東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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最近、サブタイトルが思い浮かばず悩んでいます。そのためサブタイトルが「第〜話」だけになってしまう話ができそうです。
では、本編をどうぞ。


第二十九話 掃除

「さあ、準備を始めようか。」

 

妖夢とフランに声をかける。妖夢の服装はいつも通りなのだが、フランは違った。

 

「フラン、なんだその格好は?」

 

「掃除の時の正装だよ。」

 

フランは頭に三角巾を巻き、エプロンを着ていた。アニメとかでよく見かける掃除のおばちゃんの服装である。そんなものどこから持ってきたのだろうか?まあ、気にせず始めよう。

 

「じゃあ、フランと妖夢は研究所一階の掃除を頼む。俺は地下の掃除をしてくる。」

 

「任せてください。」

 

「頑張るぞー。」

 

妖夢には研究所のことを教えてあるから分担の割合について特に怪しむ様子はなかった。この研究所は地下が圧倒的に広いのだ。ていうか、研究所=地下。なんでかって?知らん。研究所協会にでも尋ねてください。俺は地下に向かう。

 

 

 

 

 

範人が地下に行った。フランちゃんは不思議そうな顔で尋ねてきた。

 

「お姉様、なんでお兄様は地下を選んだの?こっちのほうが楽なのに。」

 

「それは地下には危険なものがたくさんあるからですよ。」

 

「そうなの。じゃあ、私も手伝ってくる。」

 

「今は一階の掃除をしましょう。終わったら、地下に行ってもいいから。」

 

「はーい。」

 

研究所の一階は畑になっている。そのため、掃除する場所は廊下くらいしかない。私たちは掃除をすぐに終わらせてしまった。二人で範人が向かった地下に降りた。

 

 

 

 

 

「うーむ。ここの掃除も終了か。なんかやけにきれいだったな。」

 

地下一階から地下三階全ての掃除を終わらせた。あまり使っていないせいかゴミはかなり少なかった。昔は血で真っ赤だった部屋も、今では染みが一つもない清潔な部屋になっている。

 

「お兄様ー。終わったよー。」

 

「かなり早かったな。すごいぞ、フラン。」

 

俺はフランの頭を撫でる。フランは嬉しそうだ。

 

「妖夢もありがとな。」

 

「いえいえ、このくらい朝飯前ですよ。それに範人のほうがすごいです。私たちの三倍の速度で掃除をしたんですから。」

 

平均的に見ると一番汚れていたのは一階なんだけどな。まあ、それでもいいか。

 

「すごいね。地下にこんな場所があったんだ。」

 

「本当ですね。まさかこんなに広かったとは。」

 

ん?今、フランとは別の声が聞こえたぞ。しかも、今一番憎いやつの声にすごく似ていた気がするんだけど。

 

「文さん、なんでこんなところに⁉︎」

 

「私が飛んでいると三人が飛んでいるところを見かけたので取材をしようと思いましてね。」

 

文だった。新聞に何を書いたかは知らねーが、少しO☆HA☆NA☆SI☆の必要がある。

 

「文ァ……。」ゴゴゴゴゴゴッ

 

「なんでしょうか?そんな怖い顔してどうしたのですか?」

 

「O☆HA☆NA☆SI☆しようよ。」

 

「あっ、これはマズイですね。さようなら。」

 

文が高速で逃げ出す。俺は全身を変異させて追う。炎を噴き出してスピードを上げる。研究所の庭に出たところで捕まえた。さあ、質問開始だ。

 

「あやや、捕まってしまいました。私が何かしましたか?」

 

「いやー。俺の記事をどんな風に書いたのかなって?」

 

「あれですか?私は、炎纏いし漆黒の化け物の正体を書いただけですよ。」

 

「ほう。何か余分なことは書いていないだろうなぁ?」

 

「書いてませんよ。」

 

「そうか。ならいい。」

 

俺は変異を解く。どうやら人里のやつらの勝手な解釈だったらしい。

 

「新聞に俺が危険じゃないってことを書いておいてくれ。人里でいろいろ言われたから。」

 

「そうでしたか。大変でしたね。いいですよ。書いておきます。」

 

「頼んだよ。」

 

文は猛スピードで飛んでいった。文がいなくなってから妖夢たちが走ってきた。

 

「範人、速いですよ。文さんは?」

 

「逃がしてやった。人里の人々の勝手な解釈だったらしい。」

 

「そうですか。」

 

俺の勘違いで文を傷つけなくてよかった。ここでぶちのめしていたら本当に化け物だからな。

 

 

 

(時間を飛ばします。)

 

さて、風呂に入るか。今日は一人でゆったりできる。妖夢は幽々子が心配ってことで帰った。身体を洗い湯舟に浸かる。疲れが抜けていくような気がする。

 

「お兄様!」

 

突然、風呂の扉が開いた。なんでフランが来るんだよ。リビングで待っていろと言ったはずだ。しかも、なんか服脱いでるし。

 

