東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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部活の友達と貧乳派か巨乳派かについて話し合いました。貧乳派、巨乳派双方とも居ました。
私はどちらかと言うと巨乳派ですが、貧乳嫌いではありません。一番好きな東方キャラが妖夢ですしね。(妖夢が貧乳とは言っていない)


第七十四話 真の夜王

レミリアは驚いた。

男の仮面が壊れ、その下から現れた素顔は自分の夫であるジェイドだったのだ。紅い瞳、輝くような明るい金髪、そして手のような羽が何よりの証拠である。

彼女は戦意のほとんどを失ってしまった。しかし、ジェイドは戦る気満々だった。

 

「なんで…こんなことを……ジェイド……」

 

「そうだな……再会に刺激が欲しかった、ってところかな。」

 

「刺激くらい、夜に再会したらすぐに味合わせてあげられるのに……」

 

「再会と同時にベッドへ直行なんて御免だからな。」

 

ジェイドは弾幕を渦のように撒き散らす。堪らず、レミリアはそれを回避、相殺した。レミリアの目に困惑と同時に闘志が宿る。

ジェイドはニヤリと笑みを浮かべ、レミリアに突撃した。彼は羽の爪でレミリアに斬りかかる。レミリアは自身の手の爪で応戦した。爪と爪がぶつかり合い、火花が散る。数十秒に及ぶ打ち合いは互いの蹴りがぶつかり合ったことで互いが吹っ飛び、引き分けに終わった。

レミリアが顔を上げる。その表情は戦闘者のものとなっていた。

 

「良いね〜。その顔だ!夫として一度本気で戦ってみたかったんだよ!」

 

「そんなに刺激が欲しいなら、とことん戦ってあげるわ!

だから、この後、私を満足させてよね?」

 

「……はぁ、わかった。保証しよう。」

 

ジェイドの言葉に少し歪んだ笑顔で答えるレミリア。その後放たれた彼女の言葉に、ジェイドはため息を吐き、了承した。

ジェイドとレミリアは同時にスペルカードを取り出した。そして、同時に詠唱を開始。同時に発動した。

 

「影牙『テラードッグス・ハンティング』」「天罰『スターオブダビデ』」

 

ジェイドは影から犬型の弾幕が大量に出現、レミリアに向かった。レミリアからはジェイドを捕縛するかのようにレーザーが、撃墜するために弾幕が展開される。ジェイドは弾幕を軽々と躱し、レミリアもまた弾幕を軽々と破壊した。

スペルカードの効果が切れても2人はほとんど無傷。2人の目には闘志の炎が燃え盛っていた。

 

「衰えていないな、レミリア。むしろ強くなったんじゃないか?」

 

「それは貴方もでしょう、ジェイド。」

 

2人は笑い合うと同時に突撃。猛スピードで拳を交えた。それこそ、残像が残り、腕が増えたように見える程。しかし、互角に見えるその戦いでレミリアが少しずつ押されていく。

原因はそもそもの力。ジェイドは吸血鬼化以前から魔物相手に平気で肉弾戦をやってのける筋力を持っていたのだ。そんな彼が吸血鬼化したらどうなるか。答えは簡単である。普通の吸血鬼を圧倒的に凌ぐパワーを持った吸血鬼の完成だ。

レミリア自身、吸血鬼としてかなり強い力の持ち主だった。それでも、圧倒的パワーを誇るジェイドにはパワーの差で押されてしまうのだ。

 

「くっ……」

 

「ウラウラウラウラ!

まだまだこんなもんじゃないぜ!」

 

ジェイドの拳の一発がレミリアの拳の間をすり抜け、彼女の頬に向かった。完全に一発KOのコースである。しかし、ジェイドは本気で殴り抜くことなどせず、当たる寸前で止め、風圧でレミリアを吹き飛ばした。だが、風圧と言ってもその源は吸血鬼のパンチ。衝撃は半端なものではなく、レミリアにかなりのダメージを与えた。彼女の頬が浅く切れ、赤黒い血が流れ出る。

 

「貴方…今のパンチ、世界狙えるわよ。」

 

「ああ……人間だったらな!」

 

ジェイドは接近と同時にレミリアの背後に影を回り込ませ、影の矢を発射する。

ジェイドの得意な戦い方は奇襲。背後へ回り込んでの攻撃など、あまり綺麗な戦い方とは言えないが、彼の能力には最も適している戦い方だ。もちろん真正面から攻撃することもあるが、それは囮であることがほとんどである。

半年とは言え、ジェイドと同棲していたレミリアにはその攻撃が読めていた。彼女は上に飛んで避ける。矢はジェイドに向かうが、直撃することなく彼自身の影に吸い込まれていった。

天井付近を飛行しているレミリアをチラリと見る(このときにスカートの中が見えたのは内緒)と、ジェイドは影の中に潜る。

一見、影など全くないように見える天井にも影はある。灯台下暗し。彼がワープした影は蛍光灯カバーの裏だった。

 

「上に逃げようとも無駄だァ!

