東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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レミリアの過去第二話。そして、今日二回目の投稿。
感想を初めてもらって、ヨッシャー、ってなっています。
自分の作品を考えると設定が多くてごちゃごちゃしているなーと思っています。最終的な終わり方は見えているんですが……。
では、昔話をどうぞ。



レミリアの過去 吸血鬼と影の騎士 2

いっしょに暮らし始めて三カ月、私は優しいジェイドに惹かれていった。魔物たちからは恐れられていても本当の彼はとても優しかった。

 

「お姉様、最近ボーっとしているけど大丈夫?」

 

「さあ、なんでかしら?」

 

「お姉様ってジェイドのことが好きなの?」

 

「ちょ、フランやめなさい。」

 

フランの発言を聞いて私は顔が赤くなってしまった。否定はするがきっとそうなのだろう。

 

「別にいいでしょ。お姉様もいい年なんだから、そのくらい当たり前だよ。」

 

「うー……。」

 

確かに私はジェイドのことが好きである。だが、ジェイドは人間、吸血鬼の私とはどうしても寿命が違いすぎてしまう。私とジェイドの間には、種族という壁があった。

 

「どうしたんだ、レミリア?」

 

私がフランと話をして悩んでいるとジェイドが話しかけてきた。突然のことに私は驚いてしまい、同時にジェイドが話しかけてきたことで顔が真っ赤になってしまう。

 

「突然話しかけないでよ。びっくりしたじゃない。」

 

「ははは、悪い悪い。最近、レミリアがボーっとしていることが多いから心配になってな。」

 

「うー。なんでもないわよ。」

 

「そうか?なら、いいんだ。」

 

ジェイドは特に気にする様子もなく、フランと話し始めた。

 

「……なんでもないわけがないじゃない。」

 

私は小声で言った。

 

 

 

次の日、ジェイドからある提案があった。

 

「今日は俺も休みだから、三人の絵でも描いてもらいに行かないか?」

 

それは素晴らしい提案だった。もちろん、私はOKだ。

 

「俺は人間だから、二人みたいに長く生きられるかわからない。でも、この家族の記録をずっと残していたい。種族を越えた素晴らしい家族の記録を。」

 

「いいわね。行きましょう。」

 

「わーい。お出かけだー。」

 

「じゃあ、準備してくれ。」

 

嬉しかった。ジェイドは私たちを家族と言ってくれた。私たちのことを家族として見ていてくれた。私はその時に種族なんて言葉だけであることに気がついた。

 

 

 

街に出ても人々は私たちのことを特に気にしなかった。ジェイドがいることからの安心か、私たちを受け入れてくれたのかどちらかはわからないが。しばらく歩いて、絵師のところに着いた。

 

「おや、ジェイドさん。今日は何のご用かな?」

 

「絵を描いてもらいたくてね。」

 

「そうかい。で、そちらのお嬢さんたちは娘さんかな?」

 

娘と言われて少しイラッときたがそこは我慢する。私はもう二十五歳なのだ。

 

「いや、俺は結婚したこともないよ。娘じゃないけど、二人は家族だよ。」

 

「おっと、これは失礼した。じゃあ、三人とも並んで。」

 

三人で並ぶと自然と笑顔になれた。絵師は絵を描き始める。しばらくして、絵を描き終えたらしい。絵には笑顔の私たちが描かれていた。私もフランもずっと座っていたせいで脚が動かしづらくなってしまった。

 

「ジェイド、肩に乗せてー。」

 

「いいぞ。」

 

ジェイドはフランを持ち上げた。羨ましい。私がジェイドのほうを見ると彼は私も肩に乗せてくれた。

 

「絵はレミリアが持っていてくれ。」

 

「任せなさい。」

 

私たちはそのまま家に帰ったが、途中で人々(特に女性)に睨まれた。家に絵を置いた後は三人で食事に行った。

 

 

 

その夜、私はジェイドに告白することにした。いつも通りの夕食の後、私はジェイドに話しかける。

 

「ジェイド。」

 

「何だ?」

 

「また、血をくれない?」

 

「わかった。」

 

ジェイドがしゃがみ、私はその首に噛みついた。いつもより長く噛みついているが、血を吸う量は変わらない。

 

「……はあ、ありがとう。」

 

「いつもより長くなかったか?」

 

「ねえ、ジェイド。吸血鬼の世界で異性に長く噛みつくことはどんな意味があるか知ってる?」

 

「さあ、知らないな。どういう意味なんだ?」

 

「好きな相手ヘの求婚よ。」

 

「そうなのか……え⁉︎それって、まさか。」

 

「そう。私はジェイドのことが好きなの。たとえ、種族が違ってもいい。私はジェイドが好き。だから、私と結婚してください。」

 

