WarLines 日本皇国海軍士官奮闘録   作:佐藤五十六

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閑話 バレンタイン・ウォーズ

「今日はバレンタインだな?」

「ああ、そうでしたね。

ろくな思い出がないので、忘れてました」

二階堂少佐の言葉に、佐竹中尉が返す。

「ろくな思い出がない?

じゃあ、どんな思いでならあるのか、話してみてほしい」

二階堂少佐からの頼みで、どんなことがあったのかを、佐竹中尉は思い出していた。

「そうですか。

そうですねえ、あれは国防大学校3年の頃でしたか………」

 

ある年の2月14日……

「今日、集まってもらったのは、他でもない。

我が学年のなかに、我々の血の盟約に背いた裏切り者がいる。

諸君、今日は何の日だ?」

「「バレンタインデー(血の盟約の日)である」」

「うむ、その通りだ。

ただでさえ、この学校は女子が少ない。

我々に出会いがないのだ。

だが、ある学生、仮にSとしておくが、彼はチョコを大量に貰ったらしい。

これは、非常に羨ましいし、妬ましい。

よって、直ちに彼を襲撃する。

作戦名は"捜索(オペレーション)と殺戮(・サーチアンド)作戦(デストロイ)"とする。

諸君らは、直ちに準備、実行にかかれ」

「「了解」」

 

2月14日午前8時

国防大学校本部庁舎応接室

「国防大学校3年、佐竹紀一入ります」

「うむ、楽にしてくれ」

国防大学校校長に呼び出された若かりし日の佐竹中尉は、そのそばにある包みを見て、すべてを悟った。

ソファに座る校長の後ろには、包装紙が山を作っていた。

「非常に困ったことになりました。

毎年、毎年、この時期になると、この学校の男子連中は、殺気だち始めます。

何故か、分かりますよね?」

ソファに座ったまま、佐竹中尉に目線を向ける。

「恐らくはですが。

ただ、これは貰えない僻みと言うやつですので、まともに相手にするだけ無駄では?」

「その意見は尤も。

だが、そんな意見がまかり通るほど彼らも大人じゃないと言うことだ」

過去には、バレンタインチョコを貰ったらしい教官や同級生を襲撃する事件が続発していた。

これがこの学校の伝統なのかもしれない。

「ほら、この部屋の周りには、もうネズミが嗅ぎ付けている。

今年も血で血を拭う戦争が勃発するでしょうな」

校長の目線の先につられて、窓の外を見ると、レーザーを搭載したドローンが1機、国防大学校のシンボルである時計台の上に偵察隊(リーコン)が3人、その他にもいるのだろう。

「まさか、盗聴!?

しかもあれは、情報軍人教育用の装備で、私的には使えない筈じゃあ……」

「この部屋に関しては、海軍情報部の要員が、検索(クリーニング)したので、安全と踏んでいたんですがね。

彼らの執念、恐るべしというべきでしょうかね。

仕方ありません。

申し訳ありませんが、このメモを見てください。

見たら、こちらに渡してください。

適切に処理します」

校長の手渡したメモには、チョコの総数と送り主が書かれていた。

日本以外にも、台湾やアメリカ人がいるのは、ご愛敬と言うべきか。

「これらに関しては、一応、こちらで預かり、随時返却します」

「分かりました」

校長の言葉に頷いた佐竹中尉は、メモを返却した。

メモを受け取った校長は、そのまま火を着けて、メモ自体を灰にした。

「用件はこれで終わりです。

ですが、今日1日、強く生きてください」

校長の言葉の意味が理解できなかった佐竹中尉は、顔にハテナマークを浮かべたまま頷くと、部屋を退出していった。

 

『いたぞ。

奴だ。

怯むなあ、撃て、撃て』

どこからか、調達してきたのだろう電動ガンを片手に、男たちが陣形を組む。

獲物を追い詰める狩人のような手際で、敵を追い詰めた。

国防大学校の敷地内の至るところにて、怒号と電動ガンの駆動音が響く。

「この声は、3班、真下か?

