東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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どうも!足首を骨折して絶賛リハビリ中の四ツ葉 黒亮です。今回はあの原作キャラが登場します。では、本編をどうぞ。


第一章 戻ってきた末裔
第一話 博麗の巫女とお賽銭


幻想郷に戻ってきた翌朝、俺はリビングで1人で朝食を食べている。「今日の予定はどうしようかな?」と、考えながら食パンに噛みつく。

昨夜の移動の直前に研究所の敷地内はすべて掃除をしてしまったために、することがとくに思い浮かばない。実際、リビングを見渡してもごみなんて1つもなくピカピカだ。ひとまず「朝食の片付けをしていれば、何か思いつくだろう」と思い、片付けを始めた。

 

 

 

〜少年片付け中〜

 

 

 

結局、あの後片付けをしていても何もつかなかった。自分の想像力の無さが恨めしい。

 

「あー、暇だー。」

 

思わず声に出てしまう。暇すぎることはなかなか辛いものがある。こんなときこそ、外の世界の漫画やアニメみたいな出来事が起きてもらいたい。さすがに世界消滅の危機とかはご遠慮願いたいが……

 

(そういえば、デューはどうしたんだ?)

 

リビングにデューレスが来ていないことに気づく。

いつもならば、もうとっくに起きて来る時間のはずなのだが、今日はまだ来ない。真面目な彼に限ってまだ寝ていることはないはずだ。心配になったため、様子を見に行くことにした。

 

〜少年移動中〜

 

デューレスの寝室に着いた。ひとまず、ドアをノックしてみる。

 

「…………うぅ。」

 

苦しそうな声が聞こえた。しかし、ここで焦ってはいけない。焦ってしまえば、向こうを不安な気持ちにしてしまう。こういうときこそ、平常心だ。

俺はなるべく普通を装い話しかける。

 

「デュー、大丈夫か?入るぞ。」

 

「どうぞ。」

 

ドアを開けて驚いた。なんと、デューの顔色が悪かった。いや、タイラントなのだからその肌の色は灰色近く、もともと悪いのだが……

身体がタイラントになってから風邪なんて一度もひいたことがないのにどうしたというのだろうか?

 

「いったい、どうしたんだ?」

 

「昨夜、移動したとき気分が悪くなったんだ。」

 

ひとまず安心した。どうやら、移動の衝撃で酔っただけのようである。その程度、放っておいてもすぐに治る。しかし、さすがに放置は友としてどうかと思うので適当なことを言っておく。

 

「気分が良くなるまでは安静にしておけ。水とかは置いとくから。」

 

その後、デューレスの部屋に食事と水を置いておく。少しだけだが何かすることができて、少しだけだが暇を潰せた。しかし、結局は少しだけ……

 

「あー、どうしよ。マジでやることなくなった。」

 

やっぱり、こうなった。何かアイディアはないものだろうか?

考えた末にリビングに戻ることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングに戻ったら、紫がいた。

昔からの付き合いのため、親しみを込めて姉さんと呼んでいる。しかし、勝手に人の家に上がり込んでコーヒーを飲むのはどうかと思う。いや、別に上がり込んできたからどうとかはないが、さすがに礼儀というものがあるだろう。何か言ってやりたいのだが、口で彼女に勝てるはずがないため黙っておく。俺の心が折られるよりはよっぽどマシだ。

 

「姉さん、今暇なんだけどさ、なんかすることとか、いいアイディアねーか?」

 

「そうね……博麗神社に行ってきたらどう?」

 

博麗神社……聞いたこともない。さすがに神社が何かはわかるが、そんな名前の神社は知らない。そもそも、向こうの世界にこの幻想郷の情報がそんなにあったら、困るのだが……

 

「なんだそこ?」

 

「この世界のバランスを保っている巫女がいるところよ。」

 

「面白そうだな。行ってみるか。」

 

幻想の世界を管理する巫女と聞いて興味が湧いた。そんな面白そうな場所、行かないわけがない。折角こちらに戻ってきたのだから、楽しまなければ損である。

今日することがひとまず決まり、安心する。

 

「あ、そういえば範人。そこに行くならお賽銭たくさん持って行きなさい。」

 

「えっ、なんでだ?」

 

頭に?マークが浮かぶ。そこの神社の人間が金好きだとでも言うのだろうか?しかし、神社と言えば、聖職者。神に仕えるものが、金にがめついわけがないとその考えを振り切る。

 

「まぁ、いいから。たくさん持って行きなさい。それに私もすること終わったら、そこに行くから。その後、人里の案内してあげるから。」

 

「まぁ、分かったよ。」

 

結局、頭の?マークは消えなかったが、従うことにした。

幸いなことに金なら自分が稼いだものや両親が遺したものが大量にある。神社に賽銭として出す分なら、普通に有り余っている。

 

「あ、地図あるか?」

 

「ちょっと待ってね………はい、どうぞ。」

 

紫から地図が渡されるが、俺は手渡された地図を開いて黙ってしまった。その地図は子供の描いたような落書きのような地図だったのである。

 

(姉さん、こりゃないぜ。)

 

そう思うが、仕方がないと自身に言い聞かせる。研究所が幻想郷に来たのは、つい昨夜なのである。そう考えたとき、俺の脳内に一瞬だけ、頑張って地図を描く姉さんの姿が浮かんだ。実際、その地図には研究所も描いてあったのだ。

俺は、財布の中に金と地図を入れた。

 

「じゃ、行ってくる。」

 

俺は博麗神社に向かった。迷子になってもいいから徒歩で行くことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

