東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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原作キャラクターにオリジナルスペルカードが出ます。苦手な方はご注意ください。


第四十七話 氷精と雪女

 俺と魔理沙は吹雪の中を飛んでいる。つい1分くらい前までは雪がちらつく程度だったが、今ではかなり強い吹雪になってしまった。

 この吹雪が俺たちにとってはかなり煩わしい。視界は狭くなるし、風でバランスが崩れる。飛ぶことに支障をきたす。

 

「グウウ……これは困ったな」

「本当だぜ。スピードが出せない」

 

 それでもなんとか進んできたのだし、霊夢にも偉そうなことを言ってしまった。後戻りはできない。吹雪の奥に目をやると人影が見えた。

 

「魔理沙、人影が見えるんだけど」

「本当か? どれどれ……本当だな。誰なんだ?」

 

 魔理沙がこちらを見ながらに言う。誰なんだと訊かれてもわかるはずがない。こんな吹雪で相手を特定できるはずがないだろう。

 

「もしかしたら、この異変の主犯かもしれないな」

「それはさすがに無いと思うぜ」

「そうだよな。まだ一面に入ったばかりだし」

「一面……ってなんだ?」

「こちらの話だ。気にしないでくれ」

 

 なんだろう? なんか言っちゃいけないことを言った気がする。まあ、ここは流してもらおう。作者の文章力のためにも。

 ……今、どっかの人がメタいとか言っているかもしれない。

 

「まあ、進んでいれば、何か見つかるだろう」

「行き当たりバッタリかよ」

 

 そういや、この異変について手がかりなんて何も見つけてないな。……早く主犯を見つけて解決しないと。

 

「わからないから進んでみるんだろ?」

「それもそうだな。早く「ビュン!」……へ⁉︎」

 

 耳元を何かが掠めていった。周りを見ると氷の弾幕が飛んできていた。すぐに体制を整えてかわす。全てをかわし終えると何者かが近づいてきた。

 

「アタイの攻撃をかわすとはなかなかやるわね」

「お前はチルノ!」

 

 近づいてきた者はチルノだった。俺の中では『The・バカ』または『Ms.バカ』という認識になっている。いいやつということはわかっているのだが、誰彼構わず攻撃するのはやめていただきたい。

 

「あのさあ、俺たち今異変解決中なの。だから、邪魔するのはやめてくれない?」

 

「そうなの⁉︎ わかった、やめる」

 

 おや、案外素直に諦めてくれた。……いや、待てよ。そもそも、こんな簡単に諦めてくれるって、おかしくないか? ここでチルノが諦めてくれたということは何かのフラグだったりしないよな。

 

「あら、その異変はこの長続きする冬のことかしら?」

 

 そんなことを考えていると誰かがやって来た。白い服に白いマフラー。見た目だけでは何者かはわからない。この世界のほとんどの者に言えることかもしれないが……。だが、間違いなく妖怪だろう。妖怪の力……妖力だっけな? それを感じる。

 

「初めまして、かな?」

「そうね」

「そうか。じゃあ、とりあえず自己紹介。俺は難波優だ。よろしく」

「よろしくね。私はレティ・ホワイトロックよ。魔理沙は前に会ったわね。……それで質問に対する答えは?」

「Yesだ」

 

 俺がそう答えた瞬間にレティを中心に魔方陣が出現した。

 戦る気だな。まあ、俺は構わないけど……。ていうか、さっきのはやっぱりフラグだったよ。こういうとき、俺はフラグブレイカーになりたい。

 

「こんなに心地が良いのよ。この冬は終わらせないわ」

 

 レティはそう言うと弾幕を放ってきた。だが、そんなものにやられる俺と魔理沙ではない。軽くかわしていく。

 

「そんな攻撃当たらないぜ!」

「軽い、軽い!」

「っ……、チルノ!」

 

 レティは小さく舌打ちをするとチルノを呼んだ。なんのつもりだろうか? チルノがレティの方にやってくる。

 

「何?」

「魔理沙と優はこの冬を終わらせるつもりよ」

「なんだって⁉︎」

「だからチルノも協力しなさい」

「わかったよ。……さあ、アタイが相手だ」

 

 Oh……さすがMs.バカだ。もう既にレティのことなんて忘れて自分一人で戦う気だよ。そのレティは……おお! 見事なorz体勢。空中でよくそんなポーズとれるな。

 

「あのー、チルノさん。誰かを忘れちゃいませんかい?」

「ん?誰かって誰?」

「チルノ…あんたね……。」

 

 ウワォ! さらに見事なorz体勢だ。

 おい作者! 頭に落ち込んでいます的なのつけるの忘れるなよ! 何⁉︎ 挿絵はつかねーだと⁉︎

 え? メタいって? ……気にすんな。

 

「なんか寒気がしたぜ……」

「うう……アタイも」

「お前ら……」

 

 まさか、俺までorz体勢になるとは……。こいつら言葉にとんでもない破壊力を持ってやがるぜ。心が一撃で叩き潰された。

 

「チルノ、私と一緒に戦うのよ」

「あ、そうだったの。ごめんね」

「いいわ。水に流してあげる」

「トイレか?」

「バカにしているの?」

 

