東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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作者の心は現在ズタボロです。


第四十四話 ジェットの答え

範人たちが表に戻ると人間たちがいた。ついさっきまで自分たち以外に誰もいない裏にいたジェットにとってはその光景がとても眩しかった。

 

「さて、まずはジェットの友達を探さないとな。」

 

範人は園内中に粒子を飛ばし、監視していたときの記憶を頼りにジェットの友達を探そうとする。

 

「ちょっと待ってください。」

 

「ん?なんだ?」

 

ジェットが範人を止めた。

 

「この時間は多分昼食を食べていると思います。」

 

「そうか。場所はわかるか?」

 

「はい、大体の見当はついています。こっちです。」

 

範人たちがジェットについていくと赤い教祖様の某ファストフード店にジェットの友達がいた。だが、ジェットはみんなに会いに行けないでいる。

 

「どうした?行ってこいよ。」

 

「ごめんなさい。どんな風に会えばいいのかわからなくて……。」

 

突然消えて、突然現れた自分を友達がどう思うだろうか?自分をまた受け入れてくれるだろうか?ジェットにとってそれが心配だった。

 

「そんなの普通でいいんだよ。フランもいっしょに連れていっていいからさ。」

 

範人はジェットの背中を優しく押す。

 

「ありがとうございます。フランちゃん、行こっ!」

 

「うん♪」

 

ジェットはフランの手を引いて友達の元に行った。範人と妖夢はそれを暖かく見守る。

 

「ごめん、みんなー!」

 

ジェットの言葉に全員が振り向く。友達は全員が安心した表情を浮かべたが、すぐにフランに目を移して驚いた表情を浮かべた。

 

「無事でなによりだよ。何があったんだ?」

 

「いや〜、ちょっといろいろあってね。」

 

ジェットはテキトーにはぐらかそうとしたがそんなことで引き下がる者がいるはずもなく……。

 

「はあ⁉︎いろいろってなんだよ、いろいろって!」

 

「え⁉︎いや、だから」

 

「そこの超絶美少女とデートでもしてたのか?いや、そうなんだろ!」

 

一名がフランを指差しながら言った。すると、ジェットが言い訳をする間もなく、話が勝手に進んでいく。

 

「畜生め!羨ましいぞ!」

 

「俺たちが知らないところでそんなことを⁉︎」

 

「ジェットがリア充になっちまった⁉︎」

 

「おめでとう!」

 

「妬ましいわー。パルパル……」

 

なんか一名変なのがいたような気がする。全員が思ったことを口にして、ジェットが混乱しているとある一名が助け舟を出した。

 

「別にいいじゃねーか。幸せってもんは誰にでもいずれやってくるだろ。」

 

『……ん、それもそうだな。』

 

全員がそう頷き、ジェットはホッと一息ついた。

 

「で、君の名前はなんて言うんだ?」

 

「私はフランドール。フランって呼んでいいよ。」

 

「そうか。よろしくな。と言っても俺たちはもう帰るんだけどな。」

 

『ゑゑ⁉︎』

 

ジェットだけでなく、その場にいた全員が驚いた。「いや…でも」と反対しようとする者がいてもその少年は睨んで受け入れさせた。範人と妖夢だけがその少年の意思を読み取った。

 

なるほど、ジェットとフランを2人きりにするつもりか……いいセンスだ。人の心がうまく読み取れるあいつはエージェントに向いているな。俺なんかとは違った優しいエージェントに……。まあ、少々自分勝手な気もするけど……。

 

ジェットの友達が席を立って出口に向かう。範人はそこで少年を引き止めた。

 

「お前、良いやつだな。」

 

範人の言葉に少年は得意気に鼻の下をこすった。

 

「いいんだよ。あいつのためだからな。ダチのためならこのくらい安いもんさ。」

 

「そうか。」

 

範人はポケットから数字の書かれた紙を取り出し、少年に渡した。

 

「お前には素質がある。興味があれば、その番号に電話してみな。」

 

