東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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またまた、しばらく出番がなくなる主人公


第四十六話 春が来ない⁉︎

今日も雪が降る。もうずっとこんな様子だ。外は銀世界。俺は相変わらず、魔理沙の家に同棲させてもらっている。

気温が低いせいか最近は妖怪退治の依頼が来ない。妖怪って冬眠するのかな?スキマ妖怪が冬眠するっていうことは聞いたことがあるのだけれど……。まあ、被害が無いのは良いことだ。

……て、ちょっと待て!そもそも雪が降っていることがおかしい。今は何月だと思う?五月だぜ!May だよ、May !それなのに雪が降るってどこの極圏だよ?どう考えてもおかしいだろ!

 

「魔理沙ー、これ絶対おかしいだろー。春が来ないなんて間違いなく異変だぜ。」

 

「私もそうだと思うんだけどな……。どうしよう?」

 

「いや、どうしようじゃなくてだな。解決しないのか?」

 

いつもの魔理沙なら、もう既に箒に乗って飛び回っていてもおかしくない。それに春が来ないなんて大問題だ。人里の人々も困っているはずである。

 

「いやー、こうしていると優と一緒にいられる時間が長くて嬉しくてな。」

 

「それは俺も嬉しいけどな……それで解決しないのはどうかと思うぞ。」

 

いつもの魔理沙はどこへ行ったのやら……。家の中でコタツに入ってのんびりしているなんてらしくない。俺ものんびりするのは嫌いじゃないんだが、寒いままっていうのは困る。花見もできない。

 

「花見できなくてもいいのか?」

 

俺がそう言った瞬間に魔理沙の目が変わった。コタツから飛び出て、そのコタツの上に片足を乗せる。

 

「そうだぜ!春が来ないと花見ができないじゃないか!」

 

魔理沙がそう叫ぶ。それでこそ魔理沙らしい。騒がしいことが好きで豪快。こういうかっこいいところがあって魔理沙なのだ。……だが、今は少し問題がある。

 

「……カッコつけているところ悪いんだけどさ、スカートの中見えちゃってるから。」

 

こちらはコタツに入っているのである。その目の前でコタツに片足なんて乗せられたら見えないはずがない。魔理沙は顔を赤くしてコタツから離れる。

 

「と、とにかく、異変だ。行こうぜ!」

 

あ、誤魔化した。まあ、それでもいいや。今は異変を解決しないといけないな。人々も困っているだろう。

 

「おう!」

 

俺は魔理沙の後に続いて飛びたった。

 

 

 

 

 

今日は休日。今は湖の絵を仕上げたところだ。凍りついた湖は幻想的である。しかも、これが五月なのだから驚きだ。凍りついた湖にほとりの建つ紅い館。こんな絵はなかなか描けない。

 

「デューレス、お嬢様がお呼びよ。」

 

「わかりました。すぐに伺います。」

 

そんなときにお嬢様に呼ばれた。まあ、絵はちょうど描き終わったところだから問題ない。それに主の命令だから聞かないわけにはいかない。僕は画材を片付けて主の部屋に向かった。

 

 

 

「お呼びでしょうか?」

 

「入りなさい。」

 

僕は主の部屋に入った。お嬢様が正面の椅子に座っている。小さいのに主なんて、さすがだ。吸血鬼のカリスマは半端じゃない。

 

「……何か失礼なこと考えなかった?」

 

「いえ。ご用件はなんでしょう?」

 

僕が何かヤバいことでも考えたのだろうか?しかも、それが顔に出ていたのか?……思い当たる節がない。ひとまず、用件を訊く。

 

「もう五月だというのに外は一面の銀世界。これが何を意味するかわかるかしら?」

 

「異変……でしょうか?」

 

前に紫さんから聞いたことがあるが、この世界ではこういった不思議なことが起こるらしい。それらを総称して異変と言うらしいが僕はこれが初めての異変だった。

 

「そう。これは異変よ。」

 

「私に異変を解決してこい、と?」

 

「その通り。春には花見が行われるのだけれどね。今年はまだ、春が来ていないのよ。早く花見がしたいからこの異変を解決してきてくれないかしら?」

 

うむ。お嬢様らしい。カリスマ溢れる吸血鬼であってもやはり考えることは見た目相応だ。花見がしたいから異変を解決してこい、って……まあ、花見を待っている人妖は多いだろうし、いかない理由はないけどね。

 

「わかりました。」

 

「やっぱり、失礼なこと考えなかった?」

 

「いえ。」

 

「そう……。咲夜を連れていきなさい。二人で協力した方が良いでしょう。咲夜!」

 

お嬢様が咲夜さんの名前を呼んだ瞬間に咲夜さんが現れた。やはり、時を操るのはすごいと思う。

 

「お呼びでしょうか、お嬢様?」

 

「デューレスと一緒に異変解決に行ってきなさい。」

 

「かしこまりました。」

 

「ありがとうございます。では、行ってまいります。」

 

