東方戻界録 〜Return of progeny〜 作:四ツ兵衛
人里で範人の彼女になるキャラを登場させると書きましたが、今回はまだ登場しません。
では、本編をどうぞ。
俺と姉さんは人里を見て回っている。すごい、向こうの世界では見られなかったものばかりだ。すべてのものが共存することですら元いた世界ではありえないことだったのに、ここには昔の文化がきれいに残っている。
「ここは何だ?」
俺はとある建物の前で足を止めた。
「ここは寺子屋さ。」
突然、白髪の少女が現れ、そう答えた。
「寺子屋、なんだそれ?」
「貴方が元いた世界の学校のようなものよ。」
姉さんが教えてくれた。
「なるほど、つまり学問を学ぶ場所か。」
「あんまり見ない顔だな。あんた外来人か?」
「そうだよ。俺は旅行 範人だ。」
「私は藤原 妹紅だ。よろしくな。」
「ああ、よろしく。」
ん、待てよ。藤原って確か……。そうだよ!この人、日本史で有名な藤原氏だよ!しかも、かぐや姫の物語で出てきた藤原 不比等の娘さんだよ!あれ、でもなんで生きているんだ?すごい昔の人だよね。
「あのー、妹紅の父親って藤原 不比等さん?」
「ああ、そうだよ。なんで範人が知っているんだ?」
ご本人だったよ。幻想郷ってすげー。
「向こうの世界には、かぐや姫っていう物語があってね。それに書いてあったんだよ。でも、まさか本人とはね。」
「そうか、そんな話が……。」
妹紅は少し悲しそうな顔をした。当たり前だろう。その時代の貴族の男たちは、すぐに女を見捨てては、新しい女を見つけていたような馬鹿ばかりだったのだから。かぐや姫はそんな男たちを姫がふっていく物語なのだから。妹紅はその時代に育ったのだから。何か悲しいことを思い出させてしまったのだろう。
「ねえ、妹紅。範人が寺子屋に興味があるみたいなの、入れないかしら?」
「お安いご用さ。この寺子屋は私の知り合いがやっているからな。丁度、今は休み時間だろうしね。ついて来な。」
俺と姉さんは妹紅についていった。
「慧音、来たぞー。」
「おお、妹紅か。いらっしゃい。そいつは誰だ?紫様はわかるけど。」
「こいつは旅行 範人だ。」
「よろしく。」
「ああ、よろしく。私は上白沢 慧音だ。で、どうしたんだ?」
寺子屋にいたのは、水色の髪をした女性だった。
「範人が寺子屋の授業を見てみたいそうだ。授業を見せてやってくれないか?」
「それは別に構わないぞ。」
「ありがとう。」
やったね。いままでは授業を受ける側だったから三人称視点の授業がどんなものか知りたかったんだよね。
「その変わり頼みがある。問題がわからない生徒がいたら問題の解き方とかをアドバイスしてやってくれ。」
「それくらいなら別にいいよ。」
人にものを教えるのって楽しそうだし。
「私は1人でその辺をうろうろしてくるわ。1時間後に戻ってくるわね。」
「わかった。」
「じゃあ、授業しに行こうか。」
俺は慧音のあとに続いて教室に入る。
「さて、授業を始めるけど、その前にちょっと紹介する。この授業を手伝ってくれる旅行 範人だ。」
「旅行 範人だ。よろしく、みんな。」
俺は教室を見渡す、するとあいつがいた。
「あれー、なんで範人が寺子屋に来てるのだー?」
ルーミアはいい。問題はその後ろのやつだ。
「あー、昨日アタイを吹っ飛ばしたやつ!」
チルノである。こいつは苦手だ。いちいち相手をするのが面倒くさい。表情に出そうだが俺は感情を押さえ込む。
「わからないことがあったら、聞いてくれ。」
「紹介が終わったから、授業を始めるぞ。今回はかけ算だ。」
慧音は解き方を上手く説明してくれた。今は渡された問題を解く時間だ。
「範人ー、これはどうやって解くのだー。」
「ああ、3×5か。人が3人住んでいる家が5つある村がある。村に人は何人いる?」
「えーと、人が3人でそれが5つだから、わかった15人だ。」
「よくできたな、ルーミア。正解だ。」
「ありがとうなのだ、範人。」
俺は周りを見渡す、問題がわからなくなっているやつはいないだろうか。ふと、チルノの問題用紙を見るとほとんど書いてなかった。面倒だが教えてやろう。
「チルノ、ほとんど書いてないじゃないか。どうしたんだ?」
「だって、わからない。」
「なら、俺がいっしょに解いてやるよ。」
「別にいい。」
「はぁ…。」
俺はため息をつく。少し気が引けるが仕方がない。
「昨日は悪かったな、バカだなんて言って。」
「え…。」
「これからは天才って言ってやるよ。」
俺は遠回しにバカだと言う。
よく言うだろ、バカと天才は紙一重だ、って。
「範人…。ここ教えて。」
問題用紙には《りんごが8個入った箱が10箱ある。りんごは何個あるか?》と書かれている。
「これは8×10か。りんごを8個それぞれ10切れに切ったら、りんごは何切れある?」
逆転の発想である。既にあるものを増やして数えるのではなく、既にあるものを分けて数える。
「えっと、8個を全部10切れに切ったから……、わかった。80切れだ。」
「正解だ、チルノ。俺の説明でよくわかったな。おまえは天才だ。」
「天才だなんて、アタイったらサイキョーね。」
チルノが問題を解き終えると同時に慧音が言う。
「今日の授業は、これまでだ。」
俺は慧音に続いて教室を出た。
「おまえの教え方、なかなか良かったぞ。」
「それはどうも。慧音の説明も上手かったよ。」
「ありがとう。範人、ここで働いてみる気はないか?」
正直、教えるのは楽しかった。子供達の笑顔も見れたし、本当に良かった。しかし、研究所を捨てるわけにはいかない。
「遠慮させていただくよ。俺は生物研究所を持っているからね。」
「そうか。なら今度、社会科見学に行ってもいいか?」
「別に構わないけど、刺激が強いと思うよ。」
「別にいいさ。そういうことも知っておかないとな。」
慧音が何を考えているかはわからないが、俺の研究所は体を切る、潰すなどの血がブシャーな実験が行われていたため、マジで刺激が強い。そんなところへ社会科見学をさせるのはどうか、と考えていたところへ姉さんが戻ってきた。
「範人どうだった。楽しかったかしら?」
「とても楽しかったよ。慧音、ありがとう。」
「また、いつでも来てくれ。子供達も喜ぶだろうし。」
「ああ、気が向いたら来るよ。」
「範人は博士号持っているからね〜。」
「何っ!それは本当か?」
「本当よ。生物学とか地学とかいろいろ。」
姉さん、俺の自慢をしないでくれ。恥ずかしい。
「また是非来てくれ。あ、それと社会科見学のことだが行くことが決まったらまた連絡する。」
「ああ、いつでも連絡してくれ。」
「じゃあね、慧音。」
「じゃあな、慧音。」
「じゃあな、範人、紫。」
俺と姉さんは寺子屋を後にした。
はい、設定に書いたとおり範人は博士号を持っています。範人が子供好きということもわかりました。(ロリコンじゃないよ。)チルノとも仲直りしました。
次回、ついに範人の彼女になるキャラを登場させます。
ではまた、次回お会いしましょう。