東方戻界録 〜Return of progeny〜 作:四ツ兵衛
クロスして下さった作品と登場人物は
reiraさんの東方守絆然より仲光 絆君
緋色のライさんの東方人妖七漢よりエレイ・スカーレット君
DEEP・Sさんの東方生害録より多目的戦闘想定型B.O.W. No.000試作品 cord-U・パッチワーク(パッチ君)
ゆっくり幸村さんの東方紅魔鬼より新・スカーレット君と白・スカーレットちゃん
です。
初のクロスですが、どうか暖かい目で見てやってください。
私は今、幽々子、永琳と一緒に小さな宴会を行っている。
あ、三大老って言ったやつ表出ろ♪ぶっ潰す♪
宴会での話の内容はテキトーな世間話だ。なかなか面白い。そんな話をしている中で範人の話になった。
「そういえば、範人って一応紫の弟なのよね〜?」
「ええ、私はそう思っているけど。どうしたの?」
「似てないなー、って思ってね。少なくとも、私は似ているとは思わないわ。」
これには少しカチンときた。血が繋がっていないとは言っても、似ていないことはないと思う。彼が幼い頃から、家族同然に過ごしてきたのだ。似ていないはずがないだろう。私と範人は絶対に似ているはずだ。
「似ているわよ!」
「へぇ、どこが?」
私はすぐに答えることができなかった。似ているところなんて、すぐに見つかるものではない。よく似ているところなんてなおさらだ。見つけたいけど、結局は上手いものが見つからなかった。
「……金髪…とか……」
「金髪なんてたくさんいるじゃない。白黒の魔法使いも似ていると言うのかしら?」
「それは…違うけど……
範人は私に似ているわよ!絶対に似ている!範人が男だからわかりにくいだけだもん!範人が女になれば絶対に似ているってわかるもん!」
「あらあら、範人を女になんてできるのかしら?」
「う⁉︎」
私は黙ってしまった。言い返せない。幽々子に口喧嘩で負けてしまうなんて、かなりの不覚である。このままでは賢者の地位が危ういかもしれない。
ところで、ついさっきから永琳がポケットを探っているがどうしたのだろうか?
「あったわ!」
「何…それ?」
永琳が取り出したものは何か薬品の入った注射器だった。どう見てもやばい雰囲気しかない薬である。色が青って時点でやばい。
「女体化薬よ。これを投与されると、あら不思議、あっと言う間に男が女になっちゃうわ。どう?欲しい?」
「欲しい!すぐ使うわ!」
「実験への協力、感謝するわね。実は範人の細胞を見たときにわかったんだけど、結構不安定だったのよね。だから、範人に効果はてきめんだと思うわ。効果期間は一週間くらいかしらね。」
「ありがとう!」
この薬で範人と私が似ているってことを証明してみせるわ!絶対に幽々子をびっくりさせてやる。さて、私は途中離脱とさせていただこう。
私はスキマを開いて、研究所に向かった。
「オラァ!」
空気を切り裂き、ブオンという音を立てる拳。全力の拳ではないが、破壊力は申し分ない。そもそも、全力でパンチなんてしようものなら、ソニックブームが発生して、辺りが大惨事になってしまう。
目の前にいる半人半吸血鬼の少年はそれを避ける。そのまま、ラッシュにつなげようと思ったが、やめて左側に粒子移動する。俺がその空間からいなくなった数十分の一秒後、その空間を少女の拳が貫いた。
「やっぱり当たらないですね。」
「当たらないかもしれないが、なかなかいいセンスしてるぜ。1人が囮、もう1人が奇襲。悪くない。だが、それじゃあ手数が足りない。」
「「それなら、2人同時にいきます!」」
「Come on babys!」
新と白が飛び出すと同時に俺も飛び出した。
今日は異世界からお客が来る日だ。確か、5人くらい来ると言っていた。現在、新、白と勝負しているが、彼らが思った以上に早く来たため、時間潰しのようなものだ。時間潰しでも、かなり体力を使うことになると思うが……
そんなことを考えながら、2人の攻撃をさばいていると2人が武器スペルを発動する。
「『真刀 氷夜』」「『真刀 白乱』」
2人同時に斬りかかってくる。俺は全身を第一に変異させ、さらにアルゴスの変形機構を発動。大剣を割いて、双剣にした。鎌と剣を合わせて四刀流だ。
2方向からの攻撃を同時に受け止め、そのまま斬り合いに持ち込む。刀と甲殻がぶつかり合う心地よい音がカンカンと鳴り続ける。
数十秒後、このままではらちがあかないと思った俺は鎌を振り抜いて、刀ごと2人を弾き飛ばす。
「さすがです!」
「そっちも腕上げたじゃねーか。」
「ありがとうございます。」
俺は粒子移動で2人の間に割り込み、全身の甲殻の隙間から弾幕を発射した。2人は距離を取りながら弾幕を放ち、応戦する。
弾幕は完全に相打ちだった。どちらかの弾幕がパワーで押し切ることもなく、すり抜けることもなく、全て相殺される。
「弾幕の撃ち方もなかなかだな。」
「まだまだ、こんなものじゃないですよ。」
「良いね。」
俺の可愛い後輩たちは強くなった。本当に優秀な後輩たちだ。だから、今回は本気で戦ってやる!