範人に地図を渡したら、範人が一瞬困ったような顔をした。何があったのだろうか?疑問である。彼はもともと、あまり心境を表情に出さないはずなのだが……

 

「じゃ、行ってくる。」

 

範人は神社に向かって出ていった。私は無言でその後ろ姿を見送る。

 

「なんで範人は困ったような顔してたのかしら?」

 

私は不思議に思ってつぶやいた。まぁ、気のせいだろうと自分に言い聞かせ、コーヒーを飲み干す。充分にくつろぐこともできたため、仕事をしようとスキマに潜る。そのとき、範人が困っていた理由が分かった。

 

「あ、範人に渡した地図、橙が描いた下手なやつだったわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ⁉︎

ここ上がるのかよ。面倒くせぇ。」

 

俺は今、後悔している。何故なら、目の前に長い階段と高い山があるからである。ただでさえ、ここまで来ることに地図のせいで苦労したというのに。

 

「仕方ねぇ。登るか。」

 

博麗神社に行くと決めたのだから仕方ない。俺は石段を登り始めた。

 

 

 

〜少年登山中〜

 

 

 

「はあ、やっと頂上か。」

 

少し休んで息を落ちつかせてから、境内を見渡すとその神社がかなり立派であることが分かる。しかし、人が全然いない。いや、少なくとも自分以外にもう1人神社の中にいることは、気配で気付いていた。ひとまず、お賽銭を入れることにしよう。

 

(姉さんが多い方が良いって言っていたからな。諭吉にしておくか。)

 

諭吉を賽銭箱に入れ、鈴を鳴らし、手を合わせる。願いは、あいつらが幻想郷に無事に戻って来ることだ。賽銭を入れた瞬間、ドタバタと足音が聞こえてきた。

 

(誰か走って来る。俺なんかしたか?)

 

足音が近づいてくるにつれて「自分が何かまずいことでもしたのだろうか?」と、心配になってきた。

 

「お賽銭〜〜〜ッ!!」

 

紅白の巫女服を着た少女が叫びながら走ってきた。そして、賽銭箱にたどり着くと箱の中をあさり始めた。その少女は、諭吉を取り出すと意味不明な叫びを上げる。

客の前でそんなことするなよ。

 

「おっsy%¥+@/☆#&♪」

 

その少女を見て一目で巫女だと分かったが俺の心の中にある感想は異国の文化に対しての感動ではなかった。

 

(なんだ、この腋巫女は…)

 

その巫女の行動に対する批判的な感想だった。

 

「貴方がこれ入れてくれたの?」

 

突然、巫女に質問された。身体が当たるような距離まで一瞬で接近され、上目遣いで質問されてしまったため、思わずビクッとしてしまう。

正直、この神社で賽銭を入れるやつが俺以外どこにいると言うのだろうか?境内にいたのは俺1人だったはずである。

 

「あ、ああ。確かにそれを入れたのは、俺だが…」

 

「ありがとう。こんなにお賽銭入れてくれたんだから、お礼としては何だけど。上がっていってよ。お茶くらい出すわよ。」

 

少し迷ったが、紫はまだ来てないようだったため、上がらせてもらうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その巫女はお茶を入れてくれた。個人的に日本の緑地はかなり好きである。

 

「貴方見ない顔ね。私は、霊夢。霊夢って呼んで。で、貴方の名前は?」

 

(見知らぬ奴を家に入れんなよ。

……それよりも名前か。)

 

「俺はハント。ハント・ゴーt…」

 

向こうでの名前を出してしまいそうになり、俺は黙った。

この名前はあまり好きではない。自身の起こした事件にそのままつながってしまう可能性がある。と言っても、こちらの世界にそんな情報があるはずがないのだが……

 

「ん?」

 

霊夢が興味深そうにこちらを見ているため、慌てて言い直す。

 

「範人。旅行 範人だ。範人って呼んでくれ。」

 

「へぇ。範人はなんでこんな神社に来たのかしら?」

 

「幻想郷に来たばかりで、とくにやることがなかったからかな。姉さんに聞いたら、博麗神社に行ってみたらって、言われたからな。」

 

「貴方の姉さんって、名前なんていうの?」

 

「八雲 紫だ。」

 

「ブッ!」

 

俺がそうこたえた瞬間、霊夢は吹き出した。俺が何か問題発言でもしたのだろうか?別に誰が自分の姉であっても問題はないだろう。

 

「霊夢、どうした?」

 

「紫が姉さんって、あんた何歳なのよ?」

 

「別に実の姉さんって訳じゃねぇよ。俺が小せぇ頃から面識あったから、親しみを込めて姉さんって、呼んでいるだけだよ。」

 

「あら、そうだったの。納得したわ。」

 

どうやら、霊夢は勘違いしていたようだ。

まぁ、勘違いされてもおかしくないだろう。同年代の日本人と比べれば俺の背はそこそこ高いし、髪の毛の色も金である。紫は女性としては背が高いし、髪の色も同じ金なのだから。

 

「そういえば、貴方って外r「ワーーッ」!」

 

ドォォォンッ!!!

 

「何だ?」

 

「あんのバカ……。」

 

俺は様子を見るために、霊夢はなんかスゲェ怒りながら境内に出た。

新しい出会いの予感しかしない。しかも、かなり面倒なやつの……いや、面倒なやつに慣れてはいるが……




原作主人公の博麗 霊夢さんが登場しました。実を言うと作者は霊夢さんが苦手です。霊夢ファンの皆様すみません。さて、皆様は、既に分かっていると思いますが、境内にやって来たのは誰でしょうか?では、また!

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