ゼロの使い魔で割りとハードモード   作:しうか

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こんにちは。
ええ、明日は日曜日ですね。

みなさまの暇つぶしの一助にでもなればと、早めにアップしたので確認や修正が甘いです。知らないうちに踏み抜いた罠やすごい抜けが多そうですがアップさせていただきます。(ペコリ


13 一年後期の学院生活の準備

 

 色々と問題のあった婚約式が終わり、ラドの月から始まる後期の学院期間が近づいてきた。とりあえず、なぜか「新しい環境に慣れるため」という理由で前回よりも早い時期に学院に戻る事になった。いや、環境には慣れてるだろう。

 

 「さすがに教室変更や医務室の水メイジが代わったらわからんかもしれんが、休暇中に確かめるのもそれほどないのではないか?」

 

 とクラウスに聞いたら、今回の提案は姉さんのものらしい。しかも、着くまで秘密だそうだ。嫌な予感しかしない。どうもアレ以来、ルーシア姉さんは俺をおもちゃにして楽しんでいる節がある。

 

 はっ!? まさか……。自分より先に婚約したから怒ってるのか!? あ、ありえなくもない。うむ。確かに俺自身結婚できるようになるとは思わなかった。いや、まだしてないが。

 それに比べるのも姉さんに失礼だが、確か原作ではヴァリエール家の長女様が独身を気にしてヒロインである三女殿に軽く折檻していたような……。

 

 ルーシア姉さんなら相手を探せばすぐ見つかると思うほど美人だし、性格も温厚―――だよね? 最近ちょっと自信がないが、それほど心配しなくてもいいとは思う。やはり以前クラウスに言われたように俺も探した方がいいのだろうか。いやしかしだな……、あのハンサム揃いのグラモン家で無理となるとハードルがだな……。

 

 いやまてよ? 確か、原作のキュルケ嬢はコッパゲの火の魔法を見て貢ぐほど惚れてたな。となると、もしやルーシア姉さんのタイプは見た目ではなく魔法ということも考えられる。ふむ。それならば探しようもあるし魔改ぞ……いや、鍛えれば上がる可能性もある。見えてきた気がした。

 

 よし、この半期の学院生活では姉さんのお相手を探すのも「やることリスト」に入れておこう。しかし、コルベールはさすがに除外だろう。能力はいいが、アレを兄さん! とか呼びたくない。ぶっちゃけ父上の方が若く見える気がする。というか教師は除外だ除外!

 

 と、言うわけでそろそろ着くらしい。今回も風竜隊の助けを借り、学院まで移動している。最近はトリステイン上空をくまなく飛んでるらしい。

 

 「クロア坊ちゃん。坊ちゃんからいただいた資料は本当にすばらしいですね。もはやトリステイン上空ならどの部隊相手でも勝てる気がします。」

 

 とか言ってた。「いや、常に自分より相手が上だと思って訓練しないと成長が止まるぞ?」とか言っといた。君達がカスティグリアの最強戦力だからして、油断はいかんよ。いや、マジで! とまぁそんな話をしながらだったのですが、モンモランシへ向かう部隊の編成や、あちらで募集する野良メイジも大体決まっており、今騎手を務めているメイジはアグレッサー部隊の隊長さんらしい。というか今回りを飛んでるのも全部アグレッサー部隊だそうだ。昨日の夜、夜間飛行訓練も兼ねてモンモランシ領から飛んで来たらしい。

 

 え? もう出来たの!? まじで!? は、早くないですかね。「この時代の戦争は足が遅いはずだ(キリッ」とか誰か言ってませんでしたっけ? さすがカスティグリア。順応が早い。まさかここまで早いとは思わなかった。なんかこれなら俺イージーモードになるんじゃないですかね? 自主退学してモンモランシ領あたりで療養生活してる間に全て平和に終わりそうな気がするのですがっ!

