尿病になるよ」
「忠告どうも。世界が苦いなら、コーヒーくらいは甘くてもいい、が俺の持論なんでね」
「……心配してやってんのに」
「お前は俺のオカンか」
「は、はぁ? 違うから」

そういうと顔をぷいとそらす川崎。オカンっぽいと評したがその通りだ。弟達の面倒を見てるし、裁縫もできるし、
文化祭の時は海老名さんの手伝いをしてたしな。しばらく雑談していると、話は本題へと切り替わる。

「けーちゃ……京華が比企谷に会いたいらしいのよ」
「京華ってあの……保育園にいた子だろ?」
「そう。なんかえらく気に入っちゃったみたいでね」

あの女の子のことは俺も記憶に新しい。クリスマスイベントの時に天使の格好をこしらえて、ケーキの運び役を担当していた。こんなこというとロリコンとか言われそうだが、あどけなくて可愛らしかった。

「あんたに会いたいってしつこいから、付き合ってもらっていい?」
「はぁ……なんで俺が」
「くるよね?」
「はい、行かせていただきます」

飲みに誘う上司とそれに逆らえない新卒みたいなやりとりみたいだな俺。行ってみたら説教&説教。あいつら社会人と学生の違いについて延々と説教垂れてくるからな。働きたくねぇ。内心辟易としながらも外出の準備をする俺だった。


▪️

川崎に先導され、歩くこと数十分。なにこれちょっとしたウォーキングなんですけど。運動神経が悪いわけじゃないが、最近は家にこもりっきりだったため少々こらえる。家の中にお邪魔させていただくと、川崎を幼くしたような幼女がお出迎えしてくれた。俺を一目見るやいなや、目の色が変わる。

「わぁ〜はーくんだ〜!!」

は、はーくん? え、八幡だから? どういうことだよという目で川崎の方を見ると知らんぷりを決めこんでいる。

目を輝かせながら、俺にすり寄ってくる川崎妹こと京華。
そんなつぶらな目で見つめないで。俺の腐った目浄化されちゃうから。
俺の足に抱きついてくる京華にドキマギする。

「けーちゃん、やめな。バイキンがうつるよ」
「さりげなく俺をバイキン扱いするのやめてくんない?」
「さーちゃん、はーくんにごめんなさいしないとだめ!」
「う……ごめんなさい」

川崎は不服そうにしながらも詫びる。京華は天使。戸塚は女神。はっきりわかんだね(確信)
学校であんなにアウトローを気取ってる川崎といえど、妹には逆らえないみたいだな。

「はーくんにあえてほんとうにうれしい!」
「てか、川崎……お前俺の名前教えただろ」
「さーちゃんよくはーくんの話するもんね」
「けーちゃん!!」

大声でそういうと京華の口を塞ぐ川崎。びびった、いつもクールを決め込んでる奴が声張ると怖いわ。例えるなら普段温厚な奴がが怒ったときはギャップも相まって本当に怖い。小町とかな。

「お前、俺の陰口を京華に言うんじゃねえよ」
「はぁ違うし……違わないけど」

どっちなんだよ。矛盾してんじゃねーか。

「……なぁ、さーちゃん」
「さーちゃん言うな……それは家族しかいっちゃいけない決まりなの」
「じゃあ、はーくんとさーちゃんがけっこんしてかぞくになればいいんだよ!」

いきなりの京華の一言に俺と川崎は顔を赤くする。京華は京華で発言した内容の重みがわかっていないのか、首を傾げている。

「はーくんはいや?」
「あ、いやとかじゃなくて、うん、まあ……考えとく」
「……考えとくってなによ。あたしあんたと結婚とか絶対いやだかんね」
「は? 立派な専業主婦になるために頑張ってんだろうが」
「男なら社会にでて、働きなさいよ」
「ふたりとも、けんかはめっ!」

いがみあう川崎と俺の間を怒りながら京華が割って入る。しかたなく口論をやめる。めちゃくちゃ睨んでくるんですけど。くそ、川崎め……絶対許さん。

▪️

京華ははしゃぎ疲れたのか寝てしまった。時々、寝息をまじえつつ、はーくん、さーちゃん大好きって寝言をいっている。なにこれめちゃくちゃかわいいんですけど。あの後、三人で俺が父親役、川崎が母親役というおままごとをし、その後川崎の手作りクッキーをいただいた。ちなみにめちゃくちゃうまかった。感想を川崎に告げたら、めちゃくちゃうれしそうにあんたに言われても嬉しくないとうそぶいていた。照れ隠し下手すぎんだろ。アレは店に出せるレベル。甘いものに目がない俺が言うのだから間違いない。

「川崎、じゃあ俺帰るわ」
「わかった。見送るよ」

そう言い玄関で靴を履き、外に出ると空は夕焼け色に染まっておりノスタルジーな感情に支配される。

「どう? ……うちにきて」
「……まあ、なに? いい気分転換になったんじゃねえの?」
「素直じゃないね、あんたも。まあ、ありがとね、比企谷。京華ほんとによろこんでたよ」

大人っぽい笑顔を浮かべる川崎。ブラコンやらシスコンなどと言ったがほんとうに京華のことを大切にしているのだろう。京華だけでなく、大志との関係性を見るなり相当の信頼関係を築いているのだろう。なぜだかそれがとても羨ましく思える。小町と俺もこういう風に見えているのだろうか。

この時間に別れを告げるのが若干名残惜しい。

俺は川崎に背を向け、別れを告げる。振り返り手を振ろうとすると川崎が口をひらく。

「比企谷、愛してるぜ」
「……え?」
「お返しだよ、バカヤロー」

突然の告白に意味がわからず、真意を問いただそうとするが、にやりと悪い笑みを浮かべて家の中に入っていってしまう川崎。

そして俺は唐突に全てを思い出す。

思い出してしまう。

文化祭の時に相模を探す際に川崎に言った一言を。今の今までに彼女はすべてを覚えていたのだ。俺はあの時言った発言の意味の重要さを身をもって理解する。心拍数があがり、動悸がはげしくなる。はずかしさが胸を灼く。
俺は耐えきれなくなり、帰り道を全力疾走で走る。息が荒く続かなくなるが関係ない。俺はやってしまった。俺
はーー。

ーー川崎、愛してるぜ!

「ああああああああああああ!!!!!!!」

通行人が怪訝な顔をしてこちらを見てくるが、それすら認識できない。記憶から抹消したくなるその一言。

俺の黒歴史がまたひとつ、増えた。














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