なんとかマサラ人   作:コックリ

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 こんにちは、こんばんは、初めまして。
 なんてテンプレなあいさつをかますほどお久しぶりな投稿ですいません…。

 とりあえず、ちゃんと生存していますよ! なんとか終わりまで書き続けて見せる!
 なんて活きこんでるんならもっと早く書けとか言われそうですけど、すいません。けっこうギリギリです。主に更新速度が。

 言いわけをするなら今回、内容をほとんどオリジナルにしてみました。
 原作通りを書いていくうちに「なんか納得出来ないなぁ」と自分で書いたssに納得が出来ず、いっそオリジナルにしよう、と。その結果がこの更新速度だよ…。

 まぁ相変わらずのはっちゃけたssですが暇つぶしにでもどうぞ。




ノーマルマサラ人 18話

 

 

 

 

 

「そ……そんな、ウツドンは水タイプに強いはずなのに」

 

 

 ゲームに没頭しているシゲルから数メートル離れたフィールド。

シミュレーション通りの相手のポケモンを見て余裕ぶったのも束の間。ハナダジム代表のカスミのスターミーの前にあっけなく惨敗。結果を目にしたジュンの胸中は驚愕と衝撃であった。

 

 

「どう! シミュレーションはシミュレーション、アタシはアタシ! わかった!」

 

 

 対面にいるカスミの声に意識が向く。

 シミュレーションはシミュレーション…つまり実戦的ではないと言っているのだろうか。なら、自分やこのゼミに居る生徒が学ぶことは意味があるのだろうか。ジュンの胸中に疑問が浮かび上がった。

 

 

 

「……だからアナタは駄目なのよ!」

 

 

 

 いきなり後ろから聞こえてきた女性の声に体が跳ね上がる。聞き間違えるはずがないほどジュンはこの女性を日ごろ常に意識しているのだから。

 

 

「セイヨさん!?」

 

 

 後ろを振り向くと、数人の男子生徒と、その中心に毅然と立ち、こちらに視線を向けている一人の女性・ユウトウセイヨの姿があった。

 

 

「……アンタがセイヨ、ね」

 

 

 またもや後ろから女性の声に体が跳ね上がる。

 さきほどのセイヨのような凛とした声ではなく、腹から絞り出すような低い声に寒気を感じた。

 対面に立っていたセイヨには聞こえていなかったようだが、間に居るジュンにはしっかりと聞こえた。……聞きたくはなかったが。

 

 

「彼女がハナダジムの末妹とはいえ、ジムリーダーの代理を務めることもある。まして、旅に出て持っている水ポケモンもそれだけ成長しているわ」

 

 そう言いながら近づいてくる。平素ならジュンの内心は大いに喜んでいただろう。けれども、見つめる瞳は冷めたものを見る目であり、こんな目で自分が見つめられることは初めてだった。

 

「…ジュン君。私はね、クラスメイトとは良きライバルでいたいの」

 

 瞳を閉じて、感慨深く言葉を発するセイヨに、ジュンは心を奪われた。けれども再び開かれた瞳にはやはり冷めた目をしていて…。

 

「互いに切磋琢磨し合って、共に強くなる。クラスメイトで在り、ライバルである、そんな関係でいたいの。――けれどもアナタはなに?」

「…えっ?」

「アナタはいつも周りの友達から愛の鞭を受けているのに、いつまで経っても勉強不足のままで、いつまで経っても強くなれていない」

 

 その言葉にはなにも言えなかった。確かにずっと愛の鞭を受けていたし、分からない問題――否、答えが分かっていてもこれ以上厳しくなるのがいやだから分からない振りをしていたし、先ほどのカスミとのバトルでも相性が良いはずのポケモンなのに惨敗。勉強不足、強くない、そんなセリフを言われてもなにも言い返せなかった。

 

「いつまで経っても強くなれないのなら、いつまで経ってもそのままなら――このゼミから、私の前から!」

「………」

「―――消えて」

 

