東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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今回からはコラボ回になります。参加者と作品は
reiraさんの『東方守絆然』から、仲光 絆君
ゆっくり幸村さんの『東方紅魔鬼』シリーズから、白・スカーレットちゃん
DEEP・Sさんの『東方生害録〜幻想少女と生物兵器〜』から、パッチ君
マロマロン大帝さんの『東方初心者が東方の二次創作物を書いた結果(笑)』から、アンちゃん
Ue3anさんの『東方幻界録』から、無月 零さん
泉井 暁人さんの『Biohazard 戦慄の街』から、細木 明菜さん
緋色のライさんの『東方人妖七漢』から、エレイ・スカーレットさん
新人2等空士さんの『日陰者〜特殊作戦即応部隊、SORF〜』から、倉片 鉄次郎さん
です。(長かった)
しかし、今回登場するコラボキャラは1人だけです。許してください。
では、本編にレッツゴー!


第七十八話

ドドドン!バリバリ!

 

雷が落ちたような音が鳴り響く場所は紅魔館の門前。パッチと範人が勝負をしていた。しばらく前に交わした戦いの約束を2人は今実行に移している。

辺りに飛び散る物は赤い炎と燃える血。この世界の終焉を絵に描いたような兵器の戦いは、もはや生物の戦いではなかった。

その戦いの中でも一際目を引くものがある。それは変異する彼らの身体でも、本当の意味で熱い血潮でもなかった。

 

「クハハハハハ!楽しいなぁ、パッチ。こんなに燃える戦いは冷仁以来だぜぇ。楽しすぎて狂っちまいそうだ!」

「そうですね。僕も楽しいです。こんなに燃える戦いなんて滅多に味わえませんよ。

でも、範人さんは既に狂っていると思いますよ?」

 

一際目を引くもの、それは2人の笑顔だった。殺し合いという言葉では生温い…もはや戦争というレベルの戦いの中でも、2人はその戦いを楽しんでいたのだ。それを傍観しているジェットとジェイドは唖然としていた。

 

「じゃあ、僕の新しい力を見せてあげます!

トライコーン!」

 

パッチの左手が変異し、弓のような形になる。弓の中央…本来なら矢をつがえるべき部分なのだが、その部分には骨がセットされていた。

パッチは左手に力を込め、範人に向けてその骨を発射した。骨は高速で回転しながら、一直線に範人を貫こうとする。

だが、範人がパッチの飛び道具を警戒していなかったわけがない。すぐさまアルゴスを発現させて盾のように構える。

骨の弾丸はアルゴスに直撃し、弾かれる。剣を持つ範人の手には弾丸を受けた金属の振動による痺れが伝わり、範人はどこか気持ち悪いその感覚に呻き声を上げる。

しかし、パッチが攻撃の手を休めることはない。弓のようになった腕に次々と骨をセットし、発射する。それらも範人は剣でガードするが、腕に振動が伝わり、だんだんと剣を握る手から力が抜けてくる。

 

「宣言しましょう。僕は次の一撃でその剣を弾きます。

ストゥレラツ!」

「Ha! Try and do it!」

 

パッチの言葉に、範人はニヤリと笑みを浮かべ、「やってみな」と返す。しかし、その表情に余裕はない。範人の手は度重なる振動に痺れ、震えていた。

パッチは左腕に力を込める。すると、左腕は弓のような形状から変化し、エリマキトカゲのような形状になった。

パッチは範人に狙いをつけ、その左腕にさらに力を込める。直後、パッチの腕からは1本の巨大な針が発射された。

針は範人の持つ剣に直撃。範人はその手に力を入れたが、そのスナイパーライフルを超えるほどの衝撃に剣はあっけなく弾き飛ばされた。しかし、範人の顔に浮かんでいたのはこの上ないほどの笑みだった。

 

「これほどまでのパワー・・・良い、実に良いぞ!

もっとだ、もっと楽しませろォォォオ!」

 

範人の叫びとともに彼の身体が白い甲殻に包み込まれる。範人はその尻尾で地に刺さった剣を引き抜いた。剣は帯電し、青白い光を放ち始める。それを見たパッチの額には汗のしずくが一粒。範人は狂気じみた笑い声を上げていた。そんな範人を前にパッチは本気になることを決めた。

 

「いいですね。では、僕も本気になるとしましょう。

『type-C 禁忌の繭』!」

 