俺なら、地上だろうが空中だろうが360度全体から攻撃できるんだよ!」

 

ジェイドが影から飛び出し、レミリアの背後から至近距離で弾幕を放とうとする。しかし、レミリアも振り向き弾幕を放った。弾幕は互いに相殺。

それでも、ジェイドは止まらない。相殺された弾幕の後ろから現れると、羽でレミリアに掴みかかった。レミリアは羽を掴むと地面に向かって投げつける。ズドンという大きな音が響いた。

レミリアが様子を確認するために地面に下りると、ジェイドが影から姿を現した。地面にぶつかる衝撃を影の中に潜ることで打ち消したのだ。

 

「あの攻撃がよくわかったな。」

 

「当たり前よ。夫婦としてはたった3ヶ月しか一緒に過ごしてないけど、夫の考えくらい簡単にわかるわ。それに行動がわかりやすい。貴方はワンパターン過ぎて、バリエーションに欠けるのよ。」

 

「そっちが成長したこともありそうだが?」

 

「そうでしょう?私も成長しているのよ!」

 

そう言ったレミリアは小さな胸を張る。ジェイドはそれを見て苦笑していたが、強くなったことだけでなく、あることにも気づいていた。そのあることが苦笑の原因なのだ。

 

「ああ〜…なんだ……胸、少し大きくなったな。」

 

「あら、そっちにも気づいてくれるなんて嬉しいわね。

そうよ。昔に比べてバストが3cm程成長したの。」

 

「めでたいことだな。

まぁ、今は祝うよりも勝負だ!」

 

「そうね、戦りましょう!」

 

ジェイドとレミリアは同時に弾幕を発射。その弾幕は2人とも目くらましのためのものだった。ジェイドは影に潜り、レミリアは無数の蝙蝠に化けた。

影は壁面全体に広がり、矢の弾幕を放ち始める。レミリアが化けた蝙蝠も部屋の中央に集まり、壁面に向けて弾幕を放つ。無数の妖力弾が衝突、相殺、爆発した。

このままでは決着がつかないと考えた2人は元の姿に戻り、同時にスペルカードを取り出した。

 

「暗黒『魔人の黒き太陽』!」「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

レミリアの手元に妖力で作られた巨大な槍が握られる。ジェイドが手をかざすと影が集まり、巨大な球体を形勢した。彼はその禍々しいオーラを放つ球体をレミリアに投げつける。レミリアも巨大な槍をジェイドに投げつけた。

巨大なエネルギーの衝突。あまりにも大きな妖力に空気が震え、轟音を響かせる。

槍は球体を貫こうと、その矛先を影に沈めていく。球体は槍を吸収しようと、影を侵食させていく。ついに、槍は球体の中に完全に入ってしまった。

球体は落下を止め、空中で静止した。禍々しいオーラも動きを止め、微動だにしない。しかし、一瞬の後、球体にヒビが入った。

黒き太陽は神の槍を吸収し、あまりにも大きすぎるエネルギーに弾け飛んだ。

爆風はレミリアとジェイドに襲いかかる。恐ろしい程の威力の爆風で壁に打ち付けられた2人の背骨が悲鳴をあげる。内臓に傷ができたらしく、2人とも口から血を吐く。

 

「クゥ……すごい妖力だな。さすが、夜の女王だ。

……いや、夜の姫君と言った方が良いかな?王は俺だ。」

 

「言ってくれるわね。王はこの私よ。夜王は1人で充分!」

 

「じゃあ、次で決着しようじゃないか!」

 

「言われなくてもそのつもりよ!」

 

ジェイドとレミリアはスペルカードを取り出し、発動する。

 

「夜王『光破壊せし影の魔人(Day break shadow)』!!」「夜王『ドラキュラクレイドル』!!」

 

ジェイドの身体が影に包み込まれ、真っ黒…闇よりも暗い影の鎧を纏う。レミリアの身体は紅い妖力に覆われた。

ジェイドは足元の影を爆発させて、レミリアは高速で回転しながら、2人同時に飛び出した。漆黒の弾丸と深紅の弾丸が衝突する。

ジェイドはレミリアにラッシュを叩き込み、スピードを削る。対するレミリアは高速回転でジェイドの攻撃を削りとっていく。

レミリアの回転が加速するにつれて、ジェイドのラッシュも加速する。そのスピードはもはや目視不可能。黒と紅が入り混じる。

 

「ソリャァァァア!」

 

「ウララララララ……!」

 

レミリアの回転がさらに加速する。ついに、ジェイドの羽もラッシュに参加し始めた。ジェイドの羽がレミリアに掴みかかる。しかし、その怪力を誇る羽も彼女の回転の前に弾かれてしまった。

 

「ぐあっ……まだまだァ!」

 

「貴方に私の回転は止められないわ!」

 

「止めてやるさ!」

 

ジェイドは再度羽で掴みかかる。今度は弾かれることなく掴むことができた。しかし、回転は弱まることなく、ジェイドの羽を削っていく。掴まれてもなお、レミリアは余裕の表情を浮かべている。

 

「ガァァァア!」

 

「え…回転が……」

 

ジェイドは全て削り取られることも恐れず、羽にさらに力を入れた。案の定、羽は削れ、赤い血が流れる。レミリアの服も摩擦で破れていく。羽から流れた血がレミリアに付着し、彼女はさらに紅くなった。しかし、力を入れたことでレミリアの回転が弱まる。あまりのスピードに、普段は滑る血液も抵抗の役割を果たしていたのだ。

 

「ウォォォオ!」

 

「そんな……私が…負ける⁉︎」

 

「ウラァァァア!!!」

 

回転が弱くなったことにレミリアが動揺したことで、回転はさらに弱くなる。ジェイドはクッションとして拳に影を纏わせ、レミリアの頬を殴り抜いた。レミリアは回転したまま、影で覆われた壁に激突、停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼェ…ハァ……危ないところだった…ぜ!」

 

ジェイドはそう言ってあられもない姿で気絶しているレミリアを見る。彼の羽は自身の血の色に染まっていた。

 

紅は黒に敗れた。




今回でバトル回終了ですね。おそらくこれで第四章本編最後のバトル回終了になります。
次回は宴会にしましょうかね?そして、最後は……

最近、範人の出番がやけに少ないな……まぁ、次章に期待ってことで!

ではまた!

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