東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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大分遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
またまた久しぶりの投稿になってしまいました。本当に申し訳ない。
〔こいつ本心から謝ってないな……〕

さてさて、今回のキャラクターたちは誰でしょうか?
では、本編をどうぞ。


第八十三話

 怒りに任せて殴り飛ばして、気がついた頃には死屍累々の光景が広がっていた。それでも侵略者たちはまだ生き残っている。影の矢で貫かれた侵略者は身体を捨て、引っ越そうとジェイドに飛びかかった。彼は飛びかかってきた寄生体を無言で叩き落とし、踏み潰した。爆ぜた寄生体から飛び散った赤い液体がブーツに着くが、そんなことは全く気に留めない。

 

「最強と言われた騎士さんはどうしてここまで非情なのかしらね?」

「狂ったように笑いながら銃を撃ちまくる貴女にだけは言われたくないんだが?」

「言ってくれるわね、ジェイドさん」

「あまり大人をなめない方が良いぞ、白」

 

 普通に会話をしているようだが、この会話は周りにいる敵と戦闘しながらの会話である。弱点の発見はそんな余裕ができるほどの差を2人と寄生生物の間に作ってしまった。

白のアサルトライフルが連射され、寄生生物たちは次々と倒れていく。銃弾を受けた穴は全て心臓の位置と首の付け根に1発ずつ、恐ろしいほどの射撃センスである。

 一方のジェイドは羽を広げて寄生生物の軍団へ突進、ある程度の頭数を集めると両の羽を手のように打ち合わせた。ジェイドの羽の中で多くの命が弾け、辺りに血しぶきが飛び散る。もちろん、血しぶきはジェイドにもかかった。しかし、ジェイドは特に気にする様子もなく新しい獲物を探した。

 しばらく撃ち続けていたため、ついに白のアサルトライフルの弾が尽きた。包囲の壁の密度が増し、水平方向に抜け道は無くなる。

 ——まるで集団強姦ね。

 白は静かに目を閉じた。侵略者たちはこれを好機と見なし、彼女に向けて一斉に飛びかかった。「こんな子供1人武器さえなければ軽い」そう思っていた彼らの余裕は白が目を開けた瞬間に吹き飛んだ。紅い眼光がその視界に入った瞬間、彼女に飛びかかっていた侵略者たちは何も感じなくなった。

その様子はまさに猿の如く。白は驚くべき速さで侵略者の頭部を蹴り砕き、身を引き裂いた。白を取り囲んでいた敵は一瞬の内に肉塊と化してしまった。そんな敵の状態を見て、白は呟く。

 

「私の処女はお高いのよ、貴方たちの手が届くわけ無いじゃない」

 

 そこへ侵略者の1人が吹っ飛んできた。地面に数回バウンドして、呻き声を上げながら立ち上がったところ、更にジェイドのドロップキックが顔面に炸裂した。あまりの破壊力に上半身がバラバラに弾け、辺りに散らばった。

 そんなジェイドの様子を見て、白はクスリと笑う。

 

「本当、吸血鬼の模範ね」

「それは…お互いさまだろう?

それに、どちらかと言われたら君の方がよっぽど吸血鬼らしいんだけど?」

 

 吸血鬼と言えば、年を取らないことから美男美女というイメージが強い。2人はそのイメージから外れない美しい身体つきと顔つきであり、また血塗れである。どう見ても派手に捕食を行った後の吸血鬼にしか見えない。紅い瞳と血で真っ赤に染まった2人の姿は初対面の者を気絶させるほどの恐ろしさを持っていた。

 

「――で、これからどうするの?範人さんを追う?それともお話でもする?」

「どちらでも構わないぞ。この近くの敵は全員潰れてしまったみたいだからな」

 

 ジェイドはハハハと笑う。そんな彼からはどんなに危険な状況でも笑っていられるような雰囲気が感じられる。そして、その雰囲気は白がよく知る者に重なった。

 

 似ている。異常なほどに範人さんに似ている。目の色はともかく、顔立ちも髪の色もほとんど一緒だ。雰囲気は育った環境で変わるかもしれないけど、これもほとんど一緒。まさか血縁者だったり?……でも、範人さんは吸血鬼じゃないし。