 目の前でセイヨが体をひり返すのを見ながら、絶望的な言葉を掛けられ、目の前が真っ暗になっていく。クラスメイトに、それも自分が想っていた少女から言われた言葉だからこそ、なおさらジュンの心が傷つく。

 そんなジュンを見向きもせずに去っていくセイヨにただ、縋るような視線を送ることしか出来なかった。

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

 これで話は終わり、と言わんばかりの空気をぶち壊すような鋭い叫び声に、セイヨが、誰もが視線を向けた。

 視線の先には仁王立ちをし、怒気を隠さんばかりの表情をセイヨに向ける少女。先ほどジュンをポケモンバトルで完勝したカスミがにらみつけていた。

 

 

「さっきから黙って聞いてれば、いい! 『弱い』男の子を守って上げるのが――本当の女の子よ!!」

 

『―――――漢らしい!?』

 

 潔く言い切ったカスミのセリフに取り巻きの男子生徒の誰もがそう思った。心なしかカスミの背中に津波が起きたかのような心象風景が見えるほどの錯覚に陥る。

 …弱い男の子、と追い打ちを掛けられ更に傷ついているジュンには誰も気づいてない。

 

 

「男の子にひどいことばっかり言って…。一人の女の子としてアナタが許せない!」

(……あなたも言ってるんですけどね)

 

 そんなジュンの心境などお構いなしに二人の少女はにらみ合いを続ける。互いの主張を譲らないかのように、ここで引いては女が廃る、と言わんばかりの気迫に取り巻きの男子生徒も固唾を飲んで見守る。

 

「あら、私は何も間違ったことは言ってませんわよ」

「間違ってないわよ! けど、言って良いことと悪いことがあるじゃない!」

「直接言わなければいつまで経ってもダメなままで現状に甘えて成長しないわ」

「確かにダメなままだけど、そこは心の広さを見せて長い目でダメな彼を見なさいよ!」

「見たわよ! 何度もダメな彼が愛の鞭を受けているところを! けどいつまで経っても成長しない弱いままなのよ!」

「だったらアナタが弱い彼を強くしなさいよ!」

「弱いままで、いつまで経っても成長しない生徒と一緒に勉強しても学ぶことなんてないわ! そんな彼と付き合うなんて時間の無駄よ!」

「それでも一緒に勉強して上げるのが女の子が見せるやさしさじゃないのよ! ああいった男の子はね、こっちからアクション起こさないと何もしないウジウジ・ジメジメとした奴になるんだから!」

「既にそうなってるのよ!」

「だったらなおさら強気でしごいて、矯正させるぐらいのつもりで一緒に勉強してあげなさいよ!」

「だから、それが時間の無駄だって言ってるのよ!」

 

 

『―――もうやめてあげて!?』

 

 

 固唾を飲んで女性二人の口論を見守っていた取り巻きの男子生徒全員が思わず同情してしまう会話内容に心を一つにした。既にジュンは泣きが入っている状態である。

 ジュンの成績を知っている彼らは立場的にセイヨの味方だし、口論が始まる前はセイヨの考えに賛同していたのだが……。 流石にこの口論内容の酷さを本人が直に聞かされるのを見ると思わずジュンに同情してしまう。 ここにいる男子生徒同様にジュンがセイヨを慕っていると知っているからなおさら。

 自分たちが本人から直接こんな話を聞かされたら、と思うと心情的にジュンを慰めたくなる。

 かといって、このヒートアップしている二人の女性の間に入る勇気なんてあるはずもなく。

 

 

『―――もうやめてあげて…』

 

 

 とりあえず、この一件が終わったら今後やさしく接しようと思う彼らであった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「いいわ! こうなったらポケモンバトルで白黒着けようじゃないの!!」

「望むところ! このポケモンゼミ初級クラスの一番星のユウトウセイヨがどれほどの実力か思い知らせて上げるわ!」

 

