東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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テストが終わった……いろんな意味で。


第四十一話 技と数

範人と別行動を開始して十分、妖夢はステージの近くまで来ていた。この場所、実はフランたちの近くである。

 

「霧が出てきましたね。フランちゃんは大丈夫でしょうか?」

 

妖夢が周りを見渡しても霧がかかっているせいでほとんど何も見えない。敵が近いのなら気配を感じることができるが、遠くにいるのか気配が感じられない。

 

こういうときにはどうすれば良いのでしょうか?

 

考える妖夢の頭の中に浮かんだものは師匠である祖父の言葉だった。

 

『目だけではない。心でも見るのだ。』

 

そうでした。何も目だけで探す必要はないですね。心の目があるじゃないですか。

 

妖夢は目を閉じて意識を集中した。するとフランとジェットがいるのが見えた。何者かに追われている。

 

「今、助けに向かいます。」

 

妖夢はフランたちの元へ向かって走り出したが少しすると自分の前に立ち塞がる者の姿が見えたため立ち止まる。大男の身長は2.5m程だろうか。フードのあるローブを着て、顔と両手、胴体を隠し、袴を身に着け、草履を履いている。

 

「待ちナされ。そこノお若いノ。」

 

「私のことですか?」

 

「ソうだ。お主は今、ナにをしようとしてオる?」

 

妖夢を止めた者はところどころ不自然ながらも流暢な日本語で話をする。妖夢は不審に思いながらも丁寧に返す。

 

「私はフランちゃんとジェット君を助けに向かっているところです。」

 

「……そうカ。なら、我輩ハ戦わねばなラぬな。」

 

男がそう言うと同時に男からとんでもない覇気が噴き出した。妖夢は少し驚いたが恐れることはなかった。ただ、あることがわかった。

 

この人……かなり強いですね。

 

「ほう、我輩ノ覇気に耐エるとは……お主、なカなか強いの。」

 

「そう言う貴方も強いのでしょう。」

 

「我輩ハ自分の強さにナど興味はない。常ニ上を目指して精進するこトが大切ダからな。」

 

「その通りですね。良いことを学びました。」

 

周りから見れば、2人が普通に会話しているように見えるかもしれないが、会話の最中もずっと殺気の飛ばし合いが続いている。

 

「先に名乗っテおこう。我輩はスラッシュ。お主の名前モお聞かせ願いたい。」

 

「魂魄 妖夢です。」

 

「そうカ。では、斬り合いといこウか。」

 

妖夢は抜刀して構える。対するスラッシュはローブを広げた。

 

「え⁉︎」

 

スラッシュの身体を見た妖夢は驚いた。

 

何⁉︎……この人の身体……どうなっているの?

 

なんと、スラッシュには腕が6本あったのだ。それぞれの腕に1本ずつ刀を持っている。

 

「いざ、参ル!」

 

スラッシュが6本のうち3本を振り下ろす。妖夢はとっさに右の刀で受け止める。左の刀で斬りつけるが1本で止められ、2本の刀が妖夢に迫った。妖夢は背中を反らせてかわす。妖夢はそのまま脚を斬りつけようとするが、刀で受け止められたため後ろに跳躍して距離を取る。

 

「ホう、良い太刀筋ダ。」

 

「そちらこそお強い。」

 

「なら、これハどうだ?

真空雪『氷結晶の六角』」

 

スラッシュが6本の刀をスピンしながら高速で振るう。そのあまりの速さに空気が切れて真空波が発生する。さらに真空波が通ったところの霧が凍り、雪が降り始めた。

妖夢はそれらを流れるような動きでかわす。かわせないものは刀で叩き斬り、消滅させる。その動きは滑らかだが、あまり余裕がない。

 

「すばらシい……スピードアップだ!」

 

「くっ!」

 

スラッシュはさらに回転するスピードを上げる。霧だけでなく空気まで凍りつき、身体に突き刺さるような寒さになる。妖夢は刀を動かすスピードを上げ、なんとか凌ぐ。

しばらくして、スラッシュの回転が止まった。妖夢には傷一つついていない。

 

「クハハハハ!お主の技術には驚かさレる。面白イ。」

 

「ハァ……ハァ……。」

 

「だが、コれで終わりだ!