 

 ジェイドは白が浮かべた疑問に気づいたようで、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「俺が範人に似ていることがそんなに不思議か?」

「え!?そんなこと、ない……」

「まぁ、否定するなよ。顔に『正解です』って書いてあるぞ」

 

 完璧に言い当てられたことでムスッとした顔になる白だったが、ジェイドはそんなことお構いなしに話し始める。

 

「正確には範人が俺に似ているんだ。

俺はゴートレック家——今の旅行家のことだが、500年くらい前の当主の弟だからな。吸血鬼化して今まで生きてるってわけだ」

「へぇ…範人さんのご先祖様ってわけね。

じゃあ、なんで紅魔館に住んでいるのかしら?」

「おいおい、知らねーのか?俺はレミリアの夫だぞ」

 

 白の表情が凍りつく。ジェイドはその反応を見て笑っているが、それはあまりにも巨大な衝撃だった。

 

 ——マズイ!この人お兄様だった!

 

 白の思考は一瞬だけ完全に停止。そのとき、表情のなくなった彼女に黒い何かが飛び掛った。

 

「危ねぇ!」

 

 咄嗟に、ジェイドは白の前へ飛び出した。

 衝突と同時に左肩に走る激痛。それをぐっとこらえ、後ろを振り向く。

 黒い何かは空中で何回か回転し、着地した。

 人型の体を覆う黒い甲殻、脊椎からつながっていると思われる虫の脚のような関節がある尻尾。虫と人間を融合させたようなその生物の名はヴェルデューゴ。プラーガを使用した生物兵器の中ではかなりの完成度を誇る種類である。しかし、問題はそこではなく、

 

「あのやろう…俺を食いやがった……」

 

 ジェイドは左肩を押さえながらヴェルデューゴを睨む。ヴェルデューゴの口には血の滴る肉がくわえられており、口の周りは赤く染まっていた。肉は口の中へと消え、喉が上下する。直後、ヴェルデューゴの体がピクリと痙攣した。

 

 ――まずい。

 

 本能的に危険を察知したジェイドはヴェルデューゴに肉薄、影の槍を腹部に突き出す。

 

「なっ……!?バカな……」

 

 槍は尻尾に絡めとられていた。

 呆気にとられるジェイドの横腹に強烈な蹴りがはいる。大の男であるはずのジェイドがまるで紙切れのように吹き飛ばされ、宙を舞った。

 脇を掠めて飛んでいったジェイドに白がハッとしたとき、ヴェルデューゴの爪はすでに眼前まで迫ってきていた。咄嗟に召喚した白乱で受け止め、はじき返した。のけぞるヴェルデューゴの腹部に狙いをつけ、アサルトライフルを連射するが、

 

「!?ウソでしょ……弾が……」

 

 ヴェルデューゴの甲殻はしなやかに変形し、銃弾を全て受け流してしまった。戦闘狂の白からしてもこれは予想外。

 あわてて後ろに跳躍した直後、体勢を立て直したヴェルデューゴの巨大な爪が目の前を通り過ぎた。

 

 ――すごいパワーね。空気が切れたわ。

 

 白は体勢を下げて肉薄、鳩尾であろう部分を柄で殴りぬいた。しかし、手ごたえはあったもののそれは軽く、甲殻が凹むだけ。交代を図る白だったが、突如としてふわっとした感覚に襲われた。

 

「へぇ……なかなか抱っこが上手いのね」

 

 ヴェルデューゴは掴み上げた白を捕食しようと巨大な口を開ける。鋭い牙がずらりと並んだ口の匂いは鉄のみ。その口内に血以外の汚れは見当たらず、見た目の割には案外清潔的なのかもしれない。それでも矢張り、

 

「ファーストキスはあげないわよ」

 

 白はヴェルデューゴの肩を蹴り、拘束から脱出した。

 仰け反るヴェルデューゴだったが、捕食失敗の腹いせとばかりに尻尾に持っていた槍を投げつけた。白はそれを白乱で叩き落す。その直後、白の脇を何かが通り過ぎた。

 槍を拾い、ヴェルデューゴに高速で接近したのはジェイドだった。

 