「ん…ああ、ありがとう。」

 

少年たちは範人たちに手を振って、去っていった。

 

 

 

範人たちが昼食を食べ終えてから5時間程が経過した。あれから、いろいろなアトラクションを回ったがジェットとフランに特に進展はない。あったことといえば、フランがもう一度お化け屋敷に行こうと言ってそれを範人たちが断固拒否したり、フリーフォールでジェットが気絶しかけたこと(フランが誘った)ぐらいだ。

 

「そろそろ日没だな。」

 

「そうですね。なんだかんだ今日は楽しかったです。」

 

さて、日没だし、そろそろ作戦を実行するか。

 

範人はジェットのために作戦を考えていたのだ。遊園地で日没といえばテンプレートの展開があるだろう。そのテンプレートの観覧車である。範人はそういったテンプレート的展開が案外好きだったりする。(テレビドラマあまり見ないけど)

 

「観覧車にでも乗るか?」

 

「いいですね。乗りましょう!」

 

意外にも一番乗り気なのは妖夢だった。範人はその反応に驚き、かなり焦った。しかし、それもまた好都合だと考え直す。そのほうが理由が自然だ。

 

「んー、よし!2人1組で乗ろうか。」

 

「はい。」

 

「わーい♪ジェット、2人きりだよ!」

 

「う、うん。」

 

ジェットは一応答えを見つけていた。だが、フランがそれで許してくれるかはわからなかった。ジェットは不安な気持ちで観覧車に乗り込んだ。

 

 

 

こちらは範人、妖夢組。2人とも相思相愛のグループはジェットのことを心配していた。

 

「ジェットくんは大丈夫でしょうか?」

 

「まあ、大丈夫だろ。あいつはフランが惚れた男だ。きっと、良い答えを出すだろうさ。」

 

「……そうですね。彼ならきっと大丈夫と信じます。」

 

「それよりも景色を楽しもうか。」

 

「このシチュエーションは?」

 

「満喫しまくっております。」

 

「ふふふ♪」

 

彼らは互いの肩に寄りかかりながら外の景色に目を移した。その間、2人は心臓の鼓動が相手に届いているほどドキドキしていた。

 

 

 

どうしよう……。答えは見つけられた。けど、どうやって伝えよう?そもそも、こんな答えなんかでいいのか?

いや、これでいい。これが僕の見つけた答えだ。

 

「フランちゃん。」

 

「なーに?」

 

「答え……見つけたよ。」

 

「本当?じゃあ、私に教えてよ。」

 

ジェットは黙って頷くとフランに近づいた。心臓の鼓動がやけに大きく感じられる。

 

「目、瞑っててもらえるかな?」

 

「う、うん。」

 

フランが目を瞑る。ジェットはフランの頬に手を当てて、ゆっくりと顔を近づける。おそらく、自分の今の顔は真っ赤だろう。だが、恥ずかしくてもしなければならない。それが自分の答えだから。

 

チュ……

 

フランは目を見開いた。目の前にジェットの顔がある。そして、唇には柔らかい感触。まさか、そんなことをしてもらえるとは思っていなかった。キスをしてもらえるとは思っていなかった。

 

ジェットはフランから顔を離す。

 

「ごめんね、こんな答えで……。」

 

フランは軽く放心状態になっていた。

いや、好きな相手に突然キスされて放心状態にならない者などそもそもいるのだろうか?

