ほのぼの。
ヒロインはミーティア予定。
期せずして訪れた、二度目の人生。どうして前世を覚えているのかとか、何でよりにもよってゲームの世界に来てしまったのかとか思うところはあったけど、悔いが残らないようにと小さい頃から様々なことを全力で挑戦した。
けれども、自身のスペックがあまりにも低かったのか、どれもこれも人並み以上に上達することは無く、それでも頑張り続けて挫折を繰り返し――遂には周りの目が怖くなって、全てを棄てて逃げたした。
その先で漸く、唯一の才能を見付けられた時は、不覚にも泣いてしまったけれど。役目から逃げ出してしまったことが、罪悪感として心の裡に澱んでいく。
それでも帰る勇気が持てないまま、ただ静かに暮らしていた。
＊ ＊ ＊
「あ、雨だ」
食材集めを皆と一緒にしていたら、空から雨粒が降ってきた。今はまだそこまで激しくないが、曇天具合から雨脚が酷くなるだろう。
これまでの経験からそう判断し、住まいへと帰ることにした。想定していた量よりも少ない収穫だが、保存食もあるから数日は問題ないため、皆も特に不満は無いようだ。
食材を庇いつつ小走りで帰路に着いていると、同じスピードで走っていた最初の友達が、不意に足を止めた。
「どうしたの、ボロンゴ？」
問いかけに何も返すこと無く、額に十字傷があるキラーパンサー――ボロンゴは、鼻をひくつかせある一点を警戒するばかりだ。ボロンゴの様子に釣られてか、他の皆も警戒体制に入った。その事から、またこちらに好意的でない魔物が出現するのだろうと思い、皆が警戒する方の反対側へと避難する。自分の身を守れるか守れないか程度の戦闘力しか持たない僕が足手纏いにならない、唯一の方法だ。
次第に茂みの揺れる音が近付いてき、皆の警戒が最高値に達する。
だが、一番に顔を出したのはとても綺麗な白馬だった。目の前に僕達が控えていたせいか、白馬は鑪を踏みこちらとその反対方向へと顔を行ったり来たりさせている。
「こっちにおいで！！」
そんな白馬の様子と、白馬に目も向けず茂みの向こう側を睨み付けているボロンゴ達の様子から、危険な存在が迫っていることに気付き、白馬にそう声を発し――それを皮切りに皆は茂みの向こう側へと飛び出した。
皆の咆哮が轟く中、白馬に駆け寄り安心させるようにその身体を優しく撫でる。
「大丈夫だよ、皆が直ぐに追い払ってくれるから」
撫でられたからか、言葉を理解したからかは分からないが、どうにか白馬は落ち着いた。元から大人しい性格をしているのか、優しそうな眼差しでこちらと茂みの向こうを交互に見やる。
「大丈夫、皆は強いから」
それぞれの弱点を補いながら連携して戦う様は、流れるように美しく滅多なことじゃ崩れることがない安定感がある。
モンスターバトルロードでも結構良い線いくんじゃなかろうかと親バカ紛いの思考をしていると、向こう側の喧騒が止んだ。それから直ぐに皆は、目をキラキラさせながらこちらに走り寄ってきた。
その様子に苦笑しつつ、労うように皆を撫でた。
「護ってくれてありがとう」
その言葉ではしゃぎ出す皆を尻目に、白馬へと意識を向ける。こちらの有り様に少々戸惑ってはいるものの、警戒はしていないようだ。
「キミ、ご主人様はどうしたの？」
とても綺麗な馬だから野生じゃないだろうと当たりを付けて話し掛けてみれば、先程までとは打って変わって慌てるように興奮し出した。飼い主を心配しているのだろうその様子に、きっと良い人なんだろうなと思いながら、賢くて優しい白馬に対し、提案した。
「キミのご主人様捜し、手伝うよ。でも雨脚が強くなってきたから、家で雨宿りする？」
そして、白馬は頷いた。
●チャゴス成り代わり
死んだと思ったら転生していた少年。第二の人生に突入したため、悔いが残らないようにと色んな事に挑戦していたが、何一つとして人並みから抜け出せなかったため、次期国王の立場が重荷となり国を出奔。アスカンタ付近の森の奥で、仲良くなった魔物達と共に静かに暮らしていた。
そんなある日、偶然旅をしている主人公一行に出会い、寝床を提供。それが切っ掛けで自分の居場所が自国にバレ、サザンビークに連れ戻されることになる。
性格は素直で純朴。国を捨てて逃げ出した負い目から自分に自信が無い。
ドラクエのことは知っているが、ドラクエ８のシナリオは知らない。
魔物使いの才能がある。