 もはや当事者であるジュンをそっちのけで勝手にヒートアップしている二人に誰も口を挟む勇気がないため、成るように成れと言わんばかりに誰もが静観している。ぶっちゃけ、なんでも良いから早く終わって欲しい。

 

「末っ子だからってハナダジムをなめないでよね! がんばって、スターミー!」

 

 先ほどのウツドンの戦闘から出っぱなしであったスターミーをそのままフィールドで戦闘をさせるカスミ。ウツドンとの戦闘では『みずでっぽう』一発で決着を付けたのだからダメージを受けていない。なによりカスミの手持ちのポケモンの中では一番強いポケモンでもある。

 対し、セイヨもフィールドに立ち、そばにある棚からモンスターボールを一つ手に取る。

 

「――知っていてカスミさん。ポケモンは相性が全てじゃないのよ」

「なによ、もう負けた時の言いわけ。言っとくけどさっきのバトルじゃ相性の悪いウツドン相手に余裕だったんだからね」

 

 余裕とか言ってやるなよ、とツッコミを入れたい男子生徒一同。

 

「そう、いくら相性が良くても負けることはある。ポケモンバトルで必要なのは『レベル』よ。―――行きなさい『ゴローン』!!」

「―――――!?」

 

 モンスターボールをバトルフィールドに投げ、閃光と共に姿を現したのは『ゴローン』。

 セイヨが選択したポケモンは、『いわ』・『じめん』タイプのイシツブテの進化形であるゴローン。進化形であるためイシツブテよりも能力は高く、主に物理攻撃を得意とするポケモンである。

 そしてタイプを見れば当然水タイプに『弱い』。

 

「……ゴローン…なんて…」

「ふふふ、見せて上げるわ。相性が悪くてもレベル次第で勝てるということを!」

「……ゴローン……ゴローン…」

「先にポケモンを出したのはあなたなのだから、先手をどうぞ」

「……ゴローン…イシツブテの…進化形…」

「さぁ、早く始めなさい!」

「―――アンタ馬鹿じゃないの!!」

 

 

 ―――なんですって?

 

 

「……どういう意味かしら。この私に対して…『馬鹿』とは…」

「そのまま意味よ! アンタってバッカじゃないの!!」

「!!―――なんですって! この私に対して馬鹿ですって!?」

 

 

 ポケモンバトルが始まっていないにも関わらず、いきなりカスミのヒステリーと暴言。

 暴言を喰らった本人であるセイヨが怒るのは当然とも言える。

 

 ……が、

 

「アンタ死にたいの!? 本気で危ないのよ!」

「……はぁ?」

「死ぬかもしれないのよ!? アンタも、アタシも、そこに居る生徒たちも!!」

「………(意味がわからない)」

 

 なんか意味もわからず心配している、と誰もが思っている。男子生徒たちもカスミが何を言わんとしているかが理解出来ず首をかしげるばかり。無視してポケモンバトルを始めようかなぁと思ったりもしていたが相手のあまりの狼狽っぷりにそれも躊躇わられた。

 

「ちょっとそこで待ってなさい! アイツ呼んでくるから!」

「……はぁ」

 

 状況が一向に理解出来ずに生返事。

「シゲル~~!」と呼びながら、シミュレーションをしている男の子に向かうのを黙って見ていることしか出来ない一向だった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「シゲル! アンタなにやって………なにシミュレーションで遊んでんのよアンタは!!」

「うお!? …びっくりするだろカスミ。いきなり大声出すなよ」

「アタシがポケモンバトルやったり、かよわい男の子を守るために舌戦したりしてる間、アンタなにやってんのよ!?」

「待て!? 拳を握り締めるなカスミ!? 俺は見ての通りシミュレーションで勉強してたんだ! なにもおかしなことはしてない!」

「少しはアタシを応援したり労ったりしなさいよ!」

「応援したり労ったりって……。なに? 負けたのポケモンバトル?」

「負けてないわよ! 余裕で勝ったわよ! アタシの完勝だったわよ! それで今は腹立つくらいに男を尻に敷いてそうな女とポケモンバトルを………そうよ! そいつがヤバいのよ!?」