 こいつらはなんだよ。氷関係のコンビだからチームワーク抜群だと思ったけど、そんなもの全然感じられないぞ。ああ、こいつら見てたらなんか回復したみたいだ。

 

「まあ、ここではその水も凍りつくけどね!」

「それなら私たちがその氷を溶かしてやるぜ!」

「その言葉、いいセンスだ!」

「アタイたちのチームワーク見せてやる!」

 

 チルノとレティが弾幕を放ってくる。さすがに2人同時となると密度が濃い。だが、そんなもの効かない。俺と魔理沙も弾幕を放って応戦する。俺の弾幕はクリスタル形だ。形に合わせて飛ばせば、スピードも出るし、破壊力も上がる。そして、一番の特徴は半透明であるというところだ。

 

「協力なんて初めてだな。」

「私もだぜ。……それよりも」

「「足引っ張るなよ!」」

 

 俺たちは弾幕をさらに濃くした。すると、レティはその場に留まり弾幕で相殺、チルノは上空へ飛んでかわした。

 

「くらいなさい。

寒符『リンガリングコールド』」

 

 雪の結晶のような弾幕が飛んでくる。弾幕勝負では美しさも大切だと聞いたがこういうことなのだろう。自然のものは美しい。だが、かわし易い。魔理沙は箒で叩き落している。

 

「そんなものはこうしてー」

 

 俺は弾幕を発射するのではなく腕に纏わせた。弾幕が目前に迫ってきたときに腕を前に出し、弾幕のアーマーを傘のように広げる。

 

「こうじゃ!」

 

 腕を軸に弾幕を回転させ、飛んできた弾幕を弾き返す。そして、防ぎきった後に発射。腕を軸に回転させながらのため、ガトリングのように発射される。

 

「何よ⁉︎……これ⁉︎」

 

 レティは焦りながらもかわす。

 スゲェ!銃弾並みのスピードの弾幕をかわしてやがるぜ!機械と対立している人間のみなさん、ここに救世主がいます。

 

「危ない危ない。……やってくれたわね」

「へへへ♪」

「どんなもんだい!」

「そんなあなたたちに注意よ。これから天気が変わります。」

「それがどうした「ヒュン!」ウオ⁉︎」

 

 気がつくと雹が降り注いでいた。しかも、普通の雹ではない。一つ一つが攻撃性を持つ弾幕の雹だ。そういえば、あのときからチルノの姿が見られない。あのときにチルノは上に飛んで……、

 

「まさか⁉︎」

「そのまさかよ」

 

 俺が上を向くとチルノが弾幕を精製していた。弾幕は雹のように落ちてくる。

 ちなみにスカートの中は見ていない。逆光で見えなかった。いいか、俺は見ていないんだ!見ようともしていないからな!

 とまぁ、ふざけたことを考えているわけではない。

 こいつら、最初からこんな作戦を持っていたのか……。

 思わず驚きの表情を浮かべてしまう。それは魔理沙も同じだった。

 

「アタイを忘れてもらったら困るよ。アタイはサイキョーだからね!」

「さあ、上からと横からの攻撃をかわしきれるかしら?」

 

 レティからは通常の弾幕が発射、チルノは特大の雹を降らせてくる。

 かわすことは無理。

 直感でそう感じた。だから跳ね返す。

 

「魔理沙! こっちへ!」

「おう!」

 

 魔理沙が俺の近くに来たところでスペルカードを発動する。レティとチルノの弾幕はもう10cmのところまで迫ってきていた。

 

「反符『リフレクションスペース』」

 

 俺は能力を使用し、周りの空間を移し替えた。空間の壁が俺と魔理沙を包み込む。それは見えない反発の壁。あらゆるものはそれに触れたときに抗力を受けて跳ね返る。そして、跳ね返ったものはこちらの攻撃になる。

 

「何⁉︎ 弾幕が返される⁉︎」

「そんなの常識的に卑怯だぞ!」

「ハハハ! 何を言っているんだ? 戦いってもんは常識を超えないと勝てねーんだよ! それにここは幻想郷だろ。常識なんてもんはそもそも存在しねーよ」

 

 俺はそう言い切って、反発力を強くした。と言っても、さらに強い反発力を持つ空間に移し替えた。だけなのだが……。

 空間は全ての弾幕を跳ね返し、その弾幕はレティとチルノに向かっていく。だが、もともとそこまで速い弾幕ではなかったためあっさりとかわされた。まあ、牽制くらいにはなっただろう。

 

「くっ……、やるわね」

「今更気づいた?」

「チルノ!合体技よ!」

「うん!」

「「大寒波『冬将軍の軍勢』!」」

 

 レティとチルノが詠唱すると氷の彫刻が大量に現れた。これはとても美しい弾幕だ。俺が氷の彫刻に見惚れていると氷の彫刻たちが意思を持ったかのように動き出した。

 

「さあ、行きなさい」

「やっちゃえー!」

 