「オォォォルァァァァァ!」

 

 一撃、二撃、三撃……。まるで流水のような滑らかさで攻撃が叩き込まれる。

 ジェイドが手にしている武器は槍だが、槍術は使用していない。彼のスタイルは棒術、斬るわけでも刺すわけでもなく殴る。攻撃の隙など与えず、蹴りや拳などの体術を組み合わせてひたすら殴り続ける攻撃特化型の棒術。

 刃を当てても傷がつくことはないが、見る見るうちに甲殻は凹みだらけになっていく。

 ここで白は気づいた。ポイントは凹みと凹みが重なることで生まれた甲殻の分厚い箇所。その箇所は殴られるたびに手ごたえの感じられる高い音を響かせている。甲殻は硬いのではなく、強靭で柔軟だったのだ。つまり、弱点は柔軟なものを硬く脆くしてしまうもの、

 

 ――極度の低温ね。

 

 ジェイドがドロップキックを決めた瞬間、白が駆け出す。

 

「ジェイドさん少し代わって!『真刀 氷夜』!」

 

 ジェイドが横に飛び退くと同時に白は氷夜を召喚、懐に飛び込んで腹部を斬りつけた。

 氷夜の力はその名の通り凍結。甲殻が凍りつき、ヒビが入る。それを確認した白はさらに斬りかかろうとするが、ヴェルデューゴの振るった尻尾に阻まれた。

 後退する白だったが、その顔には確信を掴んだという表情が浮かんでいた。

 一方のヴェルデューゴはヒビの入った甲殻を押さえ、苦しげに息をしている。

 

「ナイスだ白」

 

 そう言ってジェイドは白の頭を撫でる。撫でられた白は少し不機嫌そうな顔になるが、別に心底嫌というわけではなさそうだ。すると、ヴェルデューゴの目にはその光景がカップル(ただし、すさまじい年の差)として映ったのか「リア充くたばれ!」とでも言うかのように咆哮し、二人に飛びかかった。

 

「まぁ、もう一度頼んだぞ」

 

 あまりにもスッと手を話したジェイド、しかも完全に白任せである。白はそんな彼をジト目で見つめ、ため息一つ。優れない表情で詠唱する。

 

「凍てつかせろ、氷夜!」

 

 瞬間、氷夜の刀身から冷気が溢れ出した。

 冷気はヴェルデューゴを包み込み、凍結させた。空中で動けなくなった化け物はそのまま地面に激突する。捕食しようと体に力をこめても指先一つ動かせない。

 二人の吸血鬼はそんな化け物を哀れみのこもった目で見下ろし、

 

「ジェイドさんコンビネーションいきますよ」

「は!?コンビネーション?ちょっと待て、俺達会ったば——」

「せーの!」

 

 言葉と共に蹴り上げた。その白の行動に、

 

「おいおい……」

 

 と、呆れるジェイドだったが、しっかりと槍を構えている。

 ヴェルデューゴが落下してくると同時に二人は得物を振るう。流れるような二刀流と棒術のコンビネーションが化け物を襲った。

 切り裂かれ、叩き砕かれ。ヴェルデューゴは木っ端微塵に砕け散り、消え去った。

 

 

 

 

思わぬ強敵との遭遇。一仕事終えたジェイドは、

 

「ふぅ……」

 

と、ため息を吐き、白を見ながらこう思った。

 

——あんなふうに突然行動するところフランにそっくりだな。




今回のバトルはどうぞでしたか?
私としては手抜きになってしまったような気がします。お待たせした結果がこれで申し訳ないです。

しばらく前に、テキトーに描いたデューレスの挿絵をぶち込んだ活動報告があったと思いますが、これからはあそこに描いたけどテキトー感がする挿絵を投下していこうと思います。というわけで、今日中に1枚投下します。
え?下手な挿絵なんて興味ナシ?
仕方ないでしょう。デジタル絵をマウスで描こうとしたらド下手だったんですから。ペンタブ買うお金なんて無いんですよ。結果的にアナログになっちゃったんです。

今回はこの辺で失礼させていただきます。では!

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