東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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明日から学校です。今年の夏休みは思いきりだらけてしまいました。……いや、いつもの通りかな?
ひとまず、目標だった三章の半分を超え、三章の三分の二は終わったのかと思います。
いや〜、本当にこの小説いつ終わるんだろう?続編書こうかな?


第六十八話 生物吸収は終わる

「じゃあ、頼みますよ。

『type-C 禁忌の繭』!」

 

不気味な繭がパッチを包み込み、そして動かなくなった。

粘菌には妖精たちが見えていた。粘菌にはサーモグラフィーのように妖精のいる場所が感覚的にわかる。その原因は粘菌自身にもわからない。おそらく、妖精を吸収したことで同族である妖精の位置がわかるようになったのだろう。

壁の向こうには妖精(えもの)の姿が大量に見えていた。しかし、粘菌はそちらへは進まない。粘菌が進む先には2つの生物の姿が見えていた。妖精よりも圧倒的に強力、そして自身を傷つけた生物。粘菌には”3匹”の生物兵器が見えており、とりわけ背が低い個体…パッチを狙っていた。そいつは何故か身体を丸めており、動かない。

 

「……!」

 

粘菌は音にならない叫びを上げながら、パッチに向かって腕?を1本伸ばした。しかし、それは炎の弾幕によって防がれる。弾幕を放ったのはエレイだった。

粘菌は何が起きたのかわからない。ただ、標的を攻撃しようと伸ばした身体の一部が焼かれたということだけがわかる。攻撃手段、距離、放った者は一切不明。

粘菌は怒り、全身から棘のように身体を伸ばした。しかし、その攻撃は狙いを定めていないめちゃくちゃなもの。ほとんどが範人たちにとって見当違いの方向に伸び、パッチに至っては伸びてこなかった。

 

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるとか言うけど、それは敵が弱い場合だけだぜ。」

 

「俺も変異しよう。

異次元からの救世主 旅行 範人、シンクロ!さらに変異1!」

 

粘菌はまたも身体を伸ばし、今度は水平に振り抜く。しかし、それは燃える甲殻を手足に纏った生物兵器に掴み止められた。身体中に伝わる火傷の痛みに粘菌はすかさず身体を引っ込める。だが、猛スピードで引っ込めたのがいけなかった。

範人はその身体の一部を放さずに掴み続け、さらに新までそれを掴んでいた。粘菌が引っ込めた瞬間に2人の炎を纏った蹴りがその身体を食い込む。粘菌はそのダメージに堪らず後退。蹴りは身体を10m以上陥没させていた。

 

「……⁉︎」

 

粘菌は怒りを任せ、背中?に特大の砲台を出現させた。狙うはもちろん自身を蹴った生物兵器。その一直線上には動かない個体がもう1匹いる。

粘菌の砲台から粘菌が発射される。今度はショットガンのような拡散型ではなく、砲弾のような塊だ。範人と新は横っ飛びで軽く避ける。しかし、その後ろには動けないパッチがいた。

粘菌は心の中で笑う。このまま砲弾が動かない個体に直撃すれば、命はないだろう、と。死体から素晴らしい栄養を摂取できるだろう、と。

しかし、その考えは容易く崩れ去った。突然ぶつかってきた高温の何かによって、砲弾が受け止められている。

 

「絆『マスタースパーク』!」

 

粘菌の砲弾は絆の放ったレーザーにより水分が蒸発、乾燥して粉のようになり燃え尽きた。分離体に核は存在しないらしい。

そのとき、パッチの繭からパキパキという音が響いた。繭の背に当たる部分にヒビが入り、そこから巨大な羽が飛び出す。直後、繭から変異体が飛び出した。

背中に生えた巨大な羽、スナイパーライフルのような形状になった右腕、下半身では4本の巨大な触手が蠢いていた。顔と胴体はパッチのままだったものの、その姿は見る者を圧倒した。

粘菌には生命反応が突然大きくなったように見えていた。先ほどまでの最も小さな個体は突如として最も大きな個体に変わった。より多くの栄養を摂取できると考えた粘菌は他の個体には目もくれず、パッチに向かって巨大な手のようなものを伸ばした。

パッチは上空へ飛んだ。もちろん、粘菌の攻撃を避けるためである。しかし、粘菌の手はどこまでも追いかけてきた。彼は少し驚いた様子を見せる。

 

「おオッ⁉︎よク伸ビますネ。焼キ落とシマしょう。」

 

パッチは触手を粘菌に向けた。触手の先から炎が噴き出し、粘菌の手を燃やす。しかし、粘菌は手を引っ込めることなく、パッチに向けて手を伸ばし続けた。今、粘菌の考えていることは『食』ただそれだけである。