詳しい状況を報告せよ」

この戦争には、学年に関係なく3個大隊編成の連隊規模の1600名が参戦していた。

そして、ここは連隊指揮所に指定された部屋である。

『こちら、3班。

奴を路地裏に、追い詰めた。

…うわ、やめろぉ…ギャアア』

10人で1班の討伐隊が組まれ、既に70隊以上が出動している。

そのうちの半数以上が撃退されたり、全滅に追い込まれている。

「くそっ、3班がやられた。

最終の報告地点は、ポイント・アルファ付近だ。

周辺の各班は、直ちに急行せよ」

 

本部庁舎を出た佐竹中尉は、襲撃者と接敵していた。

「何だ、お前ら?」

佐竹中尉の目には、電動ガンを持ったこの奇怪な連中が映ってはいた。

「この恨み晴らさじておくべきか」

そう言うなり、この奇怪な連中は電動ガンを佐竹中尉に向けた。

上海での一件以来、佐竹中尉はこのようなことには過敏になっていた。

ついと言うべきか、佐竹中尉から殺気が漏れる。

一対多の戦闘は、佐竹中尉に一日の長があった。

1人目と佐竹中尉が接触したとき、その右手は折られていた。

と同時に、首筋に打撃を加えられ、すんなりと落ちた。

1人目がダウンすると、2人目の番だ。

声をあげる間もなく、2人目は首を捻られた。

3人目は腹に一撃を加えられ、2人の仲間と同じように、気絶させられた。

4人目は、自らが持っていた電動ガンで殴られ、あっけなく気絶。

5人目以降は、佐竹中尉が4人目から奪った電動ガンで撃ったBB弾によって、撃退された。

気絶した襲撃者の装備をすべて回収して、寮に戻ろうとした佐竹中尉は立て続けに襲撃を受けた。

スタンガンなどの強奪した装備によって、撃退はできたものの、佐竹中尉は満身創痍の状態だった。

「おい、根拠地はどこだ?」

スタンガンで行動不能になっている1人に、武器をちらつかせながら聞く。

上海での一件以来、今のときのように佐竹中尉の暗黒面、通称:ブラック佐竹が現れることがある。

「生きて虜囚の辱しめは受けぬ。

くっ、殺せ」

オタクではない佐竹中尉に、そのネタは通用しない。

殺すつもりで、拳を握り、顔面に叩きつけた。

「いつの時代の軍隊だ?

阿呆」

さらに顔を殴り、腹を蹴る。

「捕虜虐待反対。

捕虜への虐待禁止は、ジュネーブ協定にも明記されている。

明確な戦争犯罪だ」

顔や腹に暴行を加えただけで、男は前言を翻した。

「ユー・ダイ」

何故か片言の英語で、佐竹中尉は男の運命を宣告した。

そこで、殴られた男は気絶した。

聞き出すための捕虜なら、まだまだたくさんいるとばかりに、周辺を物色する。

いい感じに、この場にいる全員が怯えている。

「次はお前だ」

無情な宣告だった。

対象となった男は、すべてをペラペラとしゃべった。

「分かった。

ありがとう。

もうおねんねの時間だぜ」

男を気絶させた佐竹中尉は、目的地に向かっていった。

 

「嘘だろ、おい」

連隊指揮所に置かれた戦況図の状況を見ると、状況はかなり悪化していた。

「送り出した150隊のうち、142隊が行動不能?

残りに関しても、奴を撃退するのは不可能だ」

連隊指揮所は、絶望のなかにあった。

「奴は、どこだ?」

それでも、希望を捨てない奴はいた。

電動ガンを片手に持ち、何かあれば、すぐに対処できるだろう体勢で待機している。

「奴って言うのは、俺のことかい?」

自分の背後から、声が聞こえた。

ゆっくり振り返ると、奴と呼んでいた佐竹中尉がいた。

「ユー・ダイ」

電動ガンの駆動音が響いて、それから目覚めるまでの記憶が彼にはない。

結果として、死者こそでなかったが、負傷者が1415名を越えたこの騒動は、多数の退校者を出すこととなったとか、ならなかったとか。

 

「とんでもないアホの話だ」

話を聞いていた二階堂少佐は怒り出すが、ストレスの発散がてら大暴れした佐竹中尉は、恥ずかしかった。

「まあ、にしてもだ。

話をしてくれた君には、これをやろう。

手作りではないがね」

二階堂少佐から差し出されたのは、赤い包み紙にくるまれたそれは、まさしくチョコだった。

「ありがとうございます。

ホワイトデーには、お返しをしますね」

 




間に合ったのかな?
私の日付は、午前六時を過ぎるまでは、前日です(笑)
にしても、バレンタイン要素、薄っ
  ↑ここ笑うところ

本編の次の話も、直ぐに投稿できると思います(フラグ)

加筆修正したんですけど、付け焼き刃ですね







言い訳
つい、書きたくなってやりました
今は、本当に後悔しています
文才ないよなあ

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