「フランもいっしょに入る。」

 

いや、ちょっと待て。吸血鬼って水ダメなんだろ。なんでこいつは入ってこようとしているんだ?……あ、俺が渡した薬だ。あれで水が平気なんだ。ああ、水の弱点は消さなきゃよかった。

 

「ち、ちょっと待ってろ。」

 

俺は急いでタオルを巻く。もちろん、傷は隠す。ダメだと言っても絶対に言うこと聞かないだろ。もう諦めるよ。

 

「ほら、入っていいぞ。」

 

「ウェーイ。」

 

「こら、ダイブするな。」

 

水しぶきが上がる。扉を急いで閉めたから、脱衣所は濡れてないだろう。

 

「お兄様ー、体洗ってー。」

 

はい、出ました。思った通りの展開だよ。逃げ場なんてどこにもないよ。まあ、ダメもとで断ってみよう。

 

「なんで俺が洗うんだよ。タオル貸すから自分で洗えよ。」

 

「えー、なんでー。お姉様の体は洗ったのになんで私の体は洗ってくれないのー。」

 

妖夢、余計なこと言ったな。これじゃ本当に避けられないよ。

 

「それとも、私のこと嫌いなの?」

 

はい、最強の言葉。俺の負けだ。この言葉には勝てません。泣けるぜ。

 

「わかった。洗うから涙目になるな。」

 

神よ、こんな俺を許してくれ。異性の体を洗うことになってしまったこの俺を。俺は大急ぎでフランの体を洗う。え?身体の表面を覆っている粒子はどうなるか?この粒子は光の粒子と電子と陽子だから、物体の影響はあまり受けずにとどまる。電子と陽子は俺が無理やりとどませているけど。

 

「はあ、終わったぞ。流すからな。」

 

シャワーで石鹸を流す。この石鹸は俺が作った特殊なもので薬の影響は受けない。

 

「ふー、身体を洗うのって気持ち良いんだね。」

 

フランは気持ち良かったとしても、俺からすればスゲェ疲れたんだけど。精神的にすごく疲れた。せっかく、ゆったりとしていたのに……。疲れが減るどころか逆に増えた。

 

 

 

やはり、寝るときもいっしょらしい。今、フランは俺の隣に寝転がっている。

 

「ねえ、お兄様。」

 

「ん?」

 

「レミリアお姉様って私のこと、どう思っているのかな?」

 

「家族として愛しているんじゃないのか。」

 

「そうなのかな?私は地下にずっと閉じ込められていたんだけど。」

 

「それはフランのことを思ってだろ。」

 

「違う。ソんなはズはない。オ姉様はワたしのコとガ嫌いダッたノヨ。」

 

「危ない。」

 

俺はフランを抱きしめる。狂気から救い出すにはこれが一番効果的だ。フランの狂気が落ち着く。

 

「フランは誰かを傷つけることを嫌っていた。レミリアはフランが誰かを傷つけることによって、フランが傷つくことを防ぐためにそうしたんだ。」

 

「そうなの?」

 

「そのはずだ。それにフランを嫌いになるはずがない。フランとレミリアは家族だろ。」

 

「うん。そうだよね。お兄様、ありがとう。」

 

フランは一番の笑顔を見せてくれた。フランの狂気は完全に消えたようだ。でも、また現れる可能性がある。フランはレミリアと話す必要があるだろう。

 

「フラン、今度レミリアとそのことについて話してみろ。きっと、納得のいく答えが見つかる。」

 

「うん。そうしてみる。」

 

俺はまた自分以外の力になれたようだ。それがたまらなく嬉しい。

 

「お兄様って、ジェイドに似ているね。」

 

「前から気になっていたんだけど、そのジェイドってお前たちとどんな関係なんだ?」

 

「家族だよ。」

 

「は⁉︎家族?」

 

俺にはその言葉がよくわからなかった。家族の意味くらいはわかる。だが、何故フランたちが家族なのだろうか?

 

「ジェイドとレミリアお姉様は夫婦なの。つまり、ジェイドは私の義兄様。」

 

「あっ、そうだったのか。」

 

レミリアが既婚者ということには驚いたが、彼女も吸血鬼。かなりの年月を生きているのだから、結婚していてもおかしくない。

 

「でも、今は生きているかもわからないの。」

 

「それは心配だな。」

 

「全然。心配なんてしてないよ。」

 

「心配してないだと⁉︎なんでだ?」

 

「だって、家族だもん。絶対に生きてるって信じているから。」

 

「そうか。なら、きっとまた会えるだろうな。さて、そろそろ寝ようか。」

 

「そうだね。お兄様。」

 

……家族…か。

『幻想郷でまた会おうぜ!』

俺は兄弟の顔を思い出しながら、眠りに落ちた。




フランの狂気が消えました。しかし、これでもまだ完全ではありません。

ではまた、次回お会いしましょう。

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