東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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おや、矢骨さん。今日は1人だけですか?

「そうなんだよ。蜘蛛島はデート、栗里と存山は2人で酒を飲みに行った。細川はまだ入院中だな。」

ああ、そうですか。では、今回の前書きと後書きは一応ツッコミ役の私たちだけですね。

「そうだな。とくに話すこともないけどな。」

じゃあ、本編に入りましょうか。今回からは範人に戻りますよ。

『では、本編をどうぞ。』


第三十六話 依頼受注

今は十月。食欲、読書、運動……の秋。人それぞれに色んな秋がある。そんな季節、範人のもとにあるmissionの依頼が舞い込んだ。

ピロロロ!

範人がベルトに下げる特別な通信機から呼び出し音が鳴る。

 

「はい。こちらエージェント ハント・ゴートレックです。」

 

『やあ、久しぶりだね。』

 

通信から男性の声が聞こえてきた。声の主はアメリカの政治家である。

 

「ご用件は何でしょうか?」

 

『ハント君、君にmissionを出す。今週の日曜日に私の息子が友達と遊園地へ行くことになった。君には子供たちがさらわれたりしないように監視してもらいたいんだ。最近は人質事件が多くてね。』

 

「わかりました。引き受けます。」

 

『頼んだよ。彼らがリラックスして遊べるようにしてもらいたい。カモフラージュになるように友達を連れてきても構わないからな。では、これで切るよ。』

 

通信が切れ、範人はホッと息を吐く。そして、どうすれば怪しまれずに済むのかについて考え始めた。

 

監視って言っても俺一人ってのはさすがに不自然だよなぁ。第一、遊んでみたいアトラクションもないからな。どうしたもんか?

フランを連れて行けば多少は自然に見えるかもしれないけど兄妹で通るか?それにフランがいるなら絶対に監視どころじゃないからな……。

……なら、レミリアはどうだ?……ってダメだ。あいつ絶対に『そんな庶民の遊び場へ行くわけないでしょ?』って言うだろうな。それにあいつ夫いるだろ?他の男と遊園地なんて行くか?……絶対行かないな。

霊夢は神社を離れられないしな。

自然に見える方法、自然に見える方法……。魔理沙には優がいるからダメだ。ん?彼氏と彼女?

そうか、恋人同士なら別に不自然じゃないな。……妖夢に頼んでみるか。一応フランにも。面倒くさくなりそうだけど兄妹作戦も考えておくかな。

 

範人はスキマを開き、白玉楼へ行った。

 

「妖夢、いるか?」

 

「はい、何でしょう?」

 

範人は妖夢にmissionの内容を細かく説明し、同行をお願いした。そこへ幽々子が茶々を入れる。

 

「あら〜、デートのお誘い?いいわね〜♪」

 

「幽々子、これはmissionなんだ。デートじゃない。」

 

「え⁉︎」

 

妖夢が少し悲しそうな顔になる。今の発言は誤解を招くことに気づいた範人は急いで取り繕う。

 

「デートはまた違う機会に誘うから。」

 

「そうですか。びっくりしました。範人に嫌われてしまったのかと。」

 

「大丈夫、俺は妖夢一筋だ。」

 

範人の言葉に妖夢はホッとしながらも驚いた。彼女はまさかそこまで言ってもらえるとは思っていなかったらしい。

 

「幽々子様、来週の日曜日に休暇をもらってもよろしいですか?」

 

「いいわよ。……ねぇ、妖夢。私に許可なんて求めずにもっと自由にしてもいいのよ?」

 

「そういうわけにはいきません。私は幽々子様に仕える者です。」

 

「もう……。」

 

幽々子は少し表情を曇らせる。彼女は妖夢にもっと自分に自由になってもらいたいのだ。

 

「今週の日曜日な。あ、フランも来るかもしれないから。」

 

「はい、わかりました。」

 

範人はスキマを開いて、研究所に戻り、そこから紅魔館へ向けて飛び立った。

 

 

 

範人は紅魔館の門の前に降り立つ。今日の門番はデューレスだ。今日は紅魔館の絵を描いている。

 

「おや、範人じゃないか。今日は何の用事だ?」

 

「お嬢様方二人に話があってな。通してくれるか?」

 

「もちろんだ。ほら、どうぞ。」

 

デューレスは門を開いた。範人は紅魔館の中に入っていった。

 

 

 

フラン、レミリアとの話し合いはフランが賛成、レミリアが反対の意見を述べていた。だが、最終的にはレミリアがフランの涙目と上目遣いのコンボであっけなく押し切られた。範人は何かデジャブを感じたが、あまり考えないことにした。

