東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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今ある範人の最強のスペルカードを使うときがない。
では、本編をどうぞ。


第二十話 命のかかった遊び

フランは自身の弾幕を殴り飛ばした俺を見て笑っている。

 

「アハハ、オニイサンスゴイネ。」

 

「そりゃどうも。」

 

「コレナラ、タノシクアソベルネ。」

 

そう言いながらフランはさらに弾幕を濃くしてくる。俺は全身の甲殻の隙間から炎を噴き出し、弾幕を全て焼き尽くす。

 

「スゴイスゴイ。禁忌『クランベリートラップ』」

 

赤と青の弾幕が俺を取り囲む。それらは一旦止まった後に俺に向かって飛んできた。俺は弾幕を放ち相殺する。隙を見てフランにも弾幕を放つが避けられてしまう。だんだん押されてきて、数発掠ってしまった。だが、ダメージはまだほとんどくらってない。

 

「炎陣『フレイムライン』」

 

俺は身体を燃えている状態で粒子に分解し、フランの周りを取り囲んだ。その状態からマグネシウムの粒子をフランの周りに漂わせ、着火した。粉塵爆発が発生する。さらに内側に弾幕を放ち続ける。フランの弾幕が弱くなった。しばらくしてスペルカードの効果時間が切れ、俺は身体を組み立てた。

 

フランは弾幕や爆発をくらっているがあまりダメージを受けていないように見える。しかし、弾幕が弱くなったことを考えると途中でスペルブレイクしたらしい。ダメージがないわけではないようだ。

 

「スゴイスペルダネ。」

 

「これで立っていられるフランもすごいよ。」

 

「モットアソボウ。

禁忌『レーヴァテイン』」

 

フランの手に一本の巨大な炎の剣が握られた。それを見て俺も抜刀する。

 

「炎舞『紅蓮爪拳舞』」

 

剣と鎌に火炎を纏わせ破壊力とリーチを増加させる。

 

フランが飛び出すと同時にこちらも飛び出す。レーヴァテインとクリムゾンが衝突し、爆炎が発生する。そのままつばぜり合いに入る。俺は鎌で切りかかる。フランは剣を握る手にさらに力を入れて俺を弾き飛ばした。鎌はフランには届かず空を斬る。フランが剣を横に薙ぎ払ってきた。俺は剣で受け止めると鎌で連撃を始める。フランは連撃を受け止めようとするが、剣の数が違う。フランは受けきれずに弾き飛ばされた。同時にレーヴァテインが消えた。二回目のスペルブレイクだ。

 

「イタイナァ。

禁忌『フォーオブアカインド』」

 

フランが分身して四人に増えた。

 

「分身か。面白いスペルだな。」

 

「「「「ソウデショ。」」」」

 

「でも、分身くらい俺にもできるぜ。

分裂『超再生の果て』」

 

スペル宣言と同時に俺は自身の身体をクロスに切り裂いた。切れた身体と服が全て再生し、俺が四人になった。

 

「「「「ははは。どうだ、これで四対四だ。」」」」

 

「「「「スゴイスゴーイ。モットタクサンコワセルネ。」」」」

 

四人のフランが弾幕を放ってくる。四人の俺は弾幕をかわしながらフランに突進し、四人を引き離した。それぞれで一対一の戦いになった。

 

しばらくして一人の俺とフランに同時に攻撃が当たり、同時に消滅した。フランの表情が少し暗くなる。今度もまた一人ずつ消えた。フランは悲しそうになった。さらに消えた。フランは泣いていた。俺たちが一人ずつになったため互いのスペルがブレイクされた。

 

「なんでそんな顔しているんだ?」

 

「だって、壊れちゃったんだもん。」

 

フランが正気に戻った。しかし、一瞬でまた狂気に飲み込まれて怒りだす。

 

「コワレロコワレロ。ミンナコワレチャエ。」

 

もしかしたら、デューの力を使わなくてもフランを救うことができるかもしれない。俺はデューに向かって叫ぶ。

 

「デュー、お前の能力は使わなくてもいい。」

 

デューは手を振って、わかった、と返してきた。それを確認して、俺は変異を解除してフランに近づく。

 

 

 

 

 

「ちょっと!範人は何をしているの。」

 

範人は変異を解除して無防備な状態でフランに近づいていく。

 

「大丈夫です。範人は強いですから。それに、きっと考えがあるんだと思います。」

 

「でも、無茶よ。身体をバラバラに吹き飛ばされて死んでしまうわ。」

 

「さっきの再生を見たでしょう。範人は自然死以外では死にませんよ。」

 

「そう……なの。」

 

私はデューレスに説得され、範人にかけてみることにした。

 

 

 

 

 

「コワレロ、コワレロ。」

 

