IS~平凡な俺の非日常~   作:大同爽

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第78話 フランス革命

「さて……やるか」

 

「おう。こっちはいつでもいいぜ」

 

 俺は《火神鳴》同士を打ち付け、一夏は《雪片弐型》と《雪羅》を構える。そしてそれぞれ俺たちのとなりでは――

 

「私もいつでもいける」

 

「負けないよ、一夏、箒」

 

 両手にそれぞれアサルトカノン「ガルム」と連装ショットガン「レイン・オブ・サタデイ」を握るシャルロット、そして、二本のブレードを構える箒。

 俺たちは今IS学園の第二アリーナにいる。

 

『それでは、これより井口颯太、シャルロット・デュノアペア対織斑一夏、篠ノ之箒ペアの模擬戦を始めます』

 

 アリーナに響く山田先生の声に俺たちの意識はただ目の前の相手へと向く。

 今回俺たちがこうして模擬戦をする目的、それは――

 

 

 ○

 

 

 

「性能実験を兼ねての模擬戦?」

 

「そそ。協力してくんない?」

 

 指南コーポレーションから戻った俺は寮の食堂にて一夏が俺の言葉をオウム返しのように訊く。

 時刻は夕食中七時半ごろ。篠ノ之束博士から送られてきた装備の解析や使用法の確認、量子変換に手間取り、また同時進行で行われたシャルロットの新装備のこともあったので、結果学園に帰って来たのは七時前になっていた。

 そこから合流したいつものメンバーの一夏、箒、セシリア、鈴、ラウラ、簪、そしてなぜか他学年の師匠とともに夕食をとっている。

 

「篠ノ之博士から送られてきた装備には一応説明書じゃないけど性能のデータとかはあったしそれを見る限りじゃ過程はどうあれすっげぇ装備なんだ。でもそれはあくまでデータの上での話。これがどこまでの物なのか実際に使ってみないとわからないところがあるからさ」

 

「なるほどね」

 

「特に今回は作ったのは指南の会社じゃないからさ。しかも人としてはあれだけど一応あのISの生みの親である篠ノ之束お手製だ。どんなものかデータじゃなく実際に動かしてみたいんだと。俺もデータで見せられても実際に使ってみないとピンとこないし」

 

 俺は言いながらそっと右手のリングを撫でる。

 

「まあそういうことなら俺は構わないぜ」

 

「そっか。ありがとう、助かるよ」

 

 一夏の言葉に俺はほっとしながら頷く。

 

「ありがとうついでにもう一個頼まれてくれるか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「これは一夏以外のみんなにもなんだけど」

 

「ん?わたくしたちもですの?」

 

 セシリアが首を傾げ、他のみんなも同じようにきょとんとしている。

 

「実は今回の性能実験俺だけじゃないんだよ」

 

「それってもしかしてシャルロットちゃんの新装備もってこと?」

 

「そうなんですよ」

 

 師匠の言葉にシャルロットが頷く。

 

「それでついでにシャルロットの新装備の性能実験もしようってことになって……できればこの模擬戦、二体二のタッグマッチにしたいらしい」

 

「てことは……」

 

「誰か一夏と組んで俺&シャルロットのペアと戦ってほしいんだよ」

 

「僕からもお願い」

 

 俺とシャルロットのお願いにみな黙り込む。師匠と簪はともかく他四人は互いを牽制し合っているようだ。ここで俺の中の悪魔が囁く、この状況をもっと面白くしろと。

 

「簪どうだ?やってみないか?」

 

「え?私……?」

 

 俺の突然のパスに簪が驚く。

 

「こっちは指南ペアだしそっちも倉持ペアってことでさ。みんな乗り気じゃなさそうだし」

 

「確かにね」

 

 俺の提案に頷き援護射撃をしてくれる師匠。おそらく俺の意図をくみ取って乗って来たのだろう、(多分俺もだろうが)悪い笑みを浮かべている。

 

「お姉さんも立候補しようかしら。久しぶりに弟子の颯太君とも模擬戦したいし、みんなもやりたくないみたいだし」

 

「べ、別にやりたくないとは言ってないでしょう!」

 

 と、箒ががたんと慌てたように立ち上がる。が、すぐに興奮して立ち上がった自分をごまかすようにすとんと座り直し咳払いをする。

 