 

 ちなみに姉さんは一足先にジャックと一緒に学院に行っている。何か色々仕込み……いや準備をしてくれているらしい。嫌な予感しかしない。ふむ。むしろこの予感を信じて相手の行動を予測、対策をしていれば対応可能なのではないだろうか。

 

 くっ、もっと早く思いついていれば羊皮紙に書き込めたのだが、竜の上では乗っているだけで精一杯だ。たまには脳内記憶に頼ろう。

 

 1 メイドが変わる。シエスタから変更。 有り得るが、それほど大変な変化とも思えん。

 

 2 内装が変わる。 一番ありそうだ。俺をおもちゃにするなら恐らく一番的確な回答かもしれん。一応覚えておいて後で詳細を詰めよう。

 

 3 学院の敷地内に俺とモンモランシーの小さい家を建てる。 い、いや、無くはないか? カスティグリアの財政がどのくらいあるのかは知らんが、やりそうで怖い。いやそこまで無駄遣いはしないと信じよう。ふむ。俺だけの家なら悪くない。むしろ医務室の隣にだな……。教室が遠くなってダメか。

 

 4 風竜隊の施設がなぜかあり、常駐している。 いやいやいやいや、公共施設だから! あれ? そ、そうなんだっけ? ちょっとこの世界のルールが曖昧です。ええ、学生ですからね。教えてくれませんし。

 

 5 むしろ俺の環境じゃなくてジャックの環境を整えに行った。 ふむ。ちょっと逸れてる気がするが、これもあるのではなかろうか。

 

 まぁそんなところだろう。内装が変わるのが一番ありえる。そういえば前回は期限が短くてどうこう言っていた気がする。ふむ。それならばわからなくもない。いやきっとそうだろう。そうに違いない。というかそれ以外は対策を立てようがない特に3番。

 

 どのように変わるかが問題なのだが、あの分厚いカーテンさえあれば引き篭もれる自信がある。シエスタに寝るときの使用を止められているが、着替えには必要だ。恐らく撤去はないだろう。と、なるとなんだ? 変えられて俺が困って姉さんが楽しそうなことか……。うーむ。

 

 と、考えているうちに降下が始まり、到着してしまった。ルーシア姉さんとシエスタが迎えに来てくれていて、ポーターも用意されていて荷物がさっさと運ばれて行った。

 

 「シエスタ、久しぶりだね。今期もよろしくね。」

 

 「クロア様。お待ちしておりました。よろしくお願いします。」

 

 と、挨拶を交わし、肩を借りて寮の部屋へ向かった。のだが……。まさかこう来るとは……。いや、ある意味効率的なのだろう……か? いいのか? ここ女子寮なのだが……。

 

 確かに女子寮の方が授業塔は近いし使用人塔も医務室も近い。シエスタもこちらの方が遥かに安全だ。だ、だがな。こう、なんというか男子としての、その、……。

 

 と考えているうちに部屋に到着した。シエスタは俺を椅子に座らせると井戸に水を汲みに行った。井戸も近くなったらしい。しかし、内装はほとんど変わっていない。テーブルが大きくなり椅子が増えてるだけだ。前は2脚だったのだが、6脚になっている。ふむ。今までギーシュとマルコが同時に来るとどちらかが立つか二人とも立ってたからな。モンモランシーが来る事もあるかもしれん。

 

 そうなると5脚でいいはずなのだが、まぁ多い分には困らないだろう。

 

 「姉さん。女子寮に入るのは距離的にもシエスタの安全のためにもいいと思うのですが、問題ないのですか?」

 

 一応、聞いておこう。後で問題だ! とか言われても言い訳に困る。とくにマルコあたりが「けしからん、けしからんよ、キミ!」とか言ってきそうで怖い。

 

 「ええ、問題ないわ。オールドオスマンに直談判しておいたし、大体モンモランシーに一人でキスできないような子が他の子に手を出す可能性はほとんどゼロでしょう? あ、シエスタなら構わないそうよ?」

 

 ごふっっ、い、いやしかし、誓ったはずだ! そう、雇用契約は守らねばなるまいて! もはや誰を守る雇用契約かわからんが守らねばだな! そ、そう貴族として! と、ぜぇぜぇ言いながら心の奥で強固な誓いを立てていると姉さんがヒーリングを掛けてくれた。

 

 「脈アリみたいね。シエスタに伝えておくわね?」

 

 ルーシア姉さんがいたずらっぽい笑みを浮かべた。こ、これは止めねば! 止めねば恐ろしいことになる!