俺は一枚のスペルカードを取り出した。まだ作ったばかりのものだが、現在の炎系最高防御を誇るスペルだ。そのスペルカードを見た瞬間、新たちの目つきが変わった。
「狩人王『竜殺しの英雄』」
俺は口の中に圧縮したタングステンを放り込み、噛み砕いた。
通常の状態では何十立方メートルになるかもわからない量のタングステンなのだが、圧縮したためハンドガンの弾くらいの大きさになっている。
体内に吸収されたタングステンは融解してから甲殻の表面に液体として出現。それが固まってガッチガチの鎧を形成した。背中の一部では火力が強すぎるために液体のままだが、そこの液体も攻撃に使える。
「この鎧を貫けるのなら、貫いてみろよ。」
「やってみせますよ!白!」
「わかっているわ。」
白が消えて、新1人になる。こうなったら、何が起こるかはほとんど決まっている。
『リミットブレイク!』
そう、リミットブレイクだ。
新の姿が白になり、翼が生える。威圧感もパワーも先程とは桁違いだ。ぶつかってくる霊力と妖力が痛いほどである。全力の素晴らしさを感じる。
「最高の気分だな。」
『こちらも先輩と全力で戦えて、最高です!』
1人になった2人がこちらに突撃、拳を突き出した。俺も負けじと右の拳を突き出す。ぶつかり合った拳から伝わる衝撃は予想以上に強いものだった。あまりの衝撃に仰け反ってしまう。それは新たちも同じだった。しかし、彼らはこちらよりも仰け反りが小さく、すぐに体制を立て直す。
彼らは蹴りを放ってきた。俺はサマーソルトで蹴りを躱し、体制を立て直しつつ蹴りを入れる。しかし、蹴りを放った先には新たちの脚があり、そのまま足技の打ち合いにもつれ込んだ。
脚には腕の数倍の力があるが、それは俺も新たちも同じだ。ゴン、ガゴンという音が辺りに響き、だんだんと脚の部分の鎧が壊れていく。しかし、簡単には壊させない。この鎧は俺の身体に取り込まれたことによって、生体金属の特性を持っている。つまり、壊れてもまた修復されるのだ。
『きりがないです……ね!』
「む⁉︎」
新たちのパンチ。俺は腕をクロスさせてガードしたが、あまりの衝撃に崩されてしまった。スキができた横腹に新たちの蹴りが入る。身体を貫く鋭い衝撃に吹っ飛ばされる。
「ゴハァ!」
『まだまだ!』
新たちは俺の背後に回り込み、回し蹴りの体制をとった。しかし、そこはこのスペルで最も危険な位置。背中には鎧が液体になり、弱点となる部分があるが、同時にその液体は武器にもなる。
「かかったな!」
背中の火力を一気に上げ、液体となった金属を熱風で吹き飛ばす。空気中に出た金属はもちろん冷えて固体化。風圧で細かくなっていたため、大量の金属の粒子が空気中を漂う結果となった。
『な⁉︎まずい!』
「そんなノロっちい動きじゃ、逃げれねーな!
『竜殺剣グリム』!」
弾幕となった金属の粒子が新たちの周りを飛び回り、動きを止める。脱出できるように通れる隙間を作っておいたはずだが、その隙間も動くために脱出できないようだ。
大剣形態のアルゴスに液体となった金属の鎧を纏わせ、さらに巨大な剣にする。表面を高温の金属が流れ、オレンジ色の光輝くそれは狩人の王が持つに相応しい化け物のような剣だ。
俺が新たちの首元でその剣を寸止めして、勝負に決着がついた。
勝負から10分後、新たちは2人に戻っていた。リミットブレイクで消耗した体力も俺が用意していた救急スプレーで回復している。
「ははは、負けてしまいました。」
「いい勝負だった。あともう少しで俺も負けてしまうところだったよ。お前たちは本当に強くなった。」
「でも、本気じゃなかったんですよね?」
「最後のやつは本気だった。あの鎧にあれだけのダメージを与えたんだから大したものだよ。」
嬉しそうに笑う2人。まるで自身の弟と妹のように思える。新に詩穏の姿が重なって見えてきた。
弟は今どうしているのだろう?無事なのだろうか?