「その…なんだ。どうしてもというなら私も手伝ってやろう。以前やった颯太との模擬戦も決着はうやむやになってしまっているしな」

 

 それらしい言い訳を言いながら箒がうんうん頷く。

ちなみについ最近俺たちは普通に下の名前で呼び合うようになった。理由はなんだか他のみんなと比べてお互いよそよそしい気もしたからだ。あと個人的に篠ノ之と言うと嫌いなウサギを思い出すからだ。

 

「ちょっと待ちなさいよ!私だって立候補するわ!一夏、私と組みなさい!幼なじみでしょ!?」

 

「いいえ、ここはわたくしセシリア・オルコットやりますわ。一夏さんの近接に相性がいいのは遠距離型の《ブルー・ティアーズ》ですわ」

 

「私を差し置いて話を進めるな。一夏は私の嫁だ。模擬戦でも夫婦が共に戦うのが道理だ」

 

 と、続々とセシリア、鈴、ラウラも名乗りを上げる。全員が名乗りを上げたことで四つ巴の修羅場が出来上がる。

 

「ねぇ…颯太……」

 

 その状況を楽しんでいる俺にこそっと簪が俺の腕をつつきながら言う。

 

「こうなるってわかってて私にお願いして来たでしょ?お姉ちゃんも」

 

「まぁ~ね~♪」

 

 師匠が悪戯っぽく笑い、俺も頷く。

 

「だってこうした方が――「楽しいでしょ」」

 

 師匠とハモり、互いに顔を見合わせて悪い顔で頷き合う。

 

「二人ってこういうところで息ぴったりだよね」

 

「似たもの師弟……」

 

 ふたりにジト目で見られながら俺と師匠はきょとんとしながら首を傾げる。

 

「そんな、何言ってんだこのふたりは?みたいな目で見られても……」

 

「「何言ってんだこのふたりは?」」

 

「実際に言っちゃったよ」

 

「おい、ちょっと!」

 

 と、遮るように一夏が叫ぶ。

 

「もう収拾つかなくなってきたんだよ!どうにか収めてくれよ、言い出しっぺは颯太だろ!?」

 

 少しアタフタしながら一夏に言われ俺はパンパンと手を叩く。

 

「よし!お前たちの気持ちはよく分かった!」

 

「いや、お前さっきまで聞いてなかっ――」

 

「そんなわけでここからは公平に運と知力と人間心理と演技力その他個々の能力を行使して一発勝負で決めようじゃないか!」

 

 俺の言葉にみな一様に首を傾げる。

 

「公平に決着をつける方法。そう……ババ抜きだ!」

 

 

 

 ○

 

 

 そんなわけで夕食後、会場を俺と一夏の部屋に移したわけだが

 

「そこだ!」

 

「甘いですわ!」

 

「さっさと取りなさいよ!」

 

「ジョーカーは……ここだ!」

 

「あー揃っちゃった~」

 

 先ほどからおよそババ抜きをしているとは思えないテンションである。

 ちなみに今やっているババ抜きはジョーカーを最後まで持っていたやつが勝ちという特別ルールで行われている。

 

「あいつらすごい気合いだな。そんなに模擬戦したいのか……」

 

「うん…まあ…したいんじゃない?」

 

 一夏の言葉に微妙な顔で返す簪。

 一夏ラヴァーズの面々の妙なやる気に早々に戦線を離脱した簪、そして俺と一夏、シャルロットの四人でこっちはわいわい楽しく大貧民を興じていた。

 ちなみに師匠は場を引っ掻き回すためかいまだにババ抜きに参加している。

 

「いやはや…ここまでやる気を出してくれるとはね~。ありがたやありがたや」

 

 言いながら場にパサリとカードを手札から出す。

 

「どの口が言うの、どの口が。焚きつけたのは颯太でしょ?」

 

 ジト目で言いながら同じようにシャルロットがカードを出す。

 

「ん?焚きつけた?どういうことだ?」

 

 よくわかってない一夏が首を傾げながらカードを出すが

 

「わからないならいいんじゃないかな……」

 

 言いながら簪もカードを出す。

 

「そうそう。気にしない気にしない」

 

 言いながら俺がカードを出すと

 

「じゃあ……これで!」

 

