東方戻界録 〜Return of progeny〜 作:四ツ兵衛
では、本編をどうぞ。
みんなが夕食を済ませたため、片付けは妖夢に任せて二人を部屋に案内した。
「ここが二人の部屋だよ。風呂はもう沸いているから自由に入っていい。両方が風呂を済ませたら、俺か妖夢に連絡してくれ。」
「わかったぜ。優、早速だが……。」
「範人、俺すごく嫌な予感がするよ。」
「多分、俺とお前の考えていることは同じだ。でも、助けることはできない。優……頑張れ。」
「いっしょに入ろうぜ。」
「タオルは部屋にあるから。まあ、楽しんでこい。」
「範人ー!」
優がなんか叫んでいるのが聞こえる。ごめんな、優。俺が助けることはできないんだ。俺も経験があるが、こうなったら断っても無駄だから。
「いいじゃないか、優。私がお前のことを嫌いじゃないってことの証明だぜ。」
うん、ここで断ったら確実に魔理沙に嫌われるからな。優は断れない。絶対に押しきられる。優、楽しんでこい。
俺は急いでその場を立ち去ってリビングに向かった。
俺は今リビングで妖夢と話しをしている。
「な、言った通りだろ。魔理沙が泊まっていくって言い出したぞ。」
「まさか、本当に泊まって言うとは……。驚きです。」
「なあ、妖夢。俺と話すときは敬語をやめてくれないかな。なんか話しづらい。それが無理なら、せめて呼ぶときにさんをつけるのをやめてくれないか?」
「わかりました。範人と呼んでいいならそうさせていただきます。敬語は続けますけど。」
「それだけでもいいよ。ありがとな。」
「あの二人は今何をしているのですか?」
「優と二人で風呂に入っている。」
「本当ですか?魔理沙さんって大胆ですね。」
「優が助けを求めてきたけど、魔理沙が相手じゃさすがに説得できないから戻ってきた。」
「それはなんとなくわかります。あの人は自分の意見をなかなか曲げないですから。」
「まあ、そもそも好きな相手にそう言われたら断るほうが難しいよな。」
「そうですね。私たちもいっしょに入りませんか?」
「俺は別に構わないよ。」
白玉楼でいっしょに入った後日にも二回ほどいっしょに入っているため、今の俺は妖夢と風呂に入ることは大分慣れている。
「ところで台所を使ってみてどうだった?」
「初めてでしたが使いやすかったです。範人のいた世界には便利な道具があるんですね。」
「ならよかった。」
「範人ー、風呂空いたぜー。」
話に区切りがついたところでちょうど、魔理沙の声が聞こえてきた。
「わかったー。」
「範人、行きましょう。」
「待てよ。着替えを取ってくる。」
「そうでした。私も取りに行かなければいけませんね。」
俺と妖夢は着替えとタオルを取ってきて、風呂に向かった。
魔理沙と部屋に向かっている今、俺は少し後悔している。確かに魔理沙のことは好きだが、いっしょに風呂に入るのはやっぱり恥ずかしかった。てか、互いに洗い合いはないだろ。SAN値が限界ギリギリだった。
「どうしたんだ?顔が少し赤いぜ。」
「少し恥ずかしかった。」
「私の裸に興奮しちまったか?」
するよ。魔理沙はかわいいんだから、するに決まっているだろ。でも、そんなことを言えるわけがない。俺はさらに顔を赤くした。
「ははは、優も男だな。」
「……」
俺たちは部屋に入った。いつも寝ている部屋よりは少し広い。魔理沙の家では部屋がないという理由で魔理沙と同じ部屋でいっしょに寝ている。だが、そのことにもまだあまり慣れていない自分がいる。
「優、今日はいっしょに寝てくれないのか?」
