なんとかマサラ人   作:コックリ

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ぐぬぬ、MH4の発売約1カ月後にポケモンX・Yが……!

なんて思っている暇があったら続き書けと言われそうな作者です。
とりあえず前回の続きで今回はちょっとした寄り道的なお話です。

たぶん、前回の話だけで女の子が誰かわかる人はそうそういないかと……。
アニメ見てる時に、思わぬ設定があったので使ってみました。

それと感想文に書かれてありましたルビの使い方をテストで一度入れてみました。
説明ありがとうございます。

それでは暇つぶしにでもどうぞ。


ノーマルマサラ人 20話

 

 

 

「なぁなぁ! あれってオニスズメってポケモンだろ!?」

「いや、あれはポッポ」

「わかった! あれがイワークだな!?」

「アーボだな」

 

 

 テクテク、ガサガサ、ザッザッザッと草むらを歩く二人。

町を出て野生のポケモンを探すために現在ポケモンを観察しながら騒がしく歩いていた。

もっとも、騒がしいのは元気がテンションMAXの女の子の方だけなのだが。

 

 

「じゃあ……あれがニャースか?」

「あれはラッタ」

「あれは?」

「あれはピカチュウだよ…………………あんっ時は超サーセンでしたっ!!」 「ピカッ!?」

「なんで土下座っ!?」

 

 

 訂正、二人とも騒がしかった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

――――遡ること1時間ぐらい前。

 

 

 

「あぁ、こっち来て初めてどくタイプのポケモンみたよ。サンキュー♪」

「はぁ……どういたしまして」

「そっちもサンキューな。―――え~と、ニド……ニド?」

「……ニドリーナ、な」

「そうそう。サンキュー、ニドリーナ♪」

「……ニド」

 

 

 ニドリーナを今だベタベタと触りながら上機嫌でお礼を言う女の子。

対するニドリーナは疲れた顔で返事をする。

彼女の性格というか気さくさというべきか既にこちらも既に敬語が抜けている。

 

 誰だっけ、この人? 記憶を探っても該当人物は思い浮かばず、首をひねるばかり。

 

 

「船の中じゃ見なかったからさぁ。せっかくカントーまで来たのに一匹も見れないってのもくやしくってさ」

「………船の中?」

「だからマジでサンキュー♪ カントー来て初めて見たよ!」

「カントーまで来てって……今、停泊してるサントアンヌ号から?」

「そうそう! アタシ……っていうかアタシらイッシュから来てさ。カントーに来るのは初めてなんだよ」

「…………イッシュ!?」

 

 

 

 ―――イッシュ地方。

随分となつかしく、久しく耳にしなかった言葉に驚く。

 

 イッシュ、といえば今いるカントー地方のポケモンとは一風変わったポケモンが生息されている、カントーから遠く離れた場所にある地方。

一風変わっているのはポケモンだけでなく、そこに住んでいる人もこことは違った独自の文化・施設・イベントを盛んに行っていることで有名だったりする。

遠い海を越えた先にある場所―――それがイッシュ地方だ。

 

 とはいえ、それは昔―――『シゲル』になる前の『情報』だ。

『現在』のイッシュという地方は、あいにくとほとんど情報が無い……というよりも、"なにもない田舎"ぐらいとしかイメージがなかったりする。

おそらく、誰に聞いてもそうだろう。もしくはイッシュという名を全く知らないか…。

それほど今のイッシュ地方は知名度が全く無かったりする。

 

 理由は簡単、―――ポケモンが居ないからだ。

正確には未だ『発見』されていないからとも言える。

それは他の地方、ホウエン・シンオウにも言えること。

 

 現在、ポケモンは150匹以上存在する――と言われているが、主に発見・生息が確認出来ているのはカントー地方のみ。

他の地方、このカントー地方から近いジョウト・ホウエン・シンオウ地方にもポケモンを確認出来ているが、いかんせん発見されている絶対数が少ない。

そしてポケモンは昔から世界に存在する、子供も知っている『当たり前』の存在となっている。

そんな御時世、多くの研究者は日夜伝説のポケモン・新たなポケモン・既存のポケモンの生態を研究をしている。

だが、そんな研究を行えるのはポケモンが居てこそだ。

また多くはの人はポケモンを研究したい、ポケモンを見たい、ポケモンを手に入れたいと考え、集まるのだ。

 

 つまりポケモンの数が多いほど、その地方は盛んであるということだ。

逆に言えば発見されているポケモンが少ない地方は"田舎"というイメージが付いていたりする。

実際、多くのポケモン研究者はわざわざ他の地方からカントー地方に来ていることが多い。

じいちゃん―――オーキド博士の先輩である、シンオウ地方出身のナナカマド博士がカントーのタマムシ大学に在籍していたのもそういった理由だろう。

 