 

 「いやいやいやいや、ルーシア姉さん。俺まだ婚約したばかりだから! まだモンモランシーでもキスが限か……ごふっっ」

 

 せ、説得も難しいかもしれん。と思っていたら「あはははは! 冗談よ。冗談。」とか言いながらヒーリングを掛けてくれた。くっ、やはり遊んでいるに違いない! ここはさっさと姉さんのお相手を探した方が心の平穏のためにも良いのかもしれん。

 

 しばらくするとシエスタが水汲みから戻ってきて紅茶を入れてくれた。ふむ。何かこれを飲むと落ち着く気がする。そう、ここのところ乱れていた心の平穏が戻ってきた気がする。もはや学院の方が落ち着くとは、カスティグリア、恐るべし。姉さんと紅茶を飲んでいるとドアがノックされた。

 

 「あら? 来たみたいね。シエスタ。」

 

 と、言うだけでシエスタが出迎えに出る。というか予定調和なのだろうか。この行動パターンは何か似たようなのが前にあったようななかったような。くっ、ここでも記憶力弱補正か!?

 

 「あら、シエスタ、ごきげんよう。クロア、お邪魔するわね。」

 

 と、言ってモンモランシーが入ってきた。ああ、うん。女子寮でしたね。

 

 モンモランシーの今日の服装は屋敷で着ていたような装飾の多いものではなく、普段着のようなものだ。若草色のワンピースで肩の部分が膨らんでいる以外は普通のワンピース……だと思う。なんか姉さんの影響でどこに罠があるか疑心暗鬼になっている気がしてならない。

 

 「ごきげんよう。モンモランシー、君もこんなに早く学院に戻ったのかい? その服もステキだね。君の普段の魅力がよく映える。」

 

 「ええ、ごきげんよう。クロア。あなたに合わせたのよ? ルーシアさんが予定を教えてくれたの。昨日入ったのだけど待ち遠しかったわ。あ・な・た。」

 

 ごふっっ、ちょ、ちょーっとハードル高かったかなぁ? モンモランシーは俺の隣に座るとヒーリングを掛けてくれた。ちなみに部屋は隣らしい。いや何かもういい。ふむ。しかしプログラムを消化していくためにはいいかもしれん。そう考えればこの配置はベストと言えるだろう。

 

 「あ、そういえば姉さん。俺の友達のギーシュやマルコはこの部屋に来ても大丈夫なのかね? 俺があちらに出向くのは厳しいのだが。」

 

 そう姉さんに疑問を投げかけてみると、

 

 「ええ、あなたの部屋は出口に一番近いからね、そこまでなら大丈夫よ? あとは個人の責任になるけどね?」

 

 準備がいいな。さすがだ。なんというか、用意周到というか、こちらの逃げ道を全て潰してからぶつけてくる感が否めない。

 

 「そういえば、クロア。一応これ、渡しておくわね。」

 

 と言ってルーシア姉さんに渡されたものは羊皮紙の束だった。全て父上の固定化が掛けられており、これはコピーらしい。コピーできるんだ? 便利な魔道具でもあるのだろうか。まぁ四隅に「複写」みたいなことが書かれているが、恐らく高価なものなのだろう。

 

 一つ目は束になっており、婚約式のときに書いた介助要員関連のもので恐らく対シエスタを睨んで俺に忘れたと言わせないためのものだろう。これは確かモンモランシーが許可を出し、規定の介助期間を経て、再び家族が面接して、俺が手を出す(どこまでかは知らない。)と側室要員になるという恐ろしい契約書だ。むしろなぜサインしてしまったのか……ええ、命の危険があったんでしたね。

 

 つまり、最終的に俺が判断するわけだからして、早々増えないはずだ。前にはなかった最後に添付されている確認書は見なかったことにしよう。すでに一名許可が下りているが見なかったことにしよう。

 

 二つ目はまっさらな羊皮紙だった。裏を見てもまっさら。

 

 「姉さん。この羊皮紙何も書かれていないのだがメモ用紙が混じってしまったようだね。お返しするよ。」

 

 と言って返すと

 

 「ふふっ、これすごいのよ? クラウスのオリジナル魔法が使われているの。」

 

 と言って、恐らくコモンスペルを唱えると文字が浮き出てきた。す、すごいな、クラウス!

 

 「はい、どうぞ? 消すときはエファセと言えばいいわ。」

 

 と、言って渡してくれた物をみると「あのモンモランシーへの愛が綴られた羊皮紙」だった。

 

 「エファセエファセエファセ!!!!! ちょ! こここここんな物になんでオリジナル魔法使ってるの!?」

 

 何こんなのにオリジナル魔法使ってるの!? 馬鹿なの!? しかも固定化も掛けてあるって言ってなかったっけ? 貴族の固定化はお高いんじゃなかったでしたっけ? ああ、使えるのか。使えてしまうのか、クラウスは……。いや、固定化を掛けたのは父上と言っていたか? まさかの家族ぐるみでしたか?