俺は無意識に魔理沙から距離をとっていたようだ。告白をすれば、慣れていないということも少しは楽になるだろう。だが、嫌われることを恐れて、それもできない臆病な自分がいる。告白のチャンスならいくらでもあったはずなのに。
「……」
俺は返事をせずに魔理沙が座っているベッドに座った。
「優、大丈夫か?」
俺が話さなくなって、魔理沙を不安にさせてしまったようだ。魔理沙が俺の手を握っている。
魔理沙は俺のことを気遣ってくれる、こんなに臆病な俺のことを。魔理沙が手を握ってくれたことにより、俺の覚悟は決まった。嫌われてもいい、ここで思いを伝えて、楽になろう。臆病な自分はもうやめよう。俺は魔理沙のほうを向く。
「……魔理沙。」
「なんだ?」
「俺、魔理沙のことが好きだ。」
緊張と恥ずかしさで顔が赤くなってしまう。だが、顔が赤くなったのは魔理沙も同じだった。
「私も優のことが好きだぜ。」
これ以上ない嬉しい返し。心の中のモヤが消えていく。自分の中の臆病な部分が消えていく。
「実は正直なところ私も恥ずかしかったんだ。」
「……何が?」
「優といっしょに風呂に入ること。でも、振り向いてもらうにはそれくらいしか思い浮かばなかったんだ。」
「そうだったのか。これからもよろしくな、魔理沙。今まで以上の関係として。」
「こちらこそだぜ、優。」
嬉しかった。自分みたいな臆病者が好きになってもらえるとは思っていなかった。好きという気持ちは自分からの一方通行で魔理沙から自分に向けられているはずがないと思っていた。
「……なあ。」
「ん?」
返事をすると、魔理沙に押し倒された。妖怪と戦うときの癖で魔理沙と位置を移し変えてしまった。顔が近い。
「優、このままてヤってくれても良いんだぜ。」
状況を理解した。俺が魔理沙に覆い被さるようになっているため、魔理沙をベッドに押し倒したような状態になっている。三人称から見れば俺が魔理沙を襲っているように見える。
「ダメだ。まだできない。俺はまだ十六歳だから。」
「つまんねーな。何歳になったらいいんだ?」
「十八だな。」
「じゃあ、それまで待つぜ。」
魔理沙、気が早い。俺も嬉しいがそれはまだできない。だけど、今日は記念すべき日になりそうだ。魔理沙の隣に寝転び、俺たちはいつも通りに同じベッドで寝た。新しい心を抱いて。
風呂から上がり、別館の部屋へ向かう。俺は寝るとき、だいたいは上下とも黒い服装だ。今日もそれは変わらない。妖夢がいっしょに寝ること以外は。
「範人と同意の上でいっしょに寝るのはこれが初めてですね。」
「そうだな。前は幽々子と姉さんが無理やりいっしょに寝かせたからな。」
「あのお二人は本当にありがた迷惑ですね。」
「きっと、俺たちの気持ちに気づいていたんだろうな。」
「そうですね。ところで魔理沙さんたちはどうなったのでしょうか?」
「俺の勘だけど、たぶん今日が分かれ目だ。告白は優からかな。」
「なんでわかるんですか?」
「優は魔理沙といっしょに風呂に入ることを恥ずかしがっていたからな。告白すれば恥ずかしがる必要がないと思うじゃないかな、と。」
「なるほど、確かにそう考えれば納得できますね。でも、なんで今日なんですか?」
「環境が違うからな。ここは俺の家だし、場所が変われば心も変わるだろうから。」
「二人の様子を見てきていいですか?」
「それはやめようか。明日になれば、二人の様子でわかるだろ。もう寝ていると思うけどな。」
「そうですね。私たちも早く寝ましょう。」
俺たちは部屋に入るとすぐに布団を敷いて寝た。
今回は優と魔理沙のイベントでした。
これからの範人の話し方は今回のような感じで書いていこうと思います。話し方が安定せず、すみませんでした。
感想お待ちしております。
ではまた、次回お会いしましょう。