「……テンション高いなぁ。……どったの?」

「そいつ『ゴローン』を出したのよ!?」

「?……別に良いじゃないか。誰がどのポケモン出そうとそいつの自由じゃないか」

「アタシの『スターミー』相手に『ゴローン』出して勝とうとしてるのよ!!」

「……なん……だと!?…」

 

 

◇◇◇

 

 

「死ぬわよ! 冗談抜きで死ぬかもしれないのよ!」

「するなよ! 絶対に『じばく』するなよ!」

 

(………増えた)

 

 シミュレーションをしていた男の子を引き連れてきた後はようやくバトルかと思ったのだが。

 なぜかそのまま一緒になって『ゴローン』を糾弾している。相変わらず状況が全く理解できない一同。ここまで相手が必死なのに意味が全く伝わらないのが、なぜか少し申し訳ない気分になってくる。

 

「こんな機械が多いところで『じばく』したら大惨事になるのがわからないの!?」

「するなよ! 絶対に『じばく』するなよ! フリじゃないからな!!」

 

「………『じばく』しませんから、もう始めていいかしら。『じばく』しませんから……」

 

 大事なことなので2回言ったそうです。大事な事なので。

 

 

◇◇◇

 

 

「スターミー!! 『みずでっぽう』!! 油断しないで常に距離を保って!!」

「良いぞスターミ―!! 攻撃後は特に相手の動きに鋭敏になるんだ!! 油断するともらうぞ!!」

「ブイ!! ブイ!! ブイーー!!」

 

 紆余曲折あって、ようやくポケモンバトルが始まったのだが…、

 

「…………強い」

 

 現在、フィールドではスターミーが優勢であった。

 

「スターミー!! 続けて『みずでっぽう』!!」

「距離を縮められてるぞ! 間合いを取るんだ!!」

「ブイ! ブイ!!」

 

 ポケモンのレベルは間違いなく『ゴローン』が上である。その証拠に何度か『スターミー』からの攻撃をもらっても『ゴローン』は闘えている。同レベルの『ゴローン』ならば既に倒れているはずのダメージを耐えきっているいるのだ。

 シゲルはそれを見て「…パネェ」と呆然としていたが、事実、まだ『ゴローン』は闘える。

 セイヨもレベル差による力押しで『ゴローン』で『スターミー』を圧倒出来る、攻撃を耐えきれると踏んで選出したのだ。

 けれども、現在フィールドによる試合展開は全く予測出来なかった。

 

 

「ゴローン! 『たいあたり』!!」

「スターミー、飛んで!!」

 

 

 攻撃を跳躍して回避する『スターミー』。これも何度目かの攻防のやりとり。

 

 

「スターミー、『みずでっぽう』!! 水圧で距離を取るのよ!!」

 

 

 『ゴローン』に向かって『みずでっぽう』の攻撃を行いながら、自身は発射した水圧で空中で距離を離す。文字通りの「ヒット&アウェイ」を見事に使いこなす様はセイヨだけでなく男子生徒ですら舌を巻く光景だった。

 なにより、この闘い方は近距離で物理攻撃を得意とする、所謂『インファイト』の『ゴローン』が一番苦手とする。

 

 

「ゴローン!! 『たいあたり』!!」

「スターミー! 『かたくなる』!!」

 

 

 どうしても捌ききれない攻撃は回避という選択肢をすぐに放棄し自身の『ぼうぎょ』を底上げしてダメージを抑え、すぐさま距離を取る。これも何度目かの光景であった。

 

 

(っ! ……状況を挽回出来ない!)