 

 「クロア。恥ずかしいのはわかるわ。でも私も持ってるのよ。私があなたにも持っていて欲しいからクラウスさんに頼んだの。」

 

 くっ、よくわからんが持っていて欲しいの? 本当に持っていて欲しいの!? というかモンモランシーも持ってるのか。何枚生産してあるんだろう。大量生産されたら……ん? よく考えたら元々ギーシュやマルコにも配るものではなかっただろうか。いや、改変するつもりではあったが、確か彼らのためにも良かれと思って書いたはずだ。ならば問題あるまい。

 

 「そうだったのか。俺のモンモランシー。俺が人生を捧げた人。大切に保管させていただくよ。」

 

 「ええ、嬉しいわ。私の全てをあげた人。」

 

 うむ。保管しよう。普段見えないなら問題あるまい。

 三つ目は束になったものだった。ふむ。「寮生活の手引き(女子寮編)」……いや、必要だけどさ。うん。必要ですね。ちゃんと読みましょう。

 

 一応さっき聞いたようなことが書いてあった。俺が自分の部屋やモンモランシーの部屋に行くのはいいが、友人を部屋に招く場合は一応許可が必要らしい。許可申請はモンモランシーを通すことになっている。ふむ。婚約者だから構わないか。社交的な意味もあるだろう。すでにギーシュとマルコは許可が下りており、二人のサインもある。もしかして婚約式の前にこの書類が作られていたのだろうか。

 

 ま、マジで? お、恐ろしい。すでに俺の人生はレールの上をただただ押されてゆっくり動いている気がしてきた。ふむ。よく考えればもう捧げてましたな。レールを敷くのはモンモランシーだからいいのか。

 

 読み終わって質問は無いと言うと、今日は荷解きもあるので解散になった。いや、ほとんどシエスタがやってくれるんだけどね。そう考えると暇かもしれない。そして原作と違っていいヤツになってるとはいえ、ギーシュとマルコ対策もしておこう。

 

 

 

 

 そして学院が始まる前の準備期間が始まった。これ、毎年あるのだろうか。いや、よく考えたらほとんど外に出ないので、カスティグリアでも学院でも変わらないのだが、毎日モンモランシーが尋ねに来てくれるため、そろそろ服装を褒めるための語彙が不足してきた。こ、これは厳しい。細かい変化も見逃さないよう、この良く見えない目でつぶさに観察しなくてはならず、しかも前回着たことのある服を新しい服と間違えないよう日記のようにメモしてある。

 

 しかも褒めた内容も一応書いているが、語彙の不足が著しい。いや、無理して褒めなくてもいいとは思うのだが、なんとなくこの挑戦は続けるべきだろう。そう、むしろモンモランシーの愛を受け止められない身体だからこそ、せめて、せめて褒め言葉の語彙くらいは増やさねばなるまいて。

 

 と、毎日辞典やシエスタに学院の図書館から借りてきてもらった本やシエスタオススメの恋愛小説とにらめっこしている。もしかしたらトリステインやハルケギニア独特の褒め言葉があるかもしれないという希望も少しある。いや、あることにはあるのだ。だがちょっと手を出しづらい褒め言葉なのだよ。そう、薔薇とか。

 

 あれはさすがにギーシュが言うからこそだろう。俺が言ってもし彼女に「たくさん生えてる薔薇なんかと比べるなんて!」なんて言われたら数十年引き篭もる自信がある。まぁ恐らくきっと多分言われないとは思うのだが、ちょっと勇気が出ない。

 

 あ、ちょっとだけ進展しました。ええ、アノ姿のモンモランシーを想像しても気絶しなくなりました。実際見るのはまだ無理ですが、このプログラムは一応効果あるようです。とりあえず自分が作り出す想像には勝てるようになりました。あとは真っ赤になりながら手を繋げるようになった程度ですけどね。

 

 

 

 そして学院が始まる数日前、入寮してくる貴族の子女が増えてきた。らしい。ちなみにドアには「クロア・ド・カスティグリア 御用のある方はノックをお願いします」と言う表札を出させていただいている。間違って入ってこられたりしても困りますし、ギーシュやマルコの逃げ道を潰しておこうかと。ええ、ちょっとしたイジワルでもあります。いえ、友人が間違えて他の部屋へたどり着くことがないよう、彼らの安全のためにですね……。