 

「まさか、ポケモンを見るためにカントーに?」

「うりうり♪ …ん? いやいや違うよ。カントーに来たのはまた別の理由。けど、せっかく来たんだからポケモンも見ておきたくてさ」

 

 

 相変わらずニドリーナをいじっている女の子。

とはいえ、イッシュから来るとは……かなりの遠出をしたものだと感心してしまう。

 

 

「さってと! サンキューなアンタ。アタシそろそろ行くわ!」

「ん、ああ…どういたしまして。もう船に戻るんだ?」

「……いや、まぁ、ちょこっと、な…。それじゃな!」

 

 

 妙に歯切れの悪い言葉を残し、女の子はポケモンセンターの出口まで駆けて行った。

 

 

「……なんだったんだろうな、あの子」

「ニド?」

 

 

 さぁ? と首をかしげるニドリーナも同じ感想だったらしい。

とにかく、どたばたした一時だったことは確かだけど。

 

 透明のガラス窓からはさっきの女の子がそのまま駆けて遠くへ行く姿が見えていた。

船に戻るのかと、何気なく女の子を視線で追いかける、……と。

 

 

「あの子、どっかで見たことあるような? ………あ、外に出てった」

 

 

 港とは違う方向―――クチバシティから外へ出る道に足を進めているのが見えた。

そしてキョロキョロとなぜかしきりに周りを気にしながら町を出ていった。

 

 

(………どうするかな)

 

「―――ん、お前らボールに戻ってくれ。ちょっと出かけるぞ」

 

「ブイブイ?」「ニドニド?」

 

 

 ??マークを浮かべる4体をボールに戻し、腰のホルダーにセット。

食器を戻して、カバンを肩に掛け、ポケモンセンターの受付―――ジョーイさんの元へ。

 

 

「すいません。ちょっと言伝をお願いしたいんですが」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「なんでいきなり土下座なんてしてんだよ? あのポケモンも完全に意味不明で首を傾げてたぞ」

「いや、人違……ポケモン違いだった。気にしないでくれ」

「ふ~ん?」

 

 

 あの後、行動が気になったオレはこの子の後を追うように町を出た。

そして少し距離が離れたところで発見。彼女の事情を聴き、そのまま同行している。

 

 

「それはそうとサンキューな、わざわざ付いて来てもらって」

「それは良いんだけど、いくらなんでも手持ちのポケモンなしでポケモンゲットは危険だって」

「むぅ、それはそうだけどさ……」

「……まぁ、気持ちは分からないでもないけど」

 

 

 イッシュから来たと聞いた時から予想はしていたが……そう、彼女は手持ちのポケモンを一体も持っていなかった。

そんな状態で町の外―――野生のポケモン相手は非常に危険である。

そんな危険を冒してまで外に出た理由はシンプルで、ただポケモンが欲しいということだった。

 

 

「……しょうがないじゃん。ダチに言ったらダメダメ言われまくったんだから」

 

 

 そして一人で外に出た理由がコレである。

なんでもイッシュに一緒に来て友人にポケモンが欲しいという旨を話したら、危険すぎるという理由で反対されまくったそうな。

その友人も当然ポケモンを持っていないため、一緒に外に出ることを渋った。

けれどもあきらめきれず、モンスターボールを買い込み、こっそり一人でポケモンをゲットしようと行動に移したということだ。

 

 

「事情はわかったから、とりあえずオレから離れないこと。それとむやみにボールを投げないこと。良いな?」

「ん、わかった。……サンキュな、シゲル」

 

 

 はにかみながら礼をいう彼女の気持ちが分からないでもない。

イッシュはまだ未発見のポケモンが多く、また確認されているカントーのポケモンも少ない。

せっかく10歳になるまで我慢していたのに、10歳になっても未だポケモンを持てないというのはつらいだろう。

自分だって10歳になるまでがひどく待ち遠しかった。

……早く姉さんから離れたかったわけじゃないぞ。

とにかく彼女の気持ちに同情してしまったオレは1体だけという約束で彼女のポケモンゲットに協力することにした。

ちなみに本人の強い希望でどくタイプのポケモンを。

 

 

「それでそれで♪ どくタイプのポケモンってどれなんだ!」

「さっきのアーボとか」

「うそ!? 早く言ってくれよ! お~い、待て~アーボ~~!」

「って! 言った傍から離れるなって!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「行けっ! モンスターボール!!」

 

 