パッチはその食欲に思わず顔をしかめた。このままでは焼却が間に合わず、彼は食べられてしまう。

 

「魔炎『ターコイズフレア』!」

 

突如放たれた青い炎の弾幕に粘菌は手を止めた。いや、手が動かせないのだ。青い炎に燃やされた粘菌の手は痛みが伝わる前に灰となって消えてしまった。

巨大な青い炎の塊は計3つ。使用者と青い炎の塊から弾幕が放たれる。時折、青い炎の塊からは剣のような形でレーザーのような弾幕が飛び出し、青い炎を中心に270度程回転した。

粘菌は灰になった手に驚きながら、炎の放たれた方へ意識を向けた。意外なことにそこにいたのは先程まで最も大きかった生物兵器の個体だった。

 

「助かリまシた。アりがとウござイます。」

 

「デューレスさん、魔法なんて使えたんですか?」

 

「使えますよ。パチュリー様に少し教えてもらって、魔道書読んだら、1時間で使えるようになりました。まだ種類は少ないですが……」

 

「ハハハ……見た目どころか、才能まで化け物か。」

 

「じゃあ、僕も攻撃しましょう。

滅却光『レギア・ソリス』

この技は時間がかかるので、もうしばらく耐えてください。」

 

パッチはライフルのような右腕を空に向けた。

粘菌は何が起きたのかわからなかった。しかし、たった今、炎を放った個体が脅威であることははっきりとわかった。それを理解した粘菌はパッチとデューレスを諦め、標的を範人に移す。粘菌には現在最も小さな彼女が最も捕食しやすい対象として映っていた。

粘菌は範人へと無数の触手を伸ばし、ラッシュをしかける。彼女は手足の甲殻に炎を纏い、それらの全てを拳と蹴りで受け止めていく。しかし、粘菌の方が手数が多かった。

範人の拳と蹴りをすり抜けた触手は真っ直ぐに範人の心臓へと向かう。だが、範人も防御手段を持っていないわけではなかった。甲殻は無くとも熱を持つことはできる。範人の皮膚が高熱になり、触れた粘菌の触手から水分を蒸発させる。しかし、粘菌も諦めなかった。痛みに耐え、触手を進める。すると、ゲル状の触手があろうことか、範人の胸の谷間へ入ってしまった。触手は捕食しようと動き回る。

 

「あ⁉︎…ちょ、なんで⁉︎……なんで、そこ入っちゃうの⁉︎……あぁん!だめぇ……」

 

範人は自身の胸で動き回る粘菌に違和感と不快感を感じ、思わず喘ぎ声を上げてしまう。目の前の光景に新と絆は戦いの最中にも関わらず、手で目を覆った。まさかこんなことが起こると思っていなかったエレイは視界をずらすことができず、喘ぐ範人をガッツリと見てしまう。デューレスは特に何も感じることなく、冷静なままターコイズフレアを操り、触手を焼き切った。パッチはスペルに集中していたため、下で起こっていることには気づかない。

数十秒後、触手から全ての水分が蒸発し、粘菌の切れ端は消滅した。突然の触手プレイ?から解放された範人はハァハァと荒く息をする。皮膚は少し紅潮しており、ハリが出ていた。

 

「ハァ…ハァ……やってくれたわね。」

 

「準備ができたんで発射しますよ。離れてくださいね。

あれ?範人さん、どうしました?」

 

「なんでもないわ。気にしないで!」

 

範人たちは粘菌から離れる。それと同時に粘菌に向けて、天から光線が降ってきた。その光景は範人が過去に見たレギア・ソリスの資料と酷似していた。とんでもない量の光量によって、粘菌の身体が炭化し、ボロボロと崩れていく。その場の誰もが戦いが終わったと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、粘菌は死ななかった。パッチのレギア・ソリスの光が消えてからもその場に存在している。

粘菌は自身の核の色を白色に変化させて、なんとか死を免れたのだ。核を中心に全身が再生を始める。この核が持っている機能は何も核としての働きだけではない。吸収した栄養を貯めておく貯蔵庫の働きもしていた。今までに使っていた栄養は全体の約三分の一。粘菌はアッと言う間に出会ったときの三分の一程まで再生させてしまった。

しかし、その場の全員は諦めていなかった。その場の全員がこんな逆境を何度も乗り越えてきた猛者だ。

猛者たちはスペルカードを構えた。

 

「まだ終わっちゃいねぇ……そういうことだろ?ガッツあるやつは嫌いじゃないぜ!

