東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

94 / 124
2回目のコラボ回2話目!
でも、全キャラ分の発言がない……どうすりゃいいんだ?


第七十九話

「む!あれは……」

 

望遠鏡を覗いているのは1人の白狼天狗。哨戒の仕事に就いている彼はある軍団の動きを観察していた。

軍団の人数……5000は下らない。ほとんどの者が人間のような姿だが、人間でない者も居る。

その軍団はまるで1つの巨大な生命体であるかのように統制がとれており、ゆっくりと此方……天狗の里ヘ向かって来る。その様子は恐ろしく不気味だった。

このままでは間違いなく何か悪いことが起こる。

そう思った白狼天狗は1人呟く。

 

「これは天魔様に報告を……」

 

白狼天狗は一体の紙で出来た式神を取り出し、それに向けて何か呪文のような言葉を唱えると、空中ヘ投げ上げた。瞬間、風が吹いて、天狗の里…天魔の屋敷の方ヘと式神が飛んでいく。

白狼天狗はホッと一息吐き、再度軍団の観察をする。直後、彼は驚き目を見張った。

 

 

 

 

天魔の屋敷。天狗たちを束ねるリーダーであり、鬼の居なくなった妖怪の山ではトップに立つ者の屋敷。その屋敷に1体の式神が舞い込んできた。

天魔はそれを拾い上げ、すぐに能力を発動する。天魔の脳内に式神を飛ばした白狼天狗の視界が映し出される。

天魔の能力は『感覚を共有する程度の能力』。決して戦闘向きとは言えないものの、仲間たちを見守るリーダーとして最適な能力である。天魔は全ての天狗たちと感覚で繋がっているのだ。

 

「な、なんだこれは!?」

 

天魔は映し出された光景を見て、それを実際に見ている白狼天狗と同じように目を見張った。

人間?達の前に踊り出た複数の狼達。大方、腹を空かせていたのだろう。しかし、人間?達が恐れる様子は全く無かった。

人間?達は飛びかかってくる狼達を1匹残らず捕獲し、縄で縛りあげたのだ。縄で縛りあげる、そこまでなら、まだ普通だった。

人間?達は狼達の口を無理やりこじ開け、自身らも口を開けた。人間?達の口内から出てきたものは気持ちの悪い虫のような何か。人間?達はソレを狼達の口に無理やり突っ込んだのだ。ソレらは狼達の喉の奥ヘ消えていった。直後、異変が起きた。

狼達が吐血し、地面に倒れ込んで一瞬動かなくなる。しかし、すぐに立ち上がって、人間?達に甘えるように擦り寄っていたのだ。

凶暴な狼達が何故?

原因はわからないが、ともかく、これは恐ろしいことである。

恩を買いたくはないが、今は仕方がない。天魔は妖怪の賢者…八雲 紫の名を呼んだ。

 

「ハァーイ♪ゆかりんよぉ〜♪呼んだ?」

「う、うむ……」

 

紫は決して悪いヤツではない。悪いヤツではないことはわかっているのだが、このテンションと何を考えているのか読めないところが天魔は好きになれないのだ。

 

「何者かがこの天狗の里ヘ侵攻してきているらしい。こちらにも充分な勝機はあるが、いかんせん敵の兵が多く、敵の正体も明白ではない。すまないが、応援と調査を頼めないか?」

 

天魔は何が起きたのかを詳しく説明した。その光景の恐ろしさを一切も欠かすことなく。

 

「わかったわ。丁度、そういったことのプロフェッショナルも助けてくれそうな人たちも知ってるから、任せなさい。」

「かたじけない。」

 

天魔の頼みに対して、紫は自信満々にその豊かな胸を揺らして答える。天魔はそれを見て苦笑いした。紫は、ふふふ♪と笑うと、小さな天魔を抱き寄せた。紫の行動に、天魔は驚きを隠せない。

現在の天魔は歴代の中で最年少。1000年生きているかすらも怪しいほどに若い。それ故なのか、天魔は見た目が幼い。人間で言うところの小学生高学年くらいの少年の姿である。

天魔の背丈の対して、紫は背が高い。天魔の顔は紫の豊満な胸に埋まる結果となった。成人男性にとっては至福だろうが、少年にとっては拷問。その光景はどこかエロい。

数十秒後、紫は天魔を離した。天魔はゲホゲホと苦しそうに咳をする。

 

「じゃあ、後は任せなさい。」

「う、うん……」

 

あまりの驚きに地位を忘れ、幼い少年のような返事をする天魔。紫はその反応に満足したようにスキマに潜っていく。天魔は彼女の後ろ姿を呆れ顔で見ることしかできなかった。

 

 

 

 

範人は紅魔館の一室で目を覚ました。傷は既に全快しているため、痛みはない。だが、相変わらず、部屋一面に敷き詰められた紅が目に痛い。

ぼんやりとする意識を覚醒させていると、部屋にスキマが開き、紫が現れた。

 

「範人、喜びなさい。バイオハザードが発生したわよ。」

「喜ぶことじゃねーだろ。

で、どんなウィルスが相手なんだ?」

「それがウィルスじゃないらしいのよ。なんでも、寄生虫みたいなものらしいわ。」

「なるほどな……プラーガあたりか。」

 