―――ポコンッ! と軽い音が聞こえると同時に投げられたボールが開き、眩い光線を出す。

光線が消えると当たったポケモンが光と共にボールの中に納まる。

けれどもそれでゲット出来た訳じゃない。ボールはの中心部がまだ点滅している。

ボールの中でポケモンが抵抗しているのだ。

 

 

 1回、2回とボールが揺れて3回目の揺れが……

 

 

「あっ………」

 

 

 揺れが終わる前にボールが開き赤い光線が漏れ出し中からポケモンが出て来た。ゲットに失敗したのだ。

 

 

「もう一回………あっ!? こらっ、逃げるな!?」

 

 

 カバンから新しいモンスターボールを取り出そうとしているとポケモンが逃げ出した。

慌てて2個目のモンスターボールを投げる………が、狙いが定まってなく外している。

その隙に一気に距離を取って逃げ出し、再び野生のポケモンとなってこの場から居なくなった。

 

 

「……………っ」

 

 

 俯き、項垂れた後ろ姿。後ろから見ているオレからでは表情が見えないが……。

 

 

「………っ……っ!」

 

 

おそらく、いや間違いなく悔しげな表情が浮かんでいるだろう。

 

 

「ニド~~」

 

 

 先ほど闘っていたニドリーナが近寄り体を擦り付ける。おそらく慰めているのだろう、心配そうな鳴き声で擦り寄っている。

そして俯いている彼女は肩を震わせて、やがて……、

 

 

「……ぅ……ぅぅ………うが~~~~~~っ!! また逃げられた~~~~~っ!!」

「ニドッ!?」

 

 

………感情を爆発させた。

 

 

「ああ、くっそ~~~!! これで5度目~~~~っ!? また逃げられた~~~~っ!!」

 

 

 癇癪を起こした子供みたいに地面に倒れて手足をバタバタ。

やりきれない気持ちをひたすらぶちまけている。仰向けになって見えた顔からはちょっと涙が滲んでいた。

 

 

「うう~~~~~~っ!! うが~~~~~~~っ!!」

「……………」

「ううう~~~~~っ!! うぅが~~~~~~っ!!」

「……………」

 

 

 あまり……というか全く女の子らしくない呻き声(叫び)。

流石にこれ以上ほうっておくわけにも行かず。

 

 

「ほれ、う~う~言ってないで体起こせって。服が汚れるぞ」

「う~だって~~~」

「どんまいどんまい。今日が初めてなんだから仕方ないって」

「う~~、けど~~これで5度目~~~うが~~~~っ!」

 

 

 なんかちょっとふて腐れてるみたいだ。未だ体を起こさずにバタバタ。

 

 

 この5度目というのは察しのとおりゲットに失敗した回数である。

彼女は『自分』でポケモンをゲットしたいということで経験者の助力を請わず、ひたすら野生のポケモンにアプローチを繰り返している。

と言っても流石にダメージを与えずにモンスターボールを投げてもゲットは難しいので、現在はニドリーナを貸している。

最初はポケモンを貸されることも渋っていたが、ノーダメージではゲットどころか投げたモンスターボールをかわされることもあり、今はニドリーナを使ってゲットしようと頑張っている。

最も未だゲットは出来ていない。おそらく初めてということもあり、どれくらいのダメージを与えればいいか加減がわからないのだろう。

HPバーなんてものはない。

それに彼女の方もこちらからの助言は求めていない。

だから口出しをせず後ろから黙って様子を伺っている。

 

 ちなみにニドリーナを選別して渡したのは彼女の要望ではなくこっちで決めた。

理由は状態異常の『どく』にならないためである。

『どく』になってしまったらわざわざ薬を使ったり、ポケモンセンターまで戻る羽目になるので手間がかかる。

防御力の高いゴローンでも『どく』になると面倒なため、無難などくタイプのニドリーナを貸した。

彼女もどくタイプということなのか満足気。

レベル的にも余裕があるおかげか、五戦目にしてもニドリーナにはまだ余裕があるようだ。

ほとんどの相手がどくタイプの攻撃なので受けるニドリーナには『こうかはいまひとつ』。

ポケモンの方にはなんの問題も無い。

それでもゲットが出来ないのは彼女に原因があるわけで。

 

 

「もう少し弱らせても良かったな。あと、一度ボールに入っても油断せずに次のボールの用意をしとくべきだったかな」

 

 

 なんて偉そうに上から目線で言っているが、弱らせた所を更にモンスターボールという追い打ちで『ひんし』では無く『もんぜつ』させる奴が言うセリフではない。

初心者の方がポケモンにやさしいモンスターボールの投げ方をしていることに内心ちょっと傷ついているシゲルだった。

 

 

「ぐぬぬ」

「ぐぬぬって言うな」

 

 

 体を起こしてガバッとニドリーナを抱きしめる。……癒しが欲しいのだろうか?