 

 

 セイヨはカスミの戦術に翻弄されていた。

 

 

◇◇◇

 

 

「スターミー!! 『みずでっぽう』!!」

(何としてでも! 『じばく』される前に殺らなきゃ!!)―――カスミの心の声。

 

 思い出されるのは、数日前の溺死(しかけた)事件。

 こちらに相性の悪いポケモン相手に楽勝だと思ったら、あのザマだ。

 試合に負けるわ、水難に合うわ、挙句に姉に笑われるわ。

 あんなトラウマになりそうな思いはもうしたく無い、とカスミは一切の油断と妥協を捨て、この試合に挑んでいる。全ては自身のプライドと体裁のために。

 

 

 

「良いぞ、スターミー!! 相手の攻撃の予備動作をよく見るんだ!!」

(何としてでも! 『じばく』される前に逃げなければ!!)―――シゲルの心の声。

 

 思い出されるのは、数日前の津波(を引き起こした)事件。

 フィールドがプールなんて試合前には思いもしなかったため、あの試合では一名の被害者を見取って二次被害の恐ろしさを改めて知ったが…。こうして自分に襲いかかる危険が目の前にあると思うと、今すぐ逃げ出したくなる。

 とは言え前回の事件で、それなりにカスミに悪い事をしたなぁ、と思うこともありギリギリまで応援をしようと逃げずにいる。

 けれども、既にカバンから軍手を取り出し、着用。窓を背にし、窓の外がプールであることも確認。そして保険で『イーブイ』をボールから出す。

 相手が『じばく』しようものなら、すぐさま体を180°回転。アクション映画よろしく両腕をクロスして窓をぶち破って脱出。手を切らないように軍手も着用。意味があるかどうか分からないが、保険で『イーブイ』の特性『きけんよち』を頼りに逃げる準備は完璧である。

 あんな悲惨な目に合いたくない、とシゲルは一切の油断と妥協を捨て、応援をしている。全ては自身の体と生存のために。

 

 

◇◇◇

 

 

 そんなそれぞれの思い(打算)なんぞ、相手が知る由もなく、試合は佳境に入る。

 

「スターミー! 『かたくなる』!!」

「っ! ……『ゴローン』! 力づくで突破なさい! 『いわおとし』!!」

「今よ! 『じこさいせい』!!」

「―――っ!!」

 

 

 今まで回避に専念し、捌けないものは『かたくなる』で防御力の底上げを図っていたが、この試合で一度も『じこさいせい』を使ったことはなかった。

 というのもこれもカスミの作戦であった。

 

 序盤に相手に『じこさいせい』を見せると相手はそれを疎ましく思い、大技で一気に攻めてくる可能性が高く、下手をすれば一撃でスターミーを落とされる危険もある。

 そこで相手がこちらの実力を測るために小手調べをしている時に、こちらは回避の間に何度か補助技で自身の強化をしておく。

 試合が終盤、相手が焦れて勝負を掛けようとしたときに『じこさいせい』でHPの回復。

 『かたくなる』でダメージを抑えられたとはいえ、何度か被ダメージを受けていたからこそ勝負を仕掛けたのに、ここで回復をされれば相手は浮足出す。加えて防御力が上がっている状態から回復すればスターミーの短所であるHPの低さを補える。今までのバトルで本命であるこの技、『じこさいせい』を使うタイミングを常に測っていた。

 また相手にこちらの考えを悟らせいないように『みずでっぽう』で相手の気を引かせていた。

 レベル差があるとはいえ、弱点の水タイプを貰い続けることは相手にとって看過出来ない。故に何度かちらつかせれば相手は水タイプの攻撃技のみしか気が回らないだろう。

 

 

 相手はレベル差による短期決戦を挑むだろう、とカスミは踏んでいた。

 なぜならば、つい先日に相性の悪いポケモンと文字通り短期決戦を行ったのだから。

 「ほとんどの場合、相性の悪いポケモンが補助技なしで長期戦を挑む訳がない」、と隣にいる少年もいつか言っていた。それ故にこちらはあえて長期戦の構えをとっていた。

 相手が『じばく』しないと言ったとはいえ、いざとなったらやりかねないかもしれない、と危惧もしていたが確実に勝利を得るためにあえて危険である闘い方を選んだ。

 

 

 (―――考え方がだんだんコイツに似てきたわね。アタシ)