死剣『タナトスの鎌爪』」

 

スラッシュの腕が身体の両側でそれぞれ一つに纏まり始め、1秒後には刀が爪になっている巨大な腕になった。

 

「……」

 

スラッシュには妖夢が驚いて声も出ないように見えた。スラッシュは妖夢に駆け寄り、右腕を振り下ろした。

 

ザシュッ!

 

切り飛ばされた右腕が血を噴き出しながら宙を舞う。

 

「ギャアァー!」

 

悲鳴を上げたのはスラッシュだった。切り飛ばされたのは妖夢の腕ではなく、スラッシュの腕だったのだ。妖夢は刀で振り下ろされた腕を切り上げたのである。

 

「冥陽剣『光晶の煌めき』」

 

スペルカードの詠唱。妖夢の周りに緋色に輝く剣が無数に浮かぶ。

 

「なん…だ、ソれは?」

 

「私の霊力です。」

 

妖夢が使用したスペルカードは範人と特訓して作り出した新しい技である。霊力を剣の形にした弾幕である。

 

妖夢は光剣を自分の周りで回転させながら、スラッシュに突っ込んだ。スラッシュの身体はどんどん切り刻まれていく。

 

「グアァァ!」

 

スラッシュは左腕も切り飛ばされた。

 

なんだ⁉︎この力は……?我輩ではとても止められぬ。増援を呼ばなくては……。だが、相手に背中を向けては剣士の恥だ。……いや、そもそも何故、我輩は戦うのだ?

 

「降参しますか?」

 

「我輩も剣士!退くわけにはいかヌ!」

 

「そうですか……残念です。貴方とはまた勝負がしたかったです。その腕もまだ治るのでしょうから……。」

 

妖夢はスペルカードを解除して、刀を構えた。少し下がって力を溜める。その様子はスラッシュの目にしっかりと写っていた。

 

ああ……我輩はやっと死ぬのか……。

今までたくさんのことがあった。短い割には刺激があって、楽しい人生だったのかもしれん。いや……アンブレラに捕まってからは、生物兵器生か……。

それにしても……良かった。最期にこんな強者と戦うことができた。剣の道に生き、剣士として死ねるなら……それも本望だ!

さあ、我輩を殺してくれ!もう……罪を重ねさせないでくれ!

 

「居合!」

 

妖夢は刀を構えて地面を強く蹴った。音も遅れてしまうようなスピードで刀がスラッシュの身体を一閃する。スラッシュはその場に崩れ落ちた。

 

「剣は数ではないですよ。」

 

絶命したスラッシュを見て、妖夢は刀をしまいながら、そう言った。




すみません。グダグダです。

「早速、謝ったな。」

さすがに今回は内容がひどいですからね。自分がなんでこんなにグダグダにできたのか、過去の自分に訊いてみたいですよ。

「まあ、これからで取り戻せばいいさ。」

栗里さん、ありがとうございます。


では、オリジナルスペルカードですね。

「【冥陽剣『光晶の煌めき』】だっけ?」

それです。イメージはDMCのバージルの幻影剣です。バージルかっこいいですよね〜♪ダンテの方がいいけど……。


「ところで今回のB.O.W.は何だ?」

あれはオリジナルB.O.W.ですね。設定としてはタイラントシリーズの一種です。名前はシヴァですね。今回のやつはシヴァの失敗型ですが……。

「そうか。完成型を見てみたいな。」

そうですね。そのうちに完成型も登場させようと思っていますよ。

『ではまた、次回お会いしましょう。』

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