フランが弾幕を放ち俺を攻撃してくる。だが、避けずに近づいていく。反撃もしない。もちろん、弾幕は俺に当たり身体をえぐったり、風穴を開けたりした。しかし、傷はできた途端にふさがっていく。

 

「クルナ、クルナ。」

 

弾幕が俺を傷つける度にフランは泣いていた。

 

「来るなー!」

 

正気に戻ったフランが手を握った。

 

 

 

 

 

範人が近づいてくる。傷つきながらも近づいてくる。私はそんな範人が恐ろしく、狂気から一時的に解放された瞬間に能力を使ってしまう。

 

「来るなー!」

 

私が手を握ると範人の身体は内側から弾け飛んだ。範人の血や肉が降り注ぐ。私は自分のしたことが怖くなり、泣きだしてしまった。

 

「う、うあぁぁ〜!」

 

 

 

 

 

範人の身体が弾け飛んだ。しかし、デューレスは平然と私の隣に立っている。よくそんなに平然としていられるものだ。

 

「本当に大丈夫なの?範人が吹き飛んだわ。」

 

「大丈夫です。あんなことで死んだら私が過去の時点で殺していますよ。」

 

何故生きていると言えるのだろう?範人は間違いなく身体が吹き飛んで死んだはずなのに……。

 

 

 

 

 

範人が死んだ。私が殺した。私の能力で殺してしまった。私は憎い、この狂気が、この能力が、この身体が、この自分が。範人は間違いなく死んだ。私の目の前で弾け飛んだのだから生きていたら、わからないはずがない。ただ、今は涙でその目の前も見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなんじゃ、俺は死なねえよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

範人の声が聞こえた。私は驚き、前を向く。するとそこには吹き飛んだはずの範人の姿があった。

 

 

 

 

 

ありえない。範人の身体が再生している。全身がバラバラに弾け飛んだはずなのに再生した。私たち吸血鬼でもあそこまでバラバラになれば、治ることはない。

 

「言った通りでしょう。範人は生きていますよ。」

 

「ありえないわ。あんな再生力。」

 

「それが範人という生物です。」

 

デューレスは笑いながらこたえた。デューレスの言う通り、範人は生きていた。

 

 

 

 

 

範人が近づいてくる。私はこの場で殺されてしまう。身体を吹き飛ばしたのだからそうされても仕方がない。私は覚悟を決め、じっとする。

 

(………?)

 

範人は攻撃してこなかった。私は不思議に思い範人の顔を見る。こちらの様子を見て、範人は微笑んでいた。

 

「どうやら、今は狂気にとらわれてないみたいだね。」

 

「え、私を殺さないの?」

 

「別に俺は怒ってないよ。」

 

「なんで、私は殺そうとしたのに……。」

 

「俺は死と隣り合わせの仕事をしていたからね。別にこのくらい大したことないさ。」

 

どうやら範人は本当に怒っていないらしい。私はそれがわかると、範人が生きていたことへの安心と範人が怒っていないことへの安心から、範人に抱きついて泣き出してしまった。

 

「うわぁぁ〜!」

 

「よしよし。泣きたいときは泣けばいいし、笑いたいときは笑えばいいよ。自分に素直でいればいい。」

 

私は優しい言葉にさらに涙が止まらなくなった。そんな私を範人は優しく抱きしめてくれた。

 

「一人はつらかったよね。困ったら助けを求めればいい。きっと助けてくれる人がいるし、ここには君を突き放そうとする人もいないよ。だから、安心していいよ。俺はフランが泣き止むまでいっしょにいるから。」

 

感情が次から次へとあふれ出して涙となって流れていく。涙といっしょに私の中の狂気が流れ出していくように感じた。

その後、私は気がすむまで泣き続けた。

 

 

 

 

 

フランが泣いている。当たり前だろう。いくら力が強くても実際は心優しい少女なのだから。俺も自身の力のせいでまわりに恐れられたことがある。そのときは俺もとてもつらかった。だから、フランの心はよくわかる。

俺はフランが泣き止むまでその場にとどまった。




フランが狂気から救われました。まだ完全にではありませんが……。
範人のスペルカード「分裂『超再生の果て』」は発動時に再生力を飛躍的に上げて治癒力をアップさせたり、自分を切り分けて増やしたりするスペルカードです。時間経過か、残りが一人になるとスペルブレイクします。
「炎陣『フレイムライン』」は相手の周りを炎の粒子(燃えている身体の粒子化)で囲み、集中砲火するスペルカードです。
「炎舞『紅蓮爪拳舞』」は炎の火力を上げて、体全体により強力な炎を纏うスペルカードです。タイプとしては身体強化に当たります。
ではまた、次回お会いしましょう。

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