 

「じゃあ、今週の日曜日だからな。」

 

「うん、楽しみにしてる♪」

 

「missionなんだけどなぁ……。」

 

missionに妖夢とフランを連れて行くことに決まった範人はスキマを開き、研究所へ戻った。

 

 

 

mission当日、範人はフランと妖夢になるべく目立たないように注意してから、元の世界へのスキマを開いた。

 

「英語は覚えたよな?」

 

「はい、バッチリです。」

 

「私はもとから話せるよ♪」

 

「よし、行こう。」

 

妖夢には以前に元いた世界に行ったときから範人が英語を教えていたが、すぐに覚えてしまった。範人は確認のために質問したが大丈夫そうだった。フランが話せることはレミリアが言っていた。

範人たちはスキマに入った。

 

 

 

 

 

研究所跡地には手配しておいた乗用車が用意してあった。俺は運転席の隣に妖夢たちは後部座席に座った。運転手のリックに目的地を伝える。

 

「ほう、今日のmissionは護衛か。」

 

「じゃあ、頼むよ。リック」

 

「任せろ。交通ルールを無視した安全でクールなドライブを楽しみな。」

 

「安全はないだろ。」

 

リックがこう言うのはいつものことなのだが、妖夢たちはそれの中身について全然知らない。リックの運転を知っている俺は妖夢たちに注意をする。

 

「無理するなよ、今日は客がいるんだから。」

 

「ハハハ、シートベルトさえつけていれば大丈夫さ♪」

 

大丈夫じゃない、大問題だ、と思った。だが、俺の願いがリックに届くことはなく、車は目的地を目指して発進した。

 

 

 

今回の運転は前に乗ったときよりも派手で荒かった。二、三度警察に追いかけられたが余裕で振り切った。さすがリック、俺たちにはできないことを平然とやってのける。そこにしびれても憧れてもいけないけど……。こいつはよく運転免許を取れたと思う。

 

「ほら、着いたぞ。」

 

「お前、腕(悪い意味で)上げたな。」

 

「ふっふっふー、そうだろ。」

 

「さっきの楽しかったよ。ありがとう♪」

 

「お、嬢ちゃんも俺の運転の良さがわかるのかい?」

 

「なんか危なかったけど、そこが良かった。」

 

「な?やっぱりクールっていいだろ?」

 

よくない。フランは何故か楽しそうだが、妖夢はグッタリしている。あの運転で酔わないやつはすごいと思う。俺だって少し気持ち悪い。

 

「じゃあ、楽しんできな。」

 

「だから、これはmissionだっての。」

 

「あ、そういればそうだったな。俺は親子で遊びたいだけだと思ってたぜ。」

 

「んなわけあるか!」

 

「え、あの金髪の嬢ちゃんはハントと白髪のお嬢さんの娘じゃないのか?」

 

「俺まだ十六歳なんだけど……。」

 

「お!てことはアレか?スゲェ若い頃にヤっちまったのか?」

 

妖夢の顔が真っ赤だ。そりゃ恥ずかしいよな。俺だって恥ずかしいもん……。

 

「リック、そんなに殴られたいのか?」

 

「ハハハ。冗談だ、冗談。お前に殴られたら死んじまうよ。」

 

リックは逃げるように去っていった。あのお調子者は一度死なないとわからないのではないのだろうか?交通事故でも起こして一度死ねばいいのに。

 

 

 

少しして、ターゲットが視界に確認できた。

 

「じゃあ、行こうか?」

 

「わーい。」

 

「は、はい……。」

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫です……。」

 

妖夢が辛そうだったため声をかけたが「大丈夫」という言葉が返ってきたため、missionを開始するにした。

 

「さあ、mission start だ!」




「うーん、あれは兄妹でも通るんじゃないか?」

そうですね。範人とフランって髪の色同じですからね。それでも通らないことはないと思います。でも、実際にも見た目的にも歳が離れ過ぎているんですよ。

「あー、それはわかる。初めて見たら、確かに親子に見えるかも。」

まあ、どちらが親なのかは置いておきますけどね。

「そういえば、蜘蛛島の彼女って誰だ?」

黒谷ヤマメさんです。スパイダーコンビってところですかね。

「それでキャラを合わせるってどういうことだ?」

多分、ウィルスと毒ってことでしょうね。

「なるほどな。じゃあ、そろそろ切ろうか?」

そうしましょう。

『ではまた、次回お会いしましょう。』

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