 

 ノックの音がしたのでシエスタに出てもらうと、ギーシュが来たようだ。ふむ。「どうぞ」と言うと、ギーシュが入ってきた。

 

 「やぁ、我が友クロア。ひさしぶりだね。それにステキな部屋だ。」

 

 「おお、我が友ギーシュ。本当に久しぶりだ。婚約式は早くから来てくれたのに悪かったね。体調が偶然、そう偶然悪くてね。いやはや、この身体にも困ったものさ。」

 

 そう、笑顔で挨拶を交わす。うむ。ぶっちゃけ3ヶ月ぶりくらいだ。少々距離がある気がするし、俺の貴族の仮面も最近よく壊れる。あまり自信がない。

 

 「ああ、シエスタ嬢、ありがとう。君の入れてくれる紅茶は本当に落ち着くね。」

 

 ギーシュがシエスタに丁寧に招かれ、紅茶を出される。

 

 「ありがとうございます。ギーシュ様。」

 

 シエスタは軽くカーテシーをしてから、ギーシュの対面の椅子まで肩を貸してくれた。一応彼に渡すかもしれない資料もテーブルに置いた。

 

 「しかし、色々と驚いたよ。まさか君が一番に婚約するなんてね? しかも相手はモンモランシー嬢だというじゃないか。詳しく聞かせてくれたまえよ。」

 

 ふむ。確かにギーシュには色々と悪い事をした気がしなくもない。実際個人的にはギーシュモンモン押しだったわけだし、スペックも相手の方が上だろう。確かに逆の立場なら気になる。ここは正直に話すか? いやしかしな……。

 

 「ははは。ああ、そうとも。でも俺が一番驚いていると思うよ? なんせ当日まで弟クラウスの婚約式だと思っていたのだからね。」

 

 と言うと、ギーシュも笑ってくれた。ふむ。これで反れるようなら回避しようと思います。

 

 「ふむ。ではクロアはモンモランシー嬢のことをどうとも思ってなくて、ただの政略結婚なのかい?」

 

 くっ、厳しいところを突いてきた。こ、こここれは反らしたらダメだ。

 

 「いや、モンモランシー嬢の事は当然愛しているとも。それはもう。この虚弱な命がかかっているほどさ。」

 

 嘘は言ってない。うむ。嘘は言ってない。

 

 「ははは、そうか。君が女性を本気で愛するときが来るなんてね。しかし、君、どうやって彼女を口説いたのだい? よければ僕にもそのテクニックを伝授してくれたまえよ。」

 

 ふむ。聞きたいのかい? 本当に聞きたいのかね? 

 

 「ふむ。ギーシュが本当に聞きたいというのであれば、伝授しないでもない。しかしだね。君にそれを実行できるかは少々疑問が残る。それでも良いというのであれば、そう、本当にそれでも良いと言うのであれば、この友情に賭けて絶対に軽蔑しないと誓うのであれば! 恥を忍んで伝授しようではないか。どうだね?」

 

 そう真剣な顔で言うと、ギーシュは真剣な顔で「誓おう。友よ。ぜひ伝授してくれたまえよ」と言った。言質はとったぞ? 友よ。

 

 そして、シエスタにあの羊皮紙を取って来るよう頼み、コモンワードを唱え、文字を浮き出させる。そして「まずこれを一字一句逃さず読みたまえ」と言ってギーシュに渡した。そう、アノ羊皮紙だ。モンモランシーへの愛が綴られた羊皮紙である。元々ギーシュのために書いた物だからして、彼にも読む権利はあるだろう。いや、普通に恥ずかしいところを削って考え付く限りのパターンと自分で考えられるよう個人的な手法をまとめた語彙強化用資料もあるが、ぶっちゃけ「肉を切らせて道連れにする」によるギーシュの反応がみたい。

 

 「と、とととと友よ。こ、これは一体。」

 

 と、激しくギーシュが動揺し始めた。うん。君が一番ふさわしいだろうとか書いてあるしね。わからんでもない。

 

 「うむ。それは俺が婚約式の一週間前ほどに書いた物のコピーだ。あの日は少々ショックなことがあってね。君がモンモランシー嬢を口説く手伝いになればと、当時叶うことはないと思っていた俺の恋心を有効利用するため本心で書いていたはずなのだが、どうも筆が逸れてね。

