東方戻界録 〜Return of progeny〜 作:四ツ兵衛
さて、範人の師匠は誰でしょうか。気になりますね。この師匠は範人の過去で語られた師匠と同一人物です。
では、本編をどうぞ。
白玉楼には幽々子と妖夢の他にもう一人驚くべき人物がいた。
「師匠!」
懐かしい思い出が込み上げてくる。俺に武術を教え、困った時はいつも相談に乗ってくれた人物。ジャック・クラウザーがそこにはいた。
「おう、ハント久しぶりだな。」
「なんで師匠がここにいるんですか?」
「ここは冥界だ。別に死人がいてもおかしくはないだろう。」
「確かにそうですけど……。俺が言っているのは何故幻想郷にいるのかということですよ。」
「ああ、なるほどな。今回だけ特別に冥界の果てから来たんだ。それぞれの世界は分かれていても、冥界はつながっているからな。」
「なるほど、納得しました。」
「さて、話は夕食の時にしましょう。」
「妖夢、ごはん作って。あと、範人もね。」
「わかりました。」
「なんで俺も?」
「紫が範人の料理は美味しいって言ってたからよ。」
「範人さんもいっしょに作りましょう。」
「……わかった。」
妖夢の頼みだ。断るわけにはいかない。俺と妖夢は台所に向かった。
「さて、どのくらい作ればいい?」
「だいたい、五十人前くらいですね。」
「は?」
今、妖夢がとんでもないことを言ったような気がした。確か、師匠は二人前くらいしか食べないし、デューでさえも五人前が限界だったはずだ。
「妖夢、それ冗談?」
「いいえ、本気です。幽々子様がたくさん食べますので。」
なんだそれ?たくさん食べるっていうレベルじゃないよな。ていうか、あの腹のどこにそんなに入るんだよ!やばい人じゃないっていうの訂正。幽々子はやばいやつだ。
「まあ、それなら仕方がないし作るか。何作る?」
「それぞれの得意なものを作りましょう。美味しくて速く作れるのを。」
「わかった。」
もうどうにでもなれ。俺は炒飯と青椒肉絲、中華スープ、困ったときの卵焼きを作り始める。別に和洋中なんでも作れるが速く作れるのはこの辺だ。妖夢の方を見ると和食を作っているが向こうも焦っているようだ。幽々子よ、料理する方のことも考えろ。
しばらくして
「できたー!」
「できました。」
俺と妖夢はほぼ同時に夕食を完成させた。こんだけ疲れたんだ。残すのは許さん。
「運ぼうか。」
「はい。」
俺と妖夢はでき上がった料理を運び、並べていった。料理を並び終えると同時に幽々子が食べ始めようとする。
「幽々子様。いただきますと言ってからですよ。」
「みんなで言おうか。」
「「「「「「いただきます。」」」」」」
同時に幽々子は夕食を食べ始める。速すぎだろ。もう一人前消えたよ。
「範人、おまえしばらく会わないうちにますます料理の腕を上げたな。」
「ありがとうございます。」
師匠は過去に俺の料理を食べたことがあるため、そう言ってもらえると腕が上がっていることが実感できて嬉しい。
「この炒飯美味しいわね。範人が作ったの?」
「そうだよ。」
「うちで暮らさない?」
「⁉︎」
妖夢が幽々子の発言に驚いている。突然何を言い出すんだ、この人は。
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、研究所を離れるわけにはいかないから。それに来たくても場所がわからないし。」
「そうなの……。紫、どうにかならないかしら?」
「私に聞かないでよ。まあ、来る方法はあるけど。」
(あるのかよ!)
「その方法って?」
「範人にこれを渡すわ。」
姉さんが取り出したものは封力石だった。父さんが能力をコピーして閉じ込めた石。
「これには私の能力が入っているわ。つなげられる場所は二箇所だけになっているけどね。白玉楼と研究所を既につなげてあるから、これでいつでも行き来できるわよ。」
「姉さん、ありがとう。」
「お礼ならアルバレストに言いなさい。彼が作ってくれたんだから。」
(父さん、ありがとう。)
「これでいつでも範人のごはんが食べられるわー。」
訂正する。父さん、なんてもんを作ってくれたんだ。妖夢に会えるのは嬉しいけど……。
「妖夢、範人。デザートお願いね。」
「「⁉︎」」
気がつけば、幽々子は料理を食べ終えていた。
「まだ食べるのですか?」
「まだ食うのか?」
「もちろんよ。あっ、三十人前ね。」
本当にどんな腹してんだか。俺も妖夢も疲れてクタクタだが台所に向かう。
幽々子が普段どれだけ食べるのかが気になったため、訊いてみる。
「幽々子って、普段どのくらい食べるんだ?」
「だいたい、十人前くらいですね。今日は気分が良いのでたくさん食べているようです。」
普段からそんなに食っているのか。妖夢も大変だ。
「大変だな。これからは毎日手伝いに来てやるよ。」
「えっ、いいんですか?」
「ああ、さすがに大変だろ。来れない日もあるだろうけど。」
「ありがとうございます!」
そう言う妖夢はとても嬉しそうだ。
(やった。範人さんに毎日会える。)
私と範人さんは、デザートを作り終えて運ぶ。もう疲れが限界だ。
「ふふふ、ありがとうね。二人とも。」
その後、三十人前のデザートは10分もかからずに消えた。
「「「「「「ごちそうさまでした。」」」」」」
この言葉の直後に私と範人さんは疲労で意識を手放した。
目が覚めると布団の上だった。外は朝である。ああ、そうだ。昨日、夕食の直後に疲れて気絶したんだった。ふと、横を見ると隣で妖夢が寝ていた。
「えっ⁉︎」
俺が驚くと妖夢も起きてしまった。自分の顔が熱くなるのがよくわかる。妖夢も顔が真っ赤だ。
「お、おはよう。」
「おはようございます。」
恥ずかしさのあまり、目をそらして自分の枕のほうを見る。すると、手紙が置いてあった。
「なんだこれ?」
「どうしたんですか?」
その手紙は師匠からのものだった。
「 我が弟子ハントへ
俺は他の世界に転生することになった。転生すれば、おまえと過ごした日々の記憶も忘れてしまうだろう。だから、おまえがこの世界に来たのを知ったとき、おまえに一度会っておきたかった。こんな俺を師匠と呼んでくれてありがとう。さようなら。妖夢と幸せにな。
最後に
おまえは俺の特訓に耐え、俺を超える存在になった。それをここに証明する。
ジャック・クラウザー 」
手紙を読み終わったら、涙が溢れてきた。
「師匠ありがとうございました。俺は師匠のことを絶対に忘れません。」
俺はもう届かない言葉を師匠に言った。
「あ、裏に何か書いてありますよ。」
「なんだろう?」
「おまえたちを運んだのは俺だが、これを考えたのは幽々子と紫だ。すまない。」
俺と妖夢は顔を見合わせる。
「……妖夢。」
「そうですね、範人さん。」
「「あの二人朝食抜き。」」
俺と妖夢は怒りで恥ずかしいことも忘れた。
範人の師匠はジャック・クラウザーさんです。作者的にはバイオハザードで好きなキャラクターベスト5に入ります。
今更ですがこの小説では、東方原作の年齢不詳キャラクター(霊夢とか魔理沙とか)は範人と同じ歳という設定です。咲夜?1、2歳年上じゃないですかね?
ではまた、次回お会いしましょう。