パッチがその身体を丸めると、サナギが発生。パッチの身体を包み込んだ。

しばらくの沈黙の後、サナギから巨大な羽が現れ、サナギから異形が飛び出した。言うまでもなく、パッチの変異である。

目の前に現れた異形に範人は笑みをさらに大きくし、パッチに飛び掛った。そのあまりの脚力に踏み込まれた地面が爆発し、青年の姿は消える。その直後、パッチの頰が浅く切れた。パッチが振り向くと、そこには激しく電気を纏う範人の姿があった。尻尾の剣には血が着き、燃えていた。範人は熱が伝わる前にその剣を投げ飛ばす。

範人は狂ったような満面の笑みを浮かべていた。

 

(恐ろしい程の狂気だ。まるで、狂乱を形にしたような……でも、殺気が全く感じられない。)

 

そこでパッチは気づいた。

今、範人が自身を制御するために使っている力は理性ではない。変異の力を限界まで使用するとき、理性では自身を抑えることができないのだ。範人は身体の制御を狂気に任せ、自身はその狂気の操作をしていた。例えるならば、狂気が増幅器の役割を果たし、大容量の身体を増幅させた理性で操っている状態だ。生物としては非常に危険な状態である。

 

(マズイ!早く止めないと!)

 

パッチは右腕のライフルに弾を装填。範人に向け至近距離で発射し、後退した。しかし、それが範人に直撃することはなかった。

 

キュイィーン……

 

金属と金属が擦れ合うような音を放つ部位は尻尾。尻尾の先で弾を受け止めている。範人が尻尾の先を尖らせて硬化させたのだ。

尻尾は弾丸に刺さっていく。そして、弾丸の耐久力が限界に達したとき、ついに弾丸にヒビが入った。

 

ドオォーン

 

瞬間の大爆発。範人は爆炎に巻き込まれ、パッチはホッと一息吐く。パッチの計略に範人はまんまと引っかかったのだ。

t-Veronicaの能力に血液の発火というものがある。感染者の血液は酸素に反応するのだ。

今回の爆発はその応用。骨の弾丸の中には発火する血液がたっぷりと詰まっていた。骨にヒビが入ったことで、空気中の酸素に血液が反応したのだ。

爆炎の後に残る黒い煙。そのせいで中は見えないが、範人が動く気配はない。パッチは範人の行動停止を確信する。

 

「ふぅ…止マりましタか……⁉︎」

 

しかし、それは甘い考えだった。

気がつけば、パッチは金属の粒子に囲まれていた。そして、黒い煙の中では青い稲妻が走っている。まるで、雷雲のように、煙からは電気の光が漏れだしていた。

 

「雷符『エレクトリックウェブ』」

 

煙から飛び出す青い稲妻。それは空中に浮かんだ金属の粒子を伝い、パッチを取り囲む。唯一通り抜けられる場所はパッチの正面、煙の方向。パッチはだんだんと逃げ場を狭めてくる雷から逃れるため、正面に進んだ。

瞬間、範人が煙の中から飛び出し、パッチにストレートパンチを放つ。咄嗟に、パッチは右腕でそれをガードした。しかし、予想外の力に押されたパッチはあっけなく上空へ吹っ飛ばされた。電気のネットが身体に直撃することは翼で防ぐ。それでもやはりダメージは大きい。電流で発熱した翼が何箇所も同時に弾けた。もちろん、機動力は低下する。

 

(マズイ……このまま長時間の戦いは流石に無理がある。早く決めないと……)

 

ここが勝負時であると判断したパッチは範人の様子を伺う。ところどころ焼け焦げた甲殻が痛々しいが、範人はまだピンピンしていた。その傷ついた甲殻も既に再生が始まっている。長時間の戦いになれば、パッチに勝ち目はない。

パッチはスペルカードを取り出し、詠唱する。

 

「『リミッター解除 C-ガルダ』!」

 

パッチの身体から紫色の炎が噴き出し始める。今のパッチの最強モード。

パッチは身体の表面を包む靄の弾幕を自身の形で漂わせる。それは範人にぶつかる前に爆発。眼前での爆発に範人は思わず目を瞑り、後退した。範人は煙の中に後戻りする。

 

「(よし!今なら……)ルウカ・カヴァタネ!」

 

パッチにとって、この変異は賭けだった。もしも範人が怯まなければ、パッチの次の一手はなかっただろう。

パッチは左腕を変異。ムカデのような形にして、煙の中に居るであろう範人に伸ばした。何かを掴んだ感触と同時に伝わってくる痺れるような痛み。パッチの左腕は範人を捕らえたのだ。しかし、掴んだままでは電気が伝わり、パッチ自身が危ない。パッチはその左腕を切り離し、右腕を空に向けた。

 

「ガアァァァア!」

 