 書いた後いつの間にか寝てしまって、その間に弟クラウスに回収されたらしく、俺が起きた時にはそれを書いたことすらほとんど忘れていた。そして恐らく家族全員に読まれ、俺が削った部分を修正された挙句、モンモランシーに読まれたものだ。」

 

 動揺していたギーシュの目が見開かれた。うむ。わかってくれるか友よ……。

 

 「そして、婚約式当日の朝、部屋に監禁され、逃げ場を失ったあと、姉弟、そしてモンモランシーの前でそれを突き出された。読めばわかるだろう? 友よ。それを見てなお結ばれたいと彼女に言われたのだ。まさに死のうと決意したあと、そう言われたら人生を捧げるのも吝かではないとは思わんかね? 友よ。」

 

 と、言うと、ギーシュはコクコクとうなずいた。ショックだったのかい? 友よ。声が出てないよ? 紅茶に口をつけて少し飲んで、しばらくギーシュの反応を見る。

 

 少しして、ギーシュはようやく落ち着いたのか、羊皮紙をこちらへ返して大きなため息を吐き、紅茶を一口飲んだ。この羊皮紙は俺を傷つけるものでもあるが、ギーシュがこの反応なら面白い武器になる可能性が出てきた。これはいいものだ。彼女が持っていて欲しいと言ってくれなければ今この場に存在していなかっただろう。さすが未来の妻と言わざるを得ない。

 

 文字を消してシエスタに渡し、元の場所へ戻してもらう。そういえば、シエスタはコレの内容を知っているのだろうか。知っているのであればターンされたり、裾を掴んで上げられたら危険かもしれん。いや、間違いなく危険だろう。装飾が少な目とはいえ、彼女は常時メイド服だし、ドロワーズの可能性が高い。そういえばシエスタのメイド服のエプロンの形が三ヶ月前と違うような……。ままままさかね? 考えるのは危険だ。ギーシュに集中しよう。

 

 「しかし、友よ。君は恐ろしく困難な修羅場を乗り越えて来たようだね。尊敬に値するよ。そして、僕達の友情をここまで信じてその事を明かしてくれたことに感謝してもし切れない。僕は君のことを軽蔑するどころか英雄だと感じてしまったよ。」

 

 と、ギーシュが笑顔で褒めてくれた。おお、わかってくれるか。友よ。

 

 「おお、友よ。そう言ってもらえて大変光栄だ。そんな君に進呈したいものがある。」

 

と言って、ギーシュが来た時からテーブルに用意していたギーシュ、マルコ用の汎用口説き文句語彙強化対策資料を渡した。

 

 「おお、これはもしかして……。友よ! 君はなんてすばらしい友なのだ。僕は君のような友を持てて大変光栄だよ。ありがとう。これは僕のこれからの人生に大きく役立たせていただくよ。」

 

 ギーシュはざっと目を通したあと大変感激してくれて、大事そうに羊皮紙を丸めて仕舞った。一応マルコにも渡すつもりであることを話し、相手が被らないよう注意しておいた。

 

 「そういえばギーシュ。薔薇である君にこんなことを聞くのは失礼かもしれないのだけどね? これと言った気になる方はいるのかね?」

 

 と、ちょっと興味を持って聞いてみたが、今のところ特にいないらしい。ううむ。来年ケティが入学するのを待つしかないかもしれん。すまん、ギーシュよ。と、思ったらどうやら逆らしい。モテモテで困るとか惚気られた。

 

 「ふむ。ならば構わないのだがね? もし君が決めかねているのなら、君はモテるから来年に期待しても良いかもね?」

 

 と、一応まだ見ぬケティ押ししておいた。うん。一応。

 

 「そうか、友よ。来年も新しい蝶がやってくるのだ。焦る必要はないかもね。」

 

 と言って笑っていた。うむ。さすが高スペックで気のいい友人である。

 

 

 

 




ええ、モンモン攻勢が止まりません。甘甘展開の出口ドコー?
作者のHPはたまにマイナスよ! マイナスになると狂化してしまふよ?

昨日きっちり寝たので回復気味です。
ちょっと最近体調悪くてあまり眠れなくて寝ても悪夢ばっかりで狂化モードに突入してたみたいです。すいません。
ヒーリング回数を絞れるよう調整中です。まだ多いと思いますが本当にすいませんorz(土下座


次回おたのしみにー!

してくれる人はまだいらっしゃるのだろうか;;

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