東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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タイトルが処分となっていても今回はフランとクロウのバトルよりもジェットと範人の会話がメインです。


第四十三話 クロウの処分

フランはクロウのパンチを受け止め、勢いを利用して地面に叩きつけた。そのまま、地面で引きずりながらスイングする。

 

「ゴアァァ!」

 

投げられたクロウは悲鳴を上げながらフリーフォールに激突した。落下するクロウにフランはさらに連続パンチで追い打ちをかける。不思議なことにクロウには目が見つからなかった。

 

 

 

ジェットは激闘の様子を見てぼーっとしていた。

 

「ぼーっとして、どうしたんだ?」

 

ぼーっとしているジェットを見て心配になった範人が話しかける。ジェットはとても驚いた。当たり前である。ついさっき、化け物を灰にしたり、首を折られても数秒で立ち上がったりした化け物が突然話しかけてきたのだから。

 

「あ、ええと……フランちゃん大丈夫でしょうか?」

 

「心配いらない。俺はフランを信じている。お前も俺たちを信じてくれ。」

 

ジェットは驚いた。

 

信じているだけであそこまで幼い少女に任せられるものなの⁉︎僕じゃあんなのと戦うなんてとても無理だよ。ていうか、この人たち人間?あんな化け物と戦って勝っちゃったんでしょ⁉︎

 

ジェットは範人に最も大きな質問をぶつける。

 

「失礼ですが、貴方たちって人間ですか?」

 

「ああ……やっぱりそうなるか〜。実を言うと、ここにはお前以外に完全に人間ってやつはいないぞ。」

 

「ええ⁉︎」

 

ジェットはとんでもなく驚いた。多分、人生で一番驚いただろう。

 

「そもそも、俺たちは全員が種族自体異なるからな。フランも実の妹ってわけじゃないし。」

 

「ほ、本当ですか⁉︎」

 

「ああ、本当だ。俺は生物兵器、妖夢は半人半霊、フランは吸血鬼だ。」

 

ジェットの頭の中は混乱してしまった。

 

あれ?ここにいる人たちはみんな種族が違って、フランちゃんが吸血鬼で、妖夢さんが……何だっけ?そもそもなんで異なる種族がいっしょにいるの?

 

種族を超えたつながりが彼には疑問だった。

 

「じゃあ、なんで『妹』って呼んでいるんですか?」

 

「フランが『お兄様』って呼んでくれるからだ。生物兵器はそもそも存在しても求められないからな。『お兄様』って呼んでもらえて、存在を求められてとても嬉しいんだ。」

 

「そう……なんですか……。」

 

少し暗くなるジェットに範人は明るく笑いかける。自分の言葉がジェットの心を照らし、道を示せる光になると信じて。求められないなら求められるようになればいい、範人はそう思った。

 

「ずっと信じろとは言わない。ただ、今は俺たちのことを信じてくれ。俺たちはお前の味方だ。」

 

「あ、ありがとうござ「待て待て。」え?」

 

ジェットの口から自然に出てきた言葉は感謝だった。範人はそれを遮る。

 

「礼なんて俺に言うなよ。それはフランに言ってやれ。」

 

「どうしてですか?」

 

「詳しくは言わない。でも、フランは今、いつも以上に頑張っている。だからお前はフランを信じて、応援してやれ。それが今のあいつにとって一番の力になる。」

 

「は、はい!」

 

「そう固くなるなよ。普通でいい、普通で。」

 

ジェットには範人の言葉の意味がよくわからなかった。だが、わかったこともある。それは今の自分が応援することでフランの力になれるということである。ジェットは大きく息を吸い込んで叫んだ。

 

「フランちゃん!頑張れー!」

 

 

 

ジェットの叫びはフランの耳に届いた。その言葉が聞こえるとフランは少し顔を赤くしながら笑顔になった。

 

ジェットが応援してくれている。私、頑張らなくちゃ!絶対にジェットを守るんだ!

 

フランは攻撃の手を強めて、クロウの顔面に上から蹴りを入れた。クロウは頭から地面にめり込んだ。フランはクロウを地面から無理やり引き抜くとジャイアントスイングで投げ飛ばした。

 

 

 

範人はフランの様子を見て頷く。

 

「な!言った通りだろ?」

 

「そうですね。」

 

範人にはわかった、フランが頑張る理由が。フランは恋をしている。しかも現在進行形。その相手がジェットなのだ。

 

「さて、何か質問はあるか?」

 

「え⁉︎」

 

「いや、お前が何か悩んでいるみたいだったからな。俺でも何か力になれたらいいなと。」

 

「そ、それなら……」

 

ジェットはお化け屋敷で自分がやらかしたこととフランから提示された条件を範人に話した。範人はそれの全てを真面目に聞いた。

 

「なるほどな。責任の取り方か……。」

 

「そうなんです。何か意見はありませんか?」

 

「うーむ……、特にアドバイスはできないな。フランはその答えをお前自身の力で見つけてもらいたいんだろ?だったら、俺が何をするかを決めることはできないな。」

 

「そう……ですか。」

 

ジェットが暗い表情を浮かべると範人は慌てて言葉をつなぐ。

 

「待て待て、ヒントになりそうなことを教えてやる。」

 

「本当ですか!」

 

「ああ、フランは謝ってもらいたいわけじゃないってことだ。」

 

ジェットにはその言葉の意味がわからなかった。自分だったら、あんなことをされたら相手を許さないと思う。

 

「えっと……どういうことですか?」

 

「うーん……簡単に言えば等価交換かな。フランは多分、(恋愛対象から)そういうことをされるのが初めてなんだと思う。(俺は兄だから、恋愛対象じゃない……多分。)それがヒントだ。」

 

「は、はあ……。」

 

「まあ、見つけられたら俺に言ってくれ。シチュエーションぐらいなら作ってやる。まあ、見つけられなくても最後は無理やりにシチュエーションを作るがな。」

 

「わ、わかりました。ありがとうございます。」

 

「いいってことよ♪お!向こうもそろそろ終わるみたいだぜ。」

 

 

 

フランは今、レーヴァテインを構えている。その切っ先はクロウに向いている。

 

「これで終わりするわ。さようなら。」

 

フランはクロウを空中に切り上げるとそこから滅多斬りにした。クロウの身体は見事に切り刻まれて、微塵斬りのようになった。さらにレーヴァテインの炎で灰になり、風に飛ばされて消えていった。

 

 

 

フランが降りてきた。範人たちはフランを笑顔で迎える。

 

「終わったよ〜♪」

 

「「「お疲れ様。」」」

 

4人が振り返るとそこには空間の穴が開いていた。穴の向こうには表の世界が見える。

 

「じゃあ、戻るか。」

 

「はい。」

 

「うん!」

 

「そうしましょう。」

 

4人は穴を通って表に戻った。




今日のゲストは矢骨さんとお燐です。

「やっぱり、フランは強いな。」

「ちぇっ、死体は残らないのか。」

ははは……、そうですね。でも、それがフランのレーヴァテインです。

「俺の炎よりも熱いかな?」

ちょ⁉︎アチチ!燃える鎖を近づけないでください。熱いです。

「ワリィワリィ。」

ふう、多分同じですよ。まったく死ぬかと思いましたよ。

「本当だよ。」

お燐も注意してくれるの?ありがーー

「死体が燃え尽きたらどうするのさ!」

そっちかよ!私に味方はいないんですか?

「いいんじゃないかな。」

良くないです。ていうか、誰だよ!おっと、失礼。

さて、ジェットはどんな答えを見つけるのでしょうか?次回に期待です。

『ではまた、次回お会いしましょう。」

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