煙の中から響く叫び声。

左腕は切り離しても燃え続ける。それにしっかりとグリップされた範人は身体を焼かれていた。今の変異は炎ではなく電気。高熱に対する耐性はそれほど高くない。先ほどの爆炎に耐えた範人も直接の熱には耐えられなかった。熱はしっかりと伝わってくる。

左腕はあっと言う間に燃え尽きた。それが燃え尽きたとき、範人にはまだ意識があった。しかし、炎に焼かれた胴体、パッチの左腕を外そうと必死に掴んでいた右腕は既にほとんど使い物にならなくなっていた。

 

「やってくれるじゃねぇか……」

 

範人は使い物にならなくなった右腕を左手で掴むと、肩から引き抜いた。左手と口を使って右手を突きの形にすると、煙の向こうにいるであろうパッチに向けて槍投げのように投げつけた。

煙の向こうで何かが突き刺さった音を聞いた範人はゆっくりと大きく息を吸い込み始めた。焼けた腹が痛むが、それは我慢。次で決める。

 

「うっ……⁉︎」

 

腹部に走る猛烈な痛み。その原因が腹部に突き刺さった範人の右腕であることにパッチが気づくには少々時間がかかった。

しかし、パッチがその右腕を下げることはない。晴れ始めた煙の中に電気を口内に溜めている範人の姿が見えたからである。

2人がスペルカードを詠唱するのは全くの同時だった。

 

「コレデ終わリダァ!滅却光『レギア・ソリス』!」「勝てなくてもォォォォオ!絶対に負けねェェェェエ!電磁砲(レールガン)『パラケルススの魔剣』!」

 

上空からは破壊力抜群の太陽光線が範人に、地面からは致死的高圧の電気がパッチに向かう。2人の位置関係はほとんど真上と真下。2人の全身全霊の攻撃はぶつかり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合わなかった。

電気と光ではエネルギーの形が違う。そのようなものが綺麗にぶつかり合い、相殺し合うわけがなかった。

 

「ああ……やはり勝てませんでしたね。」

「言っただろう?負けないと……」

 

範人もパッチも変異を解く。(パッチの場合はスペルカードだけだが)パッチは腹部に大穴と左腕欠損。範人は胴に重度の火傷と右腕欠損。2人とも、既に動けるような状態ではなかった。

攻撃は互いに直撃。2人は一瞬のうちに意識を失い、地に落ちた。

勝負の結果は引き分けに終わった。

 

 

 

 

「……ん?」

「どうなさいました?」

「いや、向こうで何かが光った気がしたんだが…気のせいか……」

 

湖の方で何か光ったような気がしたが、私にそんなことを気にしている時間はない。私は急がなければならない。

あの方が与えてくださった使命を果たすにはまだ兵が足りないのだ。譲り受けた兵の数は5000と+α。しかし、まだ足りないだろう。あの化け物の相手をするにはこれでもまだ心許ない。最終的には私自身も戦うことを覚悟しなければ……

いくら忠実でも戦闘になってしまった場合、勝てなければ意味がない。本当のところは戦わせること自体惜しい。

しかし、最優先はあのお方の命令。私の思いなど二の次だ。

 

「しかし…兵にできる者が居ない……」

 

兵たちに囲まれて、私は1人呟く。ある一定以上の大きさの生物が居れば、すぐにでも兵にできる。しかし、その生物が見当たらない。ここまで来ても私はついていないのだろうか?

そんなことを考える私の上を何かが飛んで行った。見上げれば、それは翼の生えた人間のような生物。俗に言う、天狗だろう。

……あの飛行能力、兵にできるなら最高だな。

私はその天狗が飛んで行った方向を目で追った。天狗ほどの知的生命体ならば、集団で生活していてもおかしくないだろう。もしもそうならば、飛んでいった方向には間違いなく集落があるはずである。兵を増やすにはもってこいだ。

方角を完全に記憶してから、兵たちに呼びかける。

 

「みんな!これから移動する。目的地に着いたら、すぐに戦闘することになるかもしれないから準備しておいてくれ。」

 

私の呼びかけに兵たちは黙って頷く。本当に忠実な良いヤツらである。こんなにも良い兵なのに、話せる者が少ないことが嘆かわしい。

私が指差した方向に向けて、兵たちは一斉に歩き始めた。その様子を見ながら、私はあのお方を思い浮かべて呟く。

 

「全てはファースト様のために……」

 

ハンターキングを捕獲する。




戦闘描写は好きだけど難しい……

パッチ君以外のコラボキャラの皆さんは次回からの登場になります。お待ちください。

では!

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