東方戻界録 〜Return of progeny〜   作:四ツ兵衛

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どうも!四ツ葉 黒亮です。
さて、範人の師匠は誰でしょうか。気になりますね。この師匠は範人の過去で語られた師匠と同一人物です。
では、本編をどうぞ。


第十四話 範人の師匠

白玉楼には幽々子と妖夢の他にもう一人驚くべき人物がいた。

 

「師匠!」

 

懐かしい思い出が込み上げてくる。俺に武術を教え、困った時はいつも相談に乗ってくれた人物。ジャック・クラウザーがそこにはいた。

 

「おう、ハント久しぶりだな。」

「なんで師匠がここにいるんですか?」

「ここは冥界だ。別に死人がいてもおかしくはないだろう。」

「確かにそうですけど……。俺が言っているのは何故幻想郷にいるのかということですよ。」

「ああ、なるほどな。今回だけ特別に冥界の果てから来たんだ。それぞれの世界は分かれていても、冥界はつながっているからな。」

「なるほど、納得しました。」

「さて、話は夕食の時にしましょう。」

「妖夢、ごはん作って。あと、範人もね。」

「わかりました。」

「なんで俺も?」

「紫が範人の料理は美味しいって言ってたからよ。」

「範人さんもいっしょに作りましょう。」

「……わかった。」

 

妖夢の頼みだ。断るわけにはいかない。俺と妖夢は台所に向かった。

 

 

 

「さて、どのくらい作ればいい?」

「だいたい、五十人前くらいですね。」

「は?」

 

今、妖夢がとんでもないことを言ったような気がした。確か、師匠は二人前くらいしか食べないし、デューでさえも五人前が限界だったはずだ。

 

「妖夢、それ冗談?」

「いいえ、本気です。幽々子様がたくさん食べますので。」

 

なんだそれ?たくさん食べるっていうレベルじゃないよな。ていうか、あの腹のどこにそんなに入るんだよ!やばい人じゃないっていうの訂正。幽々子はやばいやつだ。

 

「まあ、それなら仕方がないし作るか。何作る?」

「それぞれの得意なものを作りましょう。美味しくて速く作れるのを。」

「わかった。」

 

もうどうにでもなれ。俺は炒飯と青椒肉絲、中華スープ、困ったときの卵焼きを作り始める。別に和洋中なんでも作れるが速く作れるのはこの辺だ。妖夢の方を見ると和食を作っているが向こうも焦っているようだ。幽々子よ、料理する方のことも考えろ。

 

 

 

しばらくして

 

「できたー!」

「できました。」

 

俺と妖夢はほぼ同時に夕食を完成させた。こんだけ疲れたんだ。残すのは許さん。

 

「運ぼうか。」

「はい。」

 

俺と妖夢はでき上がった料理を運び、並べていった。料理を並び終えると同時に幽々子が食べ始めようとする。

 

「幽々子様。いただきますと言ってからですよ。」

「みんなで言おうか。」

「「「「「「いただきます。」」」」」」

 

同時に幽々子は夕食を食べ始める。速すぎだろ。もう一人前消えたよ。

 

「範人、おまえしばらく会わないうちにますます料理の腕を上げたな。」

「ありがとうございます。」

 

師匠は過去に俺の料理を食べたことがあるため、そう言ってもらえると腕が上がっていることが実感できて嬉しい。

 

「この炒飯美味しいわね。範人が作ったの?」

「そうだよ。」

「うちで暮らさない?」

「⁉︎」

 

妖夢が幽々子の発言に驚いている。突然何を言い出すんだ、この人は。

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、研究所を離れるわけにはいかないから。それに来たくても場所がわからないし。」

「そうなの……。紫、どうにかならないかしら?」

「私に聞かないでよ。まあ、来る方法はあるけど。」

(あるのかよ!)