あたふたしているニドリーナには申し訳ないが、ふてくされてる彼女と話すにはこのままの方が良さそうだ。

 

 

「どうする。まだ一人で頑張ってみる? 無理ならオレが代わろうか?」

「………ヤダ。………アタシがゲットする」

 

 

 ニドリーナを抱いたまま倒れて、今度は体をゴロゴロと横に転がしている。

抱き枕を抱いてベッドで転がるように。哀れ、ニドリーナ。

 

 

「………けど」

「ん? どうした?」

「………もう暗くなっちゃったな」

「まぁ、そうだな」

 

 

 夕日は既に暮れて、道の街灯の光のみが辺りを照らしている。

良い子はお家に帰る時間だろう。

 

 

「………シゲルはそろそろ」

「気にするな。オレは大丈夫だ」

 

 

 顔を横に向けてこちらの顔色を窺うようにチラチラと横目で見てくる彼女に釘を刺しとく。

チラチラとこちらの顔を窺って言外にヘルプを出してるニドリーナはスル―。

 

 

「………けど」

「どくタイプのポケモンってのは夜行性が多いんだ。むしろ今まで出現しなかったポケモンが出てくるかもしれないぞ」

 

 

 付き合うぞ――と伝える。

せっかくイッシュから来てポケモンをゲットしようと頑張っているのだ。

それが報われるように手伝うのが先輩トレーナーの務めだろう。

 

 

 意識して余裕そうな表情を――疲れを感じさせないよう――作って、彼女の手を取って立たせる。

ついでにニドリーナに絡んでいる腕を解いて解放させる。

ニドリーナのなつき度が上がった。

 

 

「ほら、行こうぜ。ニドリーナの体力もまだ大丈夫だし、モンスターボールのストックもまだあるだろ」

「………アリガトな、シゲル」

「どういたしまして」

 

 

 テクテク、ガサガサ、ザッザッザッと再び草むらを歩く二人……と一匹。

町を出た時と違って騒がしくなく、静かな雰囲気で一緒に歩いてポケモンを探す。

けれども町を出た時よりも親しくなった二人……と一匹だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「今日はサンキュな、シゲル! スゲーうれしいよ!!」

「………どういたしまして。せっかくカントーでゲット出来たんだから大切にしてやれよ」

「モチッ!」

 

 

 とっくに日が暮れて……日が昇ってやや肌寒い早朝。

結局、あれから何度目かの……何十度目かの失敗があり、ようやく彼女の要望通りに見事どくタイプのポケモンをゲットした。

失敗しても、あきらめずに何度もチャレンジした甲斐もあり喜びもひとしおだろう。

ゲットした時は感極まって抱きつかれたぐらいだ。

 

 対してここまで付き合わされるとは露ほどにも思っていなかったポケモンとトレーナー。

付き合うぞ、と言外で表現したのは何時の事やら。

疲労困憊といった具合で疲れが溜まって重く感じる体を引き摺りながら戻ってきた。

ポケモンの方はとっくにボールの中で爆睡しているだろう

 

 

「よ~し、これでアタシもポケモントレーナーだっ! へへっ、イッシュに帰ったらパパにも自慢してやるんだ!」

 

 

 徹夜と歓喜でテンションMAXなのだろう。

コイツすげぇ、とテンションMINなシゲルが思わず感心する。

 

 

「……それより、早く船に戻った方が良いんじゃないのか。友人も心配してるだろうし」

「………あっ!? そういえば黙って出てきたんだった!」

「そっちはジョーイさんに伝えといたから大丈夫だと思うぞ。 流石にここまで遅くなるとは向こうも思ってないだろうけど」

 

 

 トレーナーや観光客が町に入った時に訪れるのは宿泊施設や食事が取れるポケモンセンターだ。

もしくは交番か、どっちにしろ迷子になった友人を捜索するときポケモンセンターに確認を取るだろう。

 

 

「そっか。……サンキュな、シゲル。何から何まで世話になりっぱなしで」

「ああ、良いよ良いよ。何度も言ってるけど気にすんな。………それじゃ、オレはこれで」

「………ここで別れるのはサッパリし過ぎじゃないか……まぁ、アタシも戻って寝たいけどさ」

 

 

 なんかブツブツ言ってるけど、聞こえない。それよりも早く寝たいのだ。

 

 