紅砲『アグニスパーク』!」

 

「僕は別に粘菌(あなた)を嫌って居るわけではありません。むしろ、その力には尊敬に似た恐怖すら覚えます。しかし、幻想郷のためにここで粘菌(あなた)を消します。

合絆『フラン人形レーヴァテイン』!」

 

エレイから放たれた炎の魔砲は粘菌の身体を抉り、貫いた。絆から放たれたフラン人形はレーヴァテインを振るい、粘菌を切りつけた。その高熱に、粘菌は効果的なダメージを受ける。しかし、それは粘菌の体組織を壊し、焼き切ると共に、粘菌のリミッターを壊して、切った。

 

「……!」

 

粘菌の身体全体に砲門が発生し、無数の粘菌弾が全方位に発射される。弾幕勝負に慣れている範人たちにも粘菌弾の量はかなり多かった。避けきれない程の数が彼らに襲いかかる。

 

「みんな、耳塞いで!

咆哮『ハンターキング・ロア』!」

 

範人の言葉に全員が耳を塞ぐ。範人は息を大きく吸い込み、咆哮した。

 

「ゴアァァァア!」

 

咆哮と同時に大量の光子が粘菌に向かう。粘菌はそのあまりの音量に全身が痺れたように動かなくなる。範人は能力で光子を操り、振動も加えてマイクロ波を発生させた。空中の粘菌弾、粘菌の本体がマイクロ波に貫かれ、中の水分がマイクロ波加熱で熱を持ち、蒸発する。

範人のスペルが終わったとき、全員の前には身体からプスプスと蒸気をあげる粘菌がいた。しかし、粘菌の生命活動はまだ停止しておらず、尚も捕食しようと身体を動かす。

 

「もう終わりにしましょう。

炎精『シャイターン』!」

 

「これでラストアタックにしたいな。

『大切な人 フランドール・スカーレット』!」

 

デューレスの魔法陣から炎の精霊が発生、デューレスの意識をつなげられた炎の精霊は粘菌にパンチラッシュをしかける。新の姿がフランに似たものになり、レーヴァテインで粘菌を焼き切っていく。2人の攻撃は粘菌の体組織を破壊して切り開き、ついに核である眼球を露出させた。

上空にいるパッチはこの瞬間を待って、ライフル型の右腕を構えていた。

 

「Jackpot……です。」

 

パッチの右腕から炎を纏った骨の弾丸が発射された。弾丸は超速で眼球のど真ん中に直撃、貫通して、その下の地面に穴を開ける。そのコンマ数秒後、眼球は弾丸の衝撃波により、木っ端微塵に吹き飛んだ。

数秒後、眼球から乱れた脳波が放たれたことで、残っていた粘菌の残骸も死に、再生能力が暴走して、爆発するように辺りにぶちまけられた。上空にいたパッチと空間操作をしていたデューレス以外に粘菌が降りかかる。

粘菌は確実に死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然起こったことに最初は全員キョトンとしていた。ここは少し怒ってもいいはずなのだが、全員とも気持ち悪そうにしながらも、粘菌を倒した達成感から笑っていた。

 

「ハハハ…最後に以外なしっぺ返し食らっちまったが、倒せて良かったな。」

 

「今のには驚きましたよ。思わず能力でガードしちゃいました。」

 

「みんなベトベトですね。これは洗濯が大変です。」

 

「ああ〜、汚れちゃった。お風呂に入りたい気分です。」

 

「うぅ、もう変異できないわ。この身体は元に比べてかなり弱体化しているわね。」

 

「皆さん大丈夫ですか〜?」

 

上空から降りてくるパッチの言葉に全員は頷く。彼らの顔は達成感に満ち溢れていた。

あんな強敵が倒れたのだ。昼は宴会になるだろう。




久しぶりのゲストが栗里さん。

お、終わった。ついに戦闘が終わった。なんかすごく頭使ったよ……なんでだろ?

「いつもの範人ならゴリ押しができる敵だったからじゃないの?」

あ、なるほど。確かにそれはあり得るかもしれないですね。

「それにしても……女体化範人に触手プレイ……スライムまみれ……グフフ……」

顔がやばいことになっていますよ。いやらしいです。

「書いたのはあんただろ?」

フッ……書きたかったから書いただけさ。
範人なら無茶ぶりができますからね。

「色々な作者様のオリ主たちが巻き込まれているぞ。」

あれは粘菌のせいだ。きっとそうに違いない!

「こんな作者で誠に申し訳ない。」

『ではまた、次回お会いしましょう。』

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