プラーガ。生物の脊椎に寄生し、宿主を意のままに操ってしまう恐るべき生物。ヨーロッパのとある山村で集団寄生が起き、村一つを壊滅させたという報告もある。

そんな生物が何故?外の世界でプラーガが忘れ去られたとでも言うのだろうか?あるいは、誰かが持ち込んだ……

範人は考えることをやめた。考えても仕方がない。既に被害が出ていると言うのならば、被害を最小限に抑えることが最優先である。

 

「わかった。要は、寄生されたヤツを処理すればいいんだな?」

「まぁ、簡単に言えばそう言うことよ。頼まれてくれるかしら?」

「その依頼、引き受けよう。場所は?」

「妖怪の山よ。今回は敵がだいぶ多いみたいだから、お友達も呼んでおいたわね。」

「は?友達?」

 

紫は、ふふふと笑って指を鳴らす。その瞬間、空中にスキマが開き、人間達(人外ばかりだが)が落ちてきた。その中には狩人王の顔見知りの姿もある。範人は、他人の扱いが相変わらずだなと苦笑する。

十数秒後、現れた全員が何かに気づいたようにハッと表情を変え、範人の方を向いた。最初に口を開いたのは高校一年生くらいの少女…白だった。

 

「範人さん!お久しぶりです!」

「久しぶりだな、白。そして、他のみんなも久しぶり。

……初めましてのヤツもいるみたいだが?」

「役に立ちそうだったから、連れてきたわ♪あと、志願兵も。」

 

範人の疑問に紫は自慢するかのように胸を反らして答える。青年は不思議そうな表情を浮かべ、訪問者たちを見るが、ほとんどが首を横に振ったところを見ると志願兵は居ないらしい。そんなことだろうと思った、と範人はため息を吐く。どちらにしろ、帰すのは紫なのだから、戦いには参加してもらうほかにない。

頭を押さえる範人を横目に紫はスキマの中へと帰って行く。

 

「ウチの姉がすまないな。どうにも自分勝手なヒトで……」

「いや、まぁ…気にする必要はない。突然連れて来られたあたり、ここで何かが起こっているのだろう?」

「私は少し面倒だけどね。」

「本当に申し訳ない……」

 

フォローされたと思ったら、そこからまた落とされる。範人のやる気は一瞬にして底まで落下した。しかし、彼のやる気など寄生虫退治には関係ない。

テンションは低いものの範人は今回の状況、戦いについて話し始めた。

 

 

 

 

「なるほど、銃火器はあんたの持っているものを使えばいいのか。(あんたの家は武器庫かよ……)」

「その寄生虫、何匹かサンプルとしてもらっていっていいかな?」

「……好きにしてくれ。」

 

今回の戦いについての説明、それぞれの自己紹介が終わった。明菜を除き、他全員が能力を保有していたり、体内に機械を仕込んだりしているという見事なまでの人外軍団である。もっとも、1人だけ最も人間らしい明菜も全く動揺していないあたり、彼女も人外に限りなく近いタイプの人間なのだろうが……

 

「説明は終了だ。銃火器はテキトーに出しておくから、使いたいものを持っていってくれ。」

「私はこれにするのだ!」

 

アンが手に取った銃はコルトガバメントとシグP245。こんな小さい子がコルトなんて持って大丈夫か?と思う一同だったが、本人が選んだのだから大丈夫だろうと自身に無理やり言い聞かせ、それぞれの武器を手に取った。

そんなとき、部屋の扉が開かれた。

 

「その戦い、俺たちも参加させてもらえないかな?」

 

そこに居たのはジェイドとジェット。2人の吸血鬼は返事も聞かず、部屋の中に入ってくる。おおよそ、範人なら断るはずがないだろうという考えなのだろう。実際、その通りだった。範人は断る気が無かったし、断る理由も無かった。ただ、その参加理由が気になった。しかし、それを訊ねる必要はなかった。

 

「ここしばらくは暴れてなくてな。少し暴れ足りなかったんだよ。生物兵器相手なら、ぶっ殺すつもりで戦ってもいいだろう?」

 

ジェイドの口から飛び出た恐ろしい言葉と紅く輝く瞳に、その場の全員は苦笑いするしかなかった。

数分後、全員の装備が整った。範人が指を鳴らすと同時に床にスキマが開き、戦士たちは戦場に導かれた。

 

 

 

 

パッチは紅魔館の一部屋…範人の居た部屋とはまた違う部屋で目を覚ました。ボロボロだった身体は既に元どおりに治っており、動くことに支障は無かった。

部屋の中を見回しても、目に入る色は赤赤赤……その部屋の中に1つだけ黒い物がある。それはパッチの着ていたコートである。パッチは壁にかけてあったコートを着て、部屋の扉を開けた。

少年は廊下に踏み出す。しかし、床を踏む感覚は全く伝わってこなかった。変わりにあるのは目玉だらけの不気味な空間。そして、いつの間にかその空間は自身の横にあった。目玉たちは上に登っていく。

 

「え⁉︎あれ⁉︎」

 

驚くパッチだったが、その声に応える者はいない。目玉が移動しているのではない、パッチが落ちているのだ。しかし、気づかないのも無理はない。スキマの中に上や下はあまりはっきりとは存在していないのだから。

パッチは戦場へと落ちていった。




はい、お許しください。全キャラを会話に同時参加させるなんて無理でした。やっぱり、一対一の会話が書きやすいなぁ……

キャラの口調などが間違っている場合はどのように直せばいいか、ご指摘ください。できる限り直します。
ちなみに、範人のフォローをしたのは鉄次郎、面倒くさいと発言したのは明菜です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。