 彫刻たちが突撃を開始した。その数はおよそ300体ほどだろうか。人型をした騎士のような彫刻が斬りつけてきた。弾幕で防御を試みるが、氷の剣はそれをあっさりと叩き落した。俺は紙一重で剣をかわし、腹部に蹴りを入れた。だが、氷であっても鎧は頑強なのか、傷一つつかなかった。そこへ鷹の形の彫刻が急降下で突っ込んでくる。

 

「ヤバイ⁉︎」

 

 とっさに自身と鷹の位置を能力で移し替えた。なんとかかわせたが次に飛んできたらどうなるかわからない。

 

「キャアァー!」

「魔理沙!」

 

 気がつくと魔理沙が騎士の彫刻たちに囲まれていた。俺は咄嗟に位置を移し替える。騎士たちのうちの一体と魔理沙の位置が入れ替わり、剣を振り下ろされた騎士は砕け散った。そんな俺のところへ馬に乗った騎士が槍を構えて突っ込んできた。

 

「な⁉︎」

「恋符『マスタースパーク』」

 

 助かった。魔理沙のマスタースパークで騎士は溶けて消えた。強力な破壊力を持つ魔理沙の魔法の前では頑強な鎧も意味を成さないらしい。

 ……それなら!

 そこで俺はあるスペルカードを思いついた。そのスペルカードなら、この場の敵を全滅させることができる。俺は能力で魔理沙をすぐ背後の彫刻と入れ替えた。

 

「魔理沙!今、空白のスペルカード持っているか?」

「ああ、持っているけど……どうするんだ?」

「今この場でスペルカードを作る!」

「何ィ!」

「勝つにはそれしかない。今から俺の言う通りに想像してくれ」

「……仕方ないな。こうなったら付き合ってやる」

「よし!じゃあ……

 

……ていう感じだ。できたか?」

「ああ、できたぜ」

 

 俺たちの手の中には新しいスペルカードがあった。

 

「何度も言うがこれは合体技だからな。うまく合わせてくれよ」

「おう!」

「じゃあ、行くぞ!」

「「鏡乱光球『マッドネススパーク 』」」

 

 まず、俺が大きめの弾幕を放つ。この弾幕は通常の弾幕とは異なり、角ついた球体である。その後、魔理沙がマスタースパークを俺の弾幕に撃ち込んだ。

 マスタースパークは光と熱の魔法。俺の弾幕は半透明だ。半透明ということは空気とは光の透過率が異なるということ。そして、光は元の物体とは透過率の異なる物体に入るとき、屈折または反射する。

 わかるだろうか? マスタースパークは光と熱の魔法であるために俺の弾幕の中に入るのだ。さらに俺の弾幕は入った光が少し出にくいように精製してある。つまり、弾幕の中で反射を繰り返すのだ。光は反射したものが集まるとエネルギーが大きくなる。そこでエネルギーが大きくなったところで弾幕の中からランダムに増幅されたマスタースパークが飛び出す。その様子のまさに鏡乱光球(ミラーボール)だ。

 

「うわー、スゲェ破壊力」

「こんなのを思いついたのかよ……」

 

 彫刻たちは光に当たると一瞬にして溶けて消えた。……いや、浄化されたと言った方がいいだろうか。そして、ランダムに飛び出す攻撃の対象は彫刻たちだけではない。その攻撃はレティとチルノに向かっても飛んでいく。

 

「キャアァァー!」

「うわー!」

 

 2人は見事に被弾。真っ逆さまに落ちていく。あまりの威力に一撃でダウンしたのだろう。俺たちはスペルカードを解除した。

 

「戦う相手を選ぶときは相手の潜在能力も考えな」

 

 俺はレティとチルノに向かってそう言った。聞こえているかどうかは知らないが……。

 

「何を言っているんだ? 早く先に進もうぜ!」

「おい、待てよ魔理沙! 折角、画面の向こうのみんなにかっこいいところ見せようと思ったのに……」

「本当に何言ってんだよ。早く行こうぜ!」

「はい……」

 

 魔理沙に急かされ、俺たちは先に進んだ。

 そういえば、挿絵がつかないんだから、そもそもかっこいいところなんて見えないよね。




今回のゲストは栗里さん。

「チルノとレティがメチャクチャ強くなっていたような気がするんだけど……気のせいかな?」

気がついたらオリジナルスペルカードを思いついた後でした。そこで「これは使うしかない!」ということになり使用したわけです。

「本当に軍隊が現れるなんてね。あれは弾幕じゃないの?」

突撃型(鷹や馬など)は弾幕です。当たるともちろんダメージが入ります。しかし、武装型(騎士など)は武器だけが弾幕です。そのかわり弾幕が強固で氷像自体も強固です。

「なるほどね」

そして、魔理沙たちにもスペルカードを作ってしまいました。マッドネス(madness)は狂乱という意味です。周りに向けて無差別にレーザーを飛ばすため、この名前にしました。

「どっかのリュウグウノツカイが寄って来そうだね」

ははは、そうですね。見た目は完全にミラーボールですからね。危険度が段違いですが……。

「ところで存山の彼女は?」

次に存山さんがゲストになったときです。

『ではまた、次回お会いしましょう。』

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