「行ってらっしゃい。」

 

僕は咲夜さんと共に主の部屋に後にした。そのとき、咲夜さんの表情が笑っていたような気がしたけど、気のせいだろう。

 

 

 

 

 

俺と魔理沙は博麗神社に来ていた。目的はもちろん、霊夢の協力を求めるためである。魔理沙が神社の裏へ走っていく後を追う。

 

「霊夢、これは異変だぜ!」

 

魔理沙が障子を勢いよく開ける。霊夢はギョッとした表情を浮かべたが、すぐに厳しい目で魔理沙を睨みつけた。

 

「相変わらず騒がしいわね。今年は単純に春が遅いだけじゃないの?」

 

「何を言っているんだぜ!もう五月じゃないか!いくらなんでもこれは遅すぎるだろ!」

 

「私は行く気ないから。」

 

その言葉に魔理沙は怒りを隠せない。幻想郷の管理者なるものがバランスを保とうとしないとはどういうことだろうか。俺も怒りが湧いたが、心の奥に押し留める。

 

「何を言っているんだぜ!幻想郷のバランスを保つのが霊夢の仕事だろ!」

 

「私がこれでいいと思うのだから、今はこれがいいのよ。魔理沙の言う通りなら、私がバランスの基準だからね。」

 

「ふざけるな!」

 

魔理沙が怒りに任せて霊夢に掴みかかろうとする。俺はマズイと思い、後ろから羽交い締めにして止める。これはこれで充分マズイと思うが、魔理沙のことだから許してくれるだろう。

 

「落ち着け!」

 

「はーなーせー!」

 

魔理沙は逃れようともがく。俺はさらに力を強めて魔理沙の抵抗を止める。霊夢はそれをくだらなそうにして、見ていた。10秒程して、魔理沙がおとなしくなる。

 

「……悪い、離してくれ。」

 

俺は無言で魔理沙を解放する。魔理沙は霊夢を軽蔑の眼差しで見つめるが、霊夢は何の反応も示さない。それを見てさすがの俺も頭にきた。きっと、今の俺の表情は怒りが現れているだろう。

 

「……行こう。」

 

「でも……」

 

「俺たちで異変を解決してやろうぜ。」

 

俺がそう言うと魔理沙の目が輝いた。何も異変解決は博麗の巫女だけの仕事ではない。俺たちにだってできる。それに知り合いにはもっと強いやつがいる。

 

「じゃあな。遅れて来て、いいとこ取りは許さないからな。」

 

「じゃあな!」

 

魔理沙が障子を勢いよく閉じて、バシン!という音が鳴る。俺たちは同時に飛び立った。気持ちはまだムシャクシャしていた。

 

「で、今度は誰に頼む?」

 

「範人はどうだ?」

 

俺が知っている中で最強の生物…いや、人間だ。範人が一緒なら大抵の異変ならすぐに解決できるだろう。

 

「範人か…いいな。行こうぜ!」

 

俺たちは範人の研究所を目指した。

 

 

 

俺たちは範人の家の前で沈黙した。何故か?それは玄関のドアに貼られていた紙が原因である。その紙にはこう書いてあった。

 

『向こうの世界でミッションがあるため、今日は午後3時までいません。』

 

いないってなんだよ、いないって!こんな肝心なときにいないってどういうことだよ!あの『単身バイオハザード』め!おかしくない?最強クラスの2人に断られたんぜ!範人はミッションで仕方ないからいいけどさ。霊夢はなんだよ。私がバランスの基準だから⁉︎ふざけんなよ!こんなに思い通りにいかないのって超稀だよ。こんなにも頼みを断られることって普通ある?

 

「まあ、いいじゃないか。行こうぜ。」

 

「そうは言ってもなあ。本当に俺たちだけで大丈夫か?」

 

「大丈夫だ。……多分。」

 

この人、今、多分って言ったよ⁉︎いつもの自信はどこへ行った?本格的に心配になってきた。……まあいい。当たって砕けろだ。砕けちゃダメだけど、当たるだけ当たってやる。

 

「わかった、行こう。」

 

「よーし、それでこそ優だぜ。」

 

俺たちは異変の主犯の手がかりを探し始めた。




今日のゲストは存山さんです。

「範人の新しい二つ名ができたね。」

『単身バイオハザード』ですね。我ながら、いいセンスだと思いました。範人は強すぎて、1人でラクーンシティを超えるような被害を出せますからね。1人だけでB.O.W.の軍隊みたいなものですし。

「霊夢はサボるのかよ。」

そこは今後の展開を期待してください。

「ところで俺に彼女は?」

なってくれそうな人がいるにはいるのですがその人が本編に出れるかがわからないんですよね。……それでもいいですか?

「いいよ。」

わかりました。それでは次の後書きに呼んでおきますね。

「よっしゃああああ!ありがとう、キューピッド四ツ葉!」

どういたしまして。でも、その呼び方はやめてください。

『ではまた、次回お会いしましょう。』

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