言った。私の気持ちはすべて言った。ジェイドがどんな返しをしてくれるかはわからない。だけど、私はジェイドに気持ちを伝えた。

 

「そうか。なら、答えはyesだ。俺もレミリアのことを愛そう。」

 

嬉しい言葉が返ってきた。私はジェイドに抱きつく。

 

「今日、絵を描いてもらって正解だった。実はレミリアの気持ちには既に知っていたんだ。フランから聞いてな。でも、レミリアは吸血鬼、俺は一応だけど人間。寿命が違うんだ。そこで絵は残るから、永遠の愛を誓えると思ったんだ。」

 

「ふふふ、ありがとう。」

 

私はジェイドと口づけを交わした。

 

「二人ともおめでとう〜。」

 

「「フラン⁉︎」」

 

なんと、フランに見られていた。

 

「今夜は二人で寝るよね。じゃ、おやすみー。」

 

「「ちょ、待て。」」

 

私たちが呼びかけるが、フランはいつもの寝室ヘ入って鍵をかけてしまった。

 

「……ジェイド。いっしょに寝ましょう。」

 

「ああ。」

 

私たちはジェイドの寝室に入り同じベッドに寝転がった。

 

 

 

 

 

嬉しかった。たとえ、自分の種族が何であっても自分のことを愛してくれる人がいた。

 

「なあ、レミリア。俺も吸血鬼になったほうがいいか?」

 

俺は人間だが体内に魔物の血が大量に蓄積されているため、吸血鬼になることもできる。結婚を決めたため、人間でいるよりも長い年月をいっしょに過ごすことのできる吸血鬼になったほうがいいのではないかと思ったのだ。

 

「それはジェイドの自由でいいわ。どんな種族になってもジェイドはジェイドだもの。」

 

「そうか。まあ、しばらく考えてみるよ。」

 

「ジェイド、キスして。」

 

「はいよ。」

 

レミリアとキスを交わした後、俺たちは眠りに落ちた。

 

 

 

次の日、俺が起きるとレミリアはまだ眠っていた。俺はレミリアにそっとキスをし、朝食を作るために部屋を出た。しばらくすると、レミリアとフランが起きてきた。ちょうど、朝食が出来上がった。

 

「お姉様、おめでとう。」

 

「ありがとう、フラン。」

 

「ジェイド、これからはお兄様って呼んでいい?」

 

「別にいいぞ。」

 

「わーい。これで二人の結婚は絶対だね。」

 

「もー、フランったら。」

 

「まったく。」

 

朝食のときの話はほとんどが俺とレミリアの話だった。

 

 

 

今日は城で新入りを出迎える儀式があるため、兵士たちは全員が城に集まる。もちろん、俺は兵士たちのトップとして出席する。レミリアたちも戦い方を教えていたため、出席することになっている。儀式と言っても、城主と俺が話をしてから、宴会をするだけなのだが。

 

 

 

城主と俺の話が終わり、宴会が始まった。俺はレミリアといっしょに城主のもとへ行く。

 

「ジェイド、どうしたのだ?」

 

「実はレミリアと結婚することになりまして、城主様がどう思っているのかが気になったのです。」

 

「そうか。それはめでたいことだな。レミリアは吸血鬼だが、今ではこの城にとっても街にとっても、必要な存在になっておる。わしはお主たちを応援するぞ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「ふぉふぉふぉ、きっと皆も祝ってくれるだろう。どれ、わしから皆に伝えよう。お主たちはここで待っておれ。」

 

数十秒後、城主の声が部屋に響いた。

 

『わしはこの城の城主じゃ。突然だがめでたい知らせがある。我が城の騎士長ジェイドと戦闘訓練を教えていたレミリアが結婚することになった。皆で祝おうではないか。ジェイドとレミリアはわしの前へ。』

 

俺とレミリアは城主のもとへ向かった。

 

『二人が良ければ三日後にこの城で結婚式を挙げようと思うが、どうかの?』

 

「「ありがとうございます。是非、お願いします。」」

 

『では、皆の者よ。二人の結婚式は三日後にこの城で決定だ。この儀式が終わったら、街で話を広めてくれ。』

 

城主の話が終わった瞬間、兵士たちから祝いの言葉がかけられた。

 

「騎士長、おめでとうございます。」

 

「種族の壁を乗り越える。愛とはすばらしいものですね。」

 

「みんな、ありがとう。」

 

 

 

少し落ち着いてきたところでバドが話しかけてきた。かつて、レミリアとフランを捕まえたバドも今となっては良い友達である。

 

「ジェイド、おめでとう。レミリアもおめでとう。」

 

「「ありがとう、バド。」」

 