そんなことを考えていると、スキマから姉さんがひょっこりと顔を出した。
「範人〜、お客さんを連れてきたわよ〜。」
その言葉の直後、空中にスキマは開き、来訪者たちが次々と落ちてきた。女の子みたいな格好をした者もいるが全員男である。この部屋にいる女性は白と姉さんだけだ。
「イテテ…あの野郎落としやがったな。」
「アタタ…あ、着いたみたいですね。」
「ゆかりん…落とすなんてひどいですよ。いつものことですけど……」
「これで全員よ。」
「うん、ありがとう。」
来訪者の全員を見る。少し前に会ったことのある顔見知りもいたが、約1名知らない人もいた。まぁ、出入りは基本自由でもいいかな、と思っているし、知らない者が来てもあまり気にはならない。あのブン屋はスクープを求めて不法侵入してくる始末だからもう慣れた。
「えーと……顔見知りもいるけど自己紹介だ。俺は旅行 範人。元人間の生物兵器だ。合衆国のエージェントをやっていた。」
「え⁉︎貴方も生物兵器なんですか⁉︎」
俺が自己紹介をするとタイラントが着ているようなコートを着た少年が身を乗り出してきた。「も」ということは、まさか彼も生物兵器なのだろうか?
「ん?そうだけど何か?」
「僕も生物兵器なんです。名前は多目的想定型B.O.W. 試作型No.000 cord-U・パッチワーク。今の名前じゃ長いんでパッチと呼んでください。」
「なるほど……よろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
やはり、彼も生物兵器だった。
そこで、少し不思議なことがある。彼が生物兵器だと言うのなら、何故ウチに資料がないのだろうか?ウチには表からも裏からも生物兵器の情報が大量に流れ込んでくる。それこそ、国が知らないことまで流れ込んでくるレベルだ。そんなウチに情報がないなんてことは滅多にない。
……まぁいい。姉さんから聞いた話だと、パラレルワールドというものが存在するらしい。パッチがその世界のイレギュラーだと考えればいいだろう。
「俺はエレイ・スカーレット。吸血鬼だ。よろしく。」
「僕は仲光 絆です。能力持ちのただの人間です。よろしくお願いします。」
「俺は新・スカーレットです。半人半吸血鬼やってます。よろしくお願いします。」
「私は白・スカーレットよ。新とは双子だと考えてくれるといいわ。よろしくね。」
全員の自己紹介が済んだ。俺は思うのだが、能力持ちってただの人間とは言えないのではないのだろうか?能力にもよるが、だいたいは能力持っている時点で化け物だと思う。俺は能力無くても、生物兵器って時点で化け物なのだが……
全員の自己紹介が終わった後、パッチは部屋の中を見回していたが、ある一点を見た後に目の色が変わった。
「範人さん!ここって生物研究所なんですか!?」
「ああ、そうだけど……突然どうしたんだ?」
「あれです!」
そう言ってパッチが指差す先を見ると、部屋に貼ってあるポスターが目に入った。そして、そのポスターには研究所の地図が書いてある。いつ貼ったのは覚えてないが、多分、デューレスが貼ってくれたものだろう。剥がす気はない。
「研究所の中が見たいんです!所長に許可取らないと……所長は誰ですか?」
「見てきていいよ。俺が所長だし……」
「ありがとうございます!行ってきます!」
「ああ、気をつけてな。資料も覗いていいぞー。」
部屋を出ていくパッチ。俺は黙ってその後ろ姿を見送った。パッチと入れ違いになるように姉さんが入ってくる。
「はぁ〜い、範人〜♪早速だけど、これをくらいなさい!」
「え⁉︎何⁉︎」
突然の発言に驚き、咄嗟に身体を甲殻で覆おうとする。しかし、覆いきる前に背中の傷跡を触られてしまい、力が抜けてしてしまった。力が抜けると同時に甲殻も消えてしまう。姉さんはスキマの中から取り出した注射器を俺の首に突き立て、薬を注入した。
薬が血流に乗り、身体中を巡る。薬の作用なのか、身体が熱い。まるで、細胞の破壊と分裂が同時に超高速で行われているような感覚だ。あまりの苦痛にその場にうずくまる。
1分くらい経っただろうか?身体が熱いという感覚は消え、普通に動くこともできそうだ。立ち上がると、少し肩が重い感じがする。周りを見ると、みんなの視線がこちらに集中していた。不思議に思って訊ねる。
「どうした?……あれ?声がなんか変だな。」
言葉を発して驚いた。声がいつもよりかなり高い気がする。服のサイズも少し変なような……胸に巻いていた包帯もいつの間にか取れてしまっている。
「「範人(さん)……」」「「先輩……」」
「女になってる⁉︎」
「え?」
俺はみんなの言っていることがよくわからなかった。
すみません。新君と白ちゃん以外のクロス参加キャラがだいぶ後での登場になってしまいました。しかも、パッチ君が早々と研究所へ……
クロス参加者様、訂正したい箇所があったら、教えてください。
最近、2つの絵が出来ました。1つは以前言った範人と冷仁が並んでいるもの、もう1つは……この章の名前から察してください。で、範人と冷仁の絵をいつ投稿しようか?と考えているわけです。本当、いつにしましょうか?
ではまた、次回お会いしましょう。