 

「でも、僕にはこれしか方法が見つからなかったから…等価交換できる初めてのものはこれくらいだったから。」

 

放心状態だったフランに心が戻る。

 

「これ、僕のファーストキスだからさ。……これで許してくれな「ジェット大好きー!」why⁉︎」

 

ジェットが言葉を言い終わらないうちにフランがジェットに抱きついた。フランの本来の力は普通の人間を軽く潰してしまうような力なのだが、今回は優しく抱きしめる。それでも普通の人間にとっては力いっぱい抱きしめられている状態とあまり変わらないのだが……。

 

「フ、フランちゃん…苦しい……。」

 

「あ、ごめんごめん。」

 

フランはジェットから手を離す。ジェットは苦しそうに息をしている。息が切れているがその状態でフランの答えを訊ねる。

 

「ゼェ…ゼェ…、答えはどうなの?……許してくれる?」

 

「もちろん。」

 

「それなら良か「ただし」ウェ⁉︎」

 

「また、キスしてくれる?」

 

「ゑゑ⁉︎」

 

ジェットがフランの言ったことに対して反対の態度をとる。だが、フランにはそんなこと関係ない。ジェットを半ば強引に引き寄せてキスをした。しかも、さっきよりも圧倒的に時間が長い。

 

「ん、フゥ…。」

 

「……ハァ…ハァ、突然何するの?」

 

「それはジェットが言えたことかな?」

 

「ウッ⁉︎そ、それは……。」

 

ジェットは顔が真っ赤になったことがわからないようにうつむく。しかし、耳まで真っ赤だったためフランにしっかりとバレていた。

 

「ねぇ、ジェット。」

 

「な、何?」

 

フランも恥ずかしかった。こんなことを言うことは初めてだった。

 

彼女も姉と同じように人間に恋をした。彼女は吸血鬼。人間とは種族はおろか、寿命でさえも圧倒的に異なる。それは越えられない壁だ。だが、種族の違いは決して越えられない壁ではない。

種族の壁は越えられる。

それを姉と兄に教えられた。

 

「私……ジェットのことが好きなの。……私といっしょになる気はない?」

 

「え⁉︎」

 

突然の告白でジェットは悩む。決して、嫌なことではない。むしろ、彼にとってフランは好きな人に当たる。だが、それは恋愛感情ではなかった。

大切な人。

フランは彼にとって純粋に大切な人だった。だが、それあくまで『だった』である。

 

「……喜んで。」

 

そう。フランは彼にとって『とても』大切な人。大好きな人になっていた。そして、覚悟が決まったのはフランからの告白の直後。今までの彼は周りに迷惑をかけまい、周りに影響を与えまいとしてきた。

フランがいなければ、彼は自分から動けなかった。今、自分は夢を見ているのかもしれない。そう思えてしまうほどにジェットはフランの告白が信じられなくて、同時に嬉しかった。

 

「うわーい♪ジェットありがと〜♪」

 

フランはまたジェットにキスをしようとする。が、ジェットはそれを右手の指2本で止めた。フランが少し悲しそうな顔をする。

 

「うう……。」

 

「今度は2人とも同意の上なんだからさ。いっしょにね。」

 

「うん!」

 

2人は抱き合い、目を閉じてゆっくりと顔を近づける。夕焼けをバックに2人の唇が重なった。それはまた1組の者たちが種族の壁を越えた瞬間だった。




今日のゲストは存山さんです。

「人間には不思議な魅力があるかもしれないね。」

そうですね。レミリアの夫は元人間ですし。自分たちよりも劣った存在である人間に惹かれる妖怪がいることも納得できます。

「あいつらはいいよね。恋人がいて……。」

そうですね〜。私にはよくわかりませんが……。それでも自分を認めて信じてくれる存在がいることはありがたいですね。

「そういえば、なんで心がズタボロなんだ?」

昨夜、親と喧嘩しましてね。しまいには、退学しろ!とか言われまして……。心が完全に狂って、泣きながら笑っていましたよ……。

「……それは大変だったね。」

まあ、小学生の頃からいじめられていたりしましたから、自分のことなんて、もう、どうでもいいんですがね。そのせいで誰かを愛するなんてできなくなったわけなんですが……。

「辛いな。」

それでも、投稿は続けたいです。せめて、完結まで持っていかないと!今の生きがいはこれですから!

「そろそろ締めよう。美味いものでも食べて辛い気持ちを吹き飛ばそう。」

そうですね。

『ではまた、次回お会いしましょう。』

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