 

 

 良いか悪いかはともかく……。

 それはともかく、バトルは終わりを迎える。

 

 ゴローンの一撃をスターミーが正面から『みずでっぽう』で迎え撃つ。

 『みずでっぽう』の水圧で押され、一気に近づこうとしたゴローンを鈍らせる。しかし苦悶の表情を浮かべながらもそのまま攻撃体勢に移行、おそらく渾身の一撃であろう『たいあたり』をスターミーにぶつけた。

 

 攻撃を喰らい吹き飛ばされるスターミー。だが、『かたくなる』の底上げのおかげだろう。すぐさま体勢を整え待機する。倒れる様子はない。

 対し、ゴローンは追撃をせず、―――否、出来ず倒れ伏す。

 

 ―――決着がついた。

 

 

「―――私の負け…ね」

 

 悔しさも悲しさも感じさせず、自分に言い聞かせるようなセイヨの声が試合を締めくくった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「セイヨさん、僕、ゼミを退学します」

「…そう、ゼミをやめるんだ」

「うん。…さっきのポケモンバトルを見て思ったんだ。ゼミで習う事だけがポケモンバトルの全てじゃないって。だから、僕は家に戻って最初の一匹からやりなおしてみたいんだ」

「―――私も同じ気持ち。ゼミだけではわからないこともあるってわかったわ。けど私はゼミに残ってもう少し自分を見直してみたいの」

「……あの、それで。……僕、セイヨさんの写真を持っているんですけど、これからも持っていて良いですか? ゼミに居た事を忘れないように……」

「……ジュン君。私も持ってるの、クラスメイト全員の写真を」

「―――え?」

「クラスメイトで共に学んだ友人を忘れないようにこれかも大事に取っておくわ。この写真」

「……セイヨさん」

「いつか、また会いましょう。友人として、良きライバルとして」

「ハイ!!」

 

 

 夕焼けが二人の影を延ばし、影が重なっている。

 そんな中、二人は約束をする。いつかまた会おう、と。

 今は離れるけども、いつか交わるときが来ると、二人の心も重なっていた。

 

 

 

 

 

 そんな中、もう一つの二人組は、

 

                 ・・  

 (……盗撮した写真とクラスメイト全員の写真だから、実はロマンも愛も欠片も無いという)

 (……シッ! 言っちゃダメよ、良い空気ぶち壊すから)

 

 

 ……終われ。  

 

 

 

 

 

◆◆◆登場人物紹介◆◆◆

 

 

 

◆ジュン

 

 

 ポケモンゼミの生徒であり、実は盗撮の疑いのある人物。

 アニメでサトシたちに見せた写真ではマジでセイヨのみの後ろ姿、しかも全身を映しているという。トオル(カメラマン小僧)に匹敵しそうなテクニックを持っていそうである。

 アニメでは故郷に帰ってやり直すということだが、当然、その後の動向は不明。

 彼は今なにをしているのか。

 

 

 

◆セイヨ

 

 

 ポケモンゼミの生徒で、ゼミの基準ではバッジ3つ分の実力があるそうな。

 このssでは「露骨な尺伸ばしかなぁ」と思い、触れていなかったが、

「そう、天下に名高き名門予備校ポケモンゼミ初級クラスの一番星、銀河の果てのそのまた果てに光り輝くアンドロメダかと人は呼ぶ、しかして、その実態は、ユウトウ・セイヨ!」

 というロケット団ですら「自分たちよりも壮大」と言わせるほどの前向上を持っている。

 当時のスタッフもすごいことを考えているのだと思ってしまう。ちなみに前向上中は背景が宇宙であった。

 

 




 
 相変わらず文章の書き方が安定していなくて申し訳ありません。
 なんか謝ってばっかですけど…。

 色々試して、読みやすいと思ったらそれにしますが、どうにもイマイチ感じが掴めないというかしっくりこないというか。

 では、相変わらず更新速度は期待できませんが次回もよろしくお願いします。ノシ

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