「まさか、結婚するとは思っていなかったぞ。俺も嬉しいがな。」

 

「そういうバドはエレカとどうなんだ?」

 

「俺もそろそろ結婚を考えているところだ。ところでジェイドは、人間と吸血鬼、どちらとして生きていくつもりなんだ?」

 

バドは俺の体内に魔物の血が蓄積されていることを知っている。

 

「それがよく決まっていないんだ。バドはどう思う?」

 

「俺は吸血鬼かな。夫婦になったら、なるべく長い年月いっしょに過ごしたいからな。」

 

「そうか。じゃあ、俺が吸血鬼になったら、お前は俺を殺すのか?」

 

「殺すわけがねーだろ。魔物にもいいやつはたくさんいることがわかったからな。それに、お前が吸血鬼になっても俺たちは友達だからよ。」

 

「ははは、そうだな。バド、ありがとう。決まったよ。結婚式が終わったら、吸血鬼になろうと思うよ。」

 

「そうか。じゃあ、次の騎士長は俺だな。」

 

「吸血鬼になっても騎士長の座は下りねーよ。まあ、もし俺が騎士長の座を下りたら、お前を推薦するよ。」

 

「嬉しいねぇ。それなら、早く下りてもらわねーとな。」

 

宴会は俺とレミリアの結婚の話でほとんどの時間が過ぎた。これまでの宴会の中で最も楽しかったと思う。

 

 

 

 

 

宴会から三日後、私たちは今、牧師の前に立っている。ジェイドは街での信頼が厚いため、街のほとんどの人々が結婚式に来ていた。若い女性の目はほとんどが何故か赤かった。まあ、ジェイドは格好いいから彼のことが好きな女性が多かったのだろう。

 

「新郎ジェイド・ゴートレックよ。貴方はレミリア・スカーレットを永遠に愛することを神に誓いますか?」

 

「誓います。」

 

「新婦レミリア・スカーレットよ。貴女はジェイド・ゴートレックを永遠に愛することを神に誓いますか?」

 

「誓います。」

 

私は吸血鬼だから、神という単語は極力聞きたくなかったが我慢した。吸血鬼が神に誓うっていうのはどうなのだろうか。

 

「では、指輪交換の儀を。」

 

ジェイドは私の薬指にルビーのついた指輪を通してくれた。私もルビーのついた指輪をジェイドの薬指に通した。吸血鬼たちの間ではルビーが一般的なのだ。

 

「では、誓いの口づけを。」

 

ジェイドはベールを上げて私の唇を自分の唇を重ねた。たった一瞬のことだったが私たちにとっては、とても大きな一瞬だった。

 

「互いを永遠に愛することを神に誓い、指輪を交換し、口づけをした二人を夫婦と認め、結婚が成立したことをここに宣言する。」

 

 

 

披露宴では、いろんな人が祝福の言葉をかけてくれた。私はこの街にとって大切な存在になっていたらしい。街のみんなが受け入れてくれていたことがとても嬉しかった。

 

「ジェイドよ。これでお主は吸血鬼の婿になった。これからは、吸血鬼になるのだろう?」

 

「はい。」

 

「吸血鬼になった後もこの城で兵を率いてくれるか?」

 

「もちろんです。」

 

「ありがとう。では、この場で吸血鬼になってくれないか?」

 

「わかりました。レミリア。」

 

ジェイドがしゃがみ、私はジェイドの首に噛みついた。ジェイドの背中に羽が現れる。ジェイドが吸血鬼になった瞬間、ジェイドの体からはとてつもない量の妖力が感じとれた。

 

「では、これからもよろしく頼むぞ。ジェイド・スカーレットよ。」

 

「はい。」

 

城主は披露宴の群衆の中に戻っていった。ジェイドは羽を仕舞う。

 

「これで貴方も吸血鬼よ。」

 

「そうだな。これでレミリアの夫としてふさわしい状態になったのかな?」

 

「貴方はもともとふさわしい男だったわよ。」

 

話をしているとフランがやってきた。

 

「これでジェイドは私の本当のお兄様だね。」

 

「まあ、血のつながりはないけどな。」

 

「そんなことどうでもいいの。ジェイドはお兄様なんだから。」

 

「そうよ。私の夫になったんだから、フランの兄になったことに違いはないわ。」

 

「そうだな。フランは俺の妹だ。」

 

種族を越えた私たちは家族以上の絆でつながっている。

 




衝撃の設定、レミリアは既婚者です。
ジェイドは人間から吸血鬼になりました。『影を操る程度の能力』って、すごく吸血鬼らしいと思っています。
批判、感想、アドバイスお待ちしています。
ではまた、次回お会いしましょう。

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