「………まぁ、いいか。それじゃなシゲル。もしイッシュに来る時はアタシのとこ来いよ。今度はアタシが色々案内してやるからよ」

「ああ、そうだな。その時は好意に甘える。…………え~と………………アレ?」

「?………どうした」

「………オレ………名前教えられて無いような」

「へ?」

「いや、そうだ……間違いない。オレは名乗った憶えがあるけど、名前教えられた覚えは無い」

 

 

 なぜ今まで気付かなかった――――と今まで軽口を叩き合ってた気さくな友人を改めて思う。

確か町を出て、それから「お前の名前は?」と聞かれたから答えたが、こっちは全く聞いていない。

 

 

「………あ~~、そういえばあん時は誤魔化そうと適当に流してたな。ワリィ」

「そんな気さくに言われても」

「いや、マジでゴメンって。カントーじゃ反応微妙だったけど、名前知っててサインとか求められたらメンドウだと思ってさ」

「………もしかして有名人」

「ん~~………ちょい微妙かな。イッシュのアタシの地元じゃ名が知れてるけど、コッチじゃ来たばっかだしさ。ちょっと待ってな」

 

 

 そう言って、ポケットから髪留めを取り出し、後ろを向いて髪を弄り始める。

前髪だろうか、髪を立てて髪留めで括り、手ぐしで髪型を整え……いや、ガシガシって感じでワイルドに全体も立てる。

そしてポケットから手鏡を取り出し確認。

こう言ってはなんだが、意外だ。女の子らしい所もあるもんだ。

髪の整え方は男らしかったが。

 

 

「よしっ、どうだっ!」

 

 

 そう言ってくるりと体をこちらに向ける。

当然ながら髪型は先ほどと違う。

おでこをむき出しにして、全体的に外はねした髪型。

 

 

「……………………へ?」

 

 

 硬直するシゲル。

 

 

「やっぱり反応が微妙………。むぅ、カントーじゃアタシらの知名度はまだまだかぁ」

「…………………あれ?」

 

 

 硬直しているシゲル。

 

 

「まぁ、いいか。アタシは『ホミカ』! イッシュのタチワキシティから来たバンドチームのリーダーだ!!」

「…………………なぜ?」

 

 

 硬直が解けないシゲル。

 

 

「それじゃ、アタシは帰るよ。実は明日他の町でゲリラライブするから急ぐんだ。今日はホント、サンキューなシゲル!」

「…………………どういたしまして」

「イッシュに来たらアタシん所に来いよ! 絶対だぞ! それじゃぁな!」

 

 

 爽やかな笑みを向け、手を上げてバイバイ。

颯爽と港に走って行くホミカに力無く手を振るシゲル。

 

 こうして慌ただしい一日………を通り越して二日目の早朝にまで時間がかかった、遠い地から来た女の子との出会いが終わった。ひとまず。

 

 

「…………………Why?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「なに朝帰りなんかしてんのよ!? アタシがどれだけ心配したと思ってんのよ、バカッ!!」

「理不尽っ!?」

 

 

 ポケモンセンターに戻ると、お帰り(メガトンパンチ)が待っていました。

 

 

 

 

◆◆◆登場人物説明◆◆◆

 

 

 

 

『ホミカ』

 

 

 ポケットモンスターブラック2・ホワイト2にて初登場したどくタイプを使うジムリーダー。

アニメではイッシュ地方8つ目のバッジを持つジムリーダーだが、ゲームでは2つ目のバッジを持つジムリーダー。

アニメ・ゲームともバンドチーム「ドガース」のリーダーであり、ボーカルとベース担当らしい。

ゲームのBGMで有一、登場キャラクター自身の声付きBGMが流れるというスタッフに愛されているらしいキャラクター。

声付きBGMは他にもあるが、登場キャラクター自身が歌っているかのようなBGMは今のところホミカだけである。

(人気モデル設定のカミツレにすら無い)

 

余談だが父親はポケウッドに出演しているリオルマン。

呼び方は「パパ」。

 

 

 

 




はい。というわけでホミカちゃんでした。
カスミよりヒロインっぽいって? ………気のせいですよ?

今回はアニメ設定、ホミカのドガースはカントー遠征した時にゲットしたという会話から作ってみました。
アニメではカントーに行ったことがあるらしいですね。

それと少しイッシュの設定も書いてみました。
作者の妄想ですが、ゲーム・アニメとも発見されるポケモンや、ナナカマド博士の設定からこうではないかと思い、こんな世界観にしました。

まぁ、作者の脳内設定なのでそこまで掘り下げなくてもいいですかね。

それでは更新速度は相変わらず期待出来ませんが次回もよろしくお願いします。ノシ

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