 言いながらシャルロットが出したのは8が四枚。つまり――

 

「これは…革命!いや……フランs――」

 

「まさかフランス革命とか言うんじゃないよな?」

 

「まさか…そんなそんなつまらないこと……」

 

「…………」

 

「言うつもりだったんだね……」

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで普通ならそれほど長引くとも思えないババ抜きは通常の何倍もの時間を経て決着。

 一夏の相棒となったのは意外や意外、箒だった。こういうだましだまされなゲームは苦手だと思ったのに。

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 昨日の対戦相手決めの過程を尾頭の片隅で思い出していた俺に一夏が斬りかかる。

 俺はその太刀筋をしっかりと見て、左に体を逸らしながら構えていた《火遊》を振る。

 

「せい!」

 

「くっ!」

 

 《火遊》の性能を知っている一夏は『ハミング・バード』を警戒してバックステップで避ける。

 

「タッグマッチなのに引き離したんじゃ、意味ないんじゃないのか?」

 

 一夏が俺たちの後ろでシャルロットと戦う箒に視線を向けながら言う。

 

「そう思うだろ?でも実は……」

 

 言いながら俺はすっと体を右に倒す。と、背後から――

 

「っ!?」

 

 一夏がさらにバックステップをするが一夏の目の前の地面で火花が散る。シャルロットの打った弾丸が原因だ。

 その隙に一夏との距離を詰め《火人》で斬りかかる。

 ガギンと金属同士のぶつかる音と共に俺の《火人》と《雪片弐型》がぶつかり合う。

 

「この様に随時通信やらハンドサインでタイミングを合わせて支援可能だ。俺も隙があればどんどん箒を攻撃するからそのつもりでな」

 

 俺はニッと笑いながら言う。

 

「だったら……俺だって!」

 

 言いながら出力を上げていき俺の《火人》を押し返す一夏。

 

「はぁぁ!!」

 

 気合いとともに俺の《火人》を跳ね返し《雪羅》を構える一夏。

 

「させるか!」

 

 叫びながらバク転で後ろに避けながら構えた一夏の腕を蹴り上げる。

 

『シャルロット!避けろ!』

 

 俺が一夏の腕を蹴り上げながらシャルロットへとプライベートチャネル越しに叫ぶと同時に《雪羅》が荷電粒子砲を放つ。

 俺が蹴り上げたのとシャルロットの反応がよかったおかげでシャルロットに当たることなく、むしろ箒を狙ったんじゃないかと思いたくなるような射線で一夏の攻撃が飛ぶ。

 

「ば、馬鹿者!急に撃つんじゃない!」

 

「す、すまん!」

 

 箒の怒声に一夏が慌てて謝る。

 

「ちゃんと打ち合わせしないとあぶねぇぞ」

 

「あ、ああ……いま身に染みて感じた」

 

 俺の言葉に苦笑いを浮かべる。

 

「ところで颯太……」

 

「ん?」

 

「これって性能実験だよな?」

 

「そうだよ」

 

「……新装備使わないのか?」

 

 一夏の問いに頷く。

 

「ん~…まあちょっともったいぶってみた。そろそろ使わせてもらおうかな――シャルロット!」

 

 言いながら俺は背後へと叫ぶ。

 

「そろそろ行くぞ!」

 

「オッケー!その言葉、待ってたよ!」

 

 見なくても声の感じでわかる。この感じは本当に心待ちにしていたのだろう。

 

「さあ、待たせたな……お待ちかねの新装備お披露目だ」

 




戦闘描写が苦手なのと長くなりそうなのでいったんここで区切ります。


さて、ここでお知らせとお願いです。
もうすぐお気に入り件数が2500件いくんで番外編を描こうと思ってるんですが、最近ハマった某新作5のゲームの影響で怪盗物で行こうと思っています。
そこで内容を考えたのですが二案出て来てます。

①颯太扮する怪盗を追う美少女探偵楯無&シャルロット&簪

②三人組美少女怪盗を追う名探偵(もしくは刑事)颯太

の二つで迷ってます。まあぶっちゃけ颯太をどっち側にするかで迷ってるわけですね。
もしどうしても決めかねたら活動報告でアンケート取ろうと思ってるので、その時はご協力お願いします。

以上、お知らせ&お願いでした。

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