東方戻界録 〜Return of progeny〜 作:四ツ兵衛
矢骨「なんだって!」
存山「何ィ!」
栗里「なん…だと!」
蜘蛛島「まさか俺か?」
蜘蛛島さんのはないですね。でも、本当です。デューレスがメインの回のはずなのにメインっぽくないです。
『では、本編をどうぞ。』
朝七時、この時間で門番は交代する。朝食の後、紅魔館の門番はデューレスから美鈴に交代した。
「今日は頼みましたよ。」
「任せてください。」
「サボって寝ないでくださいね。」
「あれはシエスタですよ。」
「何を言ってるんですか。」
美鈴は門番の仕事中によく寝ている。本人曰く、寝ていても気の動きで侵入者に気づくから大丈夫、ってことらしい。だが、咲夜からは仕事の態度としてどうかと思われている。絵を描くデューレスも問題なのだが……。
ここは紅魔館の地下図書館。魔法に関する本が大量に所蔵されている。魔理沙が紅魔館に来る理由はここの本を持ち帰るためだ。
「いつもありがとう。デューが門番をしている日は魔理沙の被害がないわ。」
「紅魔館への不法侵入を防ぐことが仕事ですからね。それが当たり前ですよ。」
「真面目ね。美鈴もそのくらい真面目なら良いのに残念ね。」
魔理沙はほぼ毎日紅魔館に来る。美鈴が門番をする日は必ず突破されて被害が出る。本はまだ返却されていない。パチュリーはそれに悩まされている。
「仕事のない日は基本的に応戦しませんからね。美鈴さんともあまり変わりませんよ。」
「そうかしら?」
「そうなんです。」
デューレスは本の整頓を始めた。きれい好きな彼は本の並べ方はしっかりしていないと嫌なのだ。本の内容、題名に合わせて並べていく。何故かわからないが彼は魔法についての本も読むことができる。本来、魔法関連の本は書いた者よりも優れた魔力を持たなければ、読むことができない。彼はタイラントであり、元は普通の人間である。魔力を持つはずがないのにそれらを読んでいるのである。
「では、俺は館の中をウロウロしてきますので、用事があったら声をかけてください。魔理沙が来ても呼ばないでくださいね。」
「ありがとう。本の整頓お疲れ様。」
デューレスが図書館から出ると魔理沙がいた。美鈴は突破されてしまったのだろうか?
「どうやって入ってきた?美鈴はどうした?」
「今日は普通に門から入ってきたんだ。美鈴はナイフが刺さって倒れてた。」
美鈴は居眠りしていたところを咲夜に見つかり、お仕置きされてしまったようだ。デューレスは、だから注意したのに、と心の中で呟いた。
「まったく……。
図書館に行くんだろ?パチュリーが笑顔で待っているぞ。」
「おお、そうか。今日は本を少し返しに来たからな。あいつの気分が良いならちょうど良かったぜ。」
「いつもそうやって返しに来れば、パチュリーだって素直に貸してくれるからな。たまに返しに来いよ。」
「家の中で見つかったら持って来ることにするぜ。」
これまでは平行線のままだった本の貸し借りもなんとか解決しそうだ。しかし、デューレスは思った。優の能力を使えば探し物なんてすぐに見つかるのではないか、と。それで見つけられないならもう本は存在していないのではないか、と。
「返してきたら、弾幕勝負してくれ。」
「それは断る。俺が門番の仕事をしているときだけにしてもらおう。」
「ちぇっ、つまんねーな。」
真面目なデューレスも休日くらいはゆっくりしたい。弾幕勝負は気が向いたときか、仕事中くらいにしかしない。彼も戦闘員なのだが戦いはあまり好きではない。
「じゃあな。」
「おう、またな。」
魔理沙は図書館に入っていった。その後、パチュリーはいつも通りに魔理沙に弾幕勝負を挑んで負けた。パチュリーが目を覚ましたときには返却された数の二倍の数の本が図書館から消えていたらしい。
廊下を歩くデューレスを見つめるものが一人。十六夜 咲夜。主に仕える完璧なメイドである。彼女は最近デューレスのことが気になって仕方がないのだ。彼のことを考えるとどうも気持ちが落ち着かず、胸が締めつけられる感じがする。さらに自分以外の女性と話しているところを見ると何故かイライラしてくる。
誰かにこの気持ちがなんであるかを訊けばその者は間違いなく「それは恋だ。」と答えるだろう。
しかし、彼女は完璧すぎるが故に恋という気持ちを知らない。そのため、この気持ちがなんであるかわからず、なにもできないため、デューレスとの距離は一向に縮まらない。
「咲夜ー。」
そんなときにレミリアが彼女を呼んだ。彼女はデューレスの方を見てから主のもとに向かった。
「お呼びでしょうか?お嬢様。」
「デューレスといっしょに食材の買い出しに行ってきなさい。」
「そ、そんなこと……」
それを聞いた咲夜は赤面し、主の命令に反対しかけてしまう。
「あら、私の言うことが聞けないと言うのかしら?」
「そういうわけでは……。」
レミリアは顔をしかめたが、咲夜が赤面している様子を見てクスリと笑った。レミリアは優しい声で話しかける。
「大丈夫よ。デューレスは断らない。」
「……本当ですか?」
「ええ、私にはその運命が見えるわ。」
「すぐに行ってまいります。」
咲夜は笑顔でその場から消えた。レミリアも笑顔で見送る。
レミリアの能力は『運命を操る程度の能力』。運命を見通したり、運命を引き寄せたりすることができる。だが、全てが見えない場合や一部だけ見えない場合がある。さらに彼女は初対面の相手に能力を使うことはない。
咲夜がいなくなった部屋で自分の過去を振り返りながらレミリアが呟く。
「本当は運命なんて見ていないのだけれどね……。咲夜頑張りなさい。」
デューレスは買い出しの誘いを断らなかった。休日とはいえ主の命令、断ることはできないのだ。また、彼自身も一日中暇なのは嫌なのである。暇でも絵を描いていればかなりの時間を消耗するのだが……。
咲夜にとって楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、今は帰り道である。荷物は半分ずつ持っている。デューレスはもっとたくさん持つと言っていたが彼女は断った。しかし、かなりの重量があるため遅れている。
「大丈夫ですか?重いなら私が運びますよ。」
「大丈夫よ。いざとなれば時間を止めて追いつくから。」
「そうですか……。」
そう言う咲夜の表情は険しい。
彼女にとって、デューレスが気にかけてくれることはとても嬉しいことだった。彼女が彼に惚れた理由は彼の優しい性格と真面目さ、そして時折見せる無邪気さである。
彼女が重さでバランスを崩し倒れかけたところを彼が支えた。
「やっぱり辛かったんじゃないですか。」
「大丈夫よ。時を止めて休「駄目です。」…え?」
「時を止めているのは咲夜さん自身なんですから、息は落ち着いても体力や疲労は回復しないでしょう。」
「……。」
デューレスの言葉は真実だった。咲夜は完全に言い当てられて、黙ってしまった。
「咲夜さんが無理をして、体調を崩されたりしたら私は悲しいですよ。」
「え⁉︎」
「貴女のことを大切な人だと思っている者がいるんですから無理しないでください。」
咲夜の顔が真っ赤になる。彼女にはデューレスが自分のことを大切な人と言ったことが衝撃だった。しかし、彼はあくまで純粋に思っていることを言っただけである。
彼は彼女の顔が赤いことに気づいた。
「顔が赤いですが大丈夫ですか?」
「……。」
心配になったデューレスは咲夜の頬に手を当てて、すぐに手を放した。熱い。咲夜の体温が高くなっていた。
「もう既に体調崩して熱が高くなっているじゃないですか。」
「そうなの?」
「だから無理をしないでくださいと言ったのに……。」
デューレスはポケットからロープを取り出し、一つ一つのかばんにつなげる。そして、ひとまとめにしたかばんを肩にかけると咲夜をお姫様抱っこで抱き上げた。
「な、何をするの⁉︎」
「病人を歩かせるわけにはいきませんから。これで紅魔館まで帰ります。」
「……頼んだわ。」
「任せてください。」
咲夜は嬉しくて、でもどこか恥ずかしくてドキドキしていた。しかし、彼女には自分が何故ドキドキしているのかわからなかった。ただ、何かが前進したような気がした。
「これでいつもの恩返しができればいいと思っていますが、恩返しになっていますか?」
「……。」
咲夜はこたえなかったが考えていることはもちろんyesである。
彼らは紅魔館へ帰った。
栗里「この鈍感野郎!」
矢骨「素であれが出るとは……さすがタイラントだ。」
存山「そこに痺れる憧れる!」
蜘蛛島「彼が主人公だったほうが良かったんじゃない?」
私もそう思います。主人公の性格がデューレスだったほうが良かったと今更になって思っています。
栗里「タイラントめ……羨ましいぞ。……ちくしょー、咲夜さん…咲夜さん……ううう……(涙)」
栗里さん、泣かないでください。普通あんなことできませんから。空想だからこそなんですから。
栗里「うう…グスン。そうだよな。」
あ、デューレスはセルゲイのクローンのタイラントとは違って髪の毛があります。それに普通に顔立ちも整ったイケメンです。それで真面目でさらにギャップがあるってモテないはずがないですよね。
存山「マジで!」
矢骨「すごい、やっぱタイラントは違う。」
ここで生物兵器つながりの話です。実は範人には『範人』『ハント』という名前の他にも生物兵器としての名前があります。その話はもう書いてしまっていて名前も決まっているのですが、考えてみてください。正解のヒントは『ハント』という名前です。この話は第二章の最後のほうで投稿します。
蜘蛛島「面白そうだな。よし、考えてみるか!」
『ではまた、次回お会いしましょう。』