「その方法って?」

「範人にこれを渡すわ。」

 

姉さんが取り出したものは封力石だった。父さんが能力をコピーして閉じ込めた石。

 

「これには私の能力が入っているわ。つなげられる場所は二箇所だけになっているけどね。白玉楼と研究所を既につなげてあるから、これでいつでも行き来できるわよ。」

「姉さん、ありがとう。」

「お礼ならアルバレストに言いなさい。彼が作ってくれたんだから。」

(父さん、ありがとう。)

「これでいつでも範人のごはんが食べられるわー。」

 

訂正する。父さん、なんてもんを作ってくれたんだ。妖夢に会えるのは嬉しいけど……。

 

「妖夢、範人。デザートお願いね。」

「「⁉︎」」

 

気がつけば、幽々子は料理を食べ終えていた。

 

「まだ食べるのですか?」

「まだ食うのか?」

「もちろんよ。あっ、三十人前ね。」

 

本当にどんな腹してんだか。俺も妖夢も疲れてクタクタだが台所に向かう。

 

 

 

幽々子が普段どれだけ食べるのかが気になったため、訊いてみる。

 

「幽々子って、普段どのくらい食べるんだ?」

「だいたい、十人前くらいですね。今日は気分が良いのでたくさん食べているようです。」

 

普段からそんなに食っているのか。妖夢も大変だ。

 

「大変だな。これからは毎日手伝いに来てやるよ。」

「えっ、いいんですか?」

「ああ、さすがに大変だろ。来れない日もあるだろうけど。」

「ありがとうございます!」

 

そう言う妖夢はとても嬉しそうだ。

 

 

 

 

 

(やった。範人さんに毎日会える。)

 

私と範人さんは、デザートを作り終えて運ぶ。もう疲れが限界だ。

 

「ふふふ、ありがとうね。二人とも。」

 

その後、三十人前のデザートは10分もかからずに消えた。

 

「「「「「「ごちそうさまでした。」」」」」」

 

この言葉の直後に私と範人さんは疲労で意識を手放した。

 

 

 

 

 

目が覚めると布団の上だった。外は朝である。ああ、そうだ。昨日、夕食の直後に疲れて気絶したんだった。ふと、横を見ると隣で妖夢が寝ていた。

 

「えっ⁉︎」

 

俺が驚くと妖夢も起きてしまった。自分の顔が熱くなるのがよくわかる。妖夢も顔が真っ赤だ。

 

「お、おはよう。」

「おはようございます。」

 

恥ずかしさのあまり、目をそらして自分の枕のほうを見る。すると、手紙が置いてあった。

 

「なんだこれ?」

「どうしたんですか?」

 

その手紙は師匠からのものだった。

 

 

「 我が弟子ハントへ

 

俺は他の世界に転生することになった。転生すれば、おまえと過ごした日々の記憶も忘れてしまうだろう。だから、おまえがこの世界に来たのを知ったとき、おまえに一度会っておきたかった。こんな俺を師匠と呼んでくれてありがとう。さようなら。妖夢と幸せにな。

 

最後に

おまえは俺の特訓に耐え、俺を超える存在になった。それをここに証明する。

 

ジャック・クラウザー 」

 

 

手紙を読み終わったら、涙が溢れてきた。

 

「師匠ありがとうございました。俺は師匠のことを絶対に忘れません。」

 

俺はもう届かない言葉を師匠に言った。

 

「あ、裏に何か書いてありますよ。」

「なんだろう?」

 

 

「おまえたちを運んだのは俺だが、これを考えたのは幽々子と紫だ。すまない。」

 

 

俺と妖夢は顔を見合わせる。

 

「……妖夢。」

「そうですね、範人さん。」

「「あの二人朝食抜き。」」

 

俺と妖夢は怒りで恥ずかしいことも忘れた。

 




範人の師匠はジャック・クラウザーさんです。作者的にはバイオハザードで好きなキャラクターベスト5に入ります。
今更ですがこの小説では、東方原作の年齢不詳キャラクター(霊夢とか魔理沙とか)は範人と同じ歳という設定です。咲夜?1、2歳年上じゃないですかね?